マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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たまごといっても模様はすべて違う。






第二百四十一話~妹たちはたまごを見る~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがシゲルさんの言ってたたまご…リザードが生まれた時とは違う色だ!それにズルックが生まれた時のたまごとも違うね!」

『ガゥゥ?……ガゥゥ!!』

『ピチュゥ!!!』

「2つもたまごがあるの始めて見た!!すげえ全然違う色だぜ!!」

 

「水色と赤色ということはおそらく生まれてくるポケモンはみずタイプかほのおタイプになる可能性が高い……か?いやだが白色と黒色もある。模様のようになっているみたいだ…もしかしたらポケモンの模様からたまごの色が決まっているのかもしれないのか?」

「おや、シルバー君は将来研究職にでもなるのかい?随分的確な判断だね」

「ありがとうございますウツギ博士…ですが俺はトレーナーになると決めていますので…」

「そうか残念だな…でも興味があったら是非とも研究員になってくれ。歓迎するよ!」

「はい。ありがとうございます!」

 

「シルバーって本当にポケモンのことに興味があるんだね…」

『ガゥゥ』

『ピチュピチュ』

「いやあれでもまだマシな方だぜ?前なんて学校の授業でメリープと同様に育てられてるワニノコたちの違いについて事細かに説明してしかも本に載ってる話を暗記して全部言いやがったから先生にドン引きされてた」

「え、それ凄いのに…?」

「お前あいつの熱弁見ただろ?…冷静に今ぐらいのテンションでそれを言うと思ったら大間違いだ」

「あ……なるほど」

『ガゥゥ…』

『ピチュゥ?』

 

 

こんにちは妹のヒナです。現在研究所の中にある2つのたまごを見ているのですが、シルバーが少し研究員のような言葉で呟いて…それをウツギ博士が聞いて興味深そうに話しかけ、そして会話している様子に私はシルバーがポケモンが物凄く好きなのだと分かって微笑ましく思えた。

でもヒビキは疲れたような表情を浮かべながらも、学校の授業でシルバーが暴走した時の出来事を話し…まだこれでも序の口だと言う。

そのヒビキの様子はマサラタウンで少しだけ暴走していた頃とは違って苦労人のように思え…ああ、シルバーをフォローするのに頑張りすぎて性格が少し変わってしまったのかなと同情した。でもまあ人をフォローするということは周りを良く見て行動すると言う意味でもあるため、以前トキワの森で突撃したりオニスズメたちがいる区域に入って行こうとしたりはもうしないだろうと思えた。おそらくやらないはずだと…そう思っておきたい。

 

―――――とりあえずシルバーについてはこのまま兄のように自由人となって行動してほしくはないために何とかしなければと思うけれども…でも今の状況でシルバーの行動をすぐに変えるようなことはできないだろう。

それに私はずっとジョウト地方にいるわけじゃなく、この後マサラタウンに帰るためにシルバーの暴走を止めることに対して協力はできない。だからこそそのストッパーの役目を担うであろうヒビキに心の底から頑張れと応援しておこうと思った。

 

そんなことを考えている間にも、シルバーはまた何か考えながらもウツギ博士に話しかけていた。

 

 

「…ああそうだ。この2つのポケモンのたまごは一体どんな種族なのか分かりますか?」

 

「おいシルバー…邪魔になるからもう帰った方が…」

「何を言ってるんだヒビキ。せっかく研究所にお邪魔しているのだから聞けることは聞いた方が良いだろう?馬鹿かお前は」

「誰が馬鹿だ!!?」

 

「シルバーは少し遠慮ってものを知った方が良いかもしれない…」

『ガゥゥ…』

『ピチュゥ…』

 

「はは…そうだね。このポケモンはまだ何が孵るのかよく分からないんだ。でもたまごは温かいしちゃんと生まれてこようとする意志を持っているから大丈夫だと判断したんだよ。まあつまりたまごが孵るまでのお楽しみかな?」

「生まれてくる意志…?」

「えっと…確かたまごの頃からもポケモンは外を見ることができていて…それで生まれたくないという感情があればたまごのまま冷たい状態になってしまうということですよね…」

『ガゥゥ…』

『ピチュゥ?』

「そうだよヒナちゃん。ポケモンはこの状態でもちゃんと外を知ることができると研究していて分かったことだ。…まあそれは本当にたまごの殻の外が見えているのか…それとも音を聞いて判断しているのかはまだ謎に包まれているんだけどね。でも一つだけ分かっていることは…たまごの状態の時、何かトラウマができてたまごの中にいるポケモンが心を閉ざしてしまった場合、冷たくなり生まれなくなる可能性がある…最悪、そのポケモンの命が危ぶまれるということなんだ」

「そんなことがあるのか…!!?」

「…ですが、このたまごはそうはならない…ヒナやシゲルさんが言うように、生まれたくない感情がないからこそこうやって温かいままなんですよね」

「そうだね」

 

 

たまごの種類について聞いて見たら、ウツギ博士やシゲルさんは微妙そうな表情を浮かべて首を横に振って分からないと答えた。

でもいつかは生まれてくるだろうという確信があるからこそ、このまま待っていようという考えでいるみたいだった。

たまごが生まれてこないというのは…兄がたまごを孵して一時期育てていたヨーギラスの出来事を思い出す。…あの時は兄も思い悩んでいたし、ポケモンになってしまえばいいと少しぶっとんだ方向へいこうとしていたときもあったぐらいだ。とにかく、ヨーギラスについては当時一緒にいた兄たちのおかげで心を開き、ちゃんと母の元へ帰ることができた。

でも心を開かず孵ろうとしないたまごは兄たちのようにうまくいくかはわからない。ポケモンニュースでよくたまごが孵らずに必死に生きてくれと願った人たちの話がよく出てきているが…ちゃんと孵ったのかどうかと聞かれると答えは否としか言えない…。何もかもポケモンたちのためにと心から頑張っている人がいるのに、奇跡が起こらずに涙している人々がたくさんいるのだ。

だからこそ私は、あの時リザードがちゃんとたまごから生きたいと願ってくれてよかったと…孵ってくれて良かったと心からそう思い、無意識のうちに抱きしめていた。

 

 

『ガゥゥ?』

『ピチュゥ?』

「…ううん。何でもないよ」

 

 

「おら行くぞシルバー!!ここにいたら邪魔だって言ってるだろ!!!」

「いやまだ聞きたいことが――――」

「そんなのウツギ博士が暇な時に聞けばいいだろうが!!!」

「え?ウツギ博士に暇なときってあるの?」

「言うなヒナ!…それ言ったらシルバーがまたごちゃごちゃ言うから!」

「あ、ごめん…」

 

「せっかくこの研究所に来てくれたんだから無理に帰らなくてもいいよ?生息場所についてもまだよく分かっていないしね」

「それが問題なんですよ博士…」

「大丈夫だよシゲルくん。この子たちがいた場所はそう遠く離れていない森だ。それに私たちはこの後森に行って研究しなければならない。研究所には他にも残っている人はいるけれど、それでも全員暇じゃないんだ…だからヒナちゃん達にはたまごを見守っててくれないかな?そろそろ孵りそうだし…私も見守っていたいんだけれど」

「それは駄目ですよウツギ博士。ちゃんとやるべきことを終わらせてからでないと」

「そうだね…ヒナちゃん達。頼んでもいいかな?」

 

「もちろん喜んで引き受けます」

「あ、俺も俺も!たまごからどんなポケモンが孵るのか見てみたいから見る!…じゃねえ見ます!!」

「私も見守ってます。何かあれば連絡しますので!」

『ガゥゥ!』

『ピィッチュ!』

 

 

「そうか!じゃあよろしく頼むよ!」

 

 

 

――――――というわけで、私たちは現在研究所のたまごがある部屋で見守っている。…といっても、ただ見守っているだけだと暇になるので、2つのたまごの模様を調べながらもシルバーが持ってきていたバックから【ポケモンのたまご】という本を取り出して見ようということになった。もちろん私たちも興味があってシルバーと一緒にそのポケモンのたまごの本を見た。

たまごの本はいろんな種類の写真が載せられていた。でもこの本に書かれているのは一般的に良く見かけるポケモンのたまごのようだ。おそらく貴重なたまごや滅多に見れないポケモンのたまごは載っていないのだろう。

本に載っていたのは、主にカント―地方とジョウト地方の御三家のたまごやポッポとコラッタ…他にも歩いていれば見かけるようなポケモンのたまごが写真付きで説明書きが書かれていた。そのポケモンたちの模様は変わっていて…身体の模様と同じ色がたまごに表れていたり、それぞれのタイプの色によってたまごもその一色に染まっていたりとすべてが違うのだ。

そしてリザードとピチューはそれぞれ自分の種族と同じたまごを見つけて笑いながら私たちに教えていて…少し楽しいと思えた。

 

 

 

――――――そんな時だった。

 

 

「ん?あれ…なあ動いたぞ今!!」

「へっ!?本当!!」

『ガゥゥ!?』

『ピチュゥ!?』

「そろそろ孵るかもしれないということか…いやまだただの前兆かもしれないな」

「どっちでもいいだろ!たまごが元気ならそれで!」

「まあそう…だね。無事に生まれてくれればいい…かな?」

『ガゥゥ…!』

『ピッチュゥ!』

「ふん…」

 

 

ぐらぐらと揺れているたまごを見つめて…私たちはただ真剣に見ていた。このたまごから孵るのがどんなポケモンであろうと元気であればいいと…。

 

 

 

 

 

 




妹の心境。
 たまごが無事ならいいと…その時は必死にそう考えていた。








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