マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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ようやく来たジムには―――――。





第二百四話~兄はジム戦に挑む~

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショウヨウシティのジム戦かぁ!」

「何だかハルカ、気合十分ね?」

「ハルカもジム戦をするのでしょうか?」

「ハルカって確かポケモンコーディネーターだよね。コーディネーターってジム戦もするの?」

『デネ?』

「ううんジム戦はしないよ!ただ久しぶりにサトシのジム戦を見れるから楽しみかも!」

 

「そういえばそうだな…」

『ピッカ!』

 

こんにちは兄のサトシです。ハルカに会った後すぐにショウヨウシティのジムに挑もうと皆でジムを目指しています。

ジムは山の上にあり、シトロンが山を登るのが辛そうで時々止まって休憩し、皆で一緒になって山を登る。その間にもハルカが早くジム戦見たいなとわくわくしたような表情で笑みを浮かべていたために俺は苦笑した。ハルカのバトル好きもここまで来るとコーディネーターからトレーナーになってもいいかもしれないと思えるほどだ。

そして途中で休憩をする間にハルカがたくさんお菓子を食べたりセレナが作ったマカロンを食べたりしているためにセレナたちはハルカのことを優れたベテランポケモンコーディネーターから、食べるのが好きで無邪気な少女という印象に改めてしまったらしい。まあ食べるのは本当に好きだから仕方ないかと俺とピカチュウは苦笑し、こんな光景も久々に見るなとホウエン地方での旅を思い出して懐かしくなった。

 

そしてやって来たショウヨウシティのジムに俺たちは入っていく。中に入って見えてきたのはロッククライミング用に使われていそうな大きな岩だった。セレナたちはその様子に凄いと感嘆の息を漏らし、ハルカはカロス地方のジムを始めて見てホウエン地方とはまた違った感じかも!と叫んでいた。

 

岩を登っている人物が見えてきて、ザクロさんだと分かり声をかける。するとザクロさんは笑みを浮かべてこちらを見て、頷いてくれた。

 

「ザクロさん!ジム戦挑戦しに来ました!!よろしくお願いします!」

『ピィカッチュ!』

「もちろんですとも!…さぁ、登ってきてください!」

 

「え、登る…?!」

「この岩を登るの!?」

『デネデネ!?』

「はいその通りです!この岩の上にバトルフィールドがあるのですから!」

「えぇ!?」

 

岩の上にバトルフィールドがあると言う言葉に俺とピカチュウは笑みを浮かべた。ザクロさんはエレベーターもちゃんと用意してあって、壁を登りたくなくてもちゃんとバトルは受けると言ってくれた。でもそれはザクロさんにとってやってほしくないことだろうと思う。壁を登ることが好きなザクロさんにとって、この壁を登り、バトルを受けてもらうと言うことが一番いい選択なのだと考えた。

セレナたちも一緒になって登ろうかと言ってくれたが、俺はそれを首を横に振って拒否し、何かあったら危ないからとセレナたちにはエスカレーターで来てもらうことにした。

 

「サ、サトシ…リュックは持つよ!本当に大丈夫なの!?」

「サトシ、無茶はしないでくださいよ!」

「うわぁ凄い凄い!頑張れサトシ!!」

『デネデネ!』

「このままで大丈夫だぜセレナ!リュックも持ってこのまま岩を上る!」

『ピィカッチュ!』

 

「何か楽しそうかも…私も登る!!」

 

「ちょっハルカ!?」

「ハルカも登るんですか!?」

「頑張れサトシにハルカ!!」

『デネ!』

 

 

大きな声が聞こえてきて、下の方を見る。すると下ではハルカが一緒に登ってきていて、こちらに向かって笑みを浮かべて楽しそうにしていた。そのさらに下ではユリーカが楽しそうだと登ろうとしていて、シトロンによって止められている光景が見えてきた。セレナはただひたすら上を見ていて、俺が下を見るとすぐに目が合う。俺が登らずに下を見ていたためにハルカがどんどん上に登り、こちらに近づいてから話しかけてきた。

 

「ほらサトシ?早くしないと追い越しちゃうかも!」

「おっとそうはいかないぜ?けど間違って落ちたりすんなよハルカ!」

『ピィカ!』

「当たり前かも!私は絶対に落ちないからね!」

 

ハルカの追い越そうと言う挑発的な言葉に、俺は笑みを浮かべて岩を登っていく。ハルカの言葉が早くジム戦を見たいという感情からそう言ったのだと分かったからだ。だからこそ、俺は下ではなく上を見てから登り始めた。上ではザクロさんがバトルフィールドまで登りきり、こちらを見て待っていた。その表情は真剣であり…とても楽しそうだと感じた。

そんなザクロさんとバトルをするのだと意気込み、上まで目指して進む。そして下にいたはずのセレナたちはいつの間にかエレベーターに行っていたようだった。

俺とピカチュウ、そしてハルカが岩を登りきる頃にはセレナたちがこちらを見て心配そうな表情で、でも岩を登ったことで怪我がないと言うことに安堵していたようだった。

 

 

そして、ようやくバトルが始まる―――――――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「これより!ジムリーダーザクロ対チャレンジャーマサラタウンのサトシによるジム戦を行います!」

 

「バトルシャトーで見せていただいたあの熱いバトル…ここではどんな戦いを見せてくれるのか楽しみです。…いけイワーク!!」

『イワァァアアアア!!!』

 

 

「望むところですよ…ケロマツ、君に決めた!!」

『ケロォ!!』

 

 

審判の声が聞こえ、ザクロさんがイワークを出したことに笑みを浮かべてケロマツを出した。ザクロさんは2体で挑むのに対し、挑戦者は3体のポケモンを使ってもいいとなっているらしいけれど、俺としては公平に戦いたいと思っていた。だからこそ、ケロマツで挑む(・・・・・・・)

ボールから出されたケロマツはやる気十分でイワークを睨みつけて闘志を燃やしていた。ケロマツで来たことに水タイプだからとザクロさんは判断したらしい。俺としてはケロマツを出したのはそのスピードと力の使い方があるということ。そしていつも冷静に考えて咄嗟の予想外な攻撃にも対応できるケロマツでバトルに勝利しようと思っているのだ。もちろんピカチュウで行ってもいいけれど、それだとカロス地方で一緒に旅をする仲間たちが育たないだろうと考えて今回はセレナたちのいる観戦席へ行ってもらった。

 

ハルカは俺の後ろにいたのだが、審判とザクロさんたちの様子を見てすぐにセレナたちの方へ行き、バトルを見て応援してくれていた。もちろんセレナたちも俺たちを見て応援する。

 

 

 

「では…試合開始!」

 

 

「ケロマツ、楽しんでいくぞ!みずのはどう!」

『ケロケロ!』

 

「クス…サトシ君らしいですね…ラスターカノン」

『イワァァアア!!』

 

「あわで回避!」

『ケロォ!』

「ほう、あわで回避するとは…イワーク、ロックカット」

『イワァァア!!』

 

 

「うわぁサトシの…ケロマツだっけ?凄いかも!素早いし…もしかして進化したら私のバシャーモみたいに素早くなるのかしら…」

「バシャーモってハルカの手持ち?」

『デネデネ?』

「ええ!後で見せてあげるわ!私の相棒なの!」

「それは楽しみです!…っとそれよりも応援しないとですよ!」

 

 

「……サトシ、頑張れ!」

 

 

みずのはどうを避けたイワークがラスターカノンを放つ。その攻撃がケロマツに当たりそうになったため、余計なダメージは負わない方が良いと考え俺はケロマツにイワークの放つラスターカノンに向かってあわを指示する。放たれたあわがラスターカノンに当たり、目の前で爆発し、大きな煙と風が起きる。それを見たハルカ達が凄いと大騒ぎをしていて、ハルカは自分のポケモンたちとの成長を考え、ケロマツの進化したときの戦力を予想している。そしてその呟き声を聞いたユリーカとシトロンがハルカが育てたバシャーモについて興味を持って話しかけている。そしてセレナはただひたすら祈るかのように俺のバトルを見て、頑張れと声を出して応援していた。

 

 

「今のイワークはサトシ君のケロマツよりも素早さは上ですよ!さあイワーク回り込んでください!」

『イワァァア!』

「そうはいくかよ!ケロマツ、かげぶんしん&みずのはどう!」

『ケロォォオ!!』

「何!?」

『イワァ!?』

 

「当たりましたね!岩タイプは水タイプが弱点…この攻撃のダメージは大きいはずです!」

「頑張れサトシ!」

『デネデネ!』

「さすがサトシね…私もバシャーモ達ともっと頑張らないと…!」

「サトシ…!」

 

イワークの素早さはロックカットをしたことによって確かにケロマツよりも速くなっていた。素早さというのはポケモンバトルにおいてとても重要だと考えている。素早ければポケモンたちの攻撃も当たりやすくなるし回避もできる。だからこそロックカットを覚えているイワークとこのまま長期戦をする気はなかった。

ケロマツが俺の指示を聞いてかげぶんしんをしてイワークの動きを鈍らせる。そして走ったままみずのはどうを放ったことにより、イワークはケロマツの技に直撃し悲鳴を上げる。そしてザクロさんはその技に驚愕していたが、同時に笑って楽しそうにしていた。もちろん観戦席にいるハルカ達もだ。

 

「さすがです…イワーク、がんせきふうじ!」

『イワァァアア!』

 

「きたかがんせきふうじ…!ケロマツ、今のうちに近づけ!」

『ケロ!』

「そう来ましたか!ならイワーク!ケロマツに向かってアイアンテール!」

『イワァァアア!』

「ケロマツ、みずのはどう!」

『ケロォ!』

 

『イワァァアアア!!!?』

「イワーク!?」

 

イワークがみずのはどうに当たったことにより少しだけふらついていたが、すぐに体勢を立て直してがんせきふうじをしてくる。その言葉を聞いた俺はまずケロマツにすぐさまかげぶんしんをした状態のままイワークに近づけと指示をした。がんせきふうじの技はイワーク自身が放つ技なのだから、イワークに近づいて自身の攻撃が当たるであろう場所まで行けばいいのだと考えていたからだ。

それにかげぶんしんをしていることによってイワークのコントロールが絶妙ながんせきふうじが影のケロマツたちに当たっていく。でもケロマツはそれを予測して新たにかげぶんしんを発動し、影を一体も減らさないままイワークに近づいた。イワークに近づいてきたケロマツを見たザクロさんはアイアンテールですべてを攻撃するように指示する。影が消えていくのを見た俺はイワークを早く倒した方が良いと判断し、みずのはどうを指示した。

ケロマツはその指示を聞いて頷き、近距離までイワークに近づいてから最大限まで大きくしたみずのはどうを放つ。近すぎて避けることができなかったみずのはどうに、イワークは何もできずに倒れてしまった。

 

 

「イ、イワーク戦闘不能!ケロマツの勝ち!」

 

「お疲れ様ですイワーク。サトシ君の戦いは…ビオラの言った通り予想外が付きものですね」

『イワァァア…』

 

「まずは一勝!ありがとうなケロマツ!」

『ケロケロ!』

 

「さすがサトシね!」

「うん!サトシ凄い!」

『デネデネ!』

「バトルの状況を判断して、ケロマツも攻撃を予測し、サトシの指示と合わせたコンビネーション…さすがですね!」

「うん…本当に、サトシは凄い…!」

 

 

 

イワークをボールへ戻したザクロさんが俺たちに向かって笑みを浮かべていた。俺とピカチュウ、ケロマツは一緒にハイタッチをして、次のバトルにも勝つぞと意気込む。セレナ達はそれぞれバトルの結果を見て興奮し、頑張れと大きな声で応援していた。

 

 

―――そしてこの後、ザクロさんが次に出したチゴラスとの戦いも、無双したケロマツによって勝つのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 






「ふふ…ビオラの言っていた通りだ…!」

ここはザクロのジム。岩の頂上に立っているザクロは先ほど行ったジムについて思い出しており、そして歓喜で身体が震えてもいた。


(あのような戦いは本当に初めてだ…さすがは無敗のポケモントレーナー!!)


ザクロはあのバトルシャトーの後、サトシのことをビオラから話を聞いて興味を持ち、調べていたのだ。そして見つけたのは様々なバトルの戦歴であり、驚愕するほどの事実が隠されていた。すべてのバトルに勝ち、負けることがない最強のポケモントレーナーということや、彼が旅をした地方での様々なチャンピオンから勧誘を受けているという事実を知って、思わず笑ってしまったほどだ。

バトルする前は本当かどうか疑問を浮かべた意味での笑いだったが、今となっては事実であり、自らの考えを改める意味での笑いが込み上げてきた。

「もう一度…戦ってみたいものですね」

ザクロは天井を見上げてサトシとの戦いを思い出していた。今までの挑戦者とは違ったバトルの仕方…そして圧倒的な強者の戦い方にもう一度…戦ってみたいとそう願う。

「ああいや、願っていても意味はない…まずは行動あるのみ」

でもまずは己をもっと強くしなければとザクロは考えて、実行し行動するために強者たちがいるであろうバトルシャトーへと向かうのだった。


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