マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

226 / 288



初対面でもすぐ分かってしまう。






第二百二十二話~妹は犬猿の仲を知る~

 

 

 

 

 

 

 

 

「………サトシはいないのか?」

 

「あ、はい…いないですけど…」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

 

 

「…そうか……チッ」

「えっと…ここにいても何もありませんし…オーキド研究所にでもいきますか?シンジさん」

『ガゥウ?』

『ピチュ?』

 

 

「…ああ、行かせてもらおう」

 

 

こんにちは妹のヒナです。母が買い物に出かけていて、バリヤードが掃除で忙しくしていたため、家のチャイムが鳴った時に私たちが出たらそこにいたのは兄のライバルのシンジさんでした。

シンジさんは兄がいないということを聞いて凄く不機嫌になってしまい…私達じゃなかったら確実に泣いていたであろうと言えるぐらい物凄く怖い表情で舌打ちをして苛立っていた。まあ兄が本気で怒っている時よりはマシなんだけれども…。

 

ここにいても何もないし、とりあえずのんびりできる場所に行こうと思い、兄のポケモンがいるであろうオーキド研究所へ向かうかどうか質問をした。シンジさんはその言葉に頷き、少しだけ機嫌を直してくれたから良かったと私たちは顔を見合わせてから安堵しつつも、バリヤードに留守番を頼んで向かって行った。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「やあ、君がサトシの【後輩】ライバルのシンジ君か…話は聞いてるよ?」

「ああ、お前がサトシの【元】ライバルのシゲルか。聞いていた通りのようだな」

 

 

「ええ…いきなり不穏な展開…」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

 

 

オーキド研究所にやって来た私たちを迎えてくれたのはシゲルさんだった。私たちに向かって笑顔で歓迎し、そしてシンジさんを見た瞬間笑みが消えて無表情になった。その豹変に私たちは驚き、そして理解してしまった。

おそらくはシゲルさんとシンジさんは兄からお互いの話を聞いていたのだろう…それかリーグ戦でのバトルを見たかどちらかだ。兄のライバル同士だから仲良くするかなと私たちはそう思ったのに、シゲルさんが無表情でシンジさんを見た瞬間、シンジさんも苛立ったように大きく舌打ちをする。そしてシゲルさんが少し寒気のする笑みを浮かべながら握手を求め、シンジさんが嫌そうな表情でそれに答えた。でも言葉だけ尖っているように物凄く毒舌で、まるでお前がサトシのライバルとかふざけんなよ…!と言っていると感じてしまった。

しかもオーキド研究所の玄関でこの状況になってしまったため、部屋の奥にいるケンジさんとオーキド博士が苦笑しながら見守っていた。ケンジさんが微妙そうな表情を浮かべながらも私たちに向かってこっちに来てと言ったためにシゲルさんとシンジさんを一度見て移動するかどうか悩む。でもフシギダネもいたらしく、ため息をつきながらつるで私たちを持ち上げて部屋の奥まで連れてきてくれた。

 

 

 

「ありがとうフシギダネ…それとこんにちは。あの、あれそのまま放っておいていいんですか?」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

「こんにちはヒナちゃん。いやあれはちょっとね…ははは…」

「こんにちは。サトシが暴れてる頃よりマシじゃよ。バトルするならば外でやるじゃろうし…大丈夫じゃ」

『ダネフシ』

「お兄ちゃんが暴れてる頃よりマシ…うんまあマシかもしれないけど…」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

『…ダネダネ』

 

 

 

オーキド博士は兄が暴れていた頃のことを思い出して、そしてシゲルさん達の状況を見て大丈夫だと判断したらしい。ケンジさんも同じようにまあ口喧嘩ならまだ大丈夫だろうと考えて放置しているようだ。そしてもう一度私たちが玄関先を見るとシゲルさんとシンジさんの喧嘩は猛吹雪のように冷たく、そして毒があるかのように恐ろしい雰囲気を漂わせながらも毒舌を言い合っていた。

フシギダネはため息をついて、伝説たちを止めるよりマシかと思ったらしく、2人を放置しようと決めてそのまま私達をつるで引っぱって一緒に森まで行こうと言ってくれた。

オーキド博士達はフシギダネの行動を止めず、気をつけてといって笑顔で見送ってくれたりする。

…ついでに言うと玄関先で靴を脱ぐことができずに土足で部屋に入るのは駄目だからということでフシギダネにつるで持ち上げられたまま話をしていたために、シゲルさんたちがいるため玄関から出ることはできないと判断して本当ならやりたくはなかったが…森に行くためにそのまま窓から出ることになった。

 

…まあ玄関先で喧嘩しているため玄関から外に出れないし…もしも巻き込まれたら嫌なため仕方がないと諦めた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『貴様というやつは…!!』

『ふふふ…あなたのような脳筋が私を攻撃できるわけないでしょう?』

 

「こっちもこっちで喧嘩してるし…」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

 

『ダネダネ…ダネフッシィィイイ!!』

 

 

迷いの森の奥へ行くと何やら大きな騒音が聞こえ、すぐにそちらへ向かう。するとミュウツーとミュウツー姉が喧嘩をしていて、まるでシゲルさんとシンジさんのような状況だと思って苦笑した。

しかもこちらは口喧嘩も含めて攻撃したり手加減なしでぶつかったりしているために被害が尋常じゃない。まあ兄のポケモンであるジュカイン達がそれを見て、ミュウツーたちの攻撃技が避けられないであろうオーキド研究所のポケモン達や周りの木々を守ろうとしていたため被害になったのは主に地面なのだが…。

そしてやって来た私達はその喧嘩を見て呆れ、フシギダネがいつものソーラービームを放ってミュウツーたちの喧嘩を治めていたりする。…ものすごくストレスになっているであろうフシギダネには後で何かお菓子を作って渡そうかなと思っているけれど、まあこれが日常になっているせいで慣れているのか、それともソーラービームを派手に放ったからかスッキリしたように見え、ミュウツーたちに向かってこれ以上やるならぶっ潰すぞ?と兄が言うかのような笑みを浮かべて脅していたりするから…大丈夫かなと判断した。

 

でもお菓子は作って渡そう。いつもありがとうねまとめ役。

 

 

 

 

 

 

『ニャァァアア!!?にゃにするニャ!!離すニャ!!!』

『ベーィ!!』

「ニャースの声と、ベイリーフの声…?」

『ガゥゥ…?』

『ピチュ…?』

『キューン?』

 

 

迷いの森の奥からニャースとベイリーフが喧嘩しているかのような声が聞こえてきたために、私たちはそちらへ向かう。近くにいたラティアスも私たちと一緒に来てくれた。おそらくラティアスは私たちを遊びたいのか、それとも守ろうとしてくれているのだろうかと考えながらも、隣りに来てすり寄ってくれたラティアスの手を握り、歩いていってその光景を見た。

見えてきた光景は、ベイリーフがニャースの身につけているものを奪おうとしているよいう状況。一体何をしているんだろうと私たちは首を傾けた。

ニャースの腕には黄色とオレンジのブレスレットのようなものをつけているのが見えて…ロケット団の支給品かなと思ったけれど、ベイリーフの様子からソレは違うのだと判断した。しかもベイリーフだけじゃなく、他にも騒ぎを聞いてどんどん兄のポケモンたちがやってくるし、ベイリーフの言葉が分かったのかニャースにのしかかったり攻撃して来たりするワニノコ達がいたりする…。

 

このままではヤバいだろうと私たちはニャースを助けに向かった。

 

 

「ほら皆苛めちゃ駄目だよ!!ニャース…大丈夫?」

『ガゥゥ…?』

『ピチュ…?』

『キューン?』

 

『だ、大丈夫ニャ…』

 

『ベーィ…』

『ワニワニ…』

『ヘラクロ…』

『ズッバァ…』

『ヘイヘーイ…』

 

ふらふらとしているニャースだったが、私達が助けに来たことで少し安心したらしくため息をついてブレスレットのようなものを確認した。そしてそれを近くで見たらブレスレットではなくライブキャスターだったと私たちは分かった。

何故ニャースガそれをつけているのか疑問に思ったが、ちゃんと動くのか確認してから安心し、これでジャリボーイがキレることもにゃいニャと呟いていたため、なんとなくこの原因が分かってしまった。つまり、ニャースのこのライブキャスターは兄が渡したものなのだろう…どんな理由があるのかは知らないけれど、まあ兄だから何かカロス地方でニャースに頼るようなことがあったのか。それとも本当に好意であげた…いや、ロケット団にはいろいろと嫌な思い出があると言っていたから兄とニャースに関してそれはあり得ないかな。

 

とにかく何で持っているのかを聞こうと口を開いた。

 

 

「ねえニャース…それってライブキャスターだよね?どうして持ってるの?」

『ガゥゥ?』

『ピチュ?』

『キュゥゥ』

『ジャリボーイに渡されたのニャ。よくは知らにゃいけどポケモンの言葉が分からにゃいといけにゃいらしいのニャ』

「…そっか…じゃあやっぱりカロス地方で何かあったのかな?」

『ガゥゥ……?』

『ピィッチュ…?』

 

『ベーィリ!』

『だからこれは渡せないのニャ!!文句にゃらジャリボーイに言うニャ!!』

「ほらベイリーフ落ち着いて…ワニノコ達も…またお兄ちゃんから電話があったら必ず呼びに行くからね?」

『ベイ…』

『ワニィ…』

『ヘラクロ…』

『ズッバァ…』

『ヘイヘイ…』

 

私の言葉に仕方がないと諦めたらしく、これで問題は解決されたと思った。まあ兄に関してはカロス地方でまた暴れているのかなという思いがあるし、兄だからこそ何とかなるだろうという信頼感もある。とにかくせっかくここまで来たんだからと思い、笑顔で皆に向かって口を開いた。

 

 

「よし、じゃあ皆で遊ぼう!喧嘩するよりも遊んだ方が良いよ?」

『ガゥゥウ!』

『ピッチュゥ!』

『キューン!』

 

『ニャーは止めておくのニャ…ッ分かった遊ぶから離すのニャ!!!』

 

『ベーィ!!!』

「ははは…ほらベイリーフ。無理強いは駄目だよ。ニャースも遊びたくなかったら無理しなくていいからね?」

『ベィ…』

『ニャ…ふん。仕方ないニャ!おみゃーらと遊んでやるのニャ!!』

『ズッバァ!』

『ヘラクロ!』

『ヘイヘイヘーイ!!』

 

 

「じゃあみんなで一緒にかくれんぼでも―――――」

 

 

 

―――――ドォォオオオオオッッ!!!!

 

 

 

『ニャ!?何ニャ…ソーラービームかニャ!?』

「これで二発目…ミュウツーたちまた喧嘩し始めてフシギダネに怒られたのかな…」

『ガゥゥ…』

『ピチュゥ…』

『キューン』

『ベイベイ…』

『ヘラクロォ…』

『ズッバァァ』

『ヘーイ!ヘイヘイヘーイ!!!』

 

 

「ヘイガニは楽しそうだね…じゃあかくれんぼでもしよっか?フシギダネに見つからないようにね!」

『ッッ――――――!!!』

 

 

 

この後、私達が遊んでいる間にどうやらフシギダネがぶちギレること数回…そしてシゲルさん達による玄関先での乱闘からのポケモンバトルが起きて大騒動になったということがあったらしい。

まあ、怪我人が出なければそれでいいかと思っておくことにした。喧嘩をして周りに被害が出そうになり、フシギダネに怒られたミュウツーたちはともかく……。

 

 

 

――――――とりあえず平和が一番です。

 

 

 

 

 




妹の心境。
 シンジさんがしばらく私の家で泊まるらしい。とりあえず騒動が起きないことを祈っておく。






▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。