マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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兄にとっては楽しめること、皆にとっては…。







第二百四十六話~兄はスタンプラリーに挑む~

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。夕食を食べた後、プラターヌ博士が明日の大会について説明をしてくれました。

それはポケエンテーリングという名のチーム対抗戦であり、ある意味スタンプラリーのような遊びだと俺はそう思った。プラターヌ博士の説明では、コース上に作られ、設置されているスタンプを集めてゴールを目指すというものらしい。現在の1位は俺たちチームケロマツとティエルノ達のチームゼニガメである。1位を目指すためにも頑張ろうと言う子たちもいて、そしてセレナ達やティエルノ達も1位になって殿堂入りを目指していこうと張り切って行こうとやる気を出しているようだった。そのためいつもなら少しポケモンを出してバトルしたり話をしたりという自由時間があるのだが、ほとんどのチームが明日のために早く休もうと結論を出したらしくすぐに小屋に戻って眠りについた。

 

 

「明日は頑張りましょうね!」

「殿堂入り目指して1位独占だね!」

『デネデネ!』

「それに怪我もしないように気をつけていこうね」

「だな…まあお前等ならたぶん平気だと思うけど…」

『ピィカッチュゥ』

 

 

もちろん俺たちも何かあっては困るということですぐに眠ることになったのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

――――次の日、俺たちは全員朝食を食べてから最初の場所へ集まっていた。そこはゴールをする位置であり、スタートの場所となっている所だ。

スタンプをただ集めるというだけなのかは分からないけれど、まあ頑張って進めば何とかなると俺たちはやる気を出してスタートの合図が来るのを待った。そして、プラターヌ博士が旗を持ってスタート手前の台に進み、大きく振り上げてから大きな声でスタートと叫ぶ。その声に合わせて俺たちは走り出したのだった。

 

 

先にポケモンを出してから進むこのチーム戦は、バトルは含まれていないけれど、それでもポケモンと協力してやる何かがあるのではないかと昨日の説明を聞きながら、そう予想していたのだが、その考えは当たっていたようだった。

 

 

大きな崖が見えている場所まで走り、第一のチェックポイントまでやって来た。でも地図で書かれた場所だというのに何もなく、スタンプらしきものもない。探している間にティエルノ達もやってきてしまい、このままでは探すだけで後ろのチームに追いつかれてしまうと考え、皆で探す。でもすぐに崖の上から大きな声が聞こえてきて、そこにはプラターヌ博士と一緒にいた女性が立っていた。手を振ってここにスタンプがあると言うその声に、この崖を登らなくてはいけないのかと俺たちは考えた。

 

 

「なるほどな…ここでポケモンと協力して崖まで登るってことになるのか…」

『ピィカッチュ』

「オーライ!それなら僕とゼニガメの出番だね!レッツダンス!」

『ゼニゼニ!!』

 

「うわっ先行っちゃうよ!!私が…!」

『デネデネ!』

「こらユリーカ!危ないだろ!!」

「でもこのままじゃ…!」

「俺が行く。ピカチュウはそのまま待機な…頼むぞケロマツ」

『ケロケロ!』

「サトシ…気をつけてね!」

 

 

ティエルノとゼニガメが先に行ってしまうため、焦ったユリーカが崖をよじ登ろうとするためシトロンが止める。でもティエルノがどんどん先に行ってしまうためにこのまま見てるわけにもいかないかと俺は帽子をかぶり直してからケロマツをボールから出して崖をよじ登る。

でも崖を登っている間にステップを踏みながら崖をジャンプして登っていたゼニガメの足元が崩れ、崖から落ちそうになり…ティエルノが助けようとして一緒になって落ちてきてしまった。

幸い俺たちは後ろの方にいたためにケロマツにケロムースを出すように指示をだして助けることができた。…まあ少し問題はあったものの何とか無事にスタンプを貰うことができて良かったと思えた。

そしてティエルノがスタンプを貰っている間に俺たちは先へと進む。

 

 

 

次の第二チェックポイントでは橋を渡ってスタンプを押すというものだ。でも橋は少し揺れていて今にも落ちそうに見える。それを行くことになったのは俺たちのチームはセレナ、ティエルノのチームはサナだった。チーム対抗だからこそ同じ人が連続して代表でやるのは禁止らしく、シトロンがやろうかと言っていたのだが、サナがやると言う言葉にセレナが対抗したらしく、自ら代表としてやると言っていた。…その顔は青くなっていたのだけれども。

 

 

「よ、よし…行くわよ」

『フォコゥ!』

「負けないわよ!」

『ダネダネ!』

 

サナがフシギダネのつるに捕まり、安定した歩きでゆらゆら揺れる橋を渡るのだが、セレナはフォッコの尻尾を掴んで何とか落ちないように慎重に進んでいた。そのため大胆に進んでいくサナたちが優勢だった。サナの動きを見ていたシトロンが苦笑しながらも言う。

 

 

「サナのようにハリマロンで進めば良かったですかね…」

『ホッビィ…』

「でもお兄ちゃんもハリマロンもちゃんと橋渡れるかどうか分からないよ?もしかしたら怖がって進めなかったかも!」

『デネデネ!』

「こらユリーカ!」

「はは…まあセレナが頑張って進んでるんだし…あいつを信じて待ってみようぜ。それに追いつかれたとしても追い越せばいいんだからな」

『ピィカッチュ』

 

「オーライ!随分と強気な発言だね!まあ僕たちも追い越されたらすぐに追いついてみせるけど」

『ゼニゼニ!』

「なんにせよ、今の僕たちが優勢ですから…ほら、そろそろサナが帰ってきますよ!」

『カゲカゲ!』

 

 

サナが橋を揺らしながらも帰ってきて、セレナが少し青い顔で何とか橋を渡り…スタンプをゲットしてからフォッコに捕まって戻ることができた。セレナが橋を渡ったことで少しふらついていたけれど、それでも何とか気力で回復させることができたらしく、俺たちは走り始めた。

 

 

次の第三チェックポイントは迷路のような建物の一番上にスタンプがあるらしく、シトロンがホルビーを連れて…そしてトロバがヒトカゲを連れて中へ入って行った。何度か外を見て今どこにいるのかを確認するシトロンとトロバ達が見えるのだが、建物の中なため今どうなっているのかは見れない。俺たちは待つことしかできず、とりあえずシトロンが外の状況を確認した時にもうちょっと上だとか…左だとか言えばいいかと大きな声で叫んだ。それを見たティエルノ達もトロバを助けようと声を出す。

そしてようやくシトロンが一番上まで到達し…スタンプを押すことができた。でもまた戻ってくるのに少し時間がかかり、トロバがスタンプを押す頃にようやく戻ってくることに成功したのだった。俺たちは先へ進み、走って行く。

 

 

他にもつるを使ってスタンプをゲットするようなものがあったり、激流な川を渡ってスタンプを押したりと結構きつそうなものがたくさんあった。まあそれでもつるから落ちたら危険だと下にはマットが敷かれていたり、激流の川から落ちてもすぐに助けられるように警備隊がいたりと安全策はあるようだった。それを第一チェックポイントの崖の方でもあれば良かったのにと苦笑しながらも俺たちはスタンプを押しつつ前へと進む。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「…霧…か」

『ピィカッチュ…』

「これは危険ですね…ユリーカ、離れたら危ないからちゃんと傍にいるんだよ?」

『ホッビィ』

「うん分かってる…!」

『デネデネ』

「森の中だから地図を見ても分からないし…どうするサトシ?」

『フォコ?』

「…とにかく前へ進もう…何かあったら困るから皆離れるなよ」

 

 

霧の中ではぐれたらすぐに合流できるかは分からない。そのため俺たちは前へ進みながらも慎重に歩いて行った。

途中でピカチュウが何かに気づき、耳を動かしながらこちらに向かって声を出す。

 

 

『ピカピ!ピィカッチュ!』

「何だ?どうかしたのかピカチュウ?」

『ピィカァ!』

「…あれ?ユリーカは…ユリーカ!!?」

「ユリーカがいない…もしかしてピカチュウはそれが言いたくて叫んでたの?」

『ピィカッチュ!』

 

「…どこにいるのか分かるかピカチュウ?」

『ピッカァ!』

 

 

ピカチュウが俺の言葉を聞いて前に進む。はぐれないように慎重に進みながらもピカチュウの後を追い、そしてようやくユリーカの姿を見ることができた。ユリーカは何かを見たかのように俺たちを探そうとせず、ただ歩いていこうとしてたため、シトロンがユリーカの肩を掴んで止める。

 

 

「ユリーカ!!離れたら危ないって言っただろ!!!」

『ホッビィ…!』

「あ、お兄ちゃん…!あのね、何か見たことない凄く綺麗なポケモンがいたんだよ!!!」

『デネデネ!』

「…ユリーカ?綺麗なポケモンを見たのは分かったけど…私たちとはぐれたらじっとしてなきゃ駄目よ?動いたら余計に見つけることができなくなるんだから」

『フォコォ!』

「そうだぜ。森の中はポケモンがたくさんいるんだ。ユリーカとデデンネを攻撃してくるかもしれないし…だからこそ綺麗なポケモンを見つけてもじっとしてなきゃダメだろ?」

『ピィカッチュ!』

「…でも私悪くないもん」

『デネ!』

 

「悪いとか悪くないとかそういう問題じゃないんだよユリーカ!…僕たちはユリーカが危険な目に遭うんじゃないかと心配して探していたんだから…だから怪我なくて良かった!」

『ホッビ!』

「…お兄ちゃん……ごめんなさい」

『デネ…』

 

「反省したんならもう大丈夫だ。さあゴールに向かって歩いていこうぜ!」

『ピィカッチュ!』

「あ…で、でもまたはぐれたら危険だから手を繋いでいきましょうよ!」

『フォコッ!』

「なるほど!それはいい考えですね!」

『ホッビィ!』

「じゃあセレナはサトシと私の手を繋ごう!ほらお兄ちゃんも!」

『デネデネ!』

 

「……まあいいか」

『…ピィカッチュゥ』

 

霧の中を進みながら手をつなぎ前へ歩いていく俺たちは、途中でティエルノ達と合流した。とりあえず1位を目指して前へ進もうと言うけれどもここでは危険と判断し、走り出すのは止めて一緒に進もうと協力することになった。地図はもう役に立たず、後ろに戻ったとしても先程と同じ場所を歩けるのかさえ困難だと思えた。

だからこそ俺たちは前に向かって歩く。…するとユリーカが何かを見つけたようでシトロンと繋いでいた手を離して指差しながら叫んだ。

 

 

「あ、ねえあれ見て!!さっき見たポケモンだよ!!」

『デネデネ!』

 

「新種のポケモンか…?霧の中だから図鑑には登録されねえか…」

『ピィカッチュ…』

「すごい…まるでメブキジカみたいなポケモンですね!」

『ホッビィ!』

「メブキジカって角の生えたポケモンのこと?でも綺麗!…角が虹色に光ってて周りに花が咲いてる…!」

『フォコォ…!』

「ポケモントレーナーをやっててこんなにも神秘的なポケモンを見たのは初めてです!」

『カゲカ!』

「オーライ…あのポケモンをゲットしたいけど、ここで離れたら問題だから無理だね…」

『ゼニゼニ…』

「それでもあんなに綺麗なポケモンがいるって分かって私は感激だよ!」

『ダネダネ!』

 

 

『―――――――――ッ!』

 

 

「…行っちまったか…さあ前へ進もうぜ皆」

『ピッカァ!!』

 

 

霧の中から見えてきたのは虹色に光る角の生えたポケモンらしき姿。でも霧のせいではっきりとは見えず、俺たちはそのポケモンを見てみたいという欲求が出た。…でもあのポケモンを追いかけて行こうとすればますます迷うだろうし、はぐれてしまう危険性もあった。だからこそ俺たちはただ立ち止まり、その姿をじっと見つめていた。トロバが写真を撮ろうとしたのだが、その動きを察したのかそのポケモンが声を出してからゆっくりと消えていった。

幻のようなその姿に俺たちはしばらくじっとしていたが、このまま立ち止まってもしょうがないと考えてゴールを目指して進む。

 

 

そしてようやく見えてきたゴール…俺たちチームケロマツとチームゼニガメは協力して進んだからということで同着となって一緒に1位になったのだった。

 

 

 

 

 




兄の心境。
 霧の中でも見れるようにプラターヌ博士に改良してもらおうかな…。




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