別れと出会いとその他…。
こんにちは兄のサトシです。俺たちは今、プラターヌ博士に呼ばれてポケモンサマーキャンプに参加することになり、一度シャラジムに行くという目的を保留してそのキャンプ場へ向かっている途中です。
―――森の奥にある、大きな建物。そして様々なトレーナー達が泊まることのできる小さな小屋もある。近くには海もあって、ボートや浜辺も見えてきた。最初に大きな建物で待つという連絡だったために俺たちはその場所へ向かう。そして建物で立って俺たちに手を振っていたのは連絡してくれたプラターヌ博士だ。
「やぁ君たち久しぶり!」
「プラターヌ博士…お久しぶりです」
『ピィカッチュ!』
「久しぶりかも!カルネさんの時以来ですね!」
「ポケモンサマーキャンプのお誘いありがとうございます!」
「ここすっごくいいところだね!」
『デネデネ!』
「こらユリーカ!…あの、今日からよろしくお願いします!」
「うんうん元気そうだね!良かったよ!…ああそうだ…ハルカちゃんに伝えてくれって伝言を頼まれてるんだった」
「…へ?私にですか?」
「僕から見れば残念なお知らせなんだけどね…オダマキ博士から連絡で、一度ホウエン地方へ戻ってきてほしいとのことなんだ。何やら緊急の連絡らしいよ」
「え、緊急?」
『ピィカ?』
「うう…何があったのか分からないけど…でも今ホウエン地方には帰りたくないかも…サトシ達との旅をもっとしたいのに…」
「大丈夫よハルカ!ホウエン地方での用事が終わったらまたすぐここに戻ってくればいいんだから!」
「そうだよ!ハルカのコンテストの話もっと聞きたいし!終わったらすぐに戻ってきて!」
『デネデネ!』
「ハルカ…オダマキ博士が緊急で呼び出すのには何かわけがあるかもしれません…とにかく、またこのカロス地方へ来れば旅ができますから…大丈夫ですよ!」
「とりあえずお前のカロス地方での目的はポケモンパフォーマーの大会を見ることだろ?ならまだまだ時間はかかりそうだし…一度戻ってから大会に合わせてきても大丈夫だって。待ってるからさっさとこっちに戻って来いよ」
『ピィカッチュ!』
「うん…そうね…一度ホウエン地方に戻るけど…でもまたすぐに帰ってくるからね!!」
「決まったみたいだね。車なら出せるから…すぐに飛行艇まで送るよ」
「はい。ありがとうございますプラターヌ博士!」
プラターヌ博士の言葉に頷いたハルカは少しだけまだここに居たいという未練があるような表情をしていたけれども、それでも俺たちの戻って来いという言葉やオダマキ博士がハルカを必要としているなら早く行った方が良いという言葉で決心したようだった。まあセレナたちもハルカと一度別れることに少しだけ寂しいと思えたみたいだったが、それでもまた会えるのだと考えて意識をポケモンサマーキャンプへ移す。ハルカもこのサマーキャンプに参加したいということを言っていたから…ちょっと残念だとは思うけれども…でも今は仕方ないことなのだから…俺たちでできることをやって楽しもう。
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プラターヌ博士が、メガシンカについて聞いてきたため、俺たちはコルニの持つメガルカリオについて話した。
するとプラターヌ博士は目を輝かせて僕も会ってみたいなぁと叫んできたため、もしかしたらコルニのいるシャラジムまで乗り込んでメガシンカについて研究をしてもいいかと依頼するかもしれないと考えてしまい苦笑した。先程までプラターヌ博士はメガシンカしたルカリオのことを聞いてまるで子供のように喜んでいたからだ。
ポケモンと人間の絆が離れていたらたとえメガシンカしたとしても力が暴走し、言うことを聞かないという話をすると、食いつくように俺たちに近づいてから手に持っていたボイスレコーダーのようなものをぶるぶると震えさせ、感激しているようだった。まあメガシンカを研究しているプラターヌ博士なら当然の反応かと考えた。
俺たちにとってもメガシンカは感動できるものだったし、いろんなことを知れてとても楽しかったというのも会ったのだから…。とにかくプラターヌ博士も同じ気持ちなのだろう…。
そして話し終わった後、プラターヌ博士はそのままポケモンセンターらしき場所まで走って行き、礼を叫びながらも研究所でやるべきことを言わなければと言っていた。俺たちはそのプラターヌ博士の行動に苦笑しながらも、とりあえず指定された自分たちの泊まるキャンプ小屋まで行こうと言うことになった。俺たちはチームケロマツとしてキャンプに参加するため、小屋にはケロマツの描かれた絵が飾られていた。その絵にもユリーカやセレナが可愛いと笑みを浮かべて見ている。
「あれ?…サトシ!あれってバトルでしょうか?」
「…ん?」
『ピィカ?』
シトロンが窓を開けてその景色を堪能していたら何かが見えてきたらしく、俺に声をかけてきた。そのためシトロンの見ていた窓からその指差す場所を見つめる。窓から見えてきたのは明らかにバトルしている様子で…面白そうだからと俺たちも行くことになった。
「あれって何のポケモンかな?」
「大きくて力強そうなポケモンに小さくて可愛いポケモン!」
『デネデネ!』
セレナが図鑑を出してみたのはイッシュ地方で見たローブシンとカント―地方の御三家のゼニガメだった。
バトルで戦っているゼニガメは俺の仲間のゼニガメよりも小さくて身軽そうで…何やらステップを刻みながらもローブシンと対峙しているようだった。トレーナーも一緒に踊っていて…ゼニガメはとても楽しそうにローブシンとバトルしている。それにしてもダンスのように踊る姿はまるで独自のペースでバトルをしているようであり…躱すタイミングなどもちゃんと見ていて、トレーナーと一体になってとても楽しそうだ。
そして躱しきった後、ゼニガメのロケットずつきでローブシンを倒すことに成功し、俺たちは笑みを浮かべてゼニガメを見た。ユリーカとセレナは小さくて可愛いゼニガメに笑顔で凄いと言っており、シトロンはあのスピードと身軽な戦法にとても興味を持ったような表情を浮かべていて…そして俺たちはバトルがしてみたいとピカチュウと一緒に顔を見合わせてから頷き、彼に近づいた。
「なあバトルやってもらってもいいか?」
『ピィカ?』
「オーライ!やるやる!…僕はハクダンシティのティエルノ!それでこっちは相棒のゼニガメ!チーム名もゼニガメなんだ。そっちは…?」
『ゼェニ?』
「俺たちはチームケロマツなんだ。それで俺はサトシで相棒のピカチュウ」
『ピィカッチュ!』
「私はセレナ」
「私、ユリーカ!それでこっちが私の未来のパートナーのデデンネ!」
『デネデネ!』
「僕はシトロンです」
「……ん?君たちってもしかして…!!!」
「はい?」
『ピィカ?』
ティエルノがそのまま何かを思い出したかのように浜辺に向かって走り出し、誰かを連れてこちらに戻ってくる。その誰かはおそらくティエルノの親しい友人であり…近づいてきたと思ったら、俺たちのことを知っているように輝かしい笑顔で口を開いて言う。
「ほら、あのポケビジョンの!だよね?」
「本当だ!!初めまして!あなたたちの映ったポケビジョンを見たわ!!あれランキングで1位になってたのよ!!」
「へ…あれが?」
『ピィカッチュ?』
「そういえば私達…あのポケビジョン撮った後どうなったのか全然調べてなかったわ」
「ランキングで1位になったの!!?凄い凄い私たち有名人だね!!もしかしたらお兄ちゃんの恋人が見つかるかも!」
『デネデネ!!』
「こらユリーカ!だからそれ止めろって言ってるだろ!!」
「……あら?調べてなかったの?ならポケモンセンターへ行きましょう!そこにちゃんと記録されてるから!!…あ、私はサナ!よろしくね!!」
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―――――――――サナが連れてきたポケモンセンターにある通信施設の整っている場所へやって来た。そこには電話やポケモン交換のための通信施設があるのだが、それ以外にも自身の撮ったポケビジョンがどうなっているのか調べることができて…そして他の人が投稿したポケビジョンを見ることもできるのだと教えてくれた…。
そしてサナが画面を操作して俺たちの投稿したポケビジョンを検索し、見せてくれた。
それに映し出されていたのは俺たちの作ったポケビジョンであり…物凄い数の再生数が表示されていて、近くには1位と言う輝かしい星のマークも刻まれていた。
「うわぁ…何だこれ…」
『ピィカッチュ…』
「凄い…こんなにいろんな人に見られていたってことなのよね…それに1位のマークもあるだなんて…!」
「良かったねお兄ちゃん!」
『デネデネ!!』
「良かったって…ユリーカ!!!」
「ねえねえあなたたちのポケモンに会わせて!あの時の動画本当に感動したんだから!!」
「僕も見てみたいな!いいかいサトシ達?」
「おう良いぜ…出てこい皆!!」
「分かった!出てきてフォッコ!」
「では僕もですね…皆、ちゃんと挨拶してください!」
動画に映っていたポケモンに会いたいとサナとティエルノが言っていたため、俺たちはボールからポケモンたちを出す。俺は新しくルチャブルをゲットしたんだけれども、まあ仲間外れになるよりはみんなと一緒にボールから出した方が良いかと思い出したのだった。
ルチャブルとケロマツはお互い睨み合いながらもそっぽを向いている。相変わらずの相性だと俺とピカチュウ…そしてヒノヤコマが苦笑していたが、それでもサナとティエルノは感激して気づかないようだった。
「うわぁ可愛い強そう皆最高!!そうだ…フシギダネ、あなたも出てきて!!」
『…ダネダネ』
「サナのポケモンか…またカント―の御三家」
『ピィカッチュ』
「うわぁ可愛い!!」
『デネデネ!!』
「フシギダネっていうのね…とっても可愛いわ!!」
フシギダネの映っているポケビジョンを見せてくれるということで俺たちは画面を再び見た。
でもピカチュウたちはフシギダネに挨拶をするために近づいていて…ティエルノのゼニガメも同じように片手を上げて挨拶していた。俺たちがポケビジョンの映像を見終わった後、見えてきたのはフシギダネが先程のケロマツとルチャブルのようにそっぽを向いて嫌そうな表情。それを見たハリマロンがちょっかいを出してフシギダネにツルで叩かれている状況だった。
その姿を見てサナが慌ててハリマロンに謝っているけれど…なんとなく分かるような気がした。とりあえず俺のフシギダネとは違って人見知りが激しくて無愛想らしいその個性豊かな姿に少しだけマサラタウンにいる仲間たちのことを考え懐かしく思えた。
『カゲカゲェ!!!』
「…ん?ヒトカゲ?」
『ピィカッチュ?』
「へえ…このポケモンはヒトカゲっていうのね!!」
「ヒトカゲもカント―地方の御三家なの?」
「そうですね…ヒトカゲも一応カント―地方でもらえる初心者用のポケモンですが…何故カロス地方で…?」
「それはね…あ、待ってようやく来た!!」
「遅いぞトロバっち!!」
「はぁ…はぁ…間に合いました…?」
トロバというトレーナーがやってきて、どうやらティエルノ達の友人であり、先程乱入してきたヒトカゲのトレーナーだと分かった。ヒトカゲは随分と好戦的であり、ピカチュウたちに喧嘩を売る気満々らしく炎を吐いて威嚇していた。その様子が俺のリザードンのヒトカゲ時代と…妹のリザードのヒトカゲ時代とは全然性格が違うなと思えた。俺たちのヒトカゲはバトルはしたいと思っているけれども、喧嘩を売るぐらい好戦的ではないからだ…まあ俺のリザードンは進化したせいで強いポケモンと戦いたいという戦闘狂になってしまったのだが…それでもヒトカゲだった頃は素直で今のフシギダネのようにポケモンたちの仲を仲裁したりまとめたりフォロー役をよくやってくれていた。
――――まあ今いるヒトカゲはそんなリザードンのようにとても好戦的だけれども…でも、ピカチュウたちは戦おうとは思わず、子供の戯れのように遊んでいるだけだから大丈夫かと思えた。ルチャブルも炎を吐かせても何も動じていないみたいだし…平気だろう。
でもトロバはそうはいかないらしい。慌てた様子で頭を下げてから言う。
「わあぁごめんなさいごめんなさい!!!皆さんのポケモンたちに本当に申し訳ないです…!!!!」
「ほら謝るなよ。ピカチュウたちも気にしてないんだからさ」
「そうよ。私のフォッコもヒトカゲの喧嘩を買うようなことはしてないから大丈夫!」
「デデンネもそうだよね!」
『デネデネ!』
「そうですよ。それにポケモンが好戦的なのはある意味個性ですからそんなに謝らなくても…」
「でも…本当にすいません!!!」
「ほらトロバ!サトシ達の顔見て!あの時のポケビジョンの!!」
「あ、ああ!!あなたたちはあの時の!!!」
「……ずいぶんと有名になったもんだなおい」
『ピィカッチュ…』
その後、カント―地方の御三家でもあるポケモンはプラターヌ博士から貰ったということや、このポケモンサマーキャンプでそれぞれの夢に向かって旅に出てから一度会う約束をして…そしてチームゼニガメとして行動することにしたらしいということを話してくれた。
そして話し合った後、ポケモンサマーキャンプをやるために集合してくれと呼ばれたため、開会式をすることになった。プラターヌ博士の言葉で始まり、そしてポケモンサマーキャンプのルールについて教えてくれた。
最初のイベントでもあるポケモンバトル大会が始まったのだが…このバトル大会についてはポケモンサマーキャンプで必要となる得点はないらしく、自由に参加してほしいとのこと…。
俺はもちろん、セレナたちもやる気十分で…ポケモンサマーキャンプの始まりが告げられたのだった。
兄の心境。
バトルの結果については言うまでもない。