マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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水族館も釣りも久々だと兄は感じた。





第二百一話~兄は釣りで勝負をする~

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。俺たちはコウジンタウンの水族館へ来ています。

セレナが水族館に様々な地方のポケモンがいると言って、シトロンたちが興味を示し、一緒に行こうと誘ったために行くことになった。

 

そうして来た水族館はかなり広いと感じぐらい様々な水槽やいろんなイベントが行われていた。どうやらこの水族館には様々な地方の水ポケモンたちが集められていて、それぞれが水槽に入れられ人々と交流する場となっているようだった。通常ポケモンたちを人間に見せるだけの水族館というのはポケモンの保護に厳しい団体などに何か文句を言われると思うのだが、この水族館ではそのようなことはないらしい。

…というより、水ポケモンたちが積極的に人間たちと交流しているのを見て大丈夫かと安心した。本当に嫌だったり逃げたいと思っていたり…何かあれば必ず大きな騒ぎが起きるのだから…でもこの水族館では水ポケモンたちの楽しそうな様子からそれは起きないだろうと俺たちはそう考え、楽しんでいく。

 

水ポケモンはやはりセレナが言っていた通り様々な地方のポケモンたちが集められているらしく、新米トレーナーが最初に貰うポケモンの水タイプもそろっていた。ゼニガメは小さい身体から大きな身体までのポケモンたちがいて、それぞれが優雅に泳ぎながらたまにこちらを見ている人間たちに手を振ってアピールしている。ミズゴロウ達は沼地のような場所で心地よく眠っていて、ポッチャマ達は揃って散歩をしていて…そしてミジュマル達は水中ショーのようなことをしているようだった。

すべてのポケモンたちが、人間と交流できて楽しいという表情を浮かべていると感じていたのだ。

 

 

「本当にいろんな地方のポケモンたちが集められているんだな…」

『ピィカ…』

「うん!サトシは見たことあるポケモン達ばかりかもしれないけれど…。サトシはつまらない…?」

「いや、つまらなくない。ゼニガメ達も見れたし…懐かしいって感じたぜ」

『ピィカッチュ』

「そっか…良かった…!」

「何でセレナがそんなに喜ぶんだよ…?」

「ふふ…サトシが楽しいと、私も楽しいのよ!」

「……ああそう」

『ピィカッチュ…』

 

 

シトロンやユリーカが興奮して楽しそうに笑みを浮かべながらも水槽の中を覗いているのをセレナが遠目で見ながら俺に近づいて不安そうな表情で話しかけてきたために口を開いて言う。

不安そうな表情なのは水族館に行こうと誘ったのがセレナだったから、皆が楽しんでほしいと感じていたのではないかと思ったのだ。でもそれは勘違いで、ただ俺が楽しければいいというその言葉に苦笑しながらも前へ進む。

俺が前に進んだためにシトロンたちが慌てて近づいて一緒に水族館の中を楽しみながら歩いていく。

…そしてそんな様子を肩に乗っているピカチュウはただ微妙そうな表情で苦笑していたりする。でも俺にとってはセレナの好意を受け取ることはできないし、もうどうしようもないことだから放置した方が良いと考えているのだ。だから俺は苦笑しているピカチュウの頭を撫でて何も言うなと行動で示した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

――――――その後、水族館に大きな黄金色のコイキングが飾られていて、何故それが飾られているのかを知ることができた。金色のコイキングは水族館の館長から聞いた話だとこの海にいるということ、そのポケモンを釣ろうとしていることを話してくれた。そして館長の近くにいたポケモンは見たことがなく…館長の相棒であるというウデッポウについても知ることができた。ウデッポウはどうやら人と交流するのが好きではなくて…バトルが好きで静かなタイプ…まあつまり、俺のブイゼルのような性格なのだと思えたのだった。

 

 

 

「本当にいるんですね黄金のコイキングが…!!」

「凄い凄い!見てみたい!!」

『デネ!!』

「昔の人も見たようじゃし、目撃例もある…黄金色のコイキングは必ずいると分かっておるからのう…じゃからワシも黄金のコイキングを釣り上げて、水族館で人々に見てもらおうと思っているのじゃよ」

『ウゥ』

 

「まあ、色違いのポケモンはいるだろうから黄金のコイキングもいそうだよな…」

『ピィカ…』

「そういえばサトシって色違いのポケモン持ってるんだよね?」

「ああ、ヨルノズクな。あいつ結構頭いいんだぜ」

『ピィカッチュ!』

「マサラタウンにいるサトシのポケモン達…早く見てみたいですね!」

「でもその前に黄金色のコイキングだよ!」

『デネデネ!』

 

 

「ああそうだな…あの、俺たちも一緒に釣り手伝いますよ?」

『ピィカッチュ!』

「おお手伝ってくれるのか!」

 

 

――――――ということで、俺たちは館長から釣竿を貰い、一緒に黄金のコイキングを釣り上げることになった。といっても色違いのポケモンはそう簡単に見ることはできないため、本当に遭遇するのなら根気と運が必要になるのではないかと思う。まあ黄金色のコイキングがこの海に絶対にいるのならいつかは見れるだろうと考え、釣りをし始めた。

 

 

「う…えっと…これってどうやるの?」

「セレナは釣りは初めてですか?」

「うん。ほとんどサイホーンレースしかしてなかったから釣りは初めてで…」

「ならサトシが教えないとね!」

『デネ!』

「……俺?」

『…ピィカッチュゥ』

「ピカチュウ、そんな目で見るな」

『ピィカ…』

 

「あの…サトシ…よかったら教えてくれないかな?本当によかったらでいいからね…?」

「…おう」

 

 

セレナが少しだけ期待するように…でも不安そうな表情で俺に向かって話しかけてきたために仕方がないと諦め釣りの仕方を教える。と言ってもただ釣竿のルアーを思いっきり海に向かって飛ばすだけなんだけどな。

…もしもここでデントがいたら興奮しながら教えようとするのではないかとふと考えてしまった。そしてカスミも同じように…まあ少しだけ馬鹿にしたような表情を浮かべつつ、積極的に詳しく教えようとするだろうと思う。釣りに関して興奮する仲間がここに居なくて良かったと思いながらも、セレナに教えていった。その時のセレナの表情を俺は直接見ようとは思っていないし見る気はない。

ただシトロンとユリーカ、ピカチュウとデデンネが温かい目でこちらを見ていたのには苛立った。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「釣れないですね…」

「他のポケモンは釣れるけどなかなか黄金のコイキングは釣れないな…」

『ピィカ…』

 

 

夕方になってきても黄金色のコイキングを釣り上げることができず、俺たちは残念そうな表情を浮かべていた。昼ごろはコイキングやサニーゴ、ラブカスなどを釣り上げることができて楽しかったのだけれど、時間が経つにつれそういったテンションは下がり、黄金色のコイキングを釣り上げるのは無理ではないかと皆が考えてしまっていた。

途中でユリーカとデデンネがウデッポウに突撃し、攻撃されそうになったハプニングがあって余計に時間が流れ、ついに夕方になってしまったのだった。夜にはポケモンセンターに行かなければならないため俺たちはこれ以上釣りをすることはできない。だからこそ残念そうに…そして手伝うことができなかったということで館長に釣竿を返そうとする。

 

 

―――――でも館長はただ微笑んでいただけだった。

 

 

「その釣竿は貰っていい」

「え、良いんですか!?」

「ああ、君たちに使ってほしいんじゃ」

「でもこんなに立派な釣竿は…」

『ピィカ…』

「いいんじゃよ。黄金のコイキングを釣り上げることができなかったとしても、釣りをする楽しみを知ってほしいからのう」

 

「…ありがとうございます!」

「ありがとう館長さん!」

『デネデネ!』

 

館長は俺たちにこの釣竿をあげるつもりで渡したようだった。だからこそ館長にありがとうと礼を言って、俺たちはその場から離れようとした…でもその瞬間ユリーカが大きな声で海を見て叫んだために俺たちも、館長もその方向を見る。

 

 

そしてそこにいたのは黄金色のコイキングで…夕日に当たって綺麗に跳ねていた姿だった。

その姿を見た館長は余計にやる気を出したようで、俺たちに向かって次に来るときは必ず黄金のコイキングを見せようと宣言していた。だから俺たちは笑みを浮かべ、その日が来るのを楽しみにしていようと約束をした。

 

 

 

 

 

 








ここはポケモンセンターの通信施設。つまり、電話ができる場所だ。
…ここにいるのはサトシとピカチュウだった。あの黄金色のコイキングを釣り上げようとしてから夜になって日が登り、ちょうど皆が確実に起きているであろう時間にサトシ達は来ていた。
他のトレーナー達はそれぞれ部屋に行ってるか食事を貰ってるか…それともバトルをしているかのどちらかだ。電話をするという場所はサトシ達以外誰もいない。セレナたちは部屋で待っていると伝えていたためにサトシ達しかいないのだ。

ピカチュウとサトシはある人に電話をする。その人物はカント―地方からの旧友でもあり、仲間でもあったからこそ、サトシ達は笑顔で話すことができた。

「よぉ久しぶりだなカスミ」
『ピィカ!』
「久しぶりじゃないわよ!まったく…ヒナちゃんのことについていきなり電話があったと思ったら本当に来ちゃったし…何か事件に巻き込まれたかと思って心配したじゃない!!」
「悪い悪い…それとそっちは今どうなんだ?」
『ピィカッチュ…』

「こっちの問題はだいたい終わったわ。ヒナちゃんもちゃんとバトルで勝ってね…まあそれは本人から聞きなさい」
「おう分かった…説教するために電話しないとって思ってたからちょうどいいな」
『ピィカァ…』

「あんたが説教?…ヒナちゃんにするのは良いけど、あまりきついのはやめておきなさいよ。ヒナちゃんマサラタウンのみんなからたくさん怒られたみたいでね。もう怒られるのは嫌だってぼやいていたんだから」
「はは…そりゃあ当たり前だろうな…」
『ピィカ…』

サトシはヒナが今頃涙を浮かべながらもちゃんと反省し、もう二度と暴走しないと心に誓っているのではないかと予想し、笑った。その表情を見てカスミは呆れたようにため息をつき、そして言う。


「…そういえば、あんたが何かカロス地方でやらかすようなこと聞いたけど…大丈夫なわけ?」
「ああ、あいつから聞いたのか…でも大丈夫だって。俺たちはいつも通り行動するだけだからな」
『ピカピカ!』
「いつも通りだから心配してるのよ!!!…まあいいわ。とにかく世界の破滅とかそういうのは引き起こさないように!」
「だから俺が引き起こしてるんじゃなく周りが勝手に引き起こしてるんだって…」
『ピッカッチュ…』

「ふふ…はいはいそうね。…でもカロス地方かぁ…なんだか楽しそうよね。ポケモンパフォーマーについても面白そうだったし……休暇があったら遊びに行こうかしら?」
「止めろ!お前が来るといろいろとカオスになる!!」
『ピィカ!』
「ちょっとその言い方はないでしょ!!…でも機会があったら絶対に行ってみるわ。その時はよろしくね!」

そう言って勝手に電話を切ったカスミに対し、少し呆れるやら苦笑するやらいつも通りだなと懐かしく感じるやらでサトシは微妙な心境になった。ピカチュウもサトシと同じような表情を浮かべている。
カスミがカロス地方に来た時はどうなるんだろうと考え、いやそれはあり得ないと首を横に振り、次に他の人物へ電話をする。




「じゃあ電話するか…マサラタウンへ」
『ピッカッチュ!!』



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