マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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――――何があっても、恐れずに前を向いて歩け。






第二百五十一話~兄はシャラジムに挑む~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?秘伝書?」

『ピィカッチュ?』

「そうなの!…お爺ちゃんたらシャラジムに関する秘伝書を持っているみたいなんだけど渡してくれないのよ…」

『バゥウ…』

 

「ふん。まだまだお前は甘い!」

 

 

こんにちは兄のサトシです。シャラジムにようやくたどり着いたのですが日が暮れて、今日はバトルはせずに、シャラジムに泊まることになりました。

 

夕食の後、のんびりと温かいモーモーミルクでも飲みながら話していた時にコルニからこのシャラジムのジムリーダーに受け継がれるという秘伝書の話をしてくれた。俺たちの近くで座りながらも話を聞いていたコルニの祖父のコンコンブルさんが少し鼻で笑いながらコルニとルカリオに向かって甘いと言った。

ジムリーダーについては旅をしてきていろんな人に会って関わってきたけれど、こういう代々ジムリーダーとなるところもあれば、新しく始まるジムもある…ジムリーダーにもいろいろあるんだなと思いながらも、俺はシトロンを見た。シトロンは微妙そうな表情で俺を見てから肩をすくめていて、おそらくコルニ達の話を聞いて大変そうだと思っているのだろう…少しだけ苦笑していた。

コルニ達は秘伝書を貰えないことに対して少し悔しそうだったが、それでもいつかは貰うのだと諦めてはいない。もちろん継承者についてもだ。

その様子にコンコンブルさんは何か悪巧みでも思いついたかのような表情になって…コルニ達に向かって言う。

 

 

 

「ウオッホン!…コルニよ、お前がそこまで言うのなら秘伝書を渡しても構わない」

「本当!お爺ちゃん!!」

『バゥゥ!!』

「ただし!ここにいる挑戦者、サトシとの勝負で勝つのが条件だ!!トレーナーに負けているようでは渡せるものも渡せんからな!」

「分かった…絶対に負けないんだから!!」

『バゥウッ!!』

 

「勝手に決めやがった…」

『ピィカッチュ…』

「ま、まあコルニなら立派なジムリーダーになれるでしょうし…サトシに負けたとしても大丈夫な気がするような…」

「セレナ、それは言ってはいけませんよ…いえ、勝負と言うのは最後まで分かりませんからどうなることやら…」

「コルニもルカリオも燃えてるね!」

『デネデネ!』

 

コンコンブルさんの言葉にコルニとルカリオは笑顔を浮かべて余計にやる気を出したようだった。

まあやる気を出すのは良いとは思ってはいるのだが、こういうジム戦での真剣勝負で勝ち負けに対する条件を付けられるのは何だか微妙な気がした…。今まで旅をしてきた時に俺もピカチュウもこういう相手が条件を決めて負けられない勝負をしたというのは何回も行った経験があるから良いのだけれども…それでも少しだけ微妙な気持ちになって苦笑してしまった。

 

…まあ、全力で勝負することになるのは確実だろうから文句はないけどな。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

そして翌日、シャラジムにて始まったのは俺とコルニとのバトル。

3対3のポケモンバトルらしく、とりあえずかくとうタイプ専門のこのシャラジムではひこうタイプが有効と考えてケロマツには残念ながら見学してもらうことになった。セレナたちが観戦している場所にいてもらい、バトルを見て学べるところがあれば学んでもらう。とにかく俺たちは全力で勝つことを決めて、ボールを握りしめた。

 

 

「オッホン…それでは、ジムリーダーコルニ対挑戦者サトシによるポケモンバトルを始める…試合開始!!」

 

 

「燃えろ!コジョフー!!」

『ジョッフゥ!!』

「ルチャブル、きみに決めた!」

『チャブゥ!!』

 

コルニがコジョフーをボールから出し、俺もルチャブルをボールから出した。

コルニはルカリオ以外のポケモンを持っていることはジムリーダーだと聞いていた時からなんとなくわかってはいたが、今目の前で見るとやはりわくわくしてしまう。どんな技を出すのだろうか…一体どういう動きをしていくのだろうかと…。ちなみにルチャブルが出た時点で観戦席にいたケロマツが少しだけ不機嫌になっていて、ルチャブルはそんなケロマツをちらりと見て笑っていたりする。まあそんな仲の悪い二体だけれども、バトルすることについては真剣に取り組むから大丈夫だろうと俺とピカチュウは微笑んだ。

 

「行くよコジョフー!…私たちがシャラジムに戻ってきてから修行した成果を今サトシ達に見せるのよ!!」

『コッフゥ!!!』

「ルチャブル、お前にとって初のジム戦になるけどいつものように頑張っていこうぜ!」

『チャブゥゥ!!!』

 

 

「先手必勝よコジョフー!はっけい!!」

『ジョフゥ!!』

 

『ルチャ…!!』

 

「え、嘘…躱さずにわざと受けた!?」

『ジョフゥ!?』

 

「それがルチャブルの信念だからな!…ルチャブル、とびひざげり!」

『チャブゥ!』

『ジョッフゥゥ…!!』

「コジョフー!!?」

 

コジョフーのはっけいの指示を聞いて、俺はルチャブルを見る。

ルチャブルはただ俺を見てから何も言わずに頷いていたために何がしたいのかすぐに分かり、ルチャブルの好きなようにさせた。ルチャブルは最初コジョフーの技を受けて、少しダメージを食らったものの、それでも良い技だと笑顔で言いながら両手を広げてまだ戦えるというような仕草をする。

そんなルチャブルと何も指示を出さなかった俺に対してコルニとコジョフーが驚いていた。まあそれは仕方ないことだろう…コルニと一緒にいた頃はルチャブルをゲットする前だったし、俺の基本的なバトルスタイルは主にスピード&攻撃なのだから。俺たちと少しだけ一緒にいてバトルをし…俺のバトルスタイルを知っていることや、ルチャブルの信念や好んで行う独特のバトルスタイルなどがあるということを知らないのだから驚くのは当然だ。…でもそのせいで動揺したのか、ルチャブルのからてチョップをもろに受けてしまいコジョフーはダメージを受けて少しだけ身体をふらつかせる。

 

コルニは冷や汗をかきながらも俺たちを見て好戦的な笑みを浮かべていた。

 

 

 

「さすがサトシね…本当に強い!…でも私たちは絶対に負けない!!」

『ジョッフゥ!!』

「そうだぜコルニ!最初から諦めてちゃ面白くねえからな!」

『ルッチャァ!』

 

「コジョフー、スピードスター!その後とびひざげり!」

『ジョフゥゥウ!』

「ケロマツのあわ&みずのはどうを真似たのか…!ルチャブル、回転しながらからてチョップで迎え撃て!」

『ルチャァァ!!』

 

 

コジョフーの動きはまるでケロマツがあわで周りを見えなくしつつも後から放った技の威力を高めるように見えた。

スピードスターでルチャブルから姿を見えなくさせつつも、まるでスピードスターに守られながらとびひざげりを放とうと動いているように見えたのだ。俺はルチャブルに向かってジャンプしてから回転してもらいからてチョップで接近したコジョフーを叩き落とす。落とされたコジョフーを見てコルニは早く指示を出さなければと慌てていたが、コジョフーは立ち上がるだけで精一杯のようだ…だからこそあの一撃を食らわせる。

 

 

「…ルチャブル、フライングプレス!」

『ルッチャァァア!!』

 

 

「コジョフー!避けて!!」

『コジョ……ジョッフゥゥウウッッ!!!?』

「コジョフー!!!」

 

 

「…コジョフー戦闘不能、ルチャブルの勝ち!」

 

 

「よしやったなルチャブル!」

『チャブゥ!』

 

 

「やったわ!これで一勝ね!」

「ですがコルニはあのメガルカリオがいますし…まだ分かりませんよ…!」

「サトシ頑張れ!えっと、コルニも頑張れ!」

『デネデネ!』

「ユリーカ…まったく…」

「ユリーカの気持ちも分かるわ。コルニも私たちと一緒に旅してきた仲間だもの……でも…サトシ頑張れ!」

『…ケロ!』

 

 

コジョフーを迎え撃ったルチャブルはまだ空中にいる。そのため空中のまま回転してもらいつつもフライングプレスの体制を整え…そしてルチャブルにとっての大技となっている改良したフライングプレスを放った。

一勝したことでルチャブルは次に必要になった時まで待機してもらおうと決め、俺は懐からボールを出す。でもボールから戻される前に、ルチャブルはケロマツを見て拳を作り、自信満々な表情で勝ってやったぞと言っているかのような仕草をした。その仕草にケロマツは呆れつつもよく頑張ったなと言うかのようにケロマツ自身も拳を作ってルチャブルに向かって突き出す。それを見た俺たちは笑みを浮かべつつも次の試合をするために行動した。

 

 

「行くわよ、ゴーリキー!」

『リッキィィイ!!』

「ありがとうなルチャブル…次はヒノヤコマ、きみに決めた!」

『ヤッマァァ!!』

 

「ではゴーリキー対ヒノヤコマ…試合開始!」

 

「次はこっちからだ。ヒノヤコマ、かまいたち!!」

『ヤッマァァ!!』

「ゴーリキー、さっきのお返しよ!ジャンプした後にかわらわり!!」

『リッキィィイ!!』

 

『ヤマッ!?』

「落ち着けヒノヤコマ…ずいぶんとスピードが速いゴーリキーだなコルニ!」

「ええ当たり前よ!私たちはこのシャラジムのジムリーダー!バトルに勝つため強くなるのが当たり前なんだから!」

『リッキィィ!!』

 

 

ヒノヤコマがかまいたちで攻撃しようと飛ぶのだが、ゴーリキーが走ってかまいたちを躱しながらもヒノヤコマに急接近し、そしてジャンプして先程ルチャブルがコジョフーを叩き落としたようにヒノヤコマをかわらわりで攻撃し、地面に向かって落とす。その攻撃でヒノヤコマは少しだけ慌てていたが、俺の言葉で落ち着きを取り戻したのか俺を見て頷いてくれた。…俺はただヒノヤコマを信じて戦おう。コルニもゴーリキーを信じて戦おうとしているのだから、当然だ。

 

 

 

「ゴーリキー!きあいだま!」

『リッキィィ!!』

「ヒノヤコマ、きあいだまをはがねのつばさで受け流せ!」

『ヤッマァァ!!』

『リッキィィ!!?』

 

 

「ゴーリキー!!…さすがねサトシ、ゴーリキーのきあいだまを斬って躱すだなんて…!」

『リッキィ…!』

 

ゴーリキーが放ったきあいだまをはがねのつばさで…まるでジュカインのリーフブレードのように斬って躱したことにコルニ達は驚いているらしい。観戦席にいるシトロンたちはただ納得し、勉強になるという表情で見つめていた。コンコンブルさんは何も言わずに俺たちのバトルを見て、ただ無表情で見守っている。

 

 

「ゴーリキー、ローキック!」

『リッキィィイ!!』

「ヒノヤコマ、ニトロチャージ!!」

『ヤッマァァア!!!』

 

 

『リッキィィ…!!?』

「ゴーリキー…!!」

 

「…ゴーリキー戦闘不能、ヒノヤコマの勝ち!」

 

 

「ありがとうなヒノヤコマ」

『ヤッマァ!』

 

ゴーリキーが戦闘不能になり、ヒノヤコマは満足そうに俺の差し出した腕の上に乗って笑顔で頷いていた。ひとまずやるべきことは終えたというような表情だ。そして次の試合で最後になる…。コルニはゴーリキーをボールに戻してから、真剣な表情で俺たちを見て、笑みを浮かべながら言う。

 

 

「サトシにはいろんな意味で勉強になったことがたくさんあった…まだまだ力の差も感じるし、正直叶わない部分もたくさんある…でも!それでも私たちは負けるつもりはない!!いくよルカリオ!!」

『バゥゥゥウ!!!!』

 

「ありがとうなヒノヤコマ…コルニの言いたいことは分かった。でも俺だって負ける気はさらさらない!行くぞピカチュウ、きみに決めた!!」

『ピッカァァ!!』

 

「いくよルカリオ!…メガシンカ!!」

『バゥゥゥオォオオオオッッ!!!!』

「ああ、強くなったなルカリオ…ピカチュウ、負けられないな!」

『ピィカッチュゥ!』

 

ルカリオはとても強くなった。メガシンカをして、最初に会った頃とは比べ物にならないほど波動も…そして見るだけで分かる強者としての絆の強さが見えた。ピカチュウは満足そうに笑みを浮かべて…そして好戦的な目でルカリオを見る。俺もピカチュウと同じようにルカリオと…そしてコルニを見た。

 

「ルカリオ対ピカチュウ…試合開始!」

 

 

「いくよルカリオ!最大級はどうだん!!」

『バゥゥゥウウォォオオ!!!!!』

「こっちも行くぞ!エレキボール!!」

『ピッカァ!!!』

 

ルカリオの限界まで大きくしたはどうだんとピカチュウの放ったエレキボールが衝突し、爆発する。その力はとても強く、強風と衝撃…そして黒煙をもたらすほどだった。それでも俺たちは止まらない。最初の一撃はまだ挨拶のようなものなのだから…コルニ達も俺達も笑顔でお互いを見た。

 

 

「ピカチュウ、放電体勢!」

『ピィカッチュゥ!』

「気をつけてルカリオ!つるぎのまいをしながら最速でボーンラッシュ!!」

『バゥゥウ!!』

「避けろピカチュウ、そのまま10まんボルト!」

『ピッカァァ!!』

「こっちも避けてから一度下がる!」

『バゥゥウ!!』

 

 

「はは…さすがはコルニだな!」

『ピィカッチュゥ!』

「でしょう?私達だって負けるつもりはないのよ!いつもサトシとのバトルで…何かしら学んでいるんだから!」

『バゥゥウ!!』

 

 

走りながらつるぎのまいをしてきたルカリオを見て、バトルスタイルが少し変わったなと思いながらもピカチュウに放電体勢によってルカリオの姿が見えなくても躱すことはできた。そしてピカチュウに向かってボーンラッシュを放とうとして近くに来たルカリオに向かって10まんボルトを放つ…でもそれはルカリオが躱してコルニの近くまで下がったために不発に終わった。

その予想以上の速さと強さにピカチュウは楽しそうに尻尾を振る。その動きを見て同じ気持ちなんだと俺は思わず笑ってしまった。でもコルニ達は俺の気持ちが分かっているのか、ただ笑みを浮かべてピカチュウと俺を睨みつけていた。

 

「ルカリオ、きんぞくおん!」

『バゥゥウ!!』

「おっとそうはいくか!…ピカチュウ、ルカリオに向かってボルテッカー!」

『ピィカッチュゥ!!』

 

「ルカリオ!きんぞくおん解除して避けて!グロウパンチ&はどうだん!!」

『バゥゥウォォオオ!!』

「ピカチュウ、ボルテッカーのままアイアンテール!!」

『ピッカッチュゥゥウ!!』

 

 

きんぞくおんのままだといけないと判断して、ボルテッカーで直接つっこみながらもルカリオを攻撃することにする。コルニはそのままきんぞくおんをものともせずにやってくるピカチュウを見てルカリオにグロウパンチ&はどうだんを指示した。そのため俺はボルテッカー状態のままアイアンテールを指示して…ルカリオとピカチュウの技同士が直撃する。

 

先程以上の爆風のなか…ようやく見えてきたのはメガシンカが解除されたルカリオの姿だった。

 

 

「…ルカリオ戦闘不能、ピカチュウの勝ち!よって勝者、サトシ!」

 

「やったなピカチュウ!」

『ピィカッチュゥ!』

 

 

「ありがとうルカリオ…頑張ったね」

『バゥゥ…』

「コルニ…良いバトルだったぞ」

「お爺ちゃん…それは違うよ。サトシ達が凄かっただけ…私たちも、もっともっと強くならなくちゃ…!」

『バゥゥ…!!』

「そうか…だがその前に、早くサトシに渡してやれ」

 

「うん分かってる…サトシ!」

『バゥゥ…』

「コルニ…」

「はいこれ。シャラジムの勝利の証…ファイトバッチだよ!…おめでとうサトシ!」

『バゥゥ!!』

「ああ、ありがとうコルニにルカリオ…!」

『ピィカッチュゥ!』

 

コルニの手によって貰ったファイトバッチをバッチケースに入れ、俺たちは先ほどのバトルを思い返す…まだまだメガシンカによって楽しめるバトルができることに、俺たちはこれからが楽しみに思えた。

 

 

 

――――だがこの後、時間の経過によって道ができるまで待つことになり、コンコンブルさんからコルニに向かって秘伝書を渡していろいろと微妙な状況になってしまったのは仕方がないだろう。

 

 

でも、それでもコルニとのバトルはとても楽しめたと俺たちは感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 







「あら、久しぶりね!え、ああ何でここにいるのかって?…ただの旅行よ!一度くらい行ったことのない地方を旅行してみたいって思ったから来たの!」


「…え、あいつの所へ行くの?ふーん、面白そうね」


「ねえ、私も一緒について行っていい?…え、理由?」


「……そうね。ただ単に【懐かしい】からじゃ駄目かしら?」


「え、怒られる?大丈夫よ!私がついてるんだから安心しなさい!だから一緒に行きましょう!」


「ええそうよ。そうこなくっちゃ!あいつにも聞きたいこといっぱいあるし…これからよろしくね―――――――」







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