マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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ポケモンは人よりも素直であり…優しいのだ。





第二百十八話~リザードたちは応援する~

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒナが必死に教科書を開き、勉強をしているということにリザードたちは人間も大変なのだと考えていた。

ヒナの邪魔をしない方が良いと考えたリザードたちはヒナの母やバリヤードにオーキド研究所に行くと伝える。その言葉が伝わったらしく、ちゃんと気をつけて帰るのよ?と言ってくれた。

外に出たリザードとピチューは人に見つからないようにこっそりと移動する。前にリザードが色違いだからという理由でマサラタウンの外から来た人間に狙われたことがあるからだ。その時はちゃんとヒナの指示のもと動いていたために対処することができたが、今日はその肝心のヒナがいない。

だからこそ、何か事件を起こして勉強しているヒナを悲しませては駄目だと考え、警戒しながらも移動する。その移動方法はまるで忍者のように周りの景色に溶け込みながら進み、警戒していたおかげで問題が起きずに済んでいた。

これはリザードがまだヒトカゲだった頃にヒナと共に修行した結果身についた技術であり、ピチューもヒナやリザードに学んでいったためにできるようになったことでもある。

そのおかげでスピードは一般的なリザードやピチューよりも圧倒的に上になったのだが、肝心のリザードやピチューはそのことに気づいていない。

 

 

『ピッチュゥ!』

『ガゥゥ…』

『ピチュ?』

『ガゥウ!』

『…ピチュ!』

 

 

リザードがオーキド研究所が見えたことによって先に行こうとするピチューにため息をつきながらも止める。

ピチューは何で止められたのだろうかと首を傾けていたが、リザードが騒いだり一直線にオーキド研究所まで走って行けば人に見つかるだろうということや、まだまだオーキド研究所まで遠いということを話すとちゃんと理解して頷いた。それを見たリザードは苦笑しながらもピチューと一緒に歩いて行った。

ヒナがいない今は、リザードがピチューの姉貴分であり、良く騒ぐ弟分を守る必要があると考えているからだった。だからこそピチューが騒いだりどこかへ行こうとしたらすぐに止め、優しく頭を撫でる。

 

それはヒナ達から見れば姉弟のようにも感じられる微笑ましい光景だったことだと言えるだろう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『ダネ…!?』

『ガゥゥ!』

『ピィッチュ!』

 

『ダネダネ…ダネフシ?』

『ガゥゥ…?』

『ピチュ…?』

『ダネェ』

『ガゥ!』

『ピッチュ!』

 

 

オーキド研究所に行くと、真っ先に会うことができたのはヒナの兄であるサトシの手持ちのフシギダネだった。フシギダネは驚いたような表情でリザードたちを見て、それからヒナはどうしたんだと話しかける。

リザードたちはヒナが勉強していることや、邪魔したらいけないということを話し、こっちに遊びに来たということを伝えた。するとフシギダネは苦笑しながらも、迷いの森でミュウ達のへんしんバトルをやってるから見に行ったらどうだ?と伝えた。リザードとピチューはへんしんバトルとは何か聞きたそうな表情を浮かべていたが、フシギダネの見に行けばわかるという言葉に頷き、すぐに迷いの森に向かって走り出していた。

 

 

 

――――――そして見えてきたのはミュウ達がそれぞれミュウツーになって本物のミュウツーをからかっている場面だった。ミュウツー姉さんと呼び親しむもう一体は遠くの方で見つめており、若干呆れた表情をしている。そしてミュウツー姉がリザードたちに気づき、近づいてきた。

 

 

 

 

『ガゥゥ…?』

『ピチュ…?』

 

 

『ああこれはバトルではありませんよ…ただの馬鹿共の集いです』

『ガゥゥ…』

『ピィッチュ…』

 

 

 

ミュウツー姉がリザードたちの質問に対し、ミュウ達ともう一体のミュウツーを冷ややかな目で見てからため息をついて答えた。そしてミュウツーが詳しく話してくれたのは、先程まではそれぞれのミュウ達がサトシのポケモンたちにとっての弱点でもあるポケモンに変身して、バトルしていくという修行が続いていたということだった。

でももう一体のミュウツーが自分もやってみたいとのことから、ミュウツーの弱点となるポケモンにミュウ達が変身するのかと思いきや…いきなりミュウツーになって笑いながら挑発し始めたのだ。その挑発に残念ながらミュウツーはのってしまい、あのようなバトルになったとのことらしい。

 

ちなみにミュウツーたちが挑発したり変身バトルをし始めたことによって、もうこの修行ができないのだと早々に知ったサトシのポケモンたちはミュウ達から離れ、それぞれ疑似バトルをし始めていた。それはつまり、ミュウツーたちを止めようとはしないという意志であり、いつかフシギダネが止めに来るだろうと考えての行動だったようだ。

 

 

 

『貴様ら…!』

『ミュゥッフフフフ!!!』

『…ミュゥッフフフフフ!!!』

『俺の声で変な笑い方をするな!!!変顔するな!!』

 

 

『馬鹿共が…リザードたちはここにいては危険ですから離れた方が良いですよ』

『ガゥゥ…ガゥ』

『ピィッチュ…』

『ええ、何かあっては危険ですから…とりあえず悪化するようであれば止めます…息の根を』

『ガゥゥ!?』

『ピチュ!?』

 

『ほら、行きなさい。怪我をしてはヒナに心配されますよ』

『ガゥゥゥ……』

『ピィッチュ…』

 

 

ミュウツー姉がミュウ達のバトルを見てから発する凄まじい冷気を背負っているような雰囲気にリザードたちは無意識に一歩後ろに下がる。だが、ミュウツーはリザードたちを見てからすぐにその冷たい雰囲気を消し、家族に接しているかのような優しい笑みを浮かべながらも離れた方が良いと言う。

息の根を止めるといったその言葉にはリザードたちは驚いたが、このままここにいても何もいいことはないだろうと考えたリザードが困惑したままのピチューを連れて離れていった。

 

ちなみにミュウツー姉はリザードたちが見えなくなるまで小さく微笑み、見送っていたのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

…そしてやって来たのは花畑。ここが何もなかった以前からベイリーフがヒナと一緒に植えていったところだ。そこは様々な地方で咲いていたはずの花々が植えられており、いろんな色で咲いていてとても綺麗だった。

でもリザードやピチューはその花畑に入ろうとはしない。ヒナがいる時でないと入ろうという気にはなれないし、花を傷つけたとしたらベイリーフが怒り、ヒナに説教されるからだ。一度それを味わってからはもう二度と花畑を荒らすような行為も、遊びながら入ろうともしなかった。リザードは尻尾に炎が灯してあるからこそ、ピチューは面白そうであればすぐに夢中になり花を気にせず遊ぼうとする性格だからこその行動だった。

 

そして花畑を通り、奥に向かえばきのみがたくさん実っている森へ到着する。そこはカビゴン達大食いのポケモン用に作られた場所であり、フシギダネやベイリーフやジュカイン、ドダイトスが主に作り上げた場所であるのだ。そして後から仲間としてマサラタウンにやって来たツタージャもきのみがたくさん実るように丁寧に世話をしていた。そのきのみは大食いのポケモンでなくても食べれるため、リザードたちはオレンのみやモモンのみ、そしてキーのみを持てるだけ採ってから笑顔で顔を見合わせる。

 

 

『ガゥゥウ!』

『ピッチュゥ!』

 

 

手に持ったきのみは全て家に持って帰ろう…そう外に出る時から決めていたリザードたちはすぐに帰ろうと歩き出す。途中でダークライやセレビィ、そしてヘラクロス達に会ったのだが、遊ぼうと誘われてもきのみを見せてやればその理由がすぐに分かってくれたのか頑張れと声援を送られながらも見送ってくれた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

そして帰ってきた自分たちの家。ヒナの家でもあったが、リザードたちにとってはヒナの家が自分たちの家だとそう認識していたのだ。そしてバリヤードが開けてくれた玄関を通り、ヒナに近づく。ヒナはまだ勉強していて、数学と書かれている本を読んで難しそうな表情を浮かべていた。

 

 

「うぅ…これは全部覚えていた方が良いから…あとは詰め込みでやるしかないか……」

『ガゥゥ』

『ピィッチュ!』

 

「あれ?リザードにピチュー…これってきのみ?どこかへ行ってたの?」

『ガゥウ!』

『ピィッチュ!』

 

 

リザードたちは自分たちが持っているきのみをヒナに差し出した。それは勉強で頑張っているヒナに食べてほしいと思っていたからこその行動であり、頑張れという意味での応援でもあった。

それを分かったヒナはきのみを受け取ってから笑みを浮かべてリザードたちを見る。

 

 

「ありがとうリザードにピチュー!…そうだ、勉強もちょっと休憩して…このきのみを使って何かお菓子でも作ろうか!」

『ガゥゥ!』

『ピチュ!』

 

リザードたちは喜び、ヒナも笑みを浮かべて抱きしめる。抱きしめあったリザードたちとヒナは笑顔でキッチンにいるであろう母に向かって走り、きのみを見せて話しかけたのだった。

それは一般的なトレーナーから見れば通常とは違っているような光景であり、ある意味ポケモンと人間の絆が見せた微笑ましい光景でもあった。

 

 

 

 

 

 








コツコツコツと…何かが聞こえる…。



「ふふふ…やはり思い通りにはいきませんか…さすがはサトシ君だ」



コツコツコツと…その音に反応するかのように、何かが割れる音がする。

硝子が割れたような…小さな音だ。


「ですが今までの予想外を超えた代物ができるでしょうね…そう思いませんか?」









「………………ええ、そう…ね…」


「ふふ…ですがあなたもまだ不十分だ。完璧には程遠い…まだまだ調整のし甲斐がありますよ」

「………………………」



――――――コツコツコツと、音が響く。




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