マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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久し振りの―――――――。






第二百三十六話~兄は懐かしむ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鏡の前で元の世界に戻りたいと念じる…か…」

『ピィカ…』

「うーん…駄目!何度やっても同じかも…」

「ハルカ!諦めずにやってみましょう!そうすればすぐに元の世界に戻れるわ!」

「えー…もうちょっとここにいてユリーカとお話ししたい…!」

『デネデネ!!』

「こらユリーカ!…それは駄目だよ!」

 

「まだ時間はあるんだからあわてなくても大丈夫だぜ!な、ピカチュウ」

『ピィカッチュ!』

「そうよ。もしかしたらユリーカの言うようにここに居たいっていう気持ちがあるから戻れないかもしれないし…」

「私もユリーカももっとお話ししたい!!」

『デデデネ!!』

「ユリーカ!…はぁ…とりあえず外に一度出てみませんか?一度意識を改めればもしかしたら帰れるかもしれませんし…」

 

「……そうだな」

『ピッカァ』

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。現在うつしみの洞窟にて鏡のような水晶に向かって何度も元に戻りたいと試していますがうまくいきません。もしかしたら向こうの世界のセレナたちが言うようにこの世界に居たいと言う気持ちがあるから帰れないのではと考えた。確かにすぐに帰るのは名残惜しいし、もうちょっと話していたいと言う気持ちはあるから仕方ないだろう…だからこそ一度外に出てからいろいろとやりたいことをやって…そして帰ろうということになった。

 

向こうの…原作世界のサトシが言うには、一度【泣き虫サトシ】に出会った後、別世界から元の世界に帰った後うつしみの洞窟から外に出て、ポケモンセンターへ向かったみたいだった。でもその後シトロンがうつしみの洞窟にて失敗させてしまった機械の残骸を持ってくるのを忘れてきてしまったとのことでまた洞窟へ引き返し、そしてあの鏡の前で回収している時に話していたそうだ。別世界でのサトシ達がいるということを…話しているうちにまた会いたいと思ってしまったらしく…ちょうど近くにいた俺たちが巻き込まれた可能性があると…そうサトシ達が説明してくれた。

俺は、ただサトシ達が【会いたい】と願うだけで別世界へ行けるようになるのは何かポケモンの力が作用しているのかと疑問に思う。イッシュ地方でのディアルガのあの時間の宝玉の作用もある意味事故だった。そしてもう二度と起きないだろうと思っていたのだ。…まあもしかしたらいつかは会うかもしれないとはちょっとだけ思ってはいたけれど、こんなに早く再会できるとは思わず、予想外だった。けれど、イッシュ地方での事故は…まあ仕方ないとして、このうつしみの洞窟でそう簡単に別世界へ行けていいのかと思う。

でもサトシ達が言うにはこれはめったに起きることじゃないらしい…。つまりはそのめったに起きることじゃない事故を二度も起こしたというわけだこの目の前にいる【サトシ】は…。

 

ある意味凄いと思うが…とりあえず戻れればそれでいいかと考えて俺たちは歩いて行った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「うわーい外だぁ!!」

『デネデネ!』

「ここから行けばすぐにポケモンセンターなんだよ!」

『デデデネ!』

「本当!?早く行こう!」

『デネ!』

「いえ、うつしみの洞窟から離れすぎない方が良いと思うよユリーカ達」

「そうですね。こっちのシトロンの言うとおり、元の世界に戻れなくなるかもしれないんだから駄目だよ!」

「む…」

「ぶー…つまんない!」

『デネ…!』

『デネデネ!…』

 

 

「よしそっちの俺…じゃないサトシ!バトルやろうぜ!バトル!」

『ピィカッチュ!』

「おう?…まあ良いけど…」

『ピィカ』

「あ、待ってバトルなら私がやりたいかも!」

「ハルカ?…よしやろうぜ!!」

『ピッカァ!』

 

 

―――外に出た瞬間いろんな意味でカオスになったと俺は感じてしまった。

第三者から見れば双子が大発生しているかのようなサトシ達の様子はとても楽しそうに見えているか…それともいろいろと騒いでいるかのように見えているかだろうと思う。まあそれでも悪い雰囲気になるよりかはマシだと考えて俺はピカチュウを抱きしめてから一緒に近くの木にもたれかかって座り込んだ。遠くの方ではハルカとサトシがバトルをしていて、セレナたちがそれぞれ服についてやフォッコのブラッシングについてやたまに俺たちについて話し合い…そしてシトロンとユリーカ達はポケモンセンターに行こうとして止められている。

 

ある意味懐かしくなるような見たことある光景に、俺とピカチュウは笑みを浮かべて眺めていた。

 

 

 

「……平和だな。ピカチュウ」

『ピィカッチュ』

 

 

 

―――――――まあ、そう呟いた瞬間にこの雰囲気はぶっ壊されてしまったのだけれども…。

 

 

バシャーモ対ピカチュウの戦闘に乱入する形で檻のような機械が放たれ、ピカチュウとバシャーモが捕えられてしまう。その様子を見たサトシとハルカがそれぞれの自分の相棒の名前を呼び…そして何が起きたのかを叫んだ。

 

 

「ピカチュウ!」

「バシャーモ!!…ちょっと誰なの!?一体何!!?」

 

 

 

「なんだかんだと聞かれたら!」

「答えてあげるが世の情け!」

「世界の破壊を防ぐため!」

「世界の平和を守るため!」

「愛と真実の悪を貫く!」

「ラブリーチャーミーな仇や――――」

 

 

「―――サトシ、あれって一体誰?」

「あー……懐かしき悪役?」

『ピィカ?』

「悪役…ですか?…ということは悪い奴なんですね…!」

「ちょっと!ピカチュウとバシャーモ返しなさいよ!!」

『デネデネ!!』

 

 

「おい俺たちの台詞の邪魔するんじゃない!!」

「そうよそうよ!!…というか何であんた達分裂してんの!!?なんか見たことある光景ね!!」

『ニャ!?にゃんでジャリボーイ達が増えてるのニャ!!!?もしかしてニャー達まだ帰ってきてにゃいのニャ!?』

「そんなわけないだろう俺たちは無事に帰ってきてるぞ!…たぶん」

「不安になるようなこと言うんじゃないわよコジロウ!」

 

 

「ああ、あいつら無事に帰れたんだな…そんなことよりもピカチュウを返せロケット団!!」

「そうよ!ピカチュウとバシャーモを返しなさい!!!」

「もう!またあなたたちなのロケット団!!」

『デデデネ!!』

「いい加減にしてくださいよ!!」

 

 

「へん!いい加減に何をするってんだ!」

「私たちはロケット団!」

『ポケモンを奪うのは当然だニャ!!』

 

 

 

久々に見てしまった悪の姿をしたロケット団に俺とハルカは懐かしい表情を浮かべて遠い目をしていた。それぐらい今のロケット団は違いすぎる…。そしてカロス地方で遭遇したことのないセレナたちはロケット団が誰なのか分からずに…彼らの口上の途中で言葉を遮る形で俺に問いかけてきた。それを見て苦笑しながらもちゃんと説明し、悪い奴らだと知って目の前にいるロケット団を敵と認識したらしい。

そして原作世界のセレナ達はまた来たのかと叫んでいて…サトシはというとロケット団がこちらの世界にいることに何故か安堵しているらしい。

どうやらロケット団は【泣き虫サトシ】がいる世界に迷い込んでいたらしいのだ。そこからちゃんと元の世界に戻れたことにサトシは安堵していたようだったが、檻にいたピカチュウを見て意識を改めた。ピカチュウは電撃を放ち、バシャーモが炎を放っているというのに檻は壊れず…このままでは連れ去られてしまうと考えてサトシ達はロケット団を睨みながら叫んでいる。

 

そしてロケット団はそのまま気球に乗って逃げていこうとする。その姿を見た俺とピカチュウはそれぞれ顔を見合わせてから頷き、立ち上がってから行動を開始する。

 

 

「…ピカチュウ、エレキボール!!」

『ピィカッチュゥゥ!!!!』

 

 

「な、何っ!!?」

「何よそれ!!!?」

『攻撃を最大まで吸収する檻が壊れたニャ!!?』

 

 

電気を最大限まで吸収したエレキボールをピカチュウとバシャーモを解放するために檻に向かって放つ。放たれたソレは檻を見事に壊し、ちゃんとピカチュウとバシャーモを逃がすことに成功した。そしてその衝撃で気球が壊れ、こちらに落ちてくるのを見てから近づき、俺は拳を鳴らしながら笑みを浮かべてロケット団を見た。

 

ロケット団は俺を見て冷や汗をかいて震えているのを確認したが…まあそれでもピカチュウとバシャーモを連れ去ろうとしたことに対する借りは返さないとな…?

 

 

「覚悟しろよロケット団」

『ピィカッチュ…』

「な、なによ…まだこっちにはバケッチャ達がいるんだから!!」

『チャッチャッチャ!』

『ソォーナンス!!』

「そうだぜ!俺たちはまだ負けてない!!」

『マーイッカァ!』

『ジャリボーイのピカチュウをよこすのニャ!!』

 

 

「うるせえよロケット団…さぁ、話 し 合 い でも始めようか?」

『ピィカッチュゥ?』

 

 

 

「「『ヒィ…!!!』」」

『『『ッッ…!!!』』』

 

 

 

―――――――まあ結局その後…ちゃんとうつしみの洞窟で鏡に祈る形ではなくパルキアに脅…じゃなく頼み込んで元の世界に戻れたから良かったとする。

 

でもまたあのサトシ達に会えるようなそんな予感がするのは…気のせいじゃないよな?

 

 

 

 

 






「行っちゃったか…」
『ピィカァ…』

ここは、妹が存在する方のサトシから見て、【原作】と呼ばれている世界。サトシ達は先ほどパルキアを呼び出して強制的に元の世界へ戻っていくのを見送っていた。

もちろん、パルキアを呼び出したことによって原作世界のセレナたちは驚愕し、見たことのないポケモンだと興奮していたが…。
そして兄のサトシ側のセレナたちは少しだけ驚いてはいたが、どこか納得しているようで冷静だった。

―――ちなみに呼び出されたパルキアは兄のサトシを見て小さな地震が発生するほど震えていて…怯えてしまったのは言うまでもない。


「また、どこかで会えるような…そんな気がする」
『ピッカァ!』
「そうね…私自身にも…そしてハルカちゃんにもまた会えるような気がするわ…!」
「もう1人の私…ううん、ユリーカにももっとお話しができたらいいな!また会いたい!!」
『デデデネ!』
「そうですね…また会える…彼らを見て不思議とそんな気分になりましたよ」

原作のサトシ達は兄のサトシ達を見て無意識に理解していた。彼らならまたいつか会うことができるのだと…泣き虫サトシのように事故のような形で会うのではなく、どこか意図した形でまた会うことができるかもしれないのだと…そう納得していたのだ。
だからこそ笑顔で見送ることができた。兄のサトシが脅し…ではなく洞窟の外でいきなり大声で話していた――――

「おーいパルキア出てこないとお前が以前やらかした技のせいでゼクロムの縄張り荒らして本気で泣きそうなぐらい悲惨な目に遭った時の話するぞ?それともアルセウスから聞いたお前がまだ好奇心旺盛だった頃――――」
『―――――ギュルァァアアアッッ!!!?』
「よーし良い子だ」
『ピカピ…』


――パルキアが急に空間を叩き割りながら出てきて泣きそうな表情で、人間で言うジャンピング土下座をしているような光景に目を白黒させて驚いていた事実などなかったかのように…微笑ましく見送ることができた。
まあその後パルキアはやってられるかとばかりに泣きながら自分の世界に帰って行ったのだが…。
それでも別世界のサトシ達に会えること自体奇跡であり、懐かしき友に会えた感覚で接していた。

「…じゃあ、行こうぜ!俺たちの旅へ!」
『ピィカッチュゥ!』
「ええそうね!」
「うん!私はやく次の町に行きたい!」
『デデデネ!』
「そうですね…旅を再開しましょう…!」


―――――また会える。そう思いながらもサトシ達の旅は続く。





「……それはそうとロケット団は大丈夫ですかね?最後の方では謝罪しか口にしていなかったような…」
「でもその後反撃して異世界のサトシのピカチュウに吹っ飛ばされてたよね!」
『デデデネ!』
「うん!凄かったよね…でも大丈夫かな?なんだかロケット団が可哀想な気もするけど…」

「まあ、ロケット団なら大丈夫だろ?あいつらしつこいし…」
『ピィカッチュゥ…』
「……それもそうね」
「そうだね!ロケット団なら平気な気がする!」
『デネ!』
「これに懲りて人のポケモンを盗む行為をやめてくれたらいいんですがね…」
「いやソレはないだろ」
『ピィカ』
「うんそれは有り得ない」
「絶対に止めないと思う!」
『デデデネ!』
「です…ね…はぁ…」


サトシ達の旅は続く…。





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