マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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仕方ないとは思いながらも、バトルを楽しむのは妹も同じ。





第二百三十四話~妹はダブルバトルをする~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしくお願いしますねシンジさん!」

『ガゥウ!』

『ピィッチュ!』

「…ああ」

 

 

「ジュンくん。暴走や足手まとい等はしないようにね?」

「何言ってんだよ!足手まといになるわけないだろ!」

「分かったから音量は抑えて…」

 

 

ここは、マサラタウンにあるオーキド研究所の広場となっている場所。そこにヒナたちはダブルバトルをするために集まっていた。ダブルバトルを見守るのはフシギダネ達。そして姿は見えないけれどもヒナたちのバトルを観戦するためにやって来た伝説たちがいたりする。

そして応援するためにベイリーフ達はハハコモリが作った旗や半被、ボンボンなどをそれぞれが持って応援する。それらは葉っぱで作られたものだが、ハハコモリが丁寧に作り上げたために頑丈にできていて…まるで布のように綺麗に仕上がっていた。ちなみにそれを見たシゲルはハハコモリの作り上げた上品な代物に興味を持ち、ハハコモリの知識としてできたのか…それともサトシに教わってできるようになったのかが気になっていたようだった。まあシンジに挑発されてすぐに意識をバトルへ戻し、シンジとヒナに向かい合う形で立っているのだけれども。

 

そして試合の始まりの合図はフシギダネがつるで振り上げた瞬間に始まる。シンジたちはそれぞれボールを手に持ち…そしてヒナはリザードとピチューを隣に待機してもらい始まりの合図を待った。

 

 

『ダネ…ダネフッシィ!!!』

 

 

「ニドクイン!」

『クゥォオォオオオ!!!』

「絶対に勝つぞエンペルト!!」

『エンペェァアア!!!』

 

「エレキブル…バトルスタンバイ」

『レッキィィイイイ!!!』

「行くよピチュー!」

『ピィッチュ!!!』

 

 

シゲルがニドクインを出し、ジュンがエンペルトを出すのと同時に…シンジがエレキブルを出して、ヒナは横にいたピチューに向かって言い、前に出てもらった。その後リザードは自分の出番はないと分かったのかヒナの後ろに立って応援しながらも観戦する。

 

そしてそれぞれがボールから出した瞬間、突然大きな閃光と雷撃がぶつかり合う。

 

 

「ちょっいきなりはかいこうせんとかみなり!!?」

『ピチュゥ!?』

「よっしゃ燃えてきた!行くぞエンペルト!!ハイドロポンプ!!」

『エンぺァアアッッ!!!』

「っピチュー10まんボルトしながら回転!!」

『ピチュゥ!!』

 

 

シゲルとシンジがお互いに睨み合いそれぞれニドクインがはかいこうせんを放ち、エレキブルがかみなりを放ったために大きな爆発と衝撃がバトルフィールドに流れる。

始まった瞬間の大技にヒナとピチューは驚いていたが、バトルに燃えてきたと叫ぶジュンがハイドロポンプを放ったのを見てすぐに10まんボルトで受け流しながら躱す。そのピチューの姿はある意味サトシやヒカリがよくやっていたカウンターシールドに似ていて、ジュンは少しそのことを思い出して懐かしんでいた。

 

そしてはかいこうせんとかみなりの激突が止み、シンジ達はお互いに睨み合う。その様子を見て少し苦笑したヒナだったがこのままだとバトルで不利になるかもと考えてすぐに対策をする。

 

 

「ピチューエレキブルに10まんボルト!」

『ピチュ?…ピィッチュゥ!!!!』

「ふん…ヒナ、手助けなどいらん」

「いやいや駄目ですよ…これはダブルバトルなんですから。一緒に戦うんなら必要なことは全てやりますから」

「……チッ。本当にサトシの妹だなお前は」

「それは…とりあえず褒め言葉として受け取っておきますね」

『ピチュ!』

『レッキッィイ!!』

 

 

「へぇ…エレキブルにでんきエンジンですばやさを上げた…か…少々厄介になりそうだね」

『クゥォォオオオ!』

「そんなの関係ねえよ!サトシもやっていたようにバトルで最後まで諦めずに勝つ!!」

『エンペェァァア!!』

 

 

ピチューの電気を浴びたエレキブルはダメージなど通らずに平然とした様子で立っていた。でもピチューに電気をくれてありがとうよと言うような表情でピチューに向かって笑みを浮かべていた。その様子にピチューは強気な目で頷き、そしてニドクイン達に向かい合う。

一方シンジはというと自らの力でシゲルと決着をつけたいのか無表情なのは変わらないけれども、少し不機嫌な様子でヒナに言う。でもヒナはこれがダブルバトルだからこそ成り立つ協力関係なのだと考え、やれる対策はやっておいた方が良いとシンジに向かって言った。その言葉にシンジは何も言わずただ小さくため息をついただけだった。その様子はしばらくマサラタウンで…ヒナの家に泊まって一緒にいるからこそ分かる仕草であり、文句は言わずに納得してくれたという意味でもあったためにヒナは苦笑する。

サトシのポケモンであるシンオウ地方のポケモンたちはその光景が懐かしいと感じて目を細めていたり、特性を使ったバトル方法もありかとサトシの他のポケモンたちが話し合っていたりする。

ちなみに伝説たちはその様子にヒナがトレーナーとして成長しているんだなと感動しつつもまるで親のようにその姿を見守っていた。

 

そしてシゲルとジュンはエレキブルに向かってやったピチューの行動に驚きつつも納得していた。ダブルバトルというのは一人で戦うわけじゃなく、お互いに助け合いながらも勝ちにいくバトルになる。だからこそヒナがそれをちゃんと分かっての指示だということにも納得し…ちゃんと成長しているのだなと感動していた。

先程シゲルとシンジがそれぞれお互いしか目に見えておらずに戦っていたこともある意味シングルバトルになりかねない戦い方だったと思い出し、少しだけ先程の行動を恥じながらも…ダブルバトルをしようと意識を変える。

 

 

「ニドクイン、メガトンパンチ!」

『クゥォォオオオオッ!!!』

「エンペルト!ニドクインの補助に動け!」

『エンペェアアアア!!!』

 

「エレキブル、ピチューの前に出てからまもる」

『レッキィィイ!!!!』

「ピチューそのまま動かないで…広範囲10まんボルト!!」

『ピィッチュゥゥウウ!!!』

 

 

「ニドクイン下がれ!!!…ある意味ほうでんの威力だね」

『クゥォォオオオオオ!!』

「エンペルト!ハイドロポンプで地面に向かって撃て!」

『エンペェアアアア!!』

 

 

 

ニドクインとエンペルトがエレキブルのまもるによって攻撃を防がれ、そして後ろにいたピチューのほうでんのような広範囲の10まんボルトに巻き込まれそうになる。ピチューの前にいたエレキブルはでんきエンジンのためにでんきタイプの技が効かないための攻撃方法だ。もちろんニドクインもエレキブルと同様に電気技は効かないのだが、それでもまもるで防がれてしまったエレキブルに何かされては駄目だと考えて咄嗟に下がった。

そしてエンペルトは電気技が弱点なためにジュンが慌ててハイドロポンプで瞬間的にピチュー達から避けようとする。エンペルトはそのまま大きく地面にジャンプして何とか躱すことができたが、危なかったと冷や汗を出した。

…ちなみに外野にいたサトシのポケモンたちは流れ弾ならぬ流れ技が観戦場所にもきていたが、それぞれ余裕で躱したり技で防いでいたりする。

 

 

そしてこのままでは長期戦になると考えたのか、シンジがシゲル達に向かって挑発する。

 

 

「ふん…何だ?それだけで終わりか?」

『………レッキィ』

「あ、嫌な予感…」

『ピチュゥ…』

 

「……ほう、言ったね?後輩ライバルのくせに…」

『クゥォォオオオオ…』

「なんだよなんだってんだよー!!!シンジ!これで終わりなわけないだろ!!」

『エンペェァァアアアアアア!!!!!』

 

「ニドクイン、はかいこうせん!」

『…クゥゥオオオオオオオオ!!!!』

「エンペルト!こっちもはかいこうせんだ!!!」

『エンペェェァァアアア!!!!』

 

「…エレキブル、かみなりで防御」

『レッキィ』

「うわっ!?ちょっピチュー下がって!!」

『ピ、ピチュゥ!!』

 

 

シンジの挑発にのったのはシゲルとジュン…そしてエンペルトだ。それ以外のヒナとポケモンたちは苦笑しながらもバトルの行方を見守る。シンジの挑発にのったシゲルとジュンはそのまま大技でエレキブルを倒そうとしていて、エレキブルはかみなりで防御したりまもるで防御したり…そしてシンジの指示によって攻撃したりとバトルは激化していった。もちろんそれについていけなくなったヒナは慌てた様子でピチューに躱してもらいながらも、これは攻撃していいのかと迷う。

 

―――――でもそれはサトシのポケモンたちの行動によって変わった。

 

 

『ダネ…ダネフシ』

『ジュッ!』

 

「うわっ!…ありがとうジュカイン」

『ピチュゥ…』

『ガゥゥ…』

『ジュルッ』

 

 

ヒナ達に攻撃されては駄目だと考えてフシギダネが苦笑しながらも近くにいたジュカインに合図する。それを見たジュカインはピチューを含めたヒナとリザードを抱き上げて先程の観戦していた場所まで戻った。そしてその様子に気づかないシンジ達は激しいバトルを繰り広げている。呆れたような表情を浮かべたフシギダネ達に嫌な予感がしたヒナたちは抱き上げられているジュカインの腕に抱きついて離れないようにした。もちろんジュカインも離れるつもりはなく、ただヒナたちに攻撃がいかないように気をつけて見ている。

 

 

『ダネフッシィィイ!!!!!』

 

「っ何だ?」

『クゥゥオオオオオ…』

「何だよ今の音!!!?」

『エンペェァアア!!?』

 

「……チッしまった」

『レッキィ…』

 

 

バトルを中断させてしまうほどの大きなソーラービームが空に放たれる。その草タイプでなかなかできなさそうな極太ソーラービームの衝撃に我に返ったシンジたちは周りの状況を見て察し、やりすぎたと反省していた。

でもヒナたちはというとまだまだそんな激しいバトルについて行けないことに己の弱さを自覚し…もっと強くならなければと考えていたりする。

 

もちろんこの後、ダブルバトルは再開しなかったが…シングルバトルでの試合が始まり、それぞれが観戦して盛り上がっていたりする。

 

 

 

 

 




妹の心境。
 とりあえず怪我はなくてよかった……かな…?



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