勉強方法は子供たちの選択によって異なります。自由でより良い選択をお子様に求めてくださいませ。
まず子供たちの個性を活かし、ポケモンとより良い共有関係を結ぶために様々な知識を学んでもらいます。長所を伸ばし、短所は克服してもらえるよう充実した学習にしていきます。勉強自体ができないという子供については個人の優れた才能を活かしていけるようカリキュラムを立てていきます。すべては人とポケモンとの共存のため。
それではより良い知識を未来ある幼き子供たちへ――――――。
「へ?学校?」
『ガゥウ?』
『ピチュ?』
「そうよ。学校と自宅…ヒナちゃんはどっちを選ぶのか決めてほしいの」
こんにちは妹のヒナです。母からなにやら話があると言われ、今日は外に出ず家にいますが…学校とはどういうことなんだろうと思った。
そういえば学校ってこの世界にあるんだっけ…ああいや、一応あったのを思い出したけれど、でもそれでも兄達が学校に通っていない時点であまり勉強などはないと思っていた。イッシュ地方で幼稚園を見たことはあったけれど、私や兄は幼稚園に通ったことはないし…カント―地方ではないのかなと首を傾けていたこともある。
一応母から一般的な算数や文字の読み方書き方…あとこの世界での常識である基本的なことについては教わっていたけれど、私ができると分かったらすぐに母は勉強を終わらせていた。…というかその勉強を始めた時点でまだ兄が旅した直後だったからかなり早い段階で習っていたのだと思い出す。でもそのおかげでこの世界の文字が読めるようになったし、書けるようにもなったのだからある意味良かったと思うべきだ。でも、どうやら学ぶことはそれ以外にもあるらしい……。
学校と自宅を選べと母が言っていたけれど、どういうことなんだろうと疑問に思った。
そのため、私は母に首を傾けながらも聞いてみた。
「学校ってもしかして…勉強するの?」
「ええそうよ。サトシも同じように選んでから決めたわ」
「そっか…お兄ちゃんはどっちを選んだの?というより勉強ちゃんとしてたの?」
「ええしてたわよ。サトシの場合は自宅学習だったわね…一年でやるべきことは全部終わらせてたの」
「一年?…えっと、一般的にはどのくらい時間がかかるの?」
「そうね。短くて1年、長くても15歳までかしら?平均では10歳までにはちゃんと終わらせてるわ」
「………おうふ」
『ガゥゥ…』
『ピチュ…』
「どうかしたのヒナ?」
「…いやあの…もっと詳しく教えてもらってもいい?」
「ええいいわよ。まず勉強するのはね―――――」
話を詳しく聞いて見るとかなり凄いことを知れた。つまり、前世の知識から言うと、小学生から高校生までの勉強をすべて学ぶためにまず最初に学校か自宅学習のどっちかで教わるということだ。
学校ではちゃんと先生がついて話をしていき、一般的には10歳になる年齢まで教えていく。10歳になったらカント―地方の教育機関から出されたテストを受けてもらい、それに合格したら勉強から卒業できる。
自宅学習の子たちは家に届いた教科書などを使って自分で勉強していき、もう大丈夫だと分かれば、勉強を終わらせた時点で教育機関から渡されるテストを受けられる。もちろんそれは自分で申請しなければいけないのだが、そのテストは学校も自宅学習も同じ内容である。ただ学校と自宅学習で違うのは勉強ができるのか不安で皆で一緒にやりたいという子か、兄のように勉強に自信があり、早々に終わらせられることができる優れた子たちがいるということか…まあ不安かどうかによると思う。あと10歳という年齢に縛られることなくすぐにテストを受けられるかどうかだろう…。
しかもその勉強はかなり大変らしく、勉強が嫌いな子や頭が悪い子は知識以外を伸ばしていき、ポケモンと関わる仕事を就いて行くようにする…まあぶっちゃけて言うとアイリスさんのように学校よりも自然やポケモンたちと一緒に生きていくことが好きな子たちがそうなる。そして勉強ができる子は学んでいき、そこから自分の進みたい夢へと歩いてもらう。例えば、ポケモンマスターになりたいと言った兄やポケモンドクターになりたいと言ったタケシさんのようにだ。
とりあえず勉強ができる子の方がやるべき仕事はたくさんあると言った方が良いかもしれない。そしてこの学習によってさまざまな仕事を知ることができ、早々に自分の夢を追いかけて旅に出る子がたくさんいる。そんな子たちのためにオーキド博士たちが初心者用のポケモンたちを渡すのだと言う。
ちなみにそれらは様々な地方で定められた教育機関なるものがあるらしく、5歳を過ぎた子全員に通知が行き、6歳から学校か自宅学習かのどちらかを選ぶ。私の場合は5歳の時点でイッシュ地方を旅していたためにそういうことはあまり知らず、母から聞いてようやく知ったと言えるだろう。
そんな話を母から聞いていて少し頭がパンクしそうになったが、とにかく学校か自宅学習かどちらかを選ばないといけないのは分かった。私は兄のように優れているわけじゃないから、学校にしようかと迷ってしまった。前世の記憶があるとはいえ、勉強をしていなかったこの6年間のブランクやぼんやりと霞んでしまった前世の記憶で小学校から高校までの勉強を一気に4年で終わらせるのは…まあ予習復習基礎をちゃんとやればできそうな気がするけれど、でもやるならちゃんと先生と学んでいきたいなと思った。
でもそれにはある疑問を解決させなければならないと考えてにこやかに笑う母に向かって口を開いた。
「…学校ってリザードたちも連れていける?」
『ガゥゥ?』
『ピチュ?』
「…いいえ、学校ではほとんど寮生活になるからリザードちゃん達は連れていけないのよ」
「…そう…なんだ…」
『ガゥゥウ…』
『ピチュゥ…』
「ええ…ヒナちゃんは学校と自宅学習のどっちにするの?」
『…ガゥゥ?』
『ピチュ…?』
「もちろん自学学習で!」
『ガゥゥウ!』
『ピチュゥ!』
「ふふふ…そうね。そう答えが来ると思ってママもう申請しちゃったわ!」
『バリィ!』
「早ッ!!?」
『ガゥ!?』
『ピチュ!?』
学校ではリザードたちを連れていけない…その母の言葉に迷わず自宅学習にしようと考える。そう思って選択を迫った母に向かって即答するようにはっきりと叫んでいた。
リザードやピチュー達は学校で会えないと分かると、私が言う前は不安そうだったが、その後答えた言葉に喜んでいた。
だからそれで良かったんだと思う…というか、リザードとピチューと別れるだなんてありえないことだ。迷っている時間さえも…学校を選ぼうかと母から話を聞く前の時間がいらないほど、迷わなかった。もちろんリザードとピチューが一緒に来てくれると言うのなら私は迷わずに学校を選んだ事だろう。
……いや待った。もしもここで学校を選んでしまった場合伝説たちが暴走してこちらに来る可能性があったのをふと思い出した。伝説たちが学校に来て、私の前で遊ぼうと言ったり抱きついたり、喧嘩しながらも騒がしい状況のまま生徒たちに目撃されて私たちに近づいてきた場合を想像してこれで良かったんだと心から安堵した。
そしてそんな私に気づかない母は自宅と答えた言葉に満足そうに笑みを浮かべており、もう教育機関に申請したと言ってダンボールにぎっしり詰まっている教科書をバリヤードに部屋に運んでもらってから見せてくれた。
「うわ…何か見たことあるようなないようなものがたくさんある…」
「あらあら…もしかしたらサトシの教科書を見たからかもしれないわね」
「そ、そうかも…」
『ガゥゥ?』
『ピチュピチュ!!?…ピチュ…ピィッチュゥゥ……』
「ピチュー大丈夫?文字で酔っちゃった?」
「あらあら大変ね!バリちゃん、キーのみもって来て頂戴!」
『バリバリィ!!』
『ピィッチュ…!』
『ガゥゥ…』
ダンボールの中を開けてみると教科書がたくさん入っていて、その中から適当に一つの本を取り出す。数学と書かれている教科書は見たことあるような数式がずらりと並んでいて…この世界の教育はだいぶ凄まじいなと引き攣った笑みを浮かべてしまった。しかもこれを約4年で終わらせるスパルタっぷりも引くレベルだ…まあ10歳までというのは一般レベルなのだから大丈夫かと考えつつページをめくる。
そしてその本の数式を見たリザードが『何これ?』と首を傾けており、ピチューは数字を見てちゃんと悩んで考え、そして目を回していた。その様子を見た私がピチューを支え、母が大変だと近くにいたバリヤードを呼ぶ、そしてバリヤードはキーのみをピチューに食べさせ、ピチューはお礼を言った。
「うぅ…これはしばらく遊べなさそう…」
『ガゥゥ!?』
『ピチュ!?』
「いやこれ全部終わらせないと駄目だよ…だからごめんねリザードにピチュー」
『ガゥ…』
『ピチュ…』
「あ、そうだわヒナちゃん。サトシから伝言があってね?」
「へ?お兄ちゃんから伝言?」
「ええ。ほら前に電話きた時があったじゃない?その時に勉強の話になったのよ。それでヒナちゃんが自宅学習を選んだ時に伝言で…【期限は半年。できれば半年以下。それ以外はマサラタウンに帰ったらスパルタで教えてやる。目指せ新記録!】って言ってたわよ」
「それある意味死刑宣告!!!」
『ガゥゥ…』
『ピチュ…』
『バリバリ!』
兄の伝言に私は悲鳴を上げてしまった。期限は半年ということだから、おそらくカロス地方から帰ってくる間に終わらせておけと言うことなのだろう…。…というか半年でカロス地方の旅を終わらせる気なのか兄は……。
もしも兄の伝言通り半年以内に終わらせることができなかった場合は兄が寒気のする笑顔でいろいろと教えていくのだろう…それもスパルタで……。それは絶対に嫌だと断言したい。だからこそ半年以内に終わらせなければと決心した。
ある意味、この決心は三人組と勝負する時と似ている覚悟だと後々思えたけれど、今の私にとっては兄の言葉のせいで焦って教科書を開き、勉強する以外に考えることはなかった。
それと勉強している間に母が懐かしそうに兄が自宅学習を選んでいた時の話をしてくれたけれど、兄は教科書を一度だけ読んでから後は勉強はしていなかったらしい。一年経っても何もしないということからオーキド博士と母が強制的にテストを行わせた結果、合格となったから一年で終わらせたという事実になってしまったみたいだった。私もそれぐらいのレベルにならないといけないのかなと不安になるべきか、それとも普通の人間なんだと安心するべきか迷ってしまい、引き攣った笑みを浮かべてしまったのだった。
それではより良い知識を未来ある幼き子供たちへ――――――。
あなたたちは様々な知識を学ぶ権利があります。たとえそれが【どのような道】に進もうとも私達教育機関はあなたたちの成長を止めることはありません。
学びたい気持ちを求めるならば私たちは手を貸しましょう。ポケモンたちと関わりたいのならば知識を教えましょう。
私たちは誰もあなたたちの行くべき未来への歩みを阻もうとはしませんよ。