マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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無愛想な少年と、笑顔な幼女。





第二百二十五話~妹はシンジと話す~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…これは…?」

「ふん、これも分からないのか…これは―――――」

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。シンジさんが私の家に泊まりに来ました。あの後いろいろとシゲルさんとバトルをして壮絶な戦いの後引き分けになってしまい両者苛立ちながら舌打ちして別れていきましたよ。とりあえず兄に報告してまたバトルするならどうにかしてもらおうかなと思ってます。

 

――――それで翌日、シゲルさんやシンジさんが来て勉強をあまりしていなかったため、暗記などをしないといけないなと思い行動した。

すると家に泊まったシンジさんがこちらに来て勉強をするのかと聞かれ、泊めさせてくれた恩として勉強を教えてくれることになりました。いわゆる家庭教師みたいになって教えてくれてるんだけど…何だかちょっとだけ辛辣かな?まあミュウツーと最初に出会った時と同じ感じかなと思えばあまり気にはしない。ちゃんと教えてくれるし、ツンデレみたいなものだと思えば結構面白いと感じるし…。

リザードたちはオーキド研究所に行って修行をしてくると言っていた。そして母とバリヤードはオーキド研究所に行き、作ったお菓子を差し入れに行くらしい…だから今、家にいるのは私とシンジさんだけだ。

 

そして私は問題を解きながらもシンジさんのことを考える。あの時何でシゲルさんと喧嘩をしていたんだろうということと、どうしてここに来たんだろうということだ。昨日泊まった時には母がシンオウ地方で何をしていたのかという話と世間話等をして盛り上がっていたから聞くことができなかった。それに母からの容赦ない質問攻撃にシンジさんが困ったような雰囲気を漂わせていて、これを兄に見せたらどう思うんだろうと少し笑いそうになった。まあ、笑ったと気づかれた時点でシンジさんの不機嫌さが急上昇し、いろいろと辛辣さが増してしまうのではないかという直感もあったから頑張って耐えたけれども。

 

だからこそ、今問題を解いて少しだけ休憩している時点で何か話ができるのではないかと考えて口を開いた。

 

 

「あの…シンジさんはどうしてこのマサラタウンに来たんですか?」

「……気まぐれでここに来た」

「そ、そうですか…」

 

 

気まぐれでここに来たという言葉に苦笑しそうになった。慌てて手で口を覆い隠そうとするがシンジさんに見られてしまったようだ。でもシンジさんは少しだけ表情が怖くなっただけで本気で怒ったような感じはしなかった。でもこれ以上は話をすることができないだろうと考え、私は問題を解こうと本を見る…。

 

――――けれどその瞬間、シンジさんの声が聞こえてしまったために視線を上げて勉強を中断しつつも話を聞く。

 

 

「…気まぐれで、サトシの故郷に来て見たかっただけだ」

 

「お兄ちゃんの…故郷に…?」

「ああ、あのサトシのように人外を生み出すというマサラタウンがどんな場所なのか気になって来た」

「いや人外なのはお兄ちゃんだけであって私達とはあまり関係ないですよ!!…あ、でもママもある意味スーパーマサラ人……」

「ふん…やはりな。それにあのオーキド博士もサトシと同じだと思えた。俺のドダイトスの全力で放った技に直撃しても笑顔で笑い、無傷でいるぐらいだからな」

「…すいませんやっぱりマサラタウンはちょっとおかしいです」

 

シンジさんの言葉に耐え切れなくなって両手で顔を覆った。シンジさんが少しだけ上機嫌になったのが私には辛い。おそらくオーキド博士については昨日のシゲルさんとのバトルで戦った時の出来事について話しているのだろう。ドダイトスの技が避けられてたまたま直線状にオーキド博士がいて…その技に当たったから大怪我をしていると思ったら無傷でいたということなのだろうきっと…。

でもマサラタウンがすべてスーパーマサラ人なわけないし…まあ一部だけがおかしいのであってすべてが人外なわけじゃないと…うんそう言いたいかな。

シンジさんは私の言葉に満足そうな表情をしていた。でも笑みは浮かべておらず見た目は少し怒ってるような表情だ。…キレたらオコリザルによく似た表情になるのかなと言えるぐらい、初対面から見ると怖そうな印象をもたれそうだった。

でも私は兄から話を聞いているし、前世のことも…まあ今となっては完全に忘れてしまったけれど、それでもシンジさんのことはそこまで怖いとは感じなかった。だからこそ近所に住んでいるお兄さんのような感覚で会話をする。

 

もう勉強するための気持ちは薄れてしまったけれど、この際だからもう一つ聞きたかった話を聞こうと思い口を開いた。

 

 

 

「あの、シゲルさんの事―――――」

「チッ…」

「いやあの…何でそんなに敵視してるんですか?昨日会った時が初対面でした…よね…?」

 

「…俺は知らん。サトシから聞け」

「ぶっちゃけ今お兄ちゃんから話を聞くことはできないです…勉強のこともあるし……だからシンジさんが駄目ならシゲルさんから話を聞こうかなと…」

 

「……お前はつくづくサトシの妹だな」

「それ褒めてます?それとも貶してます?」

「両方だ」

 

 

 

シゲルさんの名前を出した途端嫌そうな表情を浮かべ、すぐに舌打ちをした。

まあそれは不機嫌なシンジさんよりもキレた時の兄の方が怖いから私は苦笑して委縮せずどうしてなのかちゃんと口に出して聞いた。でもシンジさんは私からそっぽを向いて苛立ったような雰囲気を漂わせている。

―――そんな中でただ不思議なのは、近くに置いておいたシンジさんのポケモンが入っているボールたちがシゲルさんの名前を出した途端ゆらゆらと揺れていたことだろう。おそらく昨日会った時よりも前に何かあったのではないかと私は考えてしばらくシンジさんの顔を見つめてじっと待つ。

…まあ本当に聞かれたくない話なら聞くつもりはないし、シゲルさんから話を聞いても同じだった場合は諦めるつもりだ。でもそれでもやっぱり興味はあった。シゲルさんとシンジさんは兄のライバルという関係で繋がっており、私は兄のライバルという共通点からすぐに仲良くなれるのではないかと予想していたのだ。でもそれは違っており、いきなり険悪な雰囲気でそれぞれ会いたくなかったという表情を浮かべて辛辣な言葉…つまり毒舌で口喧嘩を始めていった。

兄とライバル関係だからこそ、その険悪な雰囲気に私は興味を持ったのだ。それに兄から話を聞くとなると今はできない。…兄に勉強しろと言われてることもあるし、電話してシンジさんとシゲルさんのことについて聞いたら寒気のする笑みを浮かべて勉強はどうした?と聞かれるに違いない。兄がカロス地方からマサラタウンに帰ってくるのがこんなにも怖いだなんて思ってもみなかった。それにアーロンさんの件もあるし…。だからこそ、今は目の前にいるシンジさんから話を聞くしかないのだ。

 

頑張ってシンジさんをじっと見つめていると、シンジさんがため息をついてこちらを見た。その表情にシンジさんは私が諦めていないということが分かったのか…それともシゲルさんから話を聞かれるかもしれないということが分かったのか話をし始めてくれた。

 

 

「…サトシが前に話してくれたんだ」

「お兄ちゃんが?えっとそれってシゲルさんのことですか?」

 

「ああそうだ。俺に向かってあの優男…シゲルのことを一番のライバルだって言ってな。話している時のサトシが本当に楽しそうな笑みだったから試したまでだ」

「あー………」

 

 

なんとなく分かってしまった。おそらくシンジさんはシゲルさんが兄の【一番】のライバルということが気に食わないのだろう…シンジさんにとって兄とはよっぽど影響のある存在だったに違いないはずだから…。このマサラタウンに来て、兄に会えるかもしれないという期待を込めてきたらいなくて…オーキド研究所に行きシゲルさんに真っ先にあってしまったからその話を思い出して苛つき、試したのだろう…その強さを。

 

――――出来れば私としてはシンジさんにオーキド研究所に行った時すぐにゴウカザルと会ってほしいと思っていたのだが、それはシゲルさんとのバトルによって長い時間をかけた後、その願いは叶った。まあその時はミュウツーの乱闘などの件もあり、皆が皆ボロボロでシンジさんとゴウカザルの感動の再会にはならなかったけれども…それでもちゃんとゴウカザルがシンジさんに向かって笑顔で話ができて、良かったと思う。また会おうとシンジさんが言っていたから、一応仲は良くなったのかなと皆で微笑みながらも…。

 

でもそれよりも、シンジさんからの話だけだとシゲルさんが不機嫌になってしまったのには説明がつかない…。シゲルさんは兄から何を言われて不機嫌になってしまったのだろうか……まあ予想はできてるのでここはあまり考えないようにしようと思った。

 

 

そしてその後、シンジさんから不機嫌になったためにかなりスパルタな勉強をされることになってしまったんだけれども……それは仕方がないと思って諦めておく。

 

 

 

 

 

 






「…ちなみに、これは全部今日中に覚えるつもりか?」
「はい。お兄ちゃんから半年以内に合格しろと言われてますから」
「ふん…サトシらしいな…ならこの本もすべて覚えろ」
「…え?これ以上…やれと!?」
「当たり前だろう。半年以内に合格を目指すのなら限界までやれ。あと明日テストするから忘れるな。何度も復習しろ」
「え!?いやこれで限界なんですけど!!!」
「なら限界を超えろ。サトシのようにな」
「お兄ちゃんと比べないでくださいよ!!私は普通のマサラ人です!」
「そうか…お前がヌルいことを言うのならさらに増やすぞ」
「無理です!」
「追加」
「っ……分かりましたよ!!うぅ…スパルタめ…」
「スパルタで結構。文句なら半年以内に合格しろといったサトシに言え」
「それ死亡フラグですから…あぅう……」
「ふん…」



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