マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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楽しみ、遊び…そして勝つ。





第二百四十五話~兄達はサマーキャンプを楽しむ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。昨日一日バトルをしてサマーキャンプを楽しみました。

初日とのことから最初のバトル大会では得点なしで楽しんでくれと言われ、ティエルノと一緒にバトルをやったり、ダブルバトルで盛り上がったり…疑似トーナメント式トリプルバトル大会を開いて挑戦したりと…行われたすべてのバトルに参加してきました。

とりあえず俺のこと知ってる奴がいたりバトルの方法を教えてくれと言ってきたりしたため、俺に向かってバトルをしてくれというトレーナーが多いのは仕方がないだろうと思った。…でも知ってる奴らには騒ぐなとあらかじめ言っておいたために、予想よりも騒動にならなくて良かったと思う。

 

 

――――――そして今日、まだ日も出ていない早朝なのだけれども、これから釣りをやって大きいポケモンを釣りあげた人の3名までが得点を貰えることになるらしい。とにかく大きいポケモンを釣り上げようということで、俺たちはあの水族館の館長から貰った釣竿を使って釣りを行うことになった。でもチームゼニガメがこちらに来て自信満々に俺たちに向かって笑みを浮かべていることになんだろうと思い話しかけた。

 

 

「どうかしたのかティエルノ?何か自信満々な感じだけど」

『ピィカ?』

「オーライ…心配なんてないよ!こう見えても僕たちにはトロバっちという最終兵器がいるからね!」

「トロバ…って釣りがうまいの?」

『デネデネ?』

「そうなの!トロバって結構釣りに詳しくてね!大物を釣り上げるのも結構簡単なんだから!」

「へえ…凄いのね!」

「それは強敵ですね…」

「いや…僕はただいろんなポケモンと関わりたいだけだからね…夢のために行動してるだけだよ……」

「それでも凄いことじゃないか!もっと胸張って良いぜトロバ!」

『ピィカ!』

「そう…ですね!では、大物を頑張って釣り上げますので期待していてください!」

 

そう言ってチームゼニガメはそれぞれ釣り上げるための海辺へ向かい、釣りを始めた。もちろん俺たちも出遅れないように海辺へ行き、釣りをし始める。

…でも俺はバトルやポケモン育成とかは好きなのだけれども…釣りでポケモンを釣り上げるのはあまり向いていないと思っている。こういう時はカスミかデントがいれば大物を釣り上げることもわけないだろうけれど…まあ釣りには多少の運も関わっているのだからあまり気にせずにこの大会を楽しもうと決心した。

 

 

「よし、まだ日は出てないし眠いかもしれないけれど…それでも得点を貰うために頑張って行こうぜお前等!」

『ピィカッチュゥ!』

「うん!サトシのためなら私もう死んでもいい!!!」

「死んじゃ駄目だよセレナ!でもユリーカも頑張る!!」

『デネデネ!』

「…そうですね、同じチームケロマツとして…頑張っていきましょうか!」

 

 

まあ結果としてはトロバの釣り上げたホエルオーが1位になったのだけれども…それでもちゃんと釣りを楽しむことができたし、ホエルオーを釣り上げたことによっていきなり襲いかかってきて、俺たちで何とか対処するという騒動になったり…その騒動でホエルオーをトロバが仲間として加えたりと嬉しいこともあったりしたけれど、でも楽しい朝を迎えられたと俺たちは感じていた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

―――――そして朝食の後、プラターヌ博士からポケビジョンによる大会を開くと宣言された。この大会で1位から3位までのチームに得点を加えるのだと言う。こういうのはセレナが考えてポケビジョンをやるのが向いていると考え…とりあえず時間は夕食までとのことから何をするのか考えるために一度自分たちの小屋へと戻り、話し合いを始めることになったのだった。

 

「ジャジャーン!こんなポケビジョンがやってみたかったの!」

「何々…魔法使いピカチュウと仲間たち?」

『ピィカ?』

「魔法使いって確かおとぎ話に出てくる不思議な人だよね!まるでポケモンが人間になったみたいな!!」

『デネデネ!!』

「物語に沿ってやるってことか?」

「うん!…でも、ピカチュウたちの演技だけじゃない…皆の技を魅せて、そしてポケモンたちのいつもの姿…ううん、個性的なところも撮っていきたいって思ってるの!」

「なるほど…ポケモンたちが演技するだけじゃなく、それぞれの個性を潰さずに最大限の魅力を見せていけばいいんですね…ですが僕たちは何をすればいいんでしょうか?」

 

 

「それについては後で説明するわ!…まずはね、物語についてなんだけど…デデンネがある日泣きそうになってて、それを見た魔法使いのピカチュウがデデンネを慰めようとしていろんな技を出して元気にさせて…そして最後は大きな花火で派手にしたいって思ってるの!様々な魔法の部分は、ピカチュウが魔法にみせかけた皆の技を使ってるように見せるのはどうかな?」

「へえ…なかなか面白そうだな…な、ピカチュウ」

『ピィカッチュ!』

「皆…つまりは僕たちのポケモンの出番ということですね!」

「デデンネもだね!」

『デネデネ!』

「うん!もちろん皆もそれぞれ出番はあるわよ!それにポケモンの動きに合わせて声を入れていったら面白そうじゃない?」

「面白そう!!早くやりたい!!」

『デネデネ!』

「そのためにはまず下準備からですね…僕はカメラを借りてきますのでセレナたちもよろしくお願いします!」

 

 

【魔法使いピカチュウと仲間たち】という題名を見せたセレナが楽しそうにポケビジョンでやることを大体説明し、俺たちはその準備をするために取り掛かった。何だかポケビジョンというよりはポケ劇団と言った方が良いような気もするが…まあ楽しければそれでいいだろうと考えてからマイクと小道具を取りに向かう。

 

 

ちなみにセレナたちはそれぞれポフレを作りながらも…サナたちとポケモンパフォーマーの話をしながらも楽しそうに準備をしていたということだけは言っておこう。

 

 

そしてやって来たのは森の中。魔法使いピカチュウというのがメインらしく、より神秘的な雰囲気を出すためにこの近くにはない所で撮影したいとセレナやユリーカが言ってきたために行動を開始した。…でも歩いていても良い場所は見つからず、とりあえず広い場所でやった方が良いのではないかと考えたのだが、セレナたちは違うようだ。

 

 

「…とりあえず休憩しないか?シトロンがきつそうだし…」

「ぜぇ…はぁ…ぼ、僕のことは気にしないでください……!!」

「いやお兄ちゃん凄く辛そうだから…!」

『デネデネ…』

「ええそうね…まだ時間はあることだし…少し休憩してから移動しましょう」

 

シトロンがサマーキャンプから配布された水筒を開けて水を飲み、一息つく。ピカチュウも近くにあったという木の実を持ってきて半分食べ…そしてデデンネに半分渡す。そんな様子を俺とユリーカが微笑ましく見ていたのだが、セレナはどうやらちゃんとうまくいくのかだけを心配して…周りを見ていい場所が見つかるようにと焦っているようだった。

 

「セレナ…焦ったら余計に良い場所は見つからないぞ」

「…うん…そうよね…ごめんなさいサトシ…」

 

 

セレナは少し落ち着いたように苦笑しながらも休憩するのだが、それでもやはり焦りの色は消えない。これ以上何かを言ったとしても意味はないし悪化する可能性も考えて口を閉ざす。とりあえず何かあればその時に行動すればいいかと俺は考えてピカチュウの頭を撫でた。

―――――その後シトロンが回復し、礼を言われながらも歩き出す。そしてやはり歩いていてもずっと木々の景色は変わらず、海辺で撮った方が良いのではないかとユリーカがセレナに言った時にそれは見えてきた。

 

 

「…あ、ねえあれ見て!花畑よ!!」

「え…わぁ綺麗!!」

『デネデネ!!』

「でも遠くからですからどのくらいの規模の花畑なのか分かりづらいですね…」

 

 

「ちょっと待ってて、すぐに行って確かめてくる!!」

「あ、おい待てセレナ!!」

 

 

「えっっ―――――――――!!!!」

 

 

それは一瞬だった。セレナの走った先が崖で…このままではまた落ちてしまうと…ある種のデジャブを感じながらも俺は走り、セレナを助けようと動く。でもセレナが走る前に俺自身が数秒先を走っていれば間に合ったはず…なのにセレナはすでに落ちそうになっていて、あの時の光景が思い浮かんだ。だがその感覚は一瞬の出来事だった…落ちそうになり俺に向かって伸ばす手を掴み、近くにあった木で支えながらも引っぱり上げようと動く。

崖から落ちそうになっているセレナの手を掴んでから引っぱり上げるのだが、ポフレや衣装道具が丸ごと入っている荷物をセレナが離さないように片手でしっかりと握っている。だから…そのバックを片手で掴んで、そしてもう一方の手を俺が掴んだ状態なため、姿勢が安定しないのだ。

無理に引っ張り上げれば岩肌がむき出しになっている崖の方にセレナが激突してしまう。バックを無理やり地面に放り投げることも可能かもしれないが…それだとポフレがつぶれて駄目になる可能性があった。…そしてバックを放り投げる動作さえ激突の危険性もあったのだ。

幸い足元に放り投げていた俺の持つはずの荷物を崖から落ちないようちゃんと安全な場所に引っぱっているピカチュウがいたためにセレナの方に意識を向けることができたのだが。……そしてようやく俺たちの様子に気づいたシトロンとユリーカが一緒になってセレナを助けようと動いた。

セレナはいきなり崖から落ちそうになっていることに驚き、上を見上げて少しだけ泣きそうな表情でこちらを見ていた。

 

 

「大丈夫だ。絶対に助けるから」

「サトシ…!」

 

「このままじゃセレナが危ないよ…!」

「合図したら一気に引き上げますよ!せーのぉ!!」

「っっ!!」

 

 

 

シトロンの合図でようやく引っぱり上げることに成功したのだが、セレナが崖の上で座ったままゆっくりと深呼吸をして、先程まで握っていた手を強く掴んでから反省したような声で言う。

 

 

 

「ごめんなさい…あと、ありがとう」

 

「……仲間を助けるのは当たり前だろ?」

『…ピカピ』

「そうですよ。サトシはともかく…とにかく花畑へは遠回りで行きましょう!」

「そうだよセレナ!サトシはともかくね!セレナが怪我しなくて良かった!それに早くポケビジョン撮ろうよ!」

『デネデネ!』

「おい」

『…ピィカッチュ』

 

 

「……うん!!」

 

 

その後、花畑へ行き、ポケビジョンを撮ることになった。それぞれボールから手持ちのポケモンを出して衣装を着てもらう。ピカチュウには魔法使いの衣装、ケロマツには忍者でルチャブルには剣士のような衣装、そしてヒノヤコマには強そうな兵士が着ていそうな衣装を…。

ハリマロンには商人が着ていそうな衣装でホルビーには踊りができそうなひらひらとした衣装を着ている。そしてデデンネとフォッコは可愛らしいリボンと帽子で着飾っていた。そして…ようやく撮影が始まった。

 

――――まずデデンネが泣きそうな表情で落ち込んでいる様子が映し出され、魔法使いピカチュウが魔法でデデンネを元気にさせるというものだ。

ピカチュウの動きに合わせて俺が声を出し、ピカチュウが手を振るのと同時にカメラには映っていないケロマツが画面外でみずのはどうを放つ。カメラから見ればそのみずのはどうはピカチュウが手を振ったことで突然大きな雫が発生したかのように見えた。そしてピカチュウが尻尾を振ればハリマロンが飛び出しつるで宙に浮いているのだがそれをカメラには映らないようにしてピカチュウにまるで魔法で浮かされているように移す。そしてハリマロンの慌てている様子に合わせてシトロンが何だこれ!?と少し笑えるような声色で言うように叫んでいる。

ピカチュウが一回転すればヒノヤコマとフォッコの炎が華麗に宙に舞う。ピカチュウが耳を動かせば太陽に照らされてフォッコの影が踊っているかのように動く…その動きに合わせてセレナが声を出していた。

そしてピカチュウが両手を上げればホルビーが踊りだす。そして踊っているホルビーが泣きそうなデデンネにやってきて一緒に踊りだす。まるでその場所が舞踏会のように見えてきた時点でデデンネが笑顔になっていく。その様子に合わせてユリーカが明るい声で台詞を言った。

…そしてピカチュウが大きくジャンプするのと同時にケロマツ達がカメラに映る形で大きく飛び出し、最後にピカチュウの10まんボルトとケロマツ達の技を合わせてまるで花火のように盛大に空に打ち上げた。同時にたくさんのポフレが空から落ちてきて…ピカチュウがそれを取ってデデンネに渡し、皆が笑顔で食べるというのを写す。

 

最後に皆でカメラの前に並んで、一礼をしてから終わらせた。

 

 

 

もちろんこのポケビジョンはちゃんと1位になれたし…チームゼニガメに追いつくことができたと思える一日だった。

 

 

 

 

 




兄の心境。
 まずは楽しむ。そして勝つ。…バトル以外では無理かもしれないけれど。







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