マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

210 / 288




ある意味デジャブで、ある意味衝撃的――――――。






第二百六話~妹はある人間達を見る~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【今日のすんごいポケットニュース!本日はカント―地方であるバトル大会に優勝したアーロンさんに来ていただいてます!!】

【どうもこんにちは、アーロンです】

 

 

「ブッファッ!!?」

『ガウゥ!?』

『ピチュ!?』

「どうしたのヒナ?何だか凄い声出してたわよー?」

『バリィ?』

「だ、大丈夫だよママ…」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。テレビを見ていたら物凄く見たことがある人物が映っていて驚愕しました。しかもその人物…アーロンさんの後ろの方にはルカリオがいて…何をやっているんだと思ってしまった。ルカリオは何だか慌てたような表情でアーロンさんを見ている。おそらくテレビに爽やかな笑みで映っているアーロンさんのことが心配で仕方がないのだろう。でも今アーロンさんに向かって喋って止めようとしてしまうと大変なことになると分かっているからこそ止められないのだと私たちは分かって思わず遠い目をしてしまった。

 

 

何だろう…何か兄がテレビに映った時みたいでデジャブ……。

 

 

【それでは、ルカリオ一体で挑戦し、優勝したその強さの秘訣について教えてもらってもいいですか?】

【そうですね。強さの秘訣とはつまり、相手をどうぶっ潰すのか考えていかなければなりません。それか自分自身で倒していくにはどうすればいいのかを予測していきます】

【…えッ!?……な、なるほど…!!】

 

 

「アーロンさんの言ってることが物凄く不穏…」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

 

 

テレビの向こう側の空気が微妙そうだ。それは少し分かる気がする。相手をどうぶっ潰すのか考えるって普通はもっと遠まわしに相手に勝っていくにはどうすればいいのかと言うはずなのだから。でもアーロンさんは本当に素直に潰すと表現した。しかも自分自身で倒すと言うよく分からないことを言って…爽やかに笑みを浮かべて言うギャップが凄まじいと思ってしまった。

だからこそスタッフたちはアーロンさんの言葉にどう反応すればいいのか悩み、大げさに首を縦に振って無理やり納得していた。そしてテレビを見ている私たちは微妙そうな表情で苦笑していた。

 

 

【ああ、あと修行もちゃんと必要ですよ。例えばルカリオと―――――】

【あ、いえ!具体的に見せてもらわなくても大丈夫ですよ!!!】

【そうですか?なら…】

 

「あれって絶対にお兄ちゃんが前にテレビに出てきた時の結果から学んだ影響だよね…」

『ガウゥ?』

『ピチュ?』

「後で見せてあげるよ…ママ、その時の映像ちゃんと録画してたから…」

『ガゥゥゥ!』

『ピィッチュ!』

 

 

修行という言葉を聞いて、カント―地方のテレビ局は嫌な予感がしたのだろう。すぐにアーロンさんが行動に移す前に声を遮り大丈夫だと叫ぶ。だからアーロンさんは首を傾けて少しだけ残念そうな表情で答え、行動には移さなかった。その時にスタッフが密かにため息をついていたのを私は見た。

そしてルカリオもアーロンさんを止めた方が良いのかあのままで大丈夫なのかあたふたしながら考えている。その点は兄がテレビに出た時とは違うなと考える。ピカチュウも兄と一緒に暴走しやらかしていたからこそ、修行をどんなふうにすればいいのか具体的に見せることになったとしたらルカリオはちゃんと手加減するだろうから…。あ、でもアーロンさんの命令だから素直に手加減なしでやる可能性も残っているかなとふと考えてスタッフの行動で良かったのだと思えた。

 

 

【…そ、そういえばアーロンさんは一体何処に住んでいられるのでしょうか?】

【マサラタウンに住んでいます】

【マ、マサラタウンですか…】

 

 

「マサラタウンって聞いて引き攣った顔してる…うわぁこれでマサラタウンの住人が全員スーパーマサラ人だって思われたかも…」

『ガゥゥ…』

『ピチュゥ…』

 

 

【そ…それでは、旅の目的は?】

【旅の目的はもう達成したので帰ろうかなと思っていますよ】

【あ、そうなんですか!ではどのようなことをしたのでしょう…?】

【あそこにいる彼に全力で話し合いをしただけです】

 

【あれ話し合いじゃないから!全力でボッコボコに殴られただけだから!!!】

【ほらティナ…今収録中なんだから騒がないで落ち着きなさいよ】

【ポチャポチャ】

【ミィィ…】

【いやあれアーロンが何もないって顔で話し合いとか言うからでしょ!?というか何で俺だけ文句言われなくちゃいけないの!!?】

 

 

 

「あれ…知り合いってギラティナだったんだ!?……あ、でもルカリオが前に言ってたような…というか一緒に旅してるんだ…」

『ガウゥ』

『ピチュ…?』

 

 

ルカリオがイッシュ地方で旅していた時にギラティナのことについて反応していたのを思い出した。そしてテレビでアーロンさんが映像に映っていない方を指差して話し合いをしたと言う。その言葉に映像の外から聞いたことのある叫び声が聞こえてきたのでカメラがすぐにそちらに向く。そして見えてきたのは前に会ったことがある人間になったギラティナとヒカリさんとポッチャマとシェイミだった。ギラティナがアーロンさんに向かって叫んでいて…それを止められたことに不服そうであり、まだアーロンさんに物申したいという感じだったが、ヒカリさんとポッチャマに落ち着けと慰められていて、シェイミは呆れた表情でいた。

そしてカメラがまた移動し、アーロンさんを移すが、アーロンさんはギラティナの方向を見て笑みを浮かべていた。…ただし目は笑っていないので怒った時の兄の表情に似ていると私たちは思ってしまった。

…もしかしたら番組が終わった瞬間にギラティナはまたボッコボコにされるのではないかと思えるほどアーロンさんがギラティナに向ける目線は冷ややかだ。あんな表情がアーロンさんもできるとは思ってもみなかった。そして兄に似た表情にもしかしたら兄と同類なのではないかと思ってしまった…いや、いろいろと発言が微妙な時点でもう兄と同類だろうと考えてしまう。

そして映像に映るルカリオは頭を抱えてため息をつき、この状況を諦めたらしい。何というか…お疲れさまと言いたくなるルカリオの表情は、兄が暴走していて止めようとしていた頃と似ている。もしかしたらアーロンさんの暴走も止めようとして…いつかはその行動自体を諦めてしまうのかなと思ってしまった。まあアーロンさん達がマサラタウンに帰って来た時に分かることだろう。

 

そしてスタッフはそろそろ終わらせた方が良いと思ったのだろう…アーロンさんに向かってマイクを差し出す。

 

 

【そ…それでは、アーロンさん…何か言いたいことがあればどうぞ!】

【そうですね…サトシ君という人は知っていますか?】

【ええもちろんですよ!歩く人外魔境と恐れられていますからね…それで、彼に何か言いたいことでもあるのでしょうか?】

【はい。サトシ君には感謝しなければいけないことがありますから、マサラタウンに帰って来た時に礼を言わなければいけないということ、是非やってほしい修行があると言うことを伝えられたらと思っています】

【なるほど…ですが今はサトシさんは確かカロス地方を旅していると騒がれていますからその再会はまだ叶いそうにありませんね…】

【ええそうですね…ですがその時がとても楽しみです】

【なるほど…ありがとうございました!!】

 

「…ねえリザードにピチュー…アーロンさんがやってほしい修行って何だと思う?」

『ガゥゥ…?』

『ピチュゥ…?』

「うん分からないよね…でも物凄く嫌な予感がするんだけど…」

『ガゥウ…』

『ピチュ…』

 

もしかしたら…もしかしたらアーロンさんは兄に波動の使い方を教えてしまうという考えが浮かび上がってしまった。そのままでも強いと思われている兄が波動を使いこなしてしまったとしたら一体どうなるんだろうと私は遠い目をしながらもテレビを見ている。…といってもテレビに映し出されていた番組はもう終わってしまい、次のニュースが流れているだけなのだが…。

アーロンさんがマサラタウンに住んでいると言う言葉に私たちはここにいてくれるという意味で嬉しく思えたけれど、それでも兄と出会うという意味では微妙な心境になる。兄がカロス地方から帰って来た時にアーロンさんと会い、そしてどんな修行をするのだろうかと…。

 

出来れば私は、兄とアーロンさん達が帰って来た時に、その修行を見ないためにもオーキド研究所に近づかないようにしておこうかなと思ってしまった。もちろん私だけじゃなく、リザードやピチューも同意見で、カロス地方から帰ってくる時の兄を素直に喜べるのかについても心配になってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 




妹の心境。
 アーロンさんは楽しそうだった…うん。





▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。