マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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サトシが行う修行方法にはまず大きな条件が1つだけある。
それはポケモンが自ら強くなりたいと願う気持ちに邪魔をしないということ。
それを条件として、サトシは強くなりたいと望むポケモンたちの願いを叶えるために様々な修行を考え、実行するようになった。その中の1つに鬼ごっこがある。

鬼ごっことは――――――――――――





第二百二十四話~兄は鬼ごっこをする~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケロマツは集中して待機、ヤヤコマは空から監視していてくれ」

『ケロ!』

『ヤッコォ!!』

 

「…よし、やるぞ」

「サトシかっこいい…はぅ!!」

「うわ…セレナ大丈夫!?」

「セレナ…気絶しちゃ駄目ですよ……」

 

「…とりあえずセレナ…早く起きろ」

「うぅ…サトシがそういうなら起きる!!」

「起きるの早いかも!?」

「ほらこっち来い。コルニとルカリオのメガシンカ計画について話すから…」

 

 

こんにちは兄のサトシです。俺たちは今からコルニとルカリオの絆を深めていき、癖を直すという強硬策として鬼ごっこをしていこうかなと思っています。

ヤヤコマとケロマツにはコルニ達が近くに来ていないかを監視してもらい、もしも来た場合はすぐに俺が特攻して捕まえるというふりをして逃げてもらう。コルニ達には聞かれたくない内容だからこそ離れてもらうのだ。

そして通常の修行目的で行う鬼ごっことは違うため、俺はセレナたちにある作戦を話していく。話していった内容にセレナたちは納得し頷いていった。

 

 

これでメガシンカが少しでもできるようになるとそう信じつつも、やるべきことをやるために俺たちはそれぞれ離れてからコルニ達を追いかけに行く――――。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…大丈夫ルカリオ?」

『バゥゥ』

「良かった…でもここまでくれば追いつけないよね?」

『バゥゥゥウ!!』

 

 

コルニ達はサトシ達と鬼ごっこをするために逃げていた。

コルニは人間なため、ポケモンであるルカリオよりも体力が少ない。そのためコルニの体力がなくなり休んでいる時はルカリオがちゃんと周りを見て確認しつつも、コルニのことを心配し…コルニはというとルカリオが大丈夫かどうか心配しつつも自分の体力が限界になってしまったことに少しだけ苛立っていた。

 

でも今いる場所は大きな木の上だ。逃げるということは木々を使っても大丈夫だとコルニ達が判断したからこそ登ったのであり、皆に早々見つからないようにするという意味では良い手段だと考えていた。途中で木に登る際、コルニが足を滑らせて危うく地面に激突しそうになったが、すぐにルカリオが助けに行き…そのままルカリオの力を借りて登ることができた。

 

 

 

「サトシ達は…来てないか…」

『バゥゥ…ッ!?』

 

「見つけましたよ!!」

『リィマ!』

『ホッビィ!』

 

「嘘っ!?それありなの!!?」

『バゥゥウ!!?』

「ふふふ化学には不可能なんてありませんよ!!」

『リィマリィマ!!』

『ホッビ!!』

 

 

コルニ達は登った木で警戒しつつも休憩をしていた。その下で急にシトロンたちの喜んでいるような叫び声が聞こえたために驚く。そしてコルニ達は警戒しながらも木の下を見るとシトロンたちが見つけたと笑顔でこちらを見ていた。その近くには大きなルカリオに似せた機械があって…それはおそらくシトロンが作り上げたものだろうということが分かってしまった。そしてその機械のせいで見つかってしまったということも。

ドヤ顔でシトロンが説明したその機械はどうやらルカリオの波動を探知し、探し当てるというものらしく、珍しく成功した機械だとコルニ達は感心していた。でもそうしている間にシトロンがハリマロンを使って木に登ろうとしているため、感心するだけだとすぐに捕まってしまうと考えて周りを見てからどうするのかお互い顔を見合わせてから頷く。

 

 

「行くよルカリオ…突撃開始!」

『バゥゥウ!!』

 

「ホルビー、マッドショット!!」

『ホッビィ!』

「ルカリオ避けて!そのまま右の木にジャンプ!!」

『バゥゥ!』

 

「え、うわッ!!!?コルニ危ない!!!」

『リィマ!!?』

『ホッビィ!?』

「大丈夫よシトロン!そして絶対に捕まらないんだから!!」

『バゥゥウ!!』

 

 

コルニがルカリオに捕まったまま、木の大きな枝に向かってジャンプする。着地に成功しなければ大怪我するだろうというコルニ達の行動に対して危ないとシトロンが叫ぶ。だがコルニ達はお互い平然としながら無事に着地し、強気な口調で大丈夫だとシトロンたちに向かって言う言葉と共にまた木々にジャンプしながら逃げていった。その大胆な動きと危険を伴っても平気だという行動を見てシトロンは茫然と逃げていく姿を見て追いかけることをしなかった。

 

―――――シトロン達はただコルニ達の行動が少し驚いたように…でも作戦通りだという表情で笑みを浮かべて立っていただけだった。

 

 

 

「ふぅ…ここまでくればもう安心安全間違いなしだね!」

『バゥゥ!……っ!』

 

 

「それはどうかしら!」

『フォコ!!』

 

 

木々からジャンプした後、コルニ達は小さな川がある場所へ来ていた。そこは森の中にある小さな川辺のような場所であり、少し休憩するにはいいところだと考えてコルニはルカリオに向かって地面に降りてくれと指示をした。そして小さく伸びをしてから誰もきていないと考えて叫ぶ。でもそれは違うと言うかのようにセレナとフォッコが姿を見せたためにコルニ達はすぐに体勢を整える。

セレナたちが姿を現したことにコルニとルカリオが警戒し、すぐに逃げていこうとした。でも後ろを振り向いて逃げようとするとハルカとバシャーモが逃げ道を塞いでいたために逃げることが容易にできなくなってしまった。

 

 

「ここから先は通さないわよ!」

『バッシャァ!!』

「おとなしく捕まりなさい!!」

『フォコォ!!』

 

「そうはいかない!ルカリオ、私の指示を聞いて動いて…フォッコに向かってはどうだん!次にバシャーモに向かってグロウパンチ!」

『バゥゥ!』

「バシャーモ、グロウパンチを受け止めて!」

『バシャァ!』

「フォッコ、めざめるパワーで防御しつつ回避!」

『フォコ!』

 

「今のうちに逃げるよ!」

『バゥゥ!』

 

「あ、逃げた!?」

『バシャ!?』

「追いかけよう!!」

『フォコォ!』

 

「ルカリオ、もう一度はどうだん!!」

『バゥゥ!!』

 

「うわ危ない!!」

『フォコォ!!?』

「くっ!?バシャーモ、かえんほうしゃ!!」

『バッシャァ!!!』

 

 

コルニは鬼ごっこということで鬼のポケモンを倒すという条件は含まれていなかったため、捕まるわけにはいかないと戦闘になる前にフォッコとバシャーモに攻撃を指示して、隙をみて逃げていく。

コルニとルカリオの様子を見てこのままバトルするのかと思っていたハルカとセレナだったが、あっさり走って逃げていく様子を見て驚いてしまい、一瞬そのまま動けずにいた。でもすぐに我に返って走り出し、追いかけようとするがコルニが後ろを見ながらはどうだんを指示したせいでルカリオの放たれた攻撃に対して防御することに夢中になっていたためにコルニ達を見逃した。

 

―――――セレナとハルカはそれぞれ逃がしてしまったコルニとルカリオに悔しそうだったが、笑みを浮かべてユリーカの元へ行くために歩き出していた。

 

 

 

「ここまでくれば……ってもう安心できないねルカリオ」

『バゥゥ…』

「でも、ありがとう。私の指示をちゃんと聞いて…私のことを守ってくれて。さすが私の相棒だねルカリオ!!」

『バゥ…バゥゥ!!』

 

 

コルニは鬼ごっこが始まった時からの出来事を思い出し笑みを浮かべてルカリオに向かって言う。ルカリオは少しだけ照れていたけれど、自身の腕にあるメガストーンを無意識のうちに撫でて、先程の戦いを思い出していた。鬼ごっこだからこそ逃げるのが目的のこの戦いでは、自分が倒れてはいけないということと、コルニを守りながら戦わなければいけないということから通常のバトルとは違って余裕がなかった。

だからこそいつも勝手に技を放ったり攻撃したりする【勝ちたい】と思えるバトルができず、コルニの指示を聞くことで精一杯だったのだ。でもそのおかげでコルニが喜び、そして笑顔でありがとうと礼を言われることにルカリオは嬉しかった。トレーナーの指示をちゃんと聞いてバトルするその行動に、勝ちたいという意志よりも先にコルニを喜ばせたいという気持ちの方が強いとルカリオは感じていたのだ。

 

そしてルカリオ達が先程の逃走での出来事を思い出し、笑顔で話していたら足音が聞こえ、誰かが来ると分かりすぐに警戒態勢に移った。

 

 

 

「よぉ…その様子だと少しは鬼ごっこしたかいがあったかもしれないな」

『ケロォ』

『ヤッコォ』

 

 

「サトシ…もしかして最後に逃げなくちゃいけない鬼になるのはサトシってことになるのかな?鬼ごっこの終了時間もそろそろだろうし…」

『バゥゥ…』

 

「まあそうなるな…でも、コルニ…この鬼ごっこはポケモンに一撃を入れられるかどうかで終了させようぜ。つまり通常のバトルと同じってことだ」

『ケロケロ!』

『ヤッコォ!!』

「そう…良いわよ!…ルカリオ!絶対に一撃入れて勝とうね!!」

『バゥゥウ!!』

 

 

サトシ達は今までのバトルとは違い、ルカリオがコルニを見てちゃんと指示を聞こうとする姿勢になっている様子を見て笑みを浮かべて満足そうだった。

でもまだ鬼ごっこは終了したわけじゃない。でもこのままコルニ達がサトシから逃げられるかと言われたら否と答えるだろうと思えるぐらいサトシ達は強いとコルニ達は知っている。だからサトシはこの場ではルールを変えることにしたのだ。逃げるバトルから勝つバトルへ…ケロマツとヤヤコマの一撃がルカリオに当たるかどうかというルールで最後にしようと言ったのだ。それは、コルニとルカリオがちゃんと指示を聞いて動くかどうかの様子を見ることと鬼ごっこの結果が出たかの最終確認のため。

 

 

コルニとルカリオは笑顔で頷き、そして口を開いて指示を出そうとした―――――――――。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「さん…にぃ…いち…終了!っとデデンネにピカチュウ、お願い!」

『デネデネェ!!!』

『ピッカッチュゥ!!!』

 

 

デデンネとピカチュウが揃って空に向かって電撃を放つ。今ここにいるのはユリーカとシトロン、そしてハルカとセレナだ。彼女たちは最初に休憩していたこの場所でサトシとコルニ達が帰ってくるのを待ち、時間になるまで休憩していた。そして電撃を放ってから少しするとサトシ達が帰ってきたのでユリーカとデデンネ、ピカチュウが迎えに走る。

 

「お疲れ皆!結果はどうだった!?」

『デネ!?』

『ピカピカ?』

「私たちの負けだよ…これで何十連敗かなルカリオ…」

『バゥゥ…』

「でも、良い感じにバトルできてたと思うけどな」

『ケロケロ』

『ヤッコォ』

「本当!?やったよルカリオ!よしこのままメガシンカちゃんとできるように頑張ろうね!!」

『バゥゥ!!』

 

「ほら、そこで立ち止まって話してないでこっちに来てください!お菓子と紅茶を用意してますから!」

『リィマァ!』

『ホッビィ!』

「それにマカロンもあるわよ!」

『フォコォ!』

「うん凄く美味しい!早くしないと全部食べちゃうよ!!」

『バッシャァモ!!』

『ゴンゴン!!』

「ってゴンベ何時の間に…」

 

「あ、待って!私たちも食べる!!!」

『バゥゥ!!!』

「私も私も!」

『デネデネ!』

 

「はぁ…まったく仕方ねえな」

『ケロォ…』

『ヤッコォ…』

『ピィカ…』

 

ユリーカ達はコルニとサトシの鬼ごっこの勝敗を聞く。すると…鬼ごっこの結果はサトシ達の勝利が決まり、コルニとルカリオは少しだけ落ち込んでいた。そんなコルニ達にユリーカ達は慰めていく。

でも今までとは違ってとても良いバトルができたとサトシ達は感じていたのだ。

 

まだまだやるべきことは多いけれど…それでもこれからもっと頑張っていけば大丈夫だとサトシはそう考え…笑みを浮かべながらもお菓子を食べようとしている皆のもとへピカチュウたちと一緒に歩いて行った。

 

 

 

 

 






鬼ごっことは、まず修行する目的によってそのルールが違ってくるのが特徴だ。
・強くなりたいと望むのなら前提として鬼となるポケモンをすべて倒さなければならない
・スピードを高めたいのなら技を使わず重りを持った状況で逃げ続けなければならない
・技を極めたいのなら技の使用数が限られた中で鬼と立ち向かわなければならない
・精神を鍛えたいのなら目隠しした状況で音を判別し鬼から逃げなければならない

・絆を深めたいのなら、鬼はトレーナーとポケモンの壁となって立ち向かう必要がある


なお、この鬼ごっこでは修行目的によって遊びを変え、応用することも可能である。




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