マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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兄が何かおかしいことに気づいてしまった。


第二十九話~兄がライバルの感情に気がついた~

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。最近シンオウ地方にやってきました。一度ピカチュウとはぐれてしまってエイパムと一緒に探したり、ヒカリに会って一緒に旅をすることになったり、タケシに会ったり…まあそんな感じで順調に旅は進んでいますよ。

 

でもこの目の前にいる廃人野郎の意図が分からん。

そう、廃人野郎ことシンジはポケモンバトルではより強さを目指し、相手によって戦略などを変え勝利を手にしているトレーナーである。

まあポケモンの能力を確認、判断し使えなければ逃がすというやり方、そして使えると分かれば徹底的に鍛えるという努力は凄いと認めよう。そして相手によっては戦略を変え、弱点を突いた攻撃、自分のポケモンの特性や技を最大限に生かすやり方は俺も感心するところがあると思っている。

ポケモンバトルというのは、最終的には勝つことが目的なのだから。だから俺が負けたとして、「ぬるいな」「使えない奴」と罵倒されても文句は言わない。それは俺がトレーナーとして力が及ばなかったということなのだから。

 

だがそれでポケモンの感情はどうなる?

前に逃がしたヒコザルも徹底的に鍛えるというシンジのやり方によってボロボロに傷ついた。まあそれがきっかけで俺の仲間になったのだけれども…。でもポケモンも生きているのだから、道具や駒だというように扱わずにちゃんと気遣ってやってほしいと思う。たとえ兄のレイジさんがコンプレックスで行ってしまったらしいとしてもだ。

まあそこらへんは原作の知識なんかでは変わっていくらしいし、最終的にはヒコザルとも仲良くなるらしいから、大丈夫だという気持ちもあるにはある。

本当ならヒコザルがまだシンジの手持ちにいる時に変えていった方が良かったはずだったんだよな…。でも俺はシンオウからの知識は薄く、妹に教えてもらわなければわからないことだったためフラグは叩き折れなかった。電話で聞いたときは後悔したぐらいだ。少しでもシンジの気持ちを変えられたならば、ヒコザルは今でも幸せに彼の手持ちとして戦っていたはずなのだから。

 

だから、俺の仲間になったのならば、やれるべきことはしようと思う。強くなりたいのならば力を貸し、そして最終的にシンジの手持ちに戻りたいというのなら、俺は何も言わず、希望通りにしたいと思っている。

それぐらいしか俺にはできないのだから当然のことだ。

とりあえず今の目標はシンジの意識変革ということかな。

 

…でも何だか少しだけ俺に対する敵意というか、ライバル心が強くないか?

ポケモンセンターの中からシンジが外に出ていく後ろ姿を見かけたため、俺はタケシたちにここで待っていてほしいと言ってから走り出し、話しかけた。

「おーいシンジ!ちょっとお話しようぜ?」

「はぁ?何だいきなり。お前と話すことなど何もない」

「いいからいいから…!」

 

まあそんなわけで。俺はどこかへ行ってしまうシンジを強制的にどこか話せる場所まで連れて行き、広場にあるベンチに座ってもらって話を聞いた。

 

「…なあシンジ。お前俺のこと嫌いか?」

「嫌いだ」

『…ピィカ…』

即答ありがとうございます。そこまで嫌悪にされていたとは思ってもみなかったぜ。

ピカチュウもちょっと不機嫌な顔をしながらも俺たちの話の邪魔をしようとしない。

俺は聞きたいことがあったから聞いただけだし、罵倒とか今更だしな?まあこいつの場合は礼儀もなってるし、トレーナーを意図的に傷つけようとして言っているわけではないから俺も何も言う気はないけれど。

 

「何で俺のことが嫌いなんだ?お前、俺と最初に出会った時からそんな感情持ってただろ」

「………………」

そう、聞きたいというのはシンジの嫌悪感だ。俺の顔を確認し、名前を聞いた時から一気に邪険になり、凄まじい敵意が滲み出る様になってしまったのだ。俺はそれに疑問になり、直接聞いてみたというわけだ。

だがシンジは何も言わず、どこかへ行こうとするため、俺は彼の腕を掴み逃げないようにした。

 

「お前がやるバトルは他のトレーナにはない凄いものだと思ってる。…まあポケモンに対しての感情は少し見逃せないところがあるんだけどな…でもそれでもシンジ、お前とのバトルは楽しいって思ってるんだぜ?」

「……そうか」

「だから何で俺のこと嫌いなんだ?名前を聞いた時からだぞ、そんな親の仇をみるような感じになったのは」

「………………………」

『ピィカッチュゥ』

シンジはその質問に何も答えずにいる。でも俺はこのままにしておくつもりはないので、じっと答えを待ち、シンジのことを見つめる。

ピカチュウはそんな俺に呆れつつ、シンジに対してさっさと答えた方がいいよと言ってきた。

 

しばらくして、シンジが重い口を開いた。

「お前のことはよく知っていた」

「へ?」

「お前はカント―地方、ジョウト地方、そしてホウエン地方のリーグで優勝していただろう。バトルフロンティアでもすべてのブレーンに勝ったというのも調べ、その映像をすべて見た」

「お、おう…?」

確かに俺はやるからには勝つがモットーなため、すべて勝ち進んでいったし優勝とかもした。けれど何でシンジはそんなに俺のこと詳しいのだろうか?しかも調べたとか言ったよな…映像も見たってどういうことだ。

シンジは少しずつ話していった。そして話していくごとに感情が高まっていったのか、俺のことを鋭く睨み付けてきた。

 

 

「最初はどんな奴だと考えた。旅立った地方でのリーグに優勝して…あのジンダイとのバトルで勝ったというからチャンピオンのように凄いトレーナーだと思っていたんだ…だが実際に見たらポケモンを優先するぬるい奴だとは思わなかった!何故お前のようにぬるい奴が強い!?そしてすべての勝負に勝つことができるんだ!!?」

「あー…」

『ピカピ…』

なるほど。つまりシンジは俺の戦歴が信じられていないということなのだろうか。例えるなら凄い有名人のファンになったのはいいけれど、実際に直接会ったら現実は残念な奴だったと認識して逆に嫌いになったとかそういうことか?そして俺は兄のレイジさんにも似ているらしいから余計にコンプレックスを感じているのか、それとも何でそのぬるさで勝てたとか疑問に思ったりしてるのだろうか…。

ピカチュウが俺のことを憐れんでいる目で見てくる。でもこれ俺にどうしろと?バトルを挑んで勝てばいいのか?でもシンジとバトルしている時も今までも絶対に負けたことないんだけど意味なくないか?

 

シンジは少し深呼吸をして高ぶった感情を落ち着かせ、静かに俺を睨むようになった。でもその睨んでくる目が本当に親の仇を見ているようですよ。まあ俺を貶しているというわけではないから、怒ったりはしないけどな。

俺は苦笑し、頬をかきつつも口を開いた。

 

 

「シンジ」

「…………何だ」

「お前が俺のことをちゃんと見てくれるなら…リーグで待ってろ。俺の凄さってやつを教えてやるよ」

「………………」

今はまだ、少しだけ旅に出ている仲間たちと強くなっていく途中なのだ。今からバトルしたとしても、いろいろと不完全燃焼でシンジも俺も納得できないだろう。だからリーグで戦う。

まだまだバッチも集まっておらず、何もできていないけれど、シンジと絶対にリーグで戦おうと約束しよう。そしてそこでシンジが期待したバトルを見せてやろう。そう俺は決めた。

シンジも今のままで良くないと考えたのだろう。俺のことをちゃんと見て、そして睨み付けてきた。だがその目には今までのような感情が伴っておらず、ちゃんとライバルとしての敵意だけだと感じた。

 

 

「ッ…ふん。お前がそう言うのなら、リーグですべての決着をつけよう。次は絶対に負けない」

「おう!俺も負けないからな!」

『ピッカッチュウ!』

 

 

 

 




兄の心境。
 ライバルの育成っていうのも面白そうだよな…。

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