マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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第二百六十七話~旅は波乱万丈である~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒナにとってアーロン達の旅で何かが変わると信じてはいた。リザードンが離れて行ったことに対するショックが大きくて感情が動かなくなってきてはいたのだが、それでもアーロンの言った言葉と、これからの旅で何かが変わるとは思っていたのだ。

 

 

 

だが、ヒナは何も知らない。アーロン達がどんな旅をしてきていたのか…その旅の大変さのことを一切何も。

 

 

 

 

 

 

 

 

『アーロンがいる時点でこうなることぐらい予想はついていたけどさぁ!これ酷くない!?』

『貴様等も暴走していたからこうなったんだろうが!』

『ミィィ…ミーは何もしてないでしゅよ!!』

『ポチャポチャ!!!』

『俺ばっかり悪者扱いするなって!ヒナちゃんとアーロンを一緒にしちゃまずいっていうのに!というか、ヒナちゃんの怪我…!』

「落ち着きなさい!!とにかく、アーロンさんとヒナちゃんを探すわよ!!」

『波動で探そう…こっちだ!』

 

 

『アーロンに会ったら一発殴る!』

「ティナ…実際に前にやってアーロンさんに返り討ちにあってなかった?」

『ポチャァ?』

『ああもう!今度は返り討ちにあわないようにするよ!』

『ミィ…それ死亡フラグでしゅ』

『話していないで早く来い!!』

 

 

 

 

 

旅は波乱万丈。兄であるサトシの旅と同じように、ヒナの旅もかなり平和とは程遠いと言えるかもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――それが起きたのは、しばらく前まで遡る。

 

 

 

 

ヒナの怪我がまだ完治していないこともあり、しばらくはヒナの体力にあわせて旅をしようということになった。

 

歩けないほどではないが、ヒナは身体中にある火傷で負った傷がまだ治っておらず、身体に巻かれた包帯が目立つ。特に右目のあたりが重傷だったため、ほとんど視界は左で見るしかない。

その怪我の酷さもリザードンやヒナの心に傷を負わせた原因であるため、早く治れとばかりにルカリオやシェイミは毎日技を使って癒し続けていた。

 

 

 

 

そんなある日の、とある森の中で起きたこと。

 

 

 

 

 

 

 

『ポッチャァァッ!!』

『ミィィ!これはミーのでしゅよ!ポッチャマの分はないでしゅ!!』

『喧嘩はするな。お菓子ならまだたくさんあるだろう』

『ポチャポチャ!!!』

『ふふん!これはミーのでしゅからね!』

「…ねぇティナ。だいたい想像つくけど、何て言ってるの?」

『シェイミに取られたのがムカつく!だってさ。あ、ヒナちゃん。いつものことだから気にしないでこっち来てお菓子食べなよ!今のヒナちゃんは体力つけなくちゃいけないんだからさ』

「…うん」

『ほら、これなんて美味しッブファ!!!』

 

 

 

 

「ティナ、その笑顔気持ち悪い」

『だからって何も殴らなくてもいいだろアーロン!!』

「おや、昔から私はこうだったろう?ティナがちゃんと素直になれば殴らないさ」

『理不尽すぎるから!!』

 

 

 

「…ヒナちゃん、気にしないで」

『そうだぞヒナ。いつものことだ』

「…うん」

 

 

 

ポッチャマとシェイミ、そしてギラティナとアーロンが乱闘にも似た喧嘩を始めたというのに、ヒカリとルカリオはまたかというかのように小さくため息をついてヒナにお菓子を渡して気にするなと笑顔で言う。

一応言っておくとこれはヒナがアーロン達の旅についてきてほぼ毎日起きている喧嘩だった。だがそれはポッチャマとシェイミの場合であり、今回はギラティナとアーロンも混ざっての喧嘩となっていたのだった。

 

リザードンが離れて行く前のヒナならば逆に気にして、盛大にツッコミをいれているかもしれないが、今のヒナはただ渡されたお菓子を見つめて感情の入っていない一言しか呟かない。

 

周りが乱闘で凄まじい轟音を響かせるなか、今にも消えてしまいそうなヒナの小さな呟き声が聞き取ることができたのは、ある意味奇跡かもしれない。そんな元気のないヒナに心を痛めたヒカリとルカリオはいまだに終わらない喧嘩を見てもう一度ため息をついたのだった。

 

 

 

「ほらポッチャマ!シェイミ!喧嘩は止めなさい!」

『アーロン様!ギラティナで遊ぶのは程々にしてください!』

 

『ヒカリ!これは喧嘩に入らないでしゅよ!ポッチャマの一方的ないじめでしゅ!!』

『ポチャポチャァァ!!』

『ちょっとルカリオ!今聞きたくない単語が聞こえたんだけど!?』

「だいたい合っているよティナ」

 

 

 

 

この会話にキレたのは、二匹のポケモン。…いや、一匹はポケモンの姿をしてはいないため【一匹】と言っていいのかわからないけれど、それでも彼らはポケモンでありキレていたことに変わりない。ポケモンだからこそ、対象である一匹と一人に狙いを定めた。

 

 

 

 

 

 

 

『ポッチャァァ!!』

『アーロンお前さ…俺だって伝説なんだからアーロンに攻撃ぐらいできるからね!!』

 

 

 

 

『止めろ!ヒナに当たるだろうが!!!』

 

 

 

ハイドロポンプとはどうだんを見て、その軌道の近くにヒナがいると気づいたルカリオがキレて両手ではどうだんを作り出し、両方の攻撃を相殺するために放った。そのお陰でより大きな地響きと爆発が起き、木々で休んでいたポッポたちがその余波を感じて恐れて飛び立つ。

そしてルカリオが攻撃をしてきた二匹に説教をしようと歩き出した―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『リングァァァアッ!!!!!』

『バンギャァァァアッ!!!!!』

 

 

 

「え、リングマにバンギラス!?何でこんな森のなかにいるのよ!?」

『ポ、ポチャ…!』

『ミィィ…完全にキレているでしゅよ!!』

「いや、これは…」

『クッ!貴様らもヒナを攻撃するつもりか!』

『…いや、こんな状況で言うことじゃないけど俺ヒナちゃんに怪我を負わせる気なかったからね!』

『ポチャポッチャ!!』

「今いってる場合じゃないでしょ!」

『いやだからこんな状況で言うことじゃないって言った…うわ危なッ!!』

 

 

 

『ギャァァアアアアアアアッッ!!!!』

『グァァアアアアアアアアアアッッ!!!!!』

 

 

 

呑気に会話をしていることに余計怒ったのか、リングマとバンギラスは両方ともはかいこうせんを放とうとしてくる。

通常ならばここでアーロンが止めようと自ら動くのだが、何故か動かず…しかも空からオニスズメやオニドリルの群れが来たことによって場は混乱する。

 

 

逃げたり攻撃したりを繰り返していくうちに、気がつけばギラティナ達はアーロンとヒナがはぐれた状況になっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――それが冒頭で起きたこと。そしてルカリオの波動で探そうとするのだが、オニドリルとオニスズメがまた襲ってくるため、なかなか二人のもとへたどり着くことが出来ずにいた。

 

 

 

 

 

「ヒナちゃん…!」

『ポッチャマァァ!!!』

『そこを退け貴様らァ!!』

『ミィィ!!』

『ああもう…こうしているうちにヒナちゃんに何かあったらお前ら許さないからね!!』

 

 

 

 

旅は波乱万丈…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らの旅についてきたヒナの心はまだ、動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 


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