無意識と、自覚。
こんにちは兄のサトシです。今回ようやくムスト山に来ることができました。ムスト山に到着するまでかなり時間はかかりましたがようやくついてコルニ達はご機嫌そうです。
屋敷にようやく到着し、コルニとルカリオが意気揚々と扉を叩いて声を出して建物の中にいるであろう人に向かって叫ぶ。
しばらくすると扉が開き、そこで待っていたのは…クチートだった。ハルカとセレナがそれぞれ図鑑を開き、クチートについての説明を見ている。ユリーカもその図鑑を見てクチートのことを知り、笑みを浮かべて挨拶をしていた。
だが、クチートはずかん通りの姿をしているわけではなかったようだ。図鑑を見ていたセレナたちがクチートがつけている髪飾りのような部分を見つけた。その髪飾りとなっている部分にルカリオがつけているのと同じような形をした小さなメガストーンがあり、おそらくこのクチートもメガシンカをするのだろうと俺たちは興味を持つ。そして人はいないのかクチートに聞くと、首を横に振っていないといった。そのためこれからどうしようか考えていたら、後ろから花を運んだお婆さんがやって来たため俺たちは近づく。もちろんクチートも笑顔になりながらもお婆さんに近づき、足に抱きついていた。
「あらあら…元気そうなお嬢さんたちね」
『クチィト!』
「あ、こんにちは!もしかしてあなたが…」
『バゥゥ…』
「ええそうよ。メガルカリオの件でここへやって来たんでしょう?……留守番ありがとうクチート、そして皆さんこんにちは。メープルですわ」
『クチィィト!!』
「メープルさん…あの、もう知っているみたいですが言わせてください!私達メガシンカを使いこなせるようになるためここへ来たんです!!メガシンカを使えるようになるため…よろしくお願いします!!」
『バゥゥウ!!!』
「ええもちろん、分かってますよ。まずはあなた方の実力…見せてもらいましょうか」
『クチィト!!』
「はい!お願いします!!」
『バゥゥ!!』
メープルというお婆さんはクチートのトレーナーであり、メガシンカを使うことができる人らしい。俺たちはそれぞれ自己紹介してから、コルニとルカリオが前に一歩前へ歩き、話しかけるのをじっと見守る。だがメープルさんはコルニたちの問題について話はもう聞いているらしく、先にどのような状況なのか見てみようと言うことになった。
俺たちはムスト山へ着く前に前に鬼ごっこやかくれんぼ等をして修行という名の疑似バトルをしてみたり、バトルでメガシンカしてみたりをくりかえした。何度かやった結果メガシンカをして、コルニの指示を聞いていられる時間は伸びたように感じたが、まだまだそれでも完全にメガシンカを使えるというわけではなかった。
だからこそメープルさんにこれからメガシンカを使いこなすための訓練をしてもらおうということになったのだ。
「ねえサトシ…このバトルどうなると思う…?」
「あー…まあ今までのバトルからするとルカリオがコルニの指示を聞かなくなる可能性は高いだろうけどな…でもバトルは最後まで分からないのが基本だからどうなるのかは俺にもよく分からない」
『ピィカッチュ…』
「そっか…」
「あ、もしかしたらいきなりメガシンカを使いこなす可能性もあるかも…?」
「いえ、それでもまだよく分かりませんよ…メガシンカを使いこなしたとしても勝てるか否かは……」
「コルニ!ルカリオ!頑張って!!」
『デネデネ!!』
コルニとルカリオ…そしてメープルさんとクチートはそれぞれメガシンカしてバトルをすることになった。俺たちはコルニよりも少しだけ離れた場所で観戦する。
そしてメガストーンによってメガシンカしたクチートを始めて見た俺たちは感動し、強そうだとそれぞれ感想を言いつつもコルニ達を応援し始めた。でもこのバトルを見ると…俺はルカリオが少しだけ焦っているように感じた。ムスト山に着くまで修行をしていた頃とは違って…小さな異変にも見えた。でもコルニもルカリオと同じような感情を込め、クチートとメープルさんに対して見ていると分かった。つまりコルニもルカリオも同じ感情をメープルさん達に向けていたのだ。
ルカリオに対しては少しだけわかる。それは、メガクチートとなってメガシンカし、使いこなしていることへの嫉妬か…それともバトルに勝ちたいという今までと同じ好戦的な意味での心境か…まあ修行という名のバトルをよくしているからこそルカリオの性格もなんとなく分かってきたためにそう感じていた。だからつい独り言を呟いてしまったのだ。
「…ルカリオって本当にバトル好きだな」
『ピカピ?』
「へ?どうしたのサトシ?」
「いや、今までバトルとかしてきて思ったんだけど…ルカリオの表情とか戦い方とか…バトルに勝ちたいっていう思いが勝手に身体を動かしてるようにも感じたんだよな。それにコルニもルカリオと同じで好戦的だしバトルに勝ちたいっていう意欲もある。つまりトレーナーとポケモンの気持ちが一緒のように思えたんだ」
「……え?でもそれってトレーナーとポケモンだったら基本的な事だよね!?」
『デネデネ?』
「あ、サトシの言ってること少し分かるかも!コルニとルカリオってバトルしてて負けそうになると凄く悔しそうにしてるし…それに勝つために頑張って努力してるって感じるもの!それに今まで戦ってきたトレーナーやコーディネーターとのバトルは全部勝ちたいって言う目標があってやってきていたけど……コルニ達は何か違うって感じがするかも…」
「違う…?」
「…セレナ、トレーナーが勝ちたいって思うからポケモンたちもその気持ちに応えてバトルで勝とうとするのが基本的…まあつまり、ほとんどのバトルで見られるんだ。でもコルニ達はちょっと違う…俺やハルカのようにトレーナーもポケモンも一緒になって勝ちたいって望んで行動しているように思えた」
『ピィカッチュ』
「なるほど…確かにそうですね。トレーナーとポケモンは本来バトルで勝とうとするのが普通です。ですがポケモン自身が勝とうとして動くというよりもトレーナーの指示を聞いて動くというのがほとんどですし、好戦的でないポケモンもトレーナーの指示に応えて勝とうという行動をしてきます。ですがサトシやハルカのようにトレーナーもポケモンも好戦的でバトルで勝とうと真っ向から勝負に挑んでくるというケースは稀ですよ…それこそ人間とポケモンの考えが一致し、お互いが信頼し、懐いていないとできないことなんです」
「えっと…つまり、ルカリオはコルニのことを信頼しているし、好戦的で勝ちたいって思ってるからこそバトルで勝手に攻撃したしているってこと?」
「まあ他にもいろいろと理由はあるだろうけどな…」
『ピッカ』
「そうですね…サトシやハルカのポケモンたちはちゃんと指示を聞きますし、勝手に攻撃はしません。トレーナーとポケモンの気持ちが一致していますから…今行っているバトルを見ての感想でしかありませんが…ルカリオ自身の勝ちたいという気持ちの方がコルニの気持ちよりも強いというように感じられます。だからあのような行動をしたのではないかと…」
「確信は持てないし全部予想でしかないけど…ルカリオの方が勝ちたい気持ちが強いっていう可能性は高いよな…」
『ピィカッチュ…』
「じゃあコルニとルカリオの気持ちは噛み合ってないってこと?」
「ううん…たぶんコルニもルカリオも勝ちたいって気持ちは同じかも…でもそれでもお互いの思考が全部一緒とは限らないよ」
「な、何だかよく分からなくなってきちゃった…」
『デネデネ…』
俺たちはコルニ達のメガシンカバトルを見ながらも話しあう。その話はルカリオに対してのことだった。おそらくルカリオはコルニと同じでバトルに勝ちたいと望んでいるのだろう…。そしてコルニの考えと同じように、バトルに勝つために何をすればいいのか指示を聞きながらも、自身でこうやればいいと勝手に敵となったポケモンに攻撃してしまったのだろうと思う。つまりは、ルカリオが勝手に攻撃する根源となっているのは【バトルに勝ちたい】という感情だ。コルニと一緒に育って、同じようにバトルを学んで…そして修行してきたからこそコルニと似たように考えてしまったのではないかと思う。コルニがバトルで勝ちたいと望むからこそルカリオが望む…というわけじゃなく、コルニがバトルで勝ちたいと望んでいるようにルカリオもバトルで勝ちたいのだろう。でもそれはトレーナーとポケモンが一緒になって戦うということじゃなく、トレーナーとポケモンのそれぞれの意志をもって戦っているということになったのだ。
そしてそんなバトルで勝ちたいという一致しているはずの考えが何処かずれてしまって、メガシンカで絆が不一致となってしまい…暴れてしまった原因になったのではないかと思う。
だからこそ鬼ごっこやかくれんぼでバトルは一人でするものじゃないと言うことを教え、コルニ達の考えを改めさせ、メガシンカをできるようになるかなと思ったんだけれども…まあ無理だった。修行によってルカリオはコルニの指示をちゃんと聞いてバトルをするという考えを持ってはくれたが…それでもまだまだ問題はあった。そして現在メープルさんとの戦いもメガシンカしたルカリオが暴れ、バトルは強制終了となったのだった。
「メガシンカをするための絆…か」
『ピカピ?』
「なあピカチュウ…お前がもしメガシンカするとして、俺たちはちゃんとメガシンカを使いこなすことができると思うか…?」
『…ピィカッチュ!!』
「…そうか、ありがとう」
To be continued.