兄はフラグを叩き折るのに疲れてきたらしい。
こんにちは兄のサトシです。バトルフロンティアに向けて旅に出ているんですが、何やらそれどころじゃない様子です。
ロケット団を変えていったため、原作通りの騒動は起きないはずだったのに、今回は何故か偶然卵をみた関わり合いのない知らない悪党が来て卵を盗もうとしたり情報を教えてしまったせいで、ポケモンレンジャーのこととマナフィの卵について必然的に知ることになってしまった。
マナフィについては前世で見た原作の知識なんかで知っていたし、主にロケット団がきっかけで問題が大きくなっていったはずだったから大丈夫だと思ったんだけどな…。それにやってきた最初の悪党は吹っ飛ばすことができたし。
だが次にやってきたのはアクア団なんかに出てきそうな海賊の恰好をしたやつら。確か名前は海賊ファントム。
そいつらはしつっこく追いかけてきて卵を狙い、その騒動のせいで結果的にハルカの手の中でマナフィが生まれることができた。まあ俺から見るとこれで原作回避はできなくなったも同然だと思うけどな。
ジャッキーさんから一度、水路の方でお別れだと言われたのだが、ハルカ達は納得できず、そしてマナフィのハートスワップによる能力によって結局はついていくことになった。
だからとりあえず、俺のやるべきことはただ一つ。その海賊ファントムたちのせいでハルカ達に危険な思いをしてしまう可能性があることが俺にとって危惧するべきことであり、なるべく最悪の形にならないように行動し、海底神殿までの道を行くということだ。
…だけどこいつら以前のロケット団並みに面倒すぎるだろ。一応海底の神殿までは襲いかかってこなかったけれども。
神殿について、マナフィによって案内された奥の部屋。そこに来たのは海賊ファントム。海の王冠を狙ってきたらしいが、その王冠の一部を取ろうとしてマナフィがやめろと引っ張り合い、そして取り上げてしまった。
…そのせいで王冠の力が失われ、マナフィは泣き、ハルカ達を危険な目にあわせていくこの目の前の髭を見ていたらイラッとした。
何で自分の欲に駆られて海底神殿の海の王冠を取ろうとしてるんだ。何でマナフィやハルカ達に危険な目にあわせようとしているんだ。この目の前にいるファントムが…髭がムカつく。そんな気持ちが高まって、思わずやってしまった。
「おい髭」
「なんッグフォッッ!!!」
「サ、サトシ君!?」
『マナァ…?』
俺は未だに海の王冠である宝石をすべて抜き取ろうとしているファントムに近づいて殴りかかった。いきなりの行動に避けられなかったファントムは俺の攻撃を受け一回転して地面に沈む。そしてその様子を見てしまったヒロミさんとマナフィが驚いている。タケシはまた始まったかという悟った表情をしていて、ハルカとマサトはやってしまえという感じで俺を応援していた。
そしてピカチュウはファントムに殴りかかったことに対して一瞬驚いていたが、すぐに理解して俺の肩につかまり、電撃をビリビリさせていて攻撃態勢を整えた。
そして肝心のファントムだが…予想よりもタフらしい。
一応俺、はじまりの樹で会ったレジロック達を沈めるくらいの力を出したんだけど凄いな。
俺に近づき怒鳴りかかってくるファントムに対し、俺は冷めた目でそれを見つめていた。
「何をする小僧!!」
「…それは俺が言いたいんだよ。お前こそマナフィの大事なもんを奪おうとしてんじゃねえよ!!」
『ピカピッカァ!!』
「グフォッッ!!!」
『ナニヤッテンダナニヤッテンダッ!!!』
俺がファントムに回し蹴りをし、そのダメージで宙に浮いた時に、隣りにいたピカチュウがアイアンテールで攻撃をして一気に地面に沈めてやった。今度は起き上がることができず、ファントムは気絶してしまったらしい。
その結果、聞こえてきたのは王冠が抜かれているために起きた水の轟音、ペラップの鳴き声であった。
そして足音がしたと思ったらジャッキーさんがこの異様な状況に驚愕しつつも苦笑をして聞いてきた。
「えっと…何があったの?」
――――――――まあそんなわけで。
俺たちは無事そのまま海の王冠を元に戻すことができて、神殿は無事であった。ただしそれでもあきらめないファントムにマナフィがカイオーガ達を呼んで吹き飛ばしていったのは良いオチだったと思っている。
「私を…忘れないでね、マナフィ」
『…マナ……ハ…ル…カ……好きィ!!』
「マナフィ…」
船の上で俺たちはハルカとマナフィの別れを見守っていた。全部がうまくいって、本当に良かったと思っているし、もしかしたらまた会えるのではないかとも思っているから、大丈夫だろう。
「またな…マナフィ」
『…ピカッチュゥ』
兄の心境。
フラグがそろそろ消えてなくならないかな…