マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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サトシのおかげでやるべきことが見つかった。



サトシのおかげで力を手に入れることができた。






第二百六十話~秘めたる者には鋭き牙を~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――嫌な予感がした。何かが起きるのではないかという、嫌な予感が…。でもその本能に従わず、この場所へ行ってしまったのがそもそもの間違いだったのだろう。

 

 

 

 

「どいつもこいつも…サトシと旅するといつもこうよね…」

 

 

 

 

 

カスミはその日の行動を後悔していた。

 

 

 

 

「これってまさしく絶体絶命…なの?」

『デネデネ?』

 

 

 

「そんなわけないわよ。むしろ私がいるんだからそうはさせないわ」

 

 

 

 

 

 

カスミたちが来た場所はカロス地方のとあるビル。

 

そこで水ポケモン専門のショーを行うということをカスミたちは知り、待っている間ヒナたちのことで心配になり不安になってしまうぐらいなら少しでも気を紛わそうと考えてカスミはユリーカをポケモンショーに連れていくことにしたのだ。

でもその行動自体がそもそもの間違いだったようだ。気がつけばカスミとユリーカはビルの中で黒服の男たちと…その男たちが出した大きくて強そうなポケモンたちに囲まれていた。もしかしたらこのショー自体が罠だったのかもしれない。何故そのような罠が仕掛けられているのかも、どうして襲われてしまったのかもカスミたちにはわからない。

ただ言えることは、水ポケモンはカスミの大好きなタイプであるし、ポケモンのショーならばユリーカも好きだということ。だからこそ、そのショーの話を聞いて行きたいと思うのは確実ともいえた。そしてビルにいる人間もすべて奴らの仲間なのだろうとカスミは分かった。まず出入り口に入った時点で視線がこちらに集中してきたのだ。その視線の鋭さを感じ取ったカスミは嫌な予感が的中しているのではと考える。そういった観察力は全てサトシと行動していて身についた力であった。

 

そして、何かがおかしいとサニーゴをボールから出すのと同時にボスゴドラのはかいこうせんに襲われたのだった。そこから始まった光景はユリーカやデデンネにとってまさに迅雷風烈と言えるだろう。

 

 

ユリーカが周りの状況を理解することができたのは、相手の奇襲によって襲いかかったはかいこうせんをサニーゴのバブルこうせんで相殺し、大きな衝撃音を感じ取った後だった。

 

第三者から見ればユリーカの言うとおり圧倒的に不利な状況だと思うはずだ。ユリーカやデデンネ自身も絶体絶命だと不安になっていた。

 

だがカスミはそんな不安などない。むしろ集団で襲いかかってきた奴らを見て鼻で笑っていた。最初の奇襲でさえ成功しなかったのだからその強さは計り知れている。だが黒服を着た男たちは奇襲が成功しなくても慌てることはない。むしろ包囲網を徐々に迫らせて来ようとしているぐらいだ。

 

 

それを見てカスミはため息をついた。

 

 

 

 

「…もしかしてアンタ達ってヒナちゃん達を連れ去った仲間?目的は何なのよ」

『サニ!』

「…何も言わないね」

『デネデネ』

「沈黙は肯定…ともいえるわよ。とりあえずアンタ達は私達を襲おうとしている。そしてヒナちゃん達を連れ去った仲間でもあるってことよね」

『サァニ…!』

 

 

何も言わない黒服たちはこれ以上カスミの話を聞こうとしないのか、一斉にポケモン達に向かって指示を出した。

 

 

 

「逃げないと…でも逃げれないよ!」

『デネデネ!』

 

 

「……………………」

 

 

 

その一斉攻撃にカスミは眉をしかめる。囲んできたポケモンたちが大技を撃とうとしているのか少々時間がかかっているのだが、その間の気味の悪い威圧感に恐怖を覚えたユリーカがカスミの裾を握りしめ顔を青ざめる。もちろんバックの中にいたデデンネもユリーカと表情は同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私さぁ…そういうの――――― 大 っ 嫌 い な の よ ね 」

 

 

 

 

 

 

カスミの呟き声の後放たれた数々の大技。はかいこうせんはもちろん、ギガインパクトやかみなり、だいもんじやぜったいれいどなど、一撃当たれば死んでしまうというような技を彼らは使用したのだ。その卑怯ともいえる手段と、大人数でまだトレーナーではない幼い少女と一人のトレーナーを狙った行動がカスミは許せなかった。許せないからこそ、怒ったのだ。

 

 

 

サトシのように、笑いながらも―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

爆風と轟音があたりに響き渡る。この中心に居たのがカスミたちではなく一般人だったなら、間違いなく死んでいただろう。それほどまでに強い攻撃の数々が襲いかかってきていた。

だが、黒煙が晴れ…見えてきたのは―――――――カスミたちの無傷な姿と、一匹の黄色いポケモンがカスミの目の前で首を傾けている姿だった。

 

 

「コダック…?」

『デネ?』

 

 

サニーゴをボールに戻し、コダックに変わっていた状況にユリーカ達は茫然としながらも呟く。

 

 

――――ユリーカとデデンネはカスミのコダックのことを知っていた。一度紹介されて会ったことがあるが、その時に見たコダックの印象はハリマロンのようなトラブルメーカーであるということ。バトルではあまり頼りがいがなさそうだなと…そう密かに思っていたのだ。でも今カスミとユリーカ達を守るかのように立つコダックの姿はいつものようなおとぼけな感じはしない。首を傾けてはいるが、それは力を使っているからだとユリーカとデデンネはすぐに理解した。目の前にいるコダックはピカチュウのようだと…そう感じたのだ。

 

 

 

 

 

「コダック。手加減なんていらないわ。全部ぜーんぶ…やっちゃいなさい!」

 

『…コパァ!!』

 

 

 

 

 

「っ」

 

 

 

 

コダックの一鳴きによって周りが変化していく。カスミとユリーカとデデンネ以外の空中が歪む。そして無重力状態のように何もかもが浮き始める。人間もポケモンも、その部屋にあった家具などもすべてが浮き上がり、うまく動かすことができなくなった。窓ガラスがガタガタと揺れ、次第にヒビが入り始める。部屋がぐらぐらと揺れ動く。これが全部コダックの力なのかと、ユリーカは圧倒された。

そして、まるで宇宙に来ているかのような光景にユリーカとデデンネの目が輝く。

 

 

カスミは笑いながらコダックに向かって言う。

 

 

 

 

 

 

「…コダック、サイコキネシス」

 

 

 

『ゴパァ!!』

 

 

 

 

 

 

 

――――――――その瞬間、張りつめていた空気が爆発した。中心にいたカスミやユリーカ、そしてデデンネとコダックの周りで実際に爆発のような衝撃波が起きたのだ。その衝撃に巻き込まれたポケモンたちは一撃で倒れ込み、トレーナー達も壁に叩きつけられ、呻き声を上げる。むしろよく壁ごと吹っ飛ばされていかなかったものだと言えるだろう。そのぐらいとても強い力のこもった攻撃だった。ユリーカとデデンネは通常とは違うコダックの強いサイコキネシスに目を白黒させていた。

 

 

 

 

「…………すごーい」

『………デ、デネ』

 

 

 

 

ほとんど感情のこもってない声でユリーカとデデンネは思わず呟いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フン!バトルに卑怯な手を使ったんだから、これぐらいは許されるでしょ!」

『コッパァ…?』

 

 

 

 

 

―――――力を使った後のコダックはいつも通り首を傾けて、頼りなさそうな表情でカスミを見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえカスミ!この後どうするの?」

『デネデネ?』

「そうね…とりあえずサトシに連絡ぐらいは入れた方が良いかもしれないわ」

「あ!あとジュンサーさんにも!!』

『デネデネ!』

 

 

 

 

戦闘不能になったため、コダックをボールに戻したカスミは、倒れた黒服の奴らを縛っていく。そして縛り終えた後、カスミたちはこの状況をサトシに伝えた方が良いかと話し合っていた。

 

 

 

 

「っ」

 

 

 

 

「あ!逃げた!!」

『デネ!!』

「待ちなさい!!!」

 

 

 

だが、その隙を狙われたのか、いつの間にか縄を解いた一人の男が逃げていくのを見つける。扉に向かって走ってるため、外へ逃げようとしているのだろう。

 

 

もしものことを考えて捕まえなければとカスミがボールを握りしめた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と面白いことしてるじゃねえか」

『ピィカッチュ』

 

『ギュ…ギュルルルル…』

 

 

 

 

 

 

 

「アンタどっから出てくんのよ!?」

「わぁ!見たことないポケモンだ!」

『デネェ!!!』

 

 

 

扉前の地面の空間が切り裂かれたせいで逃げることができなくなった黒服の男と、そいつを追いかけていたカスミたちが見たのは切り裂かれた空間からやって来たポケモンとサトシの姿。ポケモンは身体が大きいせいか裂けた空間から見えるのは頭の部分だけだ。その頭に乗るのがサトシであり、腕を組んで仁王立ちでいる姿には威圧感が込められていた。そしてサトシの肩にはいつも通りピカチュウが乗っている。電撃をビリビリと放っているせいか、頭だけ出ているポケモン―――――――パルキアが怯えてしまっていた。

 

 

その常軌を逸した姿にカスミはまたかとため息をつき、ユリーカとデデンネは目を輝かせてそのポケモンを見る。そして逃げようとしていた黒服の男は扉から逃げることができないと理解して後ずさった。でもそれを許さないのがサトシである。

パルキアの頭から地面へ降り立ったサトシは無表情のまま男の目の前に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの女の居所話してもらうまで―――――逃 が さ ね え ぞ ? 」

『ピィカッチュ!』

 

 

 

 

 

「…どっちが被害者なんだか。はぁ、全く仕方ないわね」

 

 

 

 

 

 

「わーい!見たことないポケモンさん!!あなたは何でそんなに怯えているの?」

『デネデネ?』

『ギュルルルゥ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――ある意味、混沌とした状況が出来上がった瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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