兄にとってはカロス地方の目標である。
こんにちは兄のサトシです。ある張り紙にチャンピオンがエキシビジョンマッチとして戦うという面白い広告が出されていて、俺たちはそのバトルを見てみたいと思いました。でもチャンピオンについては知らないためにハルカと一緒に首を傾ける。
「チャンピオン…カルネ?」
『ピィカ?』
「カロス地方のチャンピオンって女性なのね…」
「え、サトシにハルカ…知らないの?」
『デネ?』
「まあカロス地方に来たことないのなら知らないのも無理ないわね…カルネさんはこのカロス地方では物凄く有名だけど、他の地方には行くことはほとんどない人だから…」
「でも素晴らしい人なんですよカルネさんという方は!!」
「へぇ…」
『ピィカ…』
「でもポスターを見ると…確かに素敵かも…!」
セレナたちが説明してくれたのはカロス地方のチャンピオンであるカルネさんという人のことで…カルネさんはこの地方でとても強く、そして女優としても有名とのことらしい。いろんな人々から尊敬されているということでポスターなどもたくさんあり、カロス地方で大ヒットになっているという映画が張り出されていたのも見た。
そしてその映画のポスターを見てハルカが両手を握りしめて目を輝かせ、ポケモンコンテストに何か活かせるバトルが見れるかもしれないと楽しみにしているようだった。俺もチャンピオンと出来ればバトルしていきたいなと思ってはいるが、まあチャンピオンということで無理がある可能性もあって諦めもある…とりあえずエキシビジョンマッチだけでも見れるだけ良いかと思考を変えた。
「…とにかく、そのバトル見に行こうぜ?」
『ピィカッチュ!』
「そうね!カルネさんに会えるかもしれないし!どんなバトルするのか楽しみかも!!」
「もしも会えたらお兄ちゃんのお嫁さんになってもらう様に頼んでみる!」
『デネデネ!』
「それ絶対に無理だよユリーカ…」
「じゃあ行って見ましょう!」
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俺たちはそのバトルを見に行くために大会の会場へ向かう。そしてカルネさんがいるという控室を探して歩いていると何やら大きな人ごみがあった。人ごみは扉の前で誰かに話しを聞きたいという感じで騒いでおり、ある女性が頑張って扉を開けさせないようにしていた。そしてカルネさんに会うことはできないとその女性が叫んでいる。
これは残念だと感じたが、会うことはできないのならとりあえず会場内の席だけでもとりにいこうかと思った時だった。
「おーいサトシ君達…こっちだよこっち!」
「あ、プラターヌ博士!」
『ピィカ!』
「え、何で博士がここに…?」
「……えっと、誰?」
プラターヌ博士が俺たちに向かって手招きをしてからこっそりと部屋の中に入れてくれた。
その部屋はカルネさんがいる部屋と繋がっており、メガシンカについて関わっていると言うことも博士から教えてもらった。もしかしたらカルネさんの手持ちにいるというサーナイトのメガシンカが見れるかもしれないと俺たちは楽しみになる。バシャーモのメガシンカは前に何度かミアレシティで見ることができたが、バトルで戦う姿は見たことがない。だからこそカルネさんがバトルするときにメガシンカでどんな戦い方をするのか、強さは一体どのくらい上がっているのだろうかとテンションが上がった。
だが、俺たちが目を輝かせ盛り上がっている間に、ハルカが小さく手を上げて声を出す。
「ね、ねえサトシ!この人って誰?あとメガシンカって何?」
「ああごめんよ…君は一体…?」
「ハルカ、彼はカロス地方のプラターヌ博士なんだ」
「そうなんですか!こんにちは、私はハルカって言います!」
「そうか、よろしくねハルカちゃん!」
「それで、メガシンカっていうのは…?」
「ああ、メガシンカは―――――」
ハルカにメガシンカについてプラターヌ博士が教えていった。そしてバシャーモがメガシンカするということについても話していく。自分の相棒でもあるバシャーモがメガシンカをするという事実にハルカは驚き、自分もメガシンカしてコンテスト等に出場してみたい、バトルしてみたいと言うぐらいその事実を知って喜んでいた。ポケモンの新しい謎があるということに俺と同じようにハルカも興味をもっているのだ。プラターヌ博士はそんなハルカに俺たちが前に話していたことをすべて説明する。それに目を輝かせて話を聞きながら、コンテストでどんな感じになるんだろうと想像するぐらいとても盛り上がっていた。
そしてその間、俺たちはカルネさんがいるという扉を見つめていた。
「あそこにカルネさんがいる…」
『ピィカッチュ…』
「会ってみたいけど…メイク中だから邪魔になっちゃうわよね…」
「でも早く会ってお兄ちゃんのお嫁さんになってもらいたい!」
『デネ!』
「だから無理だって!」
「博士、お待たせ……あら?お客さんかしら?」
ハルカ達の話が終わった頃に、カルネさんが扉を開けて出てきた。ポスターそのままの格好にセレナたちは目を輝かせ、俺とハルカはメガシンカやバトルが見れるかもしれないと好戦的な目で見つめている。だが、そんな俺たちにカルネさんはただ微笑み、挨拶をしてきたので俺たちも挨拶をする。
博士がメガシンカの鍵となるキーストーンを研究させてくれと話しているが、それは無理だとカルネさんが言い、これはサーナイトとの絆なのだと優しい笑みを浮かべてネックレスのようになっている部分を触る。
カルネさんが触ったネックレスがキーストーンになっているのだと俺たちは分かり、話を聞く。
するとプラターヌ博士がキーストーンやメガストーンについて簡単に説明してくれた。キーストーンはトレーナーが持つものだということ、メガストーンはポケモンたちが持つものだということ…そしてその二つが揃った時にようやくメガシンカができるのだと言う。メガシンカができるようになれたらと思う俺たちにとってそれはとても興味深い話であり、キーストーンとメガストーンを何とかこのカロス地方の旅で手に入れられるかなと考え込んだ。
――――そしてその後、先程扉の前で叫んでいた女性がカルネさんに時間だと知らせに伝え、俺たちはバトルを観戦するために移動することになったのだった。
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エキシビジョンマッチが始まり、カルネさんともう一人のトレーナーのバトルが始まった。
バトルでカルネさんがボールから出したサーナイトを見て…今はメガシンカすることはないようだが、ちゃんとペンダントをつけていて…これがサーナイトの持つメガストーン…サーナイトナイトだと分かった。
「あれがメガストーン…メガシンカの秘密か…!」
『ピィカ…!』
「綺麗かも…!!」
「うわすごい…まるでお互いの考えが読めてるみたいに動いてる…!」
「カルネさんとサーナイトの意思が通じ合っているようですね…これが絆…」
「凄いねデデンネ…チャンピオンってこんなに強いんだよ!」
『デネデネ!』
この後、一気に倒すことができたカルネさん達であったが、サーナイトがメガシンカするというのを見ることはできず、プラターヌ博士がもう一度頼んでみようと決心していたようだった。だからこそ、俺はピカチュウを見て、ピカチュウも俺を見て頷く。俺たちはカルネさんにメガシンカを見たいからこそ、バトルを申し込もうと決意した。
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「まさかもう出発してたなんてなぁ…」
『ピカチュ…』
「メガシンカ…見て見たかったかも…」
「ほら、サトシもハルカも落ち込まないで早く行きましょう!ケーキ食べれないわよ!」
「セレナ!なんかすっごい行列だよ!」
『デネ!』
「…出遅れましたね」
「そうはいかないわ!サトシ達は席をとっておいて!」
「あ、待ってセレナ。私も行くわ!」
結局、先程の控室まで戻っていくとカルネさんはもういないと言うことがわかり、俺たちは残念だと感じた。でもセレナが励ますかのようにこの町で美味しいと評判のケーキ屋に行こうということになった。プラターヌ博士はやることがあるから後で向かうと言っていたため、俺たちが先にそのケーキ屋へ向かう。
ケーキと聞いてハルカが目を輝かせていたが、歩いている途中で先程の戦いを思い出し、俺と同じようにまた落ち込んでいた。
そしてセレナたちが励ましながらもようやく着いたケーキ屋では行列ができていて、これではケーキが買えるかどうかさえ分からないと感じてしまった。でもセレナは諦めずに特攻し、ハルカも一緒について行った。それを見た俺たちは苦笑しながらも人数分の席をとり、セレナたちが帰ってくるのを待っていることになった。
「結局…これしか取れなかったわ…」
「一個のケーキしかないか…ならセレナたちが食べた方が良いかもしれないな」
「え、サトシは!?」
「全員で分けると本当に小さくなるだろ?ならなるべく人数は減らした方が良いだろうし…それにケーキなら苦労してとってきたセレナたちが食べた方が良い。もちろんシトロンやユリーカも頑張って席とったんだから食べないとな」
「サトシ…そういうのはちょっと空気読めてないって言えるかも」
「は…?」
「ハルカの言う通りよ!サトシも一緒に食べるの!というか、そういう遠慮はいらないから!皆で分けて食べましょう!!」
「そうだよ!サトシも仲間なんだから一緒に食べないと!」
『デネデネ!』
「大丈夫ですよサトシ、僕の発明でちゃんと均等に分けられます!」
「……お前等」
『ピィカッチュ…』
結局一緒に食べることになってしまったんだけれども…その途中でカルネさんに会い、俺たちが食べようとしていたガトーショコラが食べれないことにショックを受けていた。だから俺たちが分けようかと話をする。そしてほとんど一口サイズになったガトーショコラに、俺はあまりケーキを食べないし平気なんだけどなと苦笑しながらも、皆の優しさと仲間だから遠慮するなという言葉に少しだけ恥ずかしくなったが、同時に嬉しいという気持ちもあった。
そして皆で均等に分けられて俺の分となったガトーショコラはもう一度半分に分けてからピカチュウに半分渡し、俺もその半分を食べる。ピカチュウは電気を少しだけビリビリとさせながらも美味しいと喜んでおり、皆も食べれて良かったと笑みを浮かべている。そして口にしたガトーショコラの味は濃厚で、皆と食べれて良かったと思えたぐらいだった。
「美味しかったわ…本当にありがとうね。何かお礼をできたらいいんだけれど…」
「あ、じゃあカルネさんキープ!うちのお兄ちゃんをシルブプレ!!」
『デネデネ!』
「シル…ブ…プレ…?」
「こらユリーカ!やめろって言ってるだろ!すいません冗談です!」
「冗談じゃないもん!」
『デネデネ…』
「……あの、ポケモンバトルってできませんか?」
「あら、君は…」
「サトシです。俺、ポケモンマスターになるために旅をしていて…カルネさんとバトルしたいんです」
「あ、私もバトルしたいです!…私はハルカって言います!」
「そう…いいわよ。バトルでガトーショコラのお礼になるかどうか分からないけど、あなたたちとのバトル…特別に喜んで受けるわ」
その後、礼をしたいと言うカルネさんに、俺はバトルができるならしてもらいたいと頼み込む。カルネさんは現在唯一の休息時間となっていて、俺たちの我儘を聞いて時間をとらせるのは迷惑となるかもしれないと思っていた。もちろんハルカもその考えは持っていたけれど、メガシンカできるバトルというのはどういうものなのか自分で確かめてみたいと考えたのだろう。だからこそ迷惑と分かっていても俺の後ろからカルネさんを見て頼み込む。
でもカルネさんは俺たちの話を聞いて、そして笑みを浮かべて頷いてくれた。
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「僕は記録を撮ろう…すまないけどシトロン君、審判をお願いできるかい?」
「はいもちろんですプラターヌ博士!」
現在俺たちがいるのは町はずれにある森の奥。バトルをするために歩いていたらプラターヌ博士と再会し、俺たちのバトルを見ようと言ってカメラを取り出していた。まず先に俺がバトルをすることになったが…メガシンカを見せるかどうかはその強さを示さないとできないとカルネさんが言ってきた。だからこそ俺とピカチュウは全力を出して戦おうと決心する。
「それでは、ピカチュウ対サーナイトのバトルを始める!…試合開始!!」
「サーナイトは実力を確かめるために動かないはず…ピカチュウ、ボルテッカー」
『ピィカッチュ!』
「………」
『サァナ』
「え!?サトシのピカチュウの技が躱された…!あのサーナイト凄いかも…!」
「頑張ってサトシ!!」
「どっちも頑張れ!!」
『デネデネ!』
「ピカチュウのボルテッカーと素早さに対応しているとは…さすがカルネさんですね…」
「でもサトシ君のピカチュウも強いね…ボルテッカーの威力が高い…!」
ボルテッカーをテレポートで躱され、ピカチュウがまたサーナイトを追ってボルテッカーを発動させたまま近づいていくがすべて躱されていく。だがサーナイトが躱していった場所はピカチュウのボルテッカーをもろに受けたため地面が抉れたり焦げていたりと様々だ。
その様子にセレナたちは驚き、当てれば勝てるかもしれないと言い、頑張れと応援する。そしてカルネさんは俺たちを見て楽しそうに笑みを浮かべていた。
「ピカチュウ、広範囲10まんボルトだ…セレナたちには当てないようにしろよ?」
『ピィカッチュ!!』
「っ…凄い…サーナイト!」
『サァナ…!』
ピカチュウが10まんボルトをほうでんのように放つ。テレポートで避けられると言うのなら避けられない範囲での攻撃が効くと考えたからだ。でもそれをやった場合セレナたちに攻撃が当たる可能性を考えてピカチュウに注意する。ピカチュウはそれが分かっていると自信満々な笑みを浮かべて頷き、自在に操る10まんボルトで確実にサーナイトに当てようとした。
カルネさんはその技の強さが分かったのか、次第に俺たちがしていたような好戦的な瞳をしながらも輝かせていた。そしてサーナイトに向かって指示を出すために言う。サーナイトはシャドーボールを発動させ、向かってきた10まんボルトをぶつける。その余波によって突風が起こり、サーナイトは10まんボルトの直撃を受けていないようだったが、それでも少しだけダメージを受けてしまったようだった。それでもちゃんと立ち上がり、こちらを見つめているということにさすがチャンピオンのポケモンだと感じる。確かシロナさんのガブリアスもそんな感じだったなと考え、楽しくなってきた感情を抑えきれず笑みをこぼした。
「サトシ君、君は強いわ。噂で聞いていたけどこれほどとは思わなかった…だから見せてあげる!私とサーナイトとの絆の強さを!…サーナイト、メガシンカ!」
『サァナァアアア!!!』
「あれが…メガシンカ…!」
『ピィカ…!』
サーナイトの形状が変わり、まるで進化したときのように光り輝く。いくつか進化と違うと思えたのは、カルネさんの持つキーストーンとサーナイトの持つメガストーンが鎖のように繋がっていき、そこから光り始めたからだと分かったからだ。
そして輝きが消えていき、見えてきたのはメガシンカしたサーナイトの姿…メガサーナイトだった。メガサーナイトは先程とは違ってとても強いという感じが伝わってきて、よりバトルが楽しめそうだと感じる。だからこそ、その強さを味わおうと、このバトルに絶対勝とうとピカチュウに指示を出そうとした。
「ピカチュウ!エレキボール!」
『ピッカァ!!』
「サーナイト、シャドーボール!!」
『サァナァァアア!!』
エレキボールとシャドーボールが衝突する。でもシャドーボールの威力の方が強いのかエレキボールを吹き飛ばし、ピカチュウに向かっていく。ピカチュウはすぐに躱していたけれども、エレキボールを吹き飛ばした技の威力とその強さに笑みを浮かべて俺を見る。もちろん俺もピカチュウと同じような表情を浮かべながらも勝ちたいという欲求が強まった。
「メガサーナイトに勝ちたい…そう思ってるだろピカチュウ?」
『ピッカ!』
「俺も同じだよ相棒!!だから全力で勝ちにいこうぜ!!!」
『ピッカッチュゥ!!!』
「ふふ…サトシ君とピカチュウの心も通じ合っているのね…ならこちらも勝つ気で行くわ!」
『サァナァァアアア!!!』
――――このままバトルが過熱し、俺とカルネさんのバトルの決着がつくだろうと皆が考えた…その時だった。
「カルネさん!もう時間ですよ!早くしないと撮影に間に合いません!!」
「え、もうなの?」
『サナァ?』
「はいそうです!スケジュールはみっしり詰まってるんですよ!」
「そう…残念だけど…サトシ君…それにハルカちゃんも、バトルはまた機会があったらやりましょう」
『サァナ』
「…わかりました」
『ピィカ』
「うう…残念ですけどまた今度絶対にバトルしましょうねカルネさん!」
『サァアナァ!』
「あれ…サーナイトが元に戻った!?」
『デネデネ!?』
「メガシンカが通常の進化と違うのはこうしてもとに戻るところだからね!」
「へえ…そうなんですか!」
メガシンカが見れたことがとても嬉しかったけれど、もう時間がないと言うこととバトルはまた今度やってくれという言葉に俺とハルカは落ち込んだ。ハルカなんてカルネさんと今後バトルができるかどうか分からないからだ。
「あの…カルネさん。俺はカロスリーグに出場して…絶対に優勝します。だからその時にバトル受けてください!」
『ピィカッチュ!』
「ふふ…サトシ君が言うと本当に実現しそうね。その時を楽しみに待っているわ!…ハルカちゃん、ポケモンコーディネーターって聞いたけれど、またカロス地方に会ってバトルができたらしましょう」
「っ!はい!!絶対にバトルします!その時はよろしくお願いします!!」
「良かったなハルカ」
『ピィカッチュ』
「うん!すっごく嬉しいかも!メガシンカ…私も絶対に使いこなしてみせるわ!」
ハルカは一時的とはいえサーナイトがメガシンカしたことに感動し、ハルカのポケモンたちがメガシンカできるようにしてみたいと決心したようだった。もちろんその気持ちは俺たちも変わらず、そんなやる気に満ちた俺たちにカルネさんは優しい笑みを浮かべて、頑張ってと応援する。
チャンピオンに出会って、いろんなことがあった俺たちだったけれど、メガシンカのことについても知ることができて良かったと思える一日だった。
兄の心境。
カルネさんのメガシンカしたサーナイトに全力で挑んでみたいと…そう思えた。