マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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いつも通りに見えて少し異なる。






第二百三十三話~妹は強制される~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞヒナ」

「へ?何処へですか…?」

『ガゥゥ?』

『ピチュゥ?』

「オーキド研究所だ」

「良いから行こうぜ!!バトルするんだからさ!!!」

「煩い喧しい静かにしろ」

「なんだってんだよ!!そんなに大声出してないだろ!!!」

「チッ…無自覚か……」

 

 

「へ………えぇ!?バトルって何!!?」

『ガゥゥ!?』

『ピチュゥ!?』

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。いつも通りの平和な朝を迎えて、シンジさんも機嫌よく起きてから朝ごはんを食べました。いつものしかめっ面とは違ってちょっとだけ雰囲気が軽い…というより楽しそうな感じがするから、何か良いことでもあったのかなと思った。

まあ見た目だけだと笑顔になっておらずいつもの無表情なんだけれども…それでも機嫌が良いと言うことだけは雰囲気を見て分かった。どうして楽しそうなんだろうと思いながらご飯を食べていたら…朝食の後、疑問はすぐに解決した。

 

昨日、オーキド研究所に泊まっていたはずのジュンさんがこちらに来て私たちを外へ連れて行こうとした時に分かったのだ。

しかもその時シンジさんも一緒になって行くぞと言い、何処へ向かうのか聞くとオーキド研究所へ向かい、そこでバトルをすると言ってきた。

だからこそシンジさんが朝の時にあんなにも楽しそうにしていたんだなと理解し、強制的にオーキド研究所に連れて行かれた私たちはため息をついて現実逃避をした。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

オーキド研究所に行き、ケンジさんとオーキド博士に挨拶をした私たちは奥の部屋でくつろいでいるシゲルさんに会いに行く。

…そういえばシゲルさんは今休みをもらっていてこっちに来ているらしいけど…いつまで休みなんだろうと少しだけ疑問に思えた。ついでに言うとシンジさんやジュンさんもいつまでマサラタウンにいるんだろう…まあそれ聞くと兄が帰ってくるまではいる!と言いそうな気がしたために質問はしない方が自分のためにも良いだろうと考えて何も言うつもりはない…。

 

 

シゲルさんは爽やかそうな笑顔で私たちを見て口を開いて言う。

 

 

 

「やぁヒナちゃん達…ついでにシンジ君もよく来たね。ジュン君はおかえり」

「ふん…」

「こ、こんにちは…ああもしかしてバトルって前に聞いたダブルバトルのあれですか…?」

『ガゥゥゥ…?』

『ピチュゥ…!?』

「ありゃまだ言ってなかった!?悪いなヒナ!これからダブルバトルをやるから!」

「耳が痛い…まったくお前はそういう所は変わらないな…」

「な、なんだってんだよー!それ以上文句言うなら罰金だぞ罰金!!」

「こっちの方こそその大声に対しての罰金を払ってほしいものだよ…ヒナちゃん、もうサトシにも了承を貰ってるから安心してバトルしても平気だよ」

「え!?どういうこと…ですか?」

『ガゥウ?』

『ピチュ?』

 

「実はね――――――」

 

 

 

シゲルさんが話してくれた内容は、兄に対する電話の騒動の後に起きた話だった。兄から電話が来たあの日、シンジさん達が電話に集まっていろいろと騒いでいたために巻き込まれないように私たちはこっそり彼らから離れていったのだが…でもそれはある意味やってはいけない内容だったのだと話を聞いていてそう理解し、後悔した。

シゲルさんの話だと私たちが離れていったしばらく後、ジュンさんがバトルをしてもいいかと兄に頼み込んだらしい。もちろん兄は笑顔で親指を立てて存分に鍛えてくれと言っていたみたいだった。まあバトルに夢中になったりやり過ぎになったりするならフシギダネ達に止めてもらうからなと忠告していたらしく、嫌ならばやめようかとシゲルさんに問いかけられた。

 

 

「サトシは何も言っていなかったけれど、ヒナちゃん達がやりたくないと言うなら僕たちは止めるよ。サトシが直接何も言わなくても…そういう内容は含めていただろうし、だからこそヒナちゃんがバトルをしてくれるならしたいと答えて、嫌なら嫌だと正直に言ってほしい」

「なあヒナやるよな!!?俺たちと一緒にやらないと罰金だぞ!!!!」

「おい脅すな!!……ヒナ、やりたくなければ素直に言え」

 

 

「えっと……」

『ガゥゥ…!』

『ピチュ…!』

 

 

本当だったらダブルバトルをやりたくないとそう言うだろう…。

それにわざわざ兄に頼んでからそういう選択肢を与えるのはやめてほしいということも言いたくなる。

最初にダブルバトルをやろうとジュンさんが言った時も私はやりたくないと言った。だからこそ諦めていたと思ったのに兄に話すほどやりたいのかという疑問も浮かんだ。そして同時にこれは断れない雰囲気だと言うことも分かった。リザードやピチューはやる気に満ちていて絶対に勝つぞと気合を入れており、シゲルさん達は少しだけ不安そうに…でもバトルは絶対に受けてほしいと言う表情で私を見つめている。

リザードたちがやりたいと思うなら…やってもいいかと思った。それにバトルの勉強にもなるだろうし…私が嫌なのはシゲルさん達のバトルで夢中になりすぎてそれに巻き込まれることだ。シゲルさんとシンジさん…そしてジュンさんのバトルは苛烈で、周りを気にせず夢中になりすぎて一緒にバトルをしていたリザードとピチューが傷つく可能性があることが気がかりだった。でもそれは兄の忠告によって大丈夫だと言ってくれたし…まあ何とかなるかなと思って頷いた。フシギダネ達が見守るのならリザードもピチューも余計な怪我を負わずに済むだろうし…。

だからこそ、このバトルは絶対に断ることはできないとそう考えて頷いた。頷いた私にシゲルさんが優しい笑顔で私にありがとうと礼を言っており、シンジさんが頭を撫で…そしてジュンさんが満面の笑みで大声で叫んでいる。ぶっちゃけジュンさんの大声がドゴーム…いやバクオングぐらいはあるんじゃないかと思いながらも…その騒音にキレたシゲルさんとシンジさんを見ながらも遠い目をして苦笑した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「…ちょっと待ってッ…フシギダネ…は分かるけど何でお兄ちゃんのポケモンが集合してるの!!?」

『ガゥゥ…』

『ピチュゥ…?』

 

 

オーキド研究所は広大なため、バトル場にできそうな広い場所に行くために研究所から外へと向かう。

でも外に出たらいきなり見えてきたたくさんのポケモン達…兄の手持ちであるフシギダネ達に驚いてしまい叫んでしまった。フシギダネについては兄がバトルに夢中になったり何かあったりした時に止めてもらう要員としているのだと思っているため納得できる。だが何故オーキド研究所にいるポケモンたち全員が来ているのだろう…ああいや、シゲルさんの話だとフシギダネ達と言っていたのだからフシギダネ以外にもいるんじゃないのかということは少し考えてはいたが、まさかオーキド研究所にいる兄の手持ち全員とは思わなかった。

 

私の驚き声にシゲルさんが苦笑しながらも口を開いて言う。

 

 

「フシギダネにバトルの協力をしてもらおうかと思って頼んだらいつの間にかこうなっていたんだ」

「すげーよな!こいつらサトシの手持ちなんだろ!!本当に強そうだ!!」

「……ゴウカザル。昨日も会ったが元気そうだな」

『ウッキャァ!』

 

 

「あーなるほど…つまりフシギダネから皆に伝わって…それでバトルを観戦する感じで集まったということかな…」

『ガゥウ?』

『ピチュゥ?』

『ダネダネ…ダネフシ』

「微妙な表情で頷いてるってことはまあだいたい合ってるってことだよね?」

『ガゥゥ…』

『ピッチュ…』

『ダネェ…』

 

 

とりあえず兄のポケモンたちが集まったというのは仕方ないかなと思っておく。

兄のライバルであるシゲルさん達のバトルはある意味勉強になるし、新しい修行方法も考えられるかもしれないと思って観戦しに来るジュカイン達もいるぐらいなのだから…。

でもちょっとだけ微妙なのは応援旗のようなものがフシギダネとヨルノズク、そしてジュカインとブイゼル以外のポケモンたちにつけられていることだ。…おそらくハハコモリが作ったのだろう……葉っぱで作ったそれはとてもすごい出来栄えになっていて、シゲルさんが興味深そうにマグマラシの着ている葉っぱの服を観察していた。ワニノコの手には葉っぱで作った応援用のボンボンがあるぐらいだし…修行に役立つかもしれないという思いでバトルを見に来たわけじゃないと言うことが分かって私たちは恥ずかしくなってしまった。

そんな私に気がついたのか、フシギダネが頑張れと応援してつるで肩を叩いてくれたのが余計に恥ずかしい…でも、それぐらい皆が応援しているのだから私たちも頑張ってバトルで勝ちに行かなければと思った。

 

 

…まあ、兄とよくバトルして、ライバル認定されているシゲルさん達を相手に勝てるかどうかはまた別問題なんだけれども。

 

 

 

 

 

 

 




To be continued.





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