マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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異常な少女たちと正常に近い少女。


第二百二十話~セレナたちは話し合う~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはある森の中、サトシ達が現在休憩場所としているここではバトルがよく行われていた。サトシとコルニがバトルをしたり、ハルカとコルニがバトルをしたりする。もちろんコルニのメガルカリオが暴走した場合はピカチュウによって強制的に止められ、ルカリオのメガシンカを解除させる。

そして消耗したルカリオの体力をオボンのみやオレンのみで回復させてから、すぐにそのとき悪かったことをちゃんと話し合ってサトシ達と一緒に次は気をつけなければと決意するのだ。もちろんその話し合いにはハルカも一緒になって意見を言い合うことが多い。ハルカもメガシンカというのをはじめて見て自分でもそれを使えるようになりたいという新たな目標と、コルニとルカリオがちゃんとメガシンカをできるようになるという心からの応援のために行動していた。サトシはもちろんハルカと同じように行動し、コルニのことをまるで後輩のように扱っていたりする。

 

そうして修行やバトルが終わった後、シトロンによる料理を食べて…そして眠りにつく。これがサトシ達とコルニの日常だった。

男子はシトロンが用意した一つのテントへ…そして女子はユリーカ用のテントへ入って寝る。もちろんルカリオはその時はボールに入ってもらって寝ているため、女子のテントはそこまで窮屈ではない。

寝転んだコルニは眠そうにあくびを小さくして…そしてセレナを見て小さな疑問を言う。

 

 

「セレナって…サトシに恋してるの?」

 

 

「ふぇ!?何いきなり!!?」

 

 

コルニからの言葉にセレナは頬を染めて顔を赤くし、慌てふためきながらどうしてそんなことを聞くのか逆に質問した。するとコルニはその様子に面白そうな…楽しそうな表情で恋してるということが本当なのだということを知り、どうして好きになったのか疑問に思った。もちろんそれはハルカも同じであり、ユリーカは過去の話を知っているために何だか面白そうだとデデンネと一緒に話に入り込む。

…ただ唯一標的にされたセレナだけがその恋話に動揺し、なんていえばいいのか困惑しつつも考えていた。それは、セレナがサトシに恋をしたというのはサトシをよく知る者としては本当に驚くことなのだから…。

 

サトシの性格は本当にいろんな意味で常識から外れていて、良い意味では強くて頼もしいけれど、悪い意味ではサトシに対して本気で一生傍にいたいと言う子や恋をしたいという子が現れないのではないかと思えるぐらいぶっ飛んだ性格だった。サトシが有名になってからはある意味ファンなどが増えているのをセレナたちは知っているし、カロス地方を旅したということでサトシに会おうとするトレーナーもいると話で聞いた。

付き合ってみたいという女の子も中にはいるようだったが、それはまだサトシに実際に会ってないからこそ言えるのではとコルニは思っていた。

サトシのことを深く知れば…より近くにいればそのような恋心はあっという間に消えてしまうだろうというぐらいいろいろと通常とは違うということを知っているからだろう。サトシ自身が強すぎるために人々が尊敬し、常識とは違った行動をよくしているがためにずっと傍にいたいという人間…しかも恋をする人間なんていないといってもいいかもしれない。恋をして付き合ってと思っていたとしても、長続きができるのかと言われればそれは否と答えるだろう…それほどまでにもサトシは普通とは異なっていたのだ。ポケモンのことを第一に考え、ポケモンと同じように行動し…そしてバトルでは好戦的な面を見せるサトシに、誰もがセレナのような強い気持ちを持てるとはいえないだろう。サトシ自身も恋をしたい等とは考えていない部分があるからこそ言えることだ。付き合ってくれと言われればサトシは通常よりも数倍冷たい表情でもう二度とそう思えないような行動をするだろうということも…この数日一緒に旅をしてコルニは理解した。それほどまでにサトシは異性との恋を避けている。

 

…それに仲間としてはとても頼れるし先輩後輩関係を築いているハルカや新たに加わったコルニもサトシのことを尊敬してはいるが…恋をしようとは思っていない。もう1人の兄として見ているユリーカも同じだ。

 

でもセレナはそんな皆からは例外であり、サトシのことを愛していると何度も口に出して言うぐらい行動で示し、冷たくされたとしてもめげずに真っ向からぶつかっていった。だからこそ疑問に思ったのだ。なぜサトシに恋をしたのだろうかと…。

 

セレナは両手で頬を触り、赤くなった顔を隠すようにする。その様子はセレナが美少女だからこそ絵になるとコルニ達はそう感じており、そしてそれほどまでにも好きなのだと理解して笑みを浮かべたのだった。

 

 

「私はサトシが好き……ううん…大好きで愛してて、サトシじゃないと駄目なの!」

「ちょ…直球ね。でも凄い!私はルカリオとずっと一緒にバトル一筋だからそういうのはまだ分からないなぁ」

「うんうん…私もシュウに対してそういう感情があったような気がしたけど…今はまだ分からないかも…」

「ハルカ、シュウって誰?」

『デネデネ?』

「コンテストのライバルよ!手強いんだから!」

 

ハルカは今までコンテストで戦ってきたシュウとのことを思い出し、好きなのかどうなのかよく分からないと言っていた。まだバトルをしていたいということと、コンテストにたくさん出場したいという気持ちが強いからだろうと自身でそう納得しており、いつかはこの気持ちの正体が分かるだろうとあまり深く考えていなかった。

でもセレナは違うのだ…サトシに対する感情も、この溢れ出る衝動もすべて理解し、行動しているのだから。

 

コルニはテントに寝転びながら、疑問に思ったことをセレナに向かって質問した。

 

「ねえ、セレナがサトシのことを好きなのは何で?どこが好きになったの?」

「へっ?どこが好きって…」

「あ、私も聞きたいかも!サトシのことを好きになったのってどうしてなの!?」

「聞かせて聞かせて!!」

『デネデネ!』

 

「うぅ……サトシを好きになった理由…ね」

 

オクタンかと思えるほど顔を赤くしているセレナが可愛いと皆がそう思い、そしてからかうような口調で楽しそうに質問する。どうしてサトシのことを好きになったのか、何処が好きなのかを…。

セレナは目を閉じて一瞬黙りこみ…そして目を開けてから優しい表情で話し始める。

 

「私はサトシに助けられた…命を救われたのは知ってるでしょう?」

「あ、うん!全部その話は聞いたよ!」

「私やコルニは…サトシとの出会いをセレナたちがあの後話してくれたから知ってるけれど…でも約束をしたから好きになったわけじゃないでしょ?何でなの?」

 

「それはね…私はサトシのことを、あの後からいつの間にか好きになってたの」

「いつの間にか?」

 

「そう、気がついたらサトシに恋してた…あの未来を見通すような鋭い瞳も、時々予想外な事態になると驚いたり楽しそうにする反応や表情が好き。皆にとって常識から外れていて…ぶっ飛んでる性格って思われてるけど、ポケモンたちのために非常識になって頑張ってる姿が好き。私には冷たく接してくるような態度なのに時々優しくしてくれたり…バトルでは全力で戦おうとするその姿勢や、皆を守ろうとする行動全部が大好き。…つまりね、サトシの全部が好きなの。サトシのすべてが…心も身体も性格も態度も全部全部…サトシ以外は考えられないぐらい大好きで、彼以外を愛せないって分かるんだ」

 

「なん…か…ところどころ貶してるような表現もあったような気がするかも?」

「うーん…確かにサトシってみんなから見ると常識から外れてる部分もあるよね。でもセレナはそこも好きなんだ?」

 

「うん!もう二度と…一生ずっと傍にいて離したくないぐらい…愛してるの」

 

「…そ、そっか」

「愛してるんだね!大好きなんだね!そんなお姉さんがお兄ちゃんをすべて受け入れてくれたらなぁ…」

『デネデネ…』

「タケシもよくアタックして撃沈してたかも…でもサトシはそういう好意にはあまり関わろうとしなかったから応援するよ!」

「うん!ありがとう!!」

 

セレナが語る言葉は、サトシに対してすべてを受け入れているという様にコルニ達は感じた。貶してるようだと思えた言葉は常識外だという所だろう…普通の女の子だったら非常識だと知った時点で諦めるというのに、セレナはそれでも諦めきれないという。

そして二度と離したくないと言う彼女の目にはサトシに対する思いで溢れており、コルニはあまりそういう恋愛には関わりたくないなと寒気がしていた。でもハルカとユリーカはそうなんだと納得し目を輝かせており、セレナは美少女に相応しい可愛らしい笑みで頷いていた。

 

 

(サトシって本当に凄いのね…こんな【思い】も受け入れてるだなんて…)

 

 

コルニだけはまだサトシ達と仲間になって日が浅いために気づいたセレナの気持ちに…皆には気づかれないようため息をついた。サトシのバトルはとても強く、そしてよく戦い目立っているために近くにいたセレナの異様な思いにはなかなか気づくことができなかった。セレナの思いは【強すぎる思い】であった。思いは想いであり、重いでもある。

つまりは強すぎる愛情ということだ。セレナのそれは執着心や依存にも似ていると考え、その感情が甘酸っぱい恋愛とは少しだけ違うようだとコルニにはそう直感で感じてしまったのだ。

まるで幼い頃に体験した経験のせいでサトシに助けられたために彼以外を愛せないと刷り込まれたような…洗脳に近い何かがセレナの感情を結び付けているのではないかと考える。たまごから生まれたポケモンが最初に見たものを親だとたまに思い込むように、命を助けられたからセレナの心が変化しサトシの傍に一生居たいと思ってしまったのだろうとコルニはそう思う。

でもそれは結局、サトシを愛しているからこその行動であり、いわばサトシの非常識な行動がセレナの非常識な気持ちに影響を及ぼしてしまったのだろうとコルニは考えた。ハルカ達はサトシ達とずっと一緒にいるからこそ気づけない…気づくことのできない常識とは違う感情だと、そうコルニは認識したのだ。

 

でもそれはサトシたちの問題であり、恋愛に深くかかわっては痛い目に遭うと祖父から学んだコルニは何も行動を起こすつもりはなかった。むやみに何かを言ってしまったら、セレナの感情がコルニに牙をむくような…そんな無意識の危機感に似た本能が動いたからかもしれない。

 

 

ただ、この異様な思いに気づいたからとセレナに対しての恐怖心はない…サトシへの尊敬する心とバトルに勝ちたいという思いが強くなったというだけである。セレナの行動についてはむやみに手を出してはいけないと言う…そんな気持ちも強く残しながらも…。

 

 

 

「あ、そうだ」

「どうしたのコルニ?」

「ハルカに聞きたいことがあって!サトシ達とホウエン地方を旅してたって聞いたけど何か面白いことはなかった?」

「あ、私も聞きたい!どんなポケモンがいたの!?」

『デネデネ!!』

 

 

「うーん…そうねぇ……」

 

 

 

 

――――――――夜はまだまだ、長いようである。

 

 

 

 

 

 


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