マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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それぞれの性格、個性…そして絆が表現される。






第二百二十八話~兄は花を見る~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花を生ける…かぁ」

『バゥゥ』

「何だか拍子抜けって感じがするかも…」

『バッシャァ…』

「まあまあそんなこと言わずにやろうぜ。多分メープルさんも何か考えがあってこれやってもらおうとしてるんだろうし…」

『ピッカッチュ』

「私は楽しいよ!フォッコと一緒になって花を生けるのって!」

『フォコ!』

「とにかくやれと言われたらやるまでですね!僕はこの修行が終わるまでにこの【生け花くん1号】を完成させてみせます!」

『リィマ!』

「…え、もうそれ一号って言わないよねお兄ちゃん?」

『デネデネ?』

「いいや!完成してこそ一号なんだよユリーカ!!」

『マァロ!!』

 

こんにちは兄のサトシです。ムスト山でメープルさんからメガシンカするための修行が始まるかと思いきやいきなり生け花をしてくれと言われて皆が戸惑ってます。しかも今日で5日目になる。…メープルさんは満足そうな表情を浮かべているだけで何も言わずにいるし、コルニとルカリオは早くメガシンカを使いこなさなきゃと言う焦りから不満そうだ。

 

花は最初はメープルさんが持ってきてくれたのでその花々を使って生けたのだけれど、次からは自分で花を採ってから生けるようにと言われた。

メープルさんがコルニやルカリオに向かって山をじっくり見た方が良いとさりげなくアドバイスをしていたからこれも修行だと分かるけれど、俺やピカチュウはどちらかというとバトルして勝つことを積極的に行っているためこういうバトルとは無縁なことはあまり好まない…もちろんハルカやコルニもだ。

まあシトロンが花を生ける機械を作ろうと新たな目的を考えたり、セレナとフォッコが山で見つけた花を生け花にしたり押し花にして楽しんだりと飽きずにやっているからまあ不満はないのだけれども…。

このまま永遠に続くわけじゃないとは思うが……とりあえずしばらくの間は様子見ようかなと思った。

 

 

「…でもまあ、何とかなるか」

『ピィカ?』

 

「ほら、コルニとルカリオの花って最初はそれぞれ生けた花しかなかったけど、今は違うだろ?」

『…ピッカッチュ!』

「花の違いは、心の違いって言えるかもしれないからな…」

『ピカピカ…』

 

 

ピカチュウと俺はいつも昼間に花を生ける部屋に……今は誰もいない部屋にいた。そこは微かに花の香りが漂っており、くさタイプのポケモンが好みそうな場所だと感じた。現在、他のみんなは食事の準備や明日の花は何にしようかと考えるためにそれぞれ他の部屋へ行っている。そんな中、俺とピカチュウは今日生けた花を見に部屋に行き、今までの違いを考えていた。

 

今までのコルニとルカリオの花はそれぞれが別のを生けていたのが特徴だった。メープルさんは何も言わなかったけれど、これはポケモンとトレーナーの心の象徴なのではないかと思えたのだ。セレナも同じように感じていたのか、花を生けながらもポケモンとトレーナーの個性が見れるようだと俺に向かって言っていたからよく分かる。幸いセレナの話はコルニ達には聞こえておらず、まだ何で生け花なのか分かっていないのかもしれない。でも生け花がトレーナーとポケモンの心を表していると言うのなら、今日生けた花瓶にあるこの一輪の大きな花はコルニとルカリオの心の変化であり、良い兆候なのではないかと思えたのだ。

もちろんメープルさんは何も言わずに明日もよろしくねと言っていたため、コルニとルカリオは残念そうにしていたけれども……。

 

 

「あ、サトシ」

「ようハルカ…あれ?コルニとルカリオは?」

『ピィカ?』

「確かメープルさんに呼ばれて何か話していたのは見たよ?でもあれでちゃんとメガシンカ使いこなせるようになるのかな…」

「セレナから話聞いたのか…まあコルニにはコルニのやり方…俺たちには俺たちのやり方があるんだろうな」

『ピカピカ』

「修行の仕方ってこと?なんだかあまり考えるのは疲れるかも…」

「はは…でもまあメープルさんに呼ばれたんならそろそろ終わるだろ。花を生けるのも…ルカリオが暴走するのも」

『ピッカッチュ!』

「そうなるといいわね…」

 

 

俺とピカチュウは寝室となっている部屋へ行く。そこにいたのはハルカだけで…先程はコルニとルカリオもいたのにどうしていないんだろうと首を傾けたら教えてくれた。ちなみにセレナやシトロン、ユリーカ達はキッチンに行っているためにここにはいない。

ハルカはセレナから花の修行方法についての予想を聞いたのかいまだに半信半疑だけれども、でもメガシンカを使いこなせたらいいとコルニ達のことを考えていたようだった。

まあ、メープルさんに呼ばれて話をしているようだし、先程の部屋にあったコルニ達の生け花を見ていれば何とかなるのではないかと予想する…とにかくこのまま何も言わずに見ていようと俺たちは思った。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「サトシ…私たちと勝負してくれないかしら」

『バゥゥ!!』

 

「勝負?良いのかやっても…?」

『ピィカッチュ?』

「ええ!メープルさんからも良いって言ってもらったし…なによりも、サトシとバトルして私たちはメガシンカできるんだと証明したいの!!」

『バゥゥ!!!』

 

「…分かった。とりあえずここじゃあバトルできないから広場に行こうか」

『ピカピカ!!』

 

 

翌日、メープルさんから話をしたコルニとルカリオは真剣な表情で俺たちに向かって勝負してくれと言う。その言葉に俺たちはお互いに顔を見合わせて驚いた。でもなるほどと納得した。メープルさんがバトルしてもいいと話していたということは、そろそろ大丈夫だと考えて言ったということだ。

それに俺とのバトルでメガシンカを使いこなせるようになりたいのだろう。バトルで何度も負けてしまった俺たちに勝つために…ちゃんと成長しているんだとその証明をして見せるために。

だから俺たちはその言葉に頷いた。そして傍で驚いているシトロンたちに広場に行くと言ってから行動し、皆が慌てて外に出て観戦している中でソレは始まった。

 

 

 

「行くよルカリオ…メガシンカ!!」

『バゥゥウオォオオオオオオ!!!!!!!』

 

「ああ。やっぱりメガシンカは凄いな…ピカチュウ、きみにきめた!」

『ピッカァ!』

 

メガシンカをしたことによって波動を感じる。今までのメガシンカと同じように力強い波動だと感じるけれど、何処か勝ちたいとそう願う波動に変わったかもしれないなと俺はそう思えた。ピカチュウも同じようでルカリオから流れた波動を受けながらも笑みを浮かべて前へ出る。

 

そして俺とコルニはそれぞれ攻撃を指示するために口を開いた。

 

 

「ルカリオ、ボーンラッシュ!!」

『バゥゥウ!!!』

 

「ピカチュウ、アイアンテールで受け止めろ!!」

『ピッカァ!!』

 

 

メガルカリオの使うボーンラッシュは二刀流のように持っているためピカチュウはアイアンテールで躱しつつも、もう一撃を受け流す。その軽い動きにルカリオが悔しそうにしていたけれど、今までだったらすぐにコルニの指示とは関係なく勝つために攻撃動作へ勝手に移っていたというのに今はちゃんとコルニの指示を待っていた。その成長が嬉しいと感じる。

 

 

「ルカリオ、今度ははどうだん!!」

『バゥゥ!!』

 

 

「ピカチュウ、10まんボルト!!」

『ピッカァチュゥゥウウ!!!』

 

 

はどうだんを止めるためにピカチュウが10まんボルトを放って爆発させる。その爆発にルカリオはコルニを見て頷き、コルニもルカリオを見て頷く。その様子は以前会ったカルネさんとサーナイトのように心を通わせていると感じる…俺とピカチュウもお互いに顔を見てから好戦的に笑みを浮かべた。ようやく、コルニとルカリオの心が一つになり、ちゃんとメガシンカを使いこなせていると…そう確信したからだ。

 

 

「心は一つ…景色は二つ…大丈夫だよルカリオ。私たちは今までの修行を無駄にはしない!サトシに勝つために私たちはやるべきことをやる!!」

『バゥゥゥォォオオオオオオッッ!!!!!!!』

 

「はは…お互い認め合ってちゃんと【パートナー】になったんだな…なら俺たちもやるべきことは一つだ!行くぞピカチュウ!!」

『ピッカァァアア!!!』

 

「ルカリオ、グロウパンチ!!」

『バゥゥォォオ!!!!』

「ピカチュウ、ボルテッカー!!」

『ピッカァァアア!!!!』

 

 

ルカリオのグロウパンチとピカチュウのボルテッカーが衝突し、爆発する。その威力は爆風によって吹き飛ばされるのではないかと思えるほどの衝撃であり…そしてそれぞれの技の威力があるようにも感じた。土煙が宙に舞い、黒煙によってバトルがどうなったのかは見えない…。

 

ようやく見えたと思ったら、ピカチュウがルカリオの前に立ち、メガシンカが解けて倒れているルカリオの姿が見えた。

 

 

「ルカリオッ!!負けちゃった…でもメガシンカ使いこなせたよルカリオ!ありがとう!!」

『バゥゥウ…!!』

「ピカチュウ、お疲れ様」

『ピッカ!』

 

「ありがとうサトシ…負けちゃったけど、それでもようやくルカリオとやるべきことが見つかったって分かったよ!」

『バゥゥウ!』

「いや、俺は…というよりも俺たちはただメガシンカがどうなるのか見たくてやったまでだからな…気にすんなよ…そしておめでとう」

『ピッカッチュ!!』

 

 

 

 

――――――この後、メープルさんが花を生けることも…修行も終わったと話をして、コルニはシャラシティのジムへ帰ると言っていた。

俺たちと一緒に行くのもいいんじゃないかとセレナたちが話していたけれど、それだと俺に勝てるかどうか分からない今、このまま一緒に旅をするのはできないとコルニ達が叫んでいた。それはつまり、ようやくできるようになったメガシンカを使ったバトルスタイルを確立させるためにも、俺たちの近くにいない方が良いと言うこと…俺にそのバトルスタイルを見せない方が良いということだろう。

俺としてもそれは賛成だし、バトルに勝ちたいというコルニやルカリオのその考えはより強く…そしてより大きくなったんだと分かって笑みを浮かべた。

 

 

これからシャラジムに挑戦するのが楽しみだと考えながらも、コルニ達と別れてから歩き出した…。

 

 

 

 

 

 




兄の心境。
 目的はシャラジムだけど…少し遠回りしながら行くか…。




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