マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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彼女たちにとっては、とても大切なこと。






第二百十三話~妹はラティアス達と話す~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キューン!』

「ラティアス…そんなに抱きついてたら遊べないよ?」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

『キューンキューン!!』

 

 

こんにちは妹のヒナです。現在オーキド研究所の迷いの森にてラティアス達と遊んでいる最中です。いつもはボールで遊んだり鬼ごっこなどをして遊んでいたりするのですが、ラティアスが私に抱きついて離れようとせずにいるため思わず苦笑してしまいました。

どうかしたのか話しかけてもラティアスは何も言わずにただ私のことを抱きしめ続けているだけ。その状態は長く続き、話してくれと言ったとしてもきっと離さないだろうと思えるほどの悲しそうな表情を浮かべていた。その状況にリザードとピチューは苦笑しながらもラティアスを止めようとはせず、むしろこちらに近づいてラティアスと同じように抱きしめてくる。おそらくラティアスが落ち着いてくれることを…いつものように明るい表情になってくれることを願って行動しているのだろうと思えた。

 

私はそんなラティアス達に離してもらわない方が良いかと考えながらも、口を開いた。

 

 

 

「ラティアス…私たちはもうどこにも行かないよ。トレーナーになるまでは…ここにいるよ?」

『ガゥゥ!』

『ピチュ!』

 

『キューン…』

 

 

ラティアスは凄く悲しそうな表情を浮かべて私に抱きついている。その様子から私たちはあのジム戦の後……マサラタウンに帰ろうとした時に会ったラティアスがかなり喜んで、笑顔で私に抱きつこうとしていたのを思い出した。まあその時はミュウツーたちが争っていたし、ラティアスはラティオスに止められていたという記憶があったから今こうしていることでようやく思い出したと言った方が良いかもしれない。

最近いろんなことがありすぎてラティアスと一緒にいることができなかった。マサラタウンに帰ってきた後も、ラティアスはラティオスに連れられて自分の棲む町へ一時帰らなければいけないということからほとんど私たちと会うことはできなかった。

だからこそこうやって会うことができたと思ったら抱きしめられ、離れようとはしないのだろう。…それは、私達が何も言わずに突然マサラタウンから飛び出してしまったからだろうと考えている。そしてあの後十分私たちと一緒にいることができなかったから、今こうやってその時の悲しさを埋めているのだと感じた。

 

フシギダネ達だってあの後またどこかへ家出していくのではないのかと警戒され、オーキド研究所では兄のポケモン達のうち誰かが傍にいて、そして他の所へ遊びに行く時はミュウツーたちが後ろから監視するかのようにこちらを見ていたのだ。まあそれはしばらくの間続き、私達がもうマサラタウンから外に出ないだろうと確信したら終わったのだが、それでもやはりラティアス達の心にはあの時の悲しみが残っているのではないかと思えた。

 

だから、私は笑顔で大丈夫だとラティアスが安心できるように言う。リザードたちも私の言葉に力強く頷いていったのだが、ラティアスはそれでも離れない。

その姿から、【トレーナーになるまで】はここにいるという言葉は言わない方が良かったかもしれないとラティアスの反応を見て後悔したが、時間は戻ることはない。トレーナーになった瞬間から、ラティアス達と離れて旅をするということを遠まわしに言ってしまったから……そうだと分かってしまったのだろうからこそ、こんなにも悲しそうな表情を浮かべているのだと…そう感じてしまった。

 

 

「私たちはラティアスが望むのなら傍にいて離れないし、ラティアスがまた私たちと一緒に居たいって望むのなら【あの時】のように来てほしいって思うの…」

『ガゥゥ!』

『ピチュ!』

 

 

『…キューン』

 

ラティアスは少し考えるような仕草をしてからこちらを見て力強く頷いてくれた。ラティアスが私たちに会えないのを寂しいと感じてしまったのなら【あの時】…ジム戦の後マサラタウンから帰る途中で再会した時のように、会いに来ればいい。傍にいたいと思うのなら、あの後しばらくの間監視しているかのように離れることがなかったミュウツーたちや兄のポケモンたちのように傍にいてくれればいい。

ラティアスが寂しくないと…私たちの傍にいなくても大丈夫だと思えるまで私たちは拒絶したりはしないとそう決心した。

 

ラティアスはその言葉が嬉しいと感じ、絶対に離れないとばかりに私達を抱きしめる力を強める。先程までは手加減していたのだろうと抱きしめる強さからそう感じてしまった。でも苦しいとは感じない…ラティアスの方が苦しかったのだろうから。私達がラティアス達に迷惑をかけたという事実を償わなければとそう考え…いや、そうでないとしてもラティアスが…ラティアス達が悲しいと感じていたのなら私たちはすぐに助けていこうと心からそう考えているのだ。

 

このままラティアスが私たちのことを抱きしめ続けるのは良いけれど、それでももっと最適なことがあったと考えてしまった。気温が温かくてラティアスの体温によって眠くなってきたために、ラティアスたちに向かって口を開く。

 

 

 

「ラティアス…このままお昼寝しちゃおっか?」

『キューン?』

『ガゥゥ…?』

『ピチュ…?』

 

 

「今日は良い天気だし、お昼寝に最適だと思うんだ!だから皆で一緒になって寝ちゃおうよ」

『ガゥゥウ!!!』

『ピィッチュ!!!』

 

『……キューン!!!』

 

 

抱きしめられたまま、横になって眠れるように体勢を変える私たちは心地よい日差しの中、微睡んでいきやがて思考を止め眠っていった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ふぁぁ…ッ…ちょっ…何で目の前にいるのミュウツー…」

『ふん…あいつと間違えないのか…』

「あいつ?…ああ、ミュウツー姉さんのこと?」

『………チッ』

「ほら舌打ちしない…というより、なんかすごいことになってるね」

『……ああそうだな』

 

 

眠りから覚めて、目を開けるとそこにはミュウツーの顔が見えてしまった。思わず叫び声をあげそうになったが両手で口を塞いですぐに声を出さないようにする。周りにラティアス達が眠っているとすぐに思い出したからだ。ラティアスは私に抱きついていた力が緩まり、ラティアス達に抱き枕にされている状態から抜け出して起き上がることができた。

 

そして見えてきたのはラティアスとリザード、そしてピチューが眠っている姿…だけではなかった。私の周りにいる兄のポケモンたちと伝説達、そして見知らぬ野生かオーキド研究所のポケモン達が眠っているという姿。しかも私を囲むように皆が丸くなって眠っているのだ。あ、でもダークライとセレビィたちがいないからもしかしたらマサラタウンに来ていなかったのかなと考える。そして私は周りを見てその光景に驚き、皆も眠かったのかなと首を傾けた。

私と同じように目が覚めているミュウツーだけは不機嫌そうな表情で私からそっぽを向いている。ミュウツー姉と間違えなかったというのに何で不機嫌になるんだろうかと疑問に思ったけれど、それを口に出してしまったら皆を目覚めさせるような音量で叫ぶか、もっと不機嫌になるのではないかと考えて行動するのをやめる。

 

 

『キュゥゥン…』

『ガゥ…ゥ…』

『ピィ…チュゥゥ…』

 

「ふふ…おやすみ皆……私ももう一回寝るよ。ミュウツーは寝ないの?」

『…ヒナは俺と一緒に寝てもいいのか?』

「うん。皆で寝た方が楽しいよ?」

『……そうか、なら俺も寝よう』

「分かった…おやすみミュウツー」

『…ああ、おやすみヒナ』

 

 

皆が眠っているのを見ているとまた眠気がくる。まだまだ日差しも温かいしもう一度眠りにつこうと思った。そしてフカフカな草が生えている地面に横たわり眠ろうとする。すると近くにいたラティアスとリザード、そしてピチューが私にまた抱きつこうとする。それを見て微笑み、皆が起きない音量でミュウツーに向かって一緒に寝ようと言った。ミュウツーは私の言葉を聞いて機嫌が良くなったのか私たちの近くに来て眠るために座り、そして横になった。それを見た私はもう一度笑みを浮かべてから目を閉じる。

 

 

 

できることなら、皆が良い夢を見れるようにと…ただそれだけを願いながらも――――――。

 

 

 

 

 

 

 










コツコツコツと、暗闇の中で音が聞こえる――――――。




それは足音か、それとも違う音なのか…不明な音が聞こえてくる。




「…さて…データは揃いましたね。…それでは私はやるべきことを全うしましょうか」




コツコツコツ



―――――――――音が、響いた。



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