マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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絆はお互いを結び合う――――――――。







第二百七十四話~悲しみ傷ついた彼女たち~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここに、あのリザードンがいるんだ…」

『ポチャァ…』

『ミィ…なんだか熱い所でしゅね…』

『まあね。サトシ君のリザードンもいるような場所だし…でもそのおかげでリザードンが暴れたり攻撃したりしても平気だろうし…精神面でのケアぐらいはしてくれてると思うんだけど…』

『貴様あのサトシのリザードンが細かいケアをすると思ってるのか?』

『むしろサトシのリザードンだったらもっと熱くなれよ!っていいそうでしゅね』

『…うん。ミュウ達と相談して決めたことだけど今更ながら不安になってきた…どうしようヒカリちゃん』

「もう…大丈夫でしょ!ヒナちゃんのリザードンはそんなに弱くないわ!…よね?」

『ポ…ポチャァ…』

『う、うんそうだよね大丈夫だいじょーっっゴフォォッ!!!』

 

 

「無駄な話をしていないで、早く中に入ろうか…ああルカリオ、それは放置して構わないよ」

『は、はい…』

『ッッそれ扱いするな!!!!』

 

「ははっ……でも、ようやく会える…!」

 

 

 

ヒナ達がやって来たのは、ジョウト地方のキキョウシティ辺境に位置する場所――――――サトシのリザードンも修行しているリザフィックバレーというリザードン達が集まる谷だ。強さを求めたリザードン達が、より強くなるために集まっている所でもあり、わざわざ改造したマサラタウンのトレーニングフィールドより訓練に最適な場所でもある。

ギラティナたちがヒナのリザードンをそちらに預けたのは、マサラタウンだとヒナの思い出が強く残っているせいで小さなきっかけでシロに連れ去られた時のことを思い出して余計に傷つくのを恐れ、かといってヒナの思い出がない土地でもあり、サトシのポケモンや伝説のポケモンがいない場所に置いていくとリザードンの身に何かあっては不安だと考えて…リザフィックバレーに預けることに決めたのだ。ヒナと共に過ごした思い出の場所でもなく、サトシのポケモンがちゃんと傍にいられるような環境のリザフィックバレーなら大丈夫だろうとギラティナたちが結論付けて決めたことだった。

つまり、サトシのリザードンは最強を誇り、その強さは伝説をも凌ぐ程度だと分かっていること。そしてその当時ヒナのリザードンは情緒不安定であり、すべての生き物に対して攻撃的な精神になっていたからこそ、誰かが常に傍にいて…なおかつヒナのリザードンが暴れたらすぐに取り押さえられるような場所にいた方が良いという思いでギラティナたちは預けたのだった。

 

だが、強さを求めるには最適な環境だが、精神面での回復ができているような環境ではないとのことに今更ながら気づいたギラティナは、ヒナのリザードンが今よりももっと周りを憎むようになっていないのかで不安になっていた。そんな不安が周りにも伝わる。でも、周りがそんな状態だとヒナ自身の不安にもつながるだろうとアーロンが考えていつものようにギラティナを殴って阻止したことによってその暗い雰囲気が消え、そして彼女たちは門の前に立ってその時を待ったのだ。

 

 

 

 

―――――――大きな門が開かれる。

 

 

 

 

 

ようやく、リザードンに会える…!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

門の中に入ると、そこにはたくさんのリザードン達がこちらを見て歓迎していた。体格がとても巨大で…なおかつ屈強そうなリザードン達が雄叫びを上げて空に向かって炎を放つ。それを見て歓迎しているようだとルカリオが呟き、暑すぎる周りの環境にシェイミとポッチャマが汗をかいて嫌そうにしていた。歓迎しているのはリザードンだけじゃなくリザフィックバレーに住み、管理している人間のジークもだった。

 

 

ジークは微笑みながらヒナたちに近づいて口を開いて言う。

 

 

 

 

「あなたがサトシ君の…妹ね?」

「はい。初めまして。ヒナといいます」

「よろしく。私はジーク。ああそうだ、今あなたのリザードンは建物の奥にいるから連れてくるわね!…サトシ君の妹なら、こっちのリザードンとは久々に再会するんじゃないかしら?」

『グォォオオオッッ!!!』

 

 

「うわぁ…久しぶりだねリザードン!!」

『グォォオオオ!!!』

 

 

 

オレンジ色で屈強な強さを持っていそうな雰囲気を漂わせているリザードンが笑顔でこちらに近づいてヒナに向かって挨拶をした。もちろんヒナの後ろにいるアーロン達にも挨拶をして…そしてヒナと再会を喜び合う。リザードンがヒナを片手で抱き上げて大きくなったなと言うかのように笑みを浮かべ、それに対してヒナがリザードンの首元に抱きついて久しぶりだねと大きな声で笑った。

 

 

 

だが、サトシのリザードンにギラティナが不安げな表情で近づいたことによってヒナはリザードンから降ろされ、再会した興奮は冷める。

 

 

 

『ねえちょっと…大丈夫なの【彼女】は?』

『グォォォオ!』

『え、それはそれでどうなの…というか、君も本当にサトシ君そっくりだよね!!?』

『グォォォオ…!』

『いや褒めてないし!というか炎をこっちに向かって吐かないでよ!!』

 

 

 

「何を言ってるのかしら…ルカリオ分かる?」

『ポチャ?』

『……サトシのようなことを言っているだけだ。俺には知らん』

「なんか物凄く不安になって来た…」

『ポチャァ…』

『ミィ…ピカチュウがリザードンのことを脳筋馬鹿っていうのも納得できた気がしたでしゅ…』

「大丈夫だよ。…リザードンなら、絶対に大丈夫」

「ああそうだね。君が育てたリザードンなら…鋼の心を身につけていそうだ」

『いやソレもソレでどうなんでしゅか…』

 

 

 

ヒナのリザードンのことを心配するギラティナたちが話をする一方で、ジークは谷の奥から真っ黒な身体のリザードンを連れて歩いてきた。その黒いリザードンこそヒナが一緒にいて育ったリザードンであって…ヒナは自分の相棒だと分かったのだ。ジークは感動の再会になるだろうと考えてアーロン達の傍へ行き、ヒナと黒いリザードンを見守った。誰もが……いや、一部は心配していたのだが、それでも感動の再会になるだろうと考えていたのだ。

 

 

だが、リザードンは目を鋭くしてヒナを睨み、大きな咆哮を上げる。

 

 

それを見たヒナは心配しこちらを止めようとする周りを無視して黒いリザードンに近づき、微笑んで口を開いて言う。

 

 

「リザードン…ごめんね、私は君を守れなかった…でも、大丈夫だよ。私は強くなったから…だから帰ろう?」

 

 

『……グォォオオオオオッッッ!!!!』

 

 

 

 

 

 

大きな炎が、ヒナの目前に迫る。

 

 

 

 

リザードンがかえんほうしゃを放ったのだと分かったヒナがすぐにルカリオと特訓して身につけていた反応を見せ、真横に向かって転がり炎を避ける。

何故炎を放つのか、ヒナには分かった。たまごの頃からずっとずっと一緒だったリザードンだからこそ、何故こちらに向かって睨みつけて攻撃してきたのかが、言葉にしなくてもちゃんと分かった。

 

 

 

「そっか…ただ言うだけじゃ分からないよね…」

『グォォオオオオッッ!!』

 

 

 

――――――――強くなったのなら、その力を見せろ!

 

 

 

そう言うかのように叫ぶリザードンはまるで兄であるサトシのリザードンのようだとヒナは思った。そして、ただ落ち込んでいるだけじゃなくちゃんと兄のリザードンのように強く逞しく育っているのだと分かった。リザフィックバレーに居たせいか、兄のリザードンに似てちょっとだけ…いや、とてつもなく攻撃的になってはいたけれど、それでもリザードンはヒナと同じくシロの一件から立ち直り、強くなろうとしていたのだと分かってヒナは笑った。

 

 

その場の雰囲気を感じ取ったのか、いろんなリザードンがヒナと黒いリザードンの周りを見つめる。ギラティナとルカリオが喧嘩が始まると考え止めようと動くのだが、アーロンの手によって物理的に止められ仲良く地面に沈んでいる。ヒカリはそんな彼らを気にせず、緊張した面持ちでヒナたちを見守り、そしてジークとサトシのリザードンは笑っていたのだった。

 

 

 

 

――――――――炎が、強く燃え盛る。

 

 

 

 

―――――――青色の閃光が、響き渡る。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「へぇ…さすがはサトシの妹だ。あんなにも小さいというのにあの威力は凄いな」

「…うわぁ…まるでギンガ団の残党ぶっ潰してた時のサトシみたい…」

『ポチャァ…』

『グォォオォオ!』

『おい待て貴様。そんな誇らしげに言うことか!!?』

『ポッチャ!!』

『ミィ!普通は泣くような場面でしゅよ!』

「…え、なんて言ったのサトシのリザードン?」

『ヒナちゃんが強くなったことに対して喜んでるだけだよ…まあこれは喜んでいいのか分からない状況なんだけどね…』

 

 

ギラティナたちが遠い目をして若干現実逃避しているのは仕方ないと思える光景がヒナたちの周りで起きていた。黒いリザードンがかえんほうしゃを放ったのを見てヒナは身につけているブローブを青く光らせながらもポケモンのような反射能力でそれを避け、そしてリザードンに近づいて殴りかかろうとしたのだ。それを見て黒いリザードンは翼を広げて飛び上がり、ヒナの攻撃を避けた。

避けられたヒナの拳は地面に直撃する。力強く殴られた地面が青く光ったかと思えば【爆発】したかのような反応を示したのをみて周りが驚きの声を上げる。青い光が地面に包まれ、そしてその地面がヒナに殴られた拳から一気に地割れのように陥没していったのだ。その威力は、カビゴンのメガトンパンチ並みの威力を持っているのではないかと観戦しているジークが感心したかのような声を上げ、そしてヒカリ達が遠い目をして修行していた日々を思い出して嘆き悲しむ。ああ、とうとうヒナもサトシのような人外になってしまったんだなと…。

 

 

 

地面が陥没した馬鹿力のようなヒナの攻撃力に黒いリザードンは目を見開いて驚き、そして笑う。

 

 

 

もちろん、ヒナもリザードンの力強い炎を見て笑っていた。

 

 

 

『グォォオオオオオッッ!!!!』

「はっぁああああああッッ!!!!」

 

 

 

 

黒いリザードンの尻尾が光り輝き――――ドラゴンテールが放たれる。それは、サトシのリザードンから教わった技の1つであり、ヒナに強さを示す証でもあった。ヒナと同じように、リザードンも強くなった。

リザードンも同じように、離れていてもヒナと一緒に強くなったのだ。

 

ドラゴンテールを顔面すれすれで避けたヒナは掌底をリザードンの腹に向かって叩きつけようとする。だがヒナの攻撃力の高さを地面が陥没したことによって知った彼女は避けた。もちろん反射で攻撃するのを忘れず、きりさくを選択してヒナに向かって斬りかかったのだが…ヒナはいとも簡単に避けていく。

 

リザードンの闘争心が、戦うというポケモンとしての本能がこのまま勝ちたいと叫びを上げる。もちろんそんなリザードンの相棒であるヒナも、同じように勝ちたいと望んだ――――――望んでいるからこそ、一人と一体は叫んだのだ。

 

 

 

 

『グッォォォオオオオオオオオッッッ!!!!!!』

 

 

「絶ぇぇ対っに、負けないッッッ!!!」

 

 

 

お互いが、勝ってみせると叫び合う。それは、叫び声が共鳴し合いリザフィックバレーのリザードンの形をした岩をびりびりと響かせるほどの威力を持っていた。

ヒナの周りにリザードンがほのおのうずを巻き起こす。中心にいるヒナが周りに起きたほのおのうずに巻き込まれる前に波動を使って大きく飛び上がった。ほのおのうずはいくつかが巻き込まれて大きな炎の竜巻となり、そして消えていく。その攻撃力にサトシのリザードンが誇らしげな鳴き声を上げ、その言葉が分かるルカリオ達が微妙そうな表情で彼を見た。

 

―――――飛び上がったヒナを追いかけるかのように、リザードンも黒い翼を広げて飛び上がる。そして空中にいるヒナに抵抗されないよう抱きつき、ちきゅうなげを放とうと回転し始めた。ヒナは翼がなく、飛びまわることもリザードンの攻撃を避けることもできない。でも接近しているリザードンに攻撃することは可能だ。抵抗できないように抱きつかれた腕にかみつき、その痛みでゆるんだ拘束を抜けてリザードンに攻撃しようとする。ヒナの攻撃を妨害しようとリザードンも抵抗し、結局はちきゅうなげがちゃんと発動することなく二人とも地面に叩きつけられ砂煙が舞った。

 

その威力にヒカリが思わず両手を口元で覆い、アーロンが止めるのを分かっているはずのルカリオ達が飛び出て行こうとしたぐらいだ。…もちろん先程と同じようにギラティナたちは仲良く地面に沈んでいたのだが。

 

 

 

 

『ッッッ!!!!グォォオッ!!!!!』

 

「ッフゥゥウ!…ハァァアアアッッ!!!!」

 

 

 

 

―――――それでも、ヒナたちの攻撃は止まない。

 

 

 

砂埃の中からヒナと黒いリザードンが飛び出して接近し、攻撃を開始する。かえんほうしゃと波動がそれぞれに当たりそうになる。地面に叩きつけられたことで多少は怪我をしているはずのヒナとリザードンはお互いだけを見て、叫びあうのだ。怪我をしても気にせず、周りがこちらを見て心配そうな声を上げても何も聞こうとせず――――――負けたくないと、勝ちたいと望んで咆哮し合うその姿はまさに獣のようだと皆が感じていた。

 

 

 

 

だが、炎が揺らめき、青い輝きが飛び交うのを、アーロンは渋い表情で見つめていたのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「彼女は…なんていうか、凄まじいな。まるでポケモンのようだ」

「サトシの妹ですから…って言わないと現実が見れなくなってきちゃった…」

『ポチャァ…』

『あー…これ絶対フシギダネ達がなんか文句言うでしょ…』

『それだけならまだマシだろうな…何も知らないトレーナー達がヒナを見て何をいうのか…俺は現実を見たくない』

『しっかりするでしゅよ。アーロンの弟子』

 

 

 

「……いや、ヒナはちゃんと人間だよ」

 

 

【え?】

 

 

アーロンが言った一言に、その場にいたリザードン以外の皆が絶句する。あのリザードンの燃え盛る炎を躱す身体能力と地面を陥没させたほどの馬鹿力を見て何を言うんだと言いたいように、一瞬皆が開いた口がふさがらない状態に陥った。

だがアーロンと昔からの仲であったギラティナが先に我に返り、叫ぶ。

 

 

『おまっ…お前何言ってんの!!?あの光景見た全員がヒナちゃんの事ポケモンか何かだって疑うレベルには強くなってるっていうのにっ!?』

「あれは、波動の能力を最大限使用してできることだ」

 

 

『グォォオ?』

『…っ…い、いや…波動は通常ヒナのような攻撃性を持った力を使うことができないはずだが…まさかっアーロン様!!?』

 

 

「言いたいことが分かったようだねルカリオ…波動は人やポケモンにとっての命のエネルギーと同等なんだ」

 

 

 

アーロンが言った言葉を簡単に説明するのなら、ヒナの波動は身体を血液のように循環してアドレナリンのような力を出し、異常な身体能力を生み出したり馬鹿力を生み出したりすることができるようになったということ。

あの馬鹿力は身体から流れる波動で攻撃しているからにすぎず、その力のコントロールはヒナが身につけているグローブがあって初めてできることだと言ったのだ。波動が消耗すると命の危険性が伴うのではないかとルカリオは焦りの色を浮かべるが、アーロンは大丈夫だと言った。ヒナにもこのことは説明してあるし、波動を使用しすぎたデメリットについても理解しているということを。

 

 

 

 

「ヒナはちゃんと人間だよ。…もちろん私も――――――そしてサトシ君もね」

 

 

 

サトシについては、予測に過ぎないが…その波動の力を無意識の本能によって使用しているからこそ人外的な力を生み出しているにすぎず、結局は皆同じ人間なのだとアーロンは言ったのだ。

 

 

 

「人間が、ポケモンに敵うはずはないのに…強さを願った人間たちは技術を生んだ。戦争を…呼び込んだ」

『アーロン…』

「私たちのこの波動も、その一部にすぎないだけだよ…人間がポケモンと並び立つために波動を利用した…」

 

 

『…ですが、それでもアーロン様は強い』

「ルカリオ…?」

『人間だからなんです?俺たちはその力に一度でも勝ったことはない…だからこそ、波動使いのアーロンの一番弟子として誇りに思います――――これからも、ずっと!』

『そうだよアーロン。俺達にとってはアーロンも、サトシ君も最強なんだ』

「そうね!…それに、リザードンはサトシが最強じゃないとやってられないみたいな表情をしてるし」

『ポチャ!』

『グォォオオオオッ!!』

『ミィ…結局は人外で落ち着くんでしゅね…』

 

 

 

「何だかよく分からないが…とにかく凄いと言うことだけは伝わったよ」

 

 

 

 

ジークはアーロンの言葉を深く理解していないが、それでも彼らの絆はちゃんと理解した。

アーロンが言った言葉をよく分かっていたのは、当時よく行われていた【戦争】を知るギラティナとアーロンのみであり、そのために波動を利用したのだと懺悔のような口調で話すアーロンを咎めるかのように、それは違うのだとルカリオが叫んだのだ。その言葉にギラティナは頷き、ヒカリはサトシ達が人間だと言う言葉に納得できないような声を出してからサトシのリザードンを見て苦笑し、ポッチャマも同じような反応を見せる。サトシのリザードンは、サトシが最強じゃないと言われて少々不機嫌だったが、それでも現実サトシは人外じみているから波動を使うだの使わないだのどっちだっていいだろ!と言うような反応を見せる。

そして周りの反応を見て、シェイミは小さくため息をつき、ヒナたちの戦いを見つめていたのだった。

 

 

 

もちろんその間にも、彼らから言われた言葉を理解したアーロンは小さく微笑んでいたりするが…。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

――――戦いは、ある意味終わりに近づいていた。

 

 

それでも、彼女たちの声は止むことはない。その激しく燃え盛る炎も、青い波動の力も止むことはない。

 

 

 

 

 

『グォォオオッッ!!!!』

 

 

「負けないッッ負けたくないッ!!!」

 

 

 

 

 

その瞬間が、訪れた――――――――――――。

 

 

 

 

 

リザードンがドラゴンテールを使ってヒナの腹に向かって攻撃し、ヒナが波動でリザードンの腹に向かって攻撃する。両者の攻撃はお互いを吹っ飛ばし、壁へと激突するほどの強さを持っていた。土煙が舞い、壁の一部が衝撃によって崩壊する。周りにいたリザードン達が、ヒカリ達が緊張の面持ちで見守っていた。

 

 

 

 

土煙が舞う双方の壁から現れたヒナと黒いリザードンはふらつかせながらも歩みを止めず、お互いが近づいていく。また攻撃し合うのかと一瞬の静寂が起きた瞬間…だった。

 

 

『グォォオ……』

「ハァ…ハァ…」

 

 

ヒナとリザードンが同じ瞬間、同じように倒れた。手と手が触れ合うような距離で倒れ、空を見上げて乱れる息を整えていく。戦いができるほどの力を彼女たちはもうもっていなかった。すべてを出しあい、消耗し合ったのだ。そして倒れて初めて分かったこと。ヒナたちが見た空はとても青く…そして涼しげだと思えたのだ。

 

 

まるで、マサラタウンにいた頃のようだと―――――何も言わなくてもヒナたちはそう思っていた。

 

 

 

 

「ねえ、リザードン…」

『……グォォ』

 

 

「……うん。仲直り…しよう?一緒にまた、遊ぼうね」

『グォォオっ』

 

 

 

 

リザードンの拳と、ヒナの拳がぶつかり――――そして笑い合った。

 

 

 

 

 

小さい幼女と色違いのヒトカゲが一緒にいて、幸せだったあの頃のように…

 

 

 

 

 

彼女たちは、楽しそうな声を上げて―――――――空を見上げて笑ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 











倒れ込んで笑い合う彼女たちを見て良かったねと涙を浮かべるヒカリ達やリザードンのリサがいたりする中――――――――――。




「そういえば…リザードンはいるけど…ピチューはどこ?」
『ポチャァ?』
「ああ、それなら彼が連れていったわよ」
『彼…というのは一体誰だ?』
「彼よ」





「やあ」


『いやどっから現れたっ!?』







to be continued…?




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