マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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進化して、変わったことと変わらないところ…。





第二百五話~妹は相棒に困惑する~

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。現在マサラタウンでのんびりと過ごしています。タケシさんの家で貰った帽子は大事に使っていますよ。今も帽子をかぶってオーキド博士の研究所にある森で散歩をしているぐらいですし…いつか旅に出た時にも帽子を使えるならかぶろうかと思ってます。私たちの旅で使った思い出の帽子ですからね。

 

 

まあ、そんなことよりも…。

 

 

 

『ガゥゥ…!』

 

「だ、大丈夫だよリザード?これぐらい私でもできるからね?」

『ガウ!ガゥゥ!!』

『ピィッチュ…』

 

 

現在私たちはきのみを集めるために木に登ったり、近くにいた草ポケモンたちときのみを集めようとしている。集めたきのみを母がお菓子にして作ってくれるからだ。もちろん協力してくれた草ポケモン達にもあげるし、兄のポケモン達や伝説達にも食べてもらおうと思っている。

そして、そのお菓子は母が作るだけじゃなくもちろん私も作るのを手伝おうと考えているのだ。今回旅に出て、料理の大切さを知ったからこそ、私も作れるようにならなくてはと決意した。あの栄養バーのみの旅をするのはものすごくきついと感じていたからだ。兄の旅では仲間が料理をできる人がいたからこそ必要とはしなかった。イッシュ地方でもルカリオがついて来てくれたし、途中でデントがいてくれたからこそ気にはしなかった。でも今回旅をして分かった…料理は作れた方が良い絶対…。だから母に学ぼうと思って、ルカリオが当時習い始めた時のようにまずはお菓子から作ろうと考えているのだった。でもきのみを集めるために私が木に登ろうとするとリザードが止めてきて、自分がやると言ってきているのだ。

 

―――――まあつまり、リザードが過保護すぎてどうすればいいんだという状況になってます。

 

 

 

「リザード、私は大丈夫だよ?木から落ちることもないし、怪我だってしないのに…」

『ガウゥ…!』

『ピチュピチュ?』

『ガウゥゥ』

『ピィッチュ…!』

 

 

「ピチューまで私を止めるの?というかリザード、何を言ってピチューを味方につけたのよ…」

『ガゥゥ』

『ピチュ!』

 

 

兄と電話で話していた時のことを思い出す。あの時、リザードは本当に良い子だと思っていた。グレることもないし、私に懐いているからだ。でもそれ以上に過保護すぎるのである。…兄のリザードンのようにグレることはないリザードではあるけれど、このままでいいとは思ってはいない。

カロス地方での電話やカロス地方を旅する前に聞いた話では、たまに進化しすぎたポケモンがトレーナーに懐かず指示を聞くのをやめてしまうというのを兄から聞いた。兄は様々な地方で旅をしているために、その話はまさに経験談でもあり、周りの人間から見た時の話でもあったのだ。兄だけじゃなく兄の仲間だった人たちもその指示を聞かないという体験をしたことがあり、兄のリザードンを知っている私としては少しだけ不安でもあった。

でもリザードはヒトカゲから進化してからもいつもと変わらず私の傍を離れず、ピチューと同じように懐いていると感じている。私やピチューが笑えばリザードも同じように笑ってくれるのは、ヒトカゲだった頃と同じだ。懐いているというのはとても嬉しいことだけれど、一方で過保護すぎるという状況にどうすればいいのか悩む。

 

リザードが過保護なのは私やピチューが怪我をする可能性があった場合にのみ行動する。木に登ってきのみを採ろうとしたらリザードが腕を掴んで止め、自分が行くと言って聞かないのだ。

リザードがピチューに対して過保護なのは主に修行をしすぎたり疲れている場合にのみストップをかけたりするということ。そしてピチューがオニスズメに襲われそうになった時もリザードが助けてくれる。でもピチューの場合は過保護でも大丈夫だろうと思う。ピチューはリザードにとって頼れる仲間であり、仲のいい姉弟のようにも見えるのだから。でも私の場合はそれでいいとは言えないのだから…過保護すぎるこの関係がちゃんとした相棒関係といえるのかと私は考える。

 

兄はよくポケモンと人間との関係が常に上も下もないんだと教えてくれた。そしてポケモンたちと一緒にやれることは積極的に行動し、同じ目線で動けと言ってくる。そんな兄の言うことは全て正しいのだろうと私は感じていた。だからこそ、リザードが過保護になったことに対して、私のことを大切にするのは凄く嬉しいけれど、それで同じ目線で一緒に行動できるのかと言われれば駄目だろうと思っていた。

しかもリザードはよくピチューを味方につけて私を怪我させないように動くため、守られる状態が常に起きていたのだ。私はそんなことはしてほしくないとリザードとピチューに言うのだが、その声をリザードたちは聞こうとはしない。

そして近くにいた兄の手持ちではないフシギダネ達が苦笑していて…でも私やリザードたちの言い合いを止めようとは思ってもいないようだった。

 

でも今回は絶対に止めてもらおうと決心し、リザードに向かって私は諭すように言う。

 

 

「リザード…私は皆と一緒に行動して、そして動いていきたいって思ってるの。だから木登りだって私はできるし、守ろうとしなくてもいいんだよ?」

『……ガゥゥ!』

『ピィッチュ…』

「それは嫌だって言いたいの?ピチューも微妙そうな顔で…でも修行してるのはリザードだけじゃない、私だってやりたいからやってるんだよ?リザードが進化して強くなっても同じ」

『ガゥゥ…』

『ピチュ…』

「リザードたちと一緒に行動していきたい、ずっと助け合って生きていきたいって思ってるから…だから止めないで…ね?」

『…………………』

『ピチュゥ…』

 

ピチューが俯いて考えているリザードを見て、そして私を見て必死に考えている。リザードは生まれた時からずっと私と一緒に行動を共にしてきた。だからこそ進化して強くなったことで私たちを守れるのではないかと判断し……様々な障害から私やピチューを守ろうとしてくれているのだろう。兄のフシギダネ達のように、ミュウツーたちのように…敵となる存在や怪我をするかもしれない可能性から避けようとしている。

でもそれは兄たちのポケモンや伝説達だからこそやってもいいんであって、私はリザードやピチューと対等な関係になりたいと思っているんだ。一緒に同じ目線で戦い、共闘していくような関係になりたいとそう思っている。

そう言うとリザードは納得したいけれど嫌だといいたいような…葛藤しているような表情を浮かべていた。リザードに進化したからこそその表情は少し凛々しくなり、金色に派手なその身体とは少しだけ似合わず……でも生まれた頃のヒトカゲの面影を残しているような表情を見たような感じがした。

私はリザードに抱きつき、近くにいたピチューの頭を撫でる。リザードはその私の行動に驚いていたようだったが、抵抗することなく抱きつかれたままであった。

 

私はリザードに向かって優しい声で言う。

 

 

「リザード、私を守ろうとしてくれてありがとう…でもリザードにはフシギダネ達やミュウツー達のように守らなくていいんだよ?何かあったら協力して戦おう、一緒になって頑張ろう…相棒なんだから、私を守ろうとせずに立ち向かおうよ。私たちと一緒に、成長していこう」

『……………ガウゥ』

『ピィッチュ…』

 

「ピチューもよ。ピチューだって私のこと守ろうとして無茶ばかりするんだから…でも私たちは家族で、仲間なんだからピチューも甘えてきていいの。ピチューもヒトカゲも…私はあなたたちが怪我をすると凄く悲しい。だから守ろうとしないで、皆で一緒に頑張ろう!」

『……ガゥゥ!』

『……ピチュ!』

 

 

リザードとピチューは私の言葉を聞いて納得したようだった。その表情は嬉しそうで、私に向かって抱きつこうとする。リザードは抱きついたままだったから私の背中に手を伸ばしてきつく抱きしめかえし、ピチューが私とリザードに向かってジャンプして抱きつく。ピチューが抱きついたので私とリザードが手を伸ばして支え、一緒になって笑みを浮かべて笑い合った。私の言葉を聞いてくれて良かったと思えた。

 

 

『……ダネ?』

『…ナッゾォ?』

『リーフィ?』

 

「あ、ごめんね皆。きのみ集め再開しようね?」

『ガゥゥ!』

『ピチュ!』

『ダネダネ!』

『ナゾナッゾォ!』

『リーフェァァ!』

 

私の近くにいた初心者用の…兄のではないフシギダネ達とナゾノクサ達が近くで見守り、もう話し終わったかどうか恐る恐る聞いてくる。そのため私たちはフシギダネ達やナゾノクサ達を見てから笑みを浮かべてきのみ集めを再開した。

 

まあ木登りは結局リザードがやることになってしまったんだけれども…それでも修行の時や散歩している時などによく見られた過保護にはならなくなり、一緒になって支え合い頑張るようになったから良かったと思える一日だった。

 

 

 

 

 




妹の心境。
 リザードがヒトカゲの時と同じ感じになったから良かった。





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