予想だにしない事態発生。
こんにちは妹のヒナです。勉強もそろそろ良い感じになってきたと感じられ、ちょっと遊ぶ余裕が出てきました。
このままだったら試験の方も平気かなと思いながらも…そういえばヒビキ達は大丈夫かなとふと考えた。ヒビキ達は学校で学ぶことを選択し、マサラタウンから外にある学校に行ったという話を聞いたけれど、本人に聞いていないために本当かどうかは知らない…。まあでも彼等ならきっとうまくいくだろうと思っていた頃に、いつもの電話が来た。
「よぉヒナ、久しぶり。勉強はうまくいってるか?」
『ピィカッチュ』
「開口一番にそれなのお兄ちゃん…うんなんとか大丈夫だよ」
『ガゥゥ』
『ピチュ』
オーキド研究所にいつもの兄からの電話が来たために、私たちは少しだけ嫌な予感がしながらも電話を代わる。
でも兄はいつも通りの表情で話していたし、何も問題はないようだったから大丈夫かと…嫌な予感…勉強に対する無茶ぶりをされるという予想はおそらくないのだろうとそう思った。
兄は少しだけ優しい表情でカロス地方にあったことを話す。私たちはそれを聞いて首を傾けた。
「……メガシンカ?って確かカロス地方に来た時にすぐ教えてくれた新しいポケモンの進化の方法…だよね?」
『ガゥゥ?』
『ピィッチュ?』
「ああそうだぜ。…メガルカリオになる方法や、キーストーンのこと…いろいろとヒナに話したいことがたくさんあるんだ」
『ピッカァ!』
「そっか、でも興味もあるし聞きたいって思ってるけど…でもそれはお兄ちゃんがマサラタウンに帰ってきてから詳しい話を聞くことにするよ。まだまだメガシンカについて分からないことが多そうだもん」
『ガゥゥ…』
『ピッチュゥ!』
「おう!メガシンカもそうだけど…ポケモンにはまだまだ秘密が溢れているからな!」
『ピィカッチュゥ!』
「メガシンカ…リザードやピチューもできるようになるかな?」
『ガゥゥ?』
『ピチュゥ?』
「…悪いやっぱりヒナには聞いてほしいから話す。手短にな」
『ピィカッチュ』
「あー…うん。お兄ちゃんのその表情見たら拒否できないの分かるからいいよ…」
『ガゥゥ!』
『ピチュ!』
兄はカロス地方に来てから最初に電話した時のようにとても目を輝かせて楽しそうにメガシンカをするルカリオに会ったと話していた。
ルカリオと言うとアーロンさんと旅に出た方のルカリオを想像してしまう。
でも兄の話だとコルニという人の手持ちであるルカリオは普通に話せないし料理もできない。でもレベルや攻撃力が強くて、最近ようやくメガシンカを使いこなせたという言葉に驚いた。あまり詳しい話を聞くつもりはなかったが、誰かに話したいらしく兄からメガシンカのメカニズムについての予想を聞く。
兄が言うには、メガシンカはただ絆を深めるためじゃないと言うことを話してくれた。トレーナーとポケモンの心が1つになっていなければ、メガシンカを使いこなすことができないのだと言うことを…それはつまり、メガシンカは普通に絆を通わせるのではなく、心を一つにするということだ。トレーナーの気持ちとポケモンの気持ちを1つにする。そうしなければ例え絆が強くてメガシンカができたとしても暴走する可能性があるということを兄の話から聞いた。
私にとってそれは…通常の進化をして、トレーナーといつも通りに接するかそれとも拒絶するかの二択に似ていると感じた。進化とは全く違う新しい進化なのだけれども…ポケモンが進化することによって起きる変化は似ているようだ。そしてメガシンカはやはりとても困難な方法なのだろうと考えて苦笑する。
そんな困難な方法だとしても兄は絶対に使いこなせそうだということを私たちは確信しているからだ。
そして、兄が話し終わったと思ったら何かを思い出したかのように叫ぶ。
「あ、そうだ…おーいハルカ!こっち来いよ!」
『ピッカァ!』
「え…ハルカさんそっちに来てるの!!?」
『ガゥゥウ!!?』
『ピッチュゥ!!?』
ハルカさんはマサラタウンによく来るとイッシュ地方から帰って来た時に兄のポケモン達や伝説たちが私たちに向かって話してくれた。
ハルカさんがマサラタウンによく来るのはマナフィに会いたいという気持ちが強いということと、兄の修行場と化した迷いの森のトレーニングフィールドが気に入ったからだと言う。
でも私が帰って来た時に擦れ違いでコンテストが始まるから一度ホウエン地方に旅立つと言って帰って行ったはず…。だからホウエン地方で普通にコンテストに出場しているかと思っていたらまさか兄と旅をしていただなんて思いもしなかった。
そして兄に呼ばれたハルカさんは電話先にいる私に向かって手を振りながら笑みを浮かべて口を開く。
「ヒナちゃん!久しぶりかも!!」
「はい。お久しぶりです!…というか何でハルカさんカロス地方にいるんですか?ホウエン地方のコンテストは…?」
『ガゥゥウ?』
『ピッチュゥ?』
「ホウエン地方のコンテストが終わって、そのままマサラタウンに行こうと思った時にサトシから連絡があったの!それにカロス地方のポケモンパフォーマーコンテストも気になるから一緒に旅しているのよ!!」
「…まあ一時的な旅仲間になるかもな」
『ピッカッチュ』
「そ、そうだったんですか…」
『ガゥゥ…』
『ピチュゥ…』
ハルカさんは何で兄に連絡があって、カロス地方に行くことになったのかを私たちは分からないし知らない。けれどそこまで詳しく聞くつもりはなかったために私はそのことについて話をするのを止めてただ苦笑して頷いただけだった。もちろんリザードやピチューも一緒だったらしく、ハルカさんの方を見て私と同じような表情を浮かべていた。
「そう言えばそっちは今どうだ?なんかポケモンが暴れてるって聞いたけど…」
『ピッカァ?』
「ううん大丈夫だよ!もうポケモンが暴れてるっていう目撃はないみたいだし…警戒態勢は解かれてるから平気!」
『ガゥゥ!』
『ピチュ!』
「そっか。でももしかしたら何かあるかもしれないから気をつけるのよヒナちゃん。ミュウツーたちが怒っちゃうかもだからね!」
「そうそう。お前は事件に巻き込まれやすいんだから気をつけろよ」
『ピッカァ』
「いや、ハルカさんの気持ちはありがたいし、実際にそうならないように気をつけますけど…お兄ちゃんのそれは聞き捨てならない!私そんなに事件に巻き込まれてないよ!」
『ガゥ…ガゥゥ…』
『ピチュゥ……』
「ちょっ…リザードとピチューもそんな顔しないで!私が本当に事件に巻き込まれやすいって思われるから!」
「いや実際に巻き込まれてるだろ」
「巻き込まれてるかも」
『ガゥゥウ…』
『ピチュゥ…』
『ピィカッチュ…』
「断定しないでよ…ああもう分かったから!」
兄達が言ってる言葉はまだ理解したくないけれども、でもそれでも心配しているということは分かったからとりあえず頷いておいた。それを見た兄たちも…リザードたちも良かったとホッとしており、まだ大丈夫なのかと心配をしていた。そしてそのまま話は終わり、電話を切ろうとした……その時だった。
「あああサトシ!!!こんなとこにいたのか!!!」
「…え?ジュン?何でお前マサラタウンにいるんだよ!?」
『ピッカァ?』
「煩い勝負しろ!!!」
「ちょっと君の方が煩いかも…」
「おーいシンジ!!サトシが電話にいるぞ!!」
「はぁ?シンジもいるのか?おいヒナどういうことだ説明しろ」
『ピィカッチュ…』
「いや私もさっぱりわからないんだけどとりあえずお兄ちゃんとバトルしたくてこっちに来てるのは分かる…あとシゲルさんも」
『ガゥゥ…』
『ピチュ…』
「おい待てシゲルもか!!?」
『ピッカァ!!?』
兄と話をしている間にジュンさんがシンジさんを呼ぶ大きな声のせいでシゲルさんもこちらに来てしまった。
そういえばケンジさんが最初に兄からの電話に出た時シゲルさんはオーキド博士とある研究について話し合っていたから気づいていなかったような気が…ああでも今気づいたからもう関係ないことかと私たちは遠い目をしてそのカオスを見る。シンジさんがシゲルさんを睨み…そして兄を睨んで話しかけた。
「おいサトシ…いまどこにいる」
「カロス地方だけど?というかこっちに来るつもりかおい来んな」
『ピィカ…』
「なにいってんだよ!来るに決まってるだろ!!マサラタウンにいてもお前いないしバトルしたいのにできないんだからな!!罰金だぞ罰金!!!」
「だから煩いよ君…そうだサトシ、ヒナちゃんから話を聞いたけどメガシンカのこともっと詳しく教えてくれるかい?」
「メガシンカ…何だそれは?」
「君に答えるつもりはないよシンジ君?」
「……………………」
「メガシンカって何だ!!?なあサトシ教えてくれるか!!?」
「お前等うるせえ!!!!とりあえずシンジとジュンはこっちに来るなシンオウ地方に帰れ!!あとシゲル、メガシンカについてはマサラタウンに帰ってきたら話すから今は聞くな!!まだ俺にも分からないことが多いからな!!」
「ふざけるな。サトシとバトルするためにこちらに来たと言うのにこのままシンオウ地方に帰れるか」
「シンジと同じ気持ちだぜ俺は!!それにサトシに負けたまま帰れねえよ!!カロス地方…俺も行く!!」
「珍しい研究になれるかと思ったんだけどね…マサラタウンに帰ってきてから話を聞くのは少し待ち遠しいから僕も行こうかな?」
「だから来るなって言ってるだろ!カロス地方に来たら叩き潰すぞお前等!!!」
「…カオス」
『ガゥゥ…』
『ピチュゥ…』
「何か懐かしい光景ね…ホウエン地方での旅の事思い出しちゃったかも」
『ピカピ…』
この後結局兄がキレてカロス地方にきたら徹底的にボコるぞと脅したためにようやく事態は解決したような…余計に悪化したようなそんな気がした。
でもまだまだ騒がしい兄たちに私たちは微妙な表情を浮かべたまま電話している所からこっそり離れていった。
――――思えばあの時、私達がこっそり離れていかなければ【あれ】を止めることができたのかもしれないと…後にそれを知り、少しだけ後悔した。
…少しだけ。