二百話まで書いたので番外編です。これからもよろしくお願いします!
ここは、カント―地方とジョウト地方の中間に位置するシロガネ山。昔は保護地区としてポケモンたちが守られていた場所だったが、最近密漁団などが数多く見られるようになり、それに激怒したある青年がその保護地区を丸ごと管理するようになった。それは一般的に見れば有り得ない暴挙であったが、そのおかげでシロガネ山にいるポケモン達は人間に襲われることがなくなり、青年のポケモンたちによってより逞しく成長していく光景が見られるようになったのだった。
そして現在――――そのシロガネ山では、ある意味日常のように行われている修行をしていた。大きな騒音が青年の周りにいるポケモン達から聞こえてくる。それはトレーナーなら音だけで分かるであろう技と技のぶつかり合いだった。青年はポケモンたちが独自に行っているバトルを見て時々指示を出し…そして青年の肩に乗っているピカチュウに電撃でバトルをしているポケモン達に向けて放つように言うことがあった。電撃はバトルを中断させるためでも、妨害するためでもない。予想外な攻撃に焦ることなく躱すか相殺するかと自ら考えてもらい、バトルで油断なく戦うための修行でもあった。
青年のポケモンたちがやっていることにシロガネ山に棲んでいるポケモンたちが興味深く見つめていたが、危ないから近づくなと青年のバンギラスが優しく止めに入った。
そしてそんな騒がしい青年とポケモンの近くに一体の大きなポケモンが空から降りてきた。それを青年…いや、サトシは笑みを浮かべて言う。
『ピジョピジョッート!!』
「ああ、あいつら来てんのか」
『ピィカ…』
サトシはポケモンたちに…フシギダネ達にそれぞれ修行を終わらせて休むように言ってから空から降りてきたポケモン…ピジョットに乗って飛んでいく。飛んで行った先にいたのは、3人の青年たちだった。
「やぁサトシ。元気そうで良かったよ…」
「……………ふん」
「サトシ先輩!!お久しぶりです!!」
「久しぶり…というかお前等3人が揃って来るだなんて珍しいな…?」
『ピィカッチュ』
3人…いや、シゲルとシンジとシューティーはそれぞれサトシを見て笑みを浮かべて声をかけていた。…笑みを浮かべていたのはシゲルとシューティーだけだったが、シンジは雰囲気から見ると笑みを浮かべているといってもいいぐらいには上機嫌だった。
いつもと変わらない皆に笑みを浮かべ、どうして3人揃ってここに来たんだとピカチュウと一緒に首を傾けて問いかけた。
それにはシゲルが肩をすくめて口を開く。
「偶然だよ偶然。でなければシューティー君はともかく…どこぞのフロンティアブレーンと会う気なんてさらさらないよ」
「それはこっちの台詞だ。ただの研究者に会うつもりなど俺はない」
「ただの研究者?言ってくれるね…そろそろバトルで決着でもつけるかい?」
「ふん…望むところだ…」
「お前等が一緒になるとすぐそれだな…」
『ピィカ…』
『ピジョーット…』
シゲルとシンジがお互い睨み合ってモンスターボールを取り出しバトルしそうな雰囲気にサトシとピカチュウ、ピジョットが呆れている。シューティーはというとその様子にどうすればいいのか見て慌てている。
でもサトシやピカチュウ、ピジョットが呆れていても、シューティーが喧嘩を止めようと動いてもシゲルとシンジの言い争いは過熱する。
「ずっと思っていたことだけれど…君は僕たちや挑戦者に対して素っ気なさすぎるんだ。少しは愛想よくしないとこの先どうなるか分からないよ?」
「お前が心配するようなことじゃないだろう。俺は俺のやりたいようにやるだけだ。それにお前の場合愛想が良すぎて本音かどうか分からなくしているだろう?やり過ぎも良くないと俺は思うが…」
「………本当に君といると腹が立ってしょうがないな!」
「……言いたくはないが、同感だな」
「ちょっ…落ち着いてください。サトシ先輩に会うために来たんですから何もそこで争わなくても…!」
「「黙れイッシュチャンピオン!!」」
「いい加減にしないと僕だって怒りますよ…!!」
「……おいお前らそろそろ落ち着け」
サトシは怒鳴り合いにまで発展してきそうな勢いのシゲル達を止めるために近づいてから声をかけた。シゲル達は一度シューティーに大きな声で怒鳴ったことで高ぶっていた感情を落ち着けることができたのかバトルができないことに残念そうな表情を浮かべながらも手に持っていたボールをしまう。シューティーはというと怒鳴られたことに少しだけ嫌そうな表情を浮かべてボールを出そうとしてきたが、サトシが喧嘩を止めようと動いたのを見てすぐに考えを改めてジャローダの入っているボールをしまう。
そしてサトシはシゲル達が何故ここにやって来たのか話を聞いた。サトシがいるこのシロガネ山は通常入ることができない辺境の山だ。たとえサトシと親しいシゲル達であろうとこちらに来る場合は様々な手続きをしてからでないといけないのだ。それは、ポケモンたちを守るために必要な手続きとなっているために面倒だとしても仕方がないことだろう。それに研究者やブレーン…チャンピオンであろうともその手続きを省略することはできない。まあサトシは例外として認められてはいるが。
「ああ…僕はシロガネ山にいるサトシが知らないかもしれないと想定して来たんだ」
「何かあったのか?」
「そうだね…ヒナちゃんがリーグに出場する」
「っ!…そうか。ようやくか…!」
『ピィカッチュ!!』
『ピジョ…!』
シゲルが言う言葉にサトシ達は笑みを浮かべて聞いていた。サトシの妹であるヒナはようやく10歳になったためにトレーナーになり、カント―地方を旅するようになった。
【サトシ】の妹だからこそ、変なトラブルに巻き込まれていないかと心配になったサトシだったが、シゲルの報告を聞いて元気に旅しているんだと安堵していた。今の状況ではリーグを見に行くことはできないけれど、いつか会えることができたらバトルをしてみたいとサトシはそう考える。
そしてそんな機嫌が良いサトシにシンジとシューティーが話しかける。
「サトシに聞きたいことがあってきた。ヒ―ドランがいるはずの洞窟からポケモンの大きな悲鳴と技の騒音が聞こえてきたと報告があったんだが…元凶の可能性がある白黒コンビがその騒動に関与してないみたいでな…何か知っているか?…あとバトルしろ」
「ああヒードランならエンテイ達に喧嘩売ってボコボコにされたって聞いたけどそれじゃねえの?…あとバトルは受けて立つぜ」
「サ、サトシ先輩!ぼ…僕もバトルしにやってきました!…挑戦よろしくお願いします!!」
「そうか、バトルしに来たのか…分かった。シューティーがどのくらい強くなったのか見せてくれよ?」
「はい!」
「ああ、なら僕も久々にサトシとバトルがしたいな。いいかい?」
「おう。バトルなら喜んで受ける!」
『ピィカ!』
『ピジョォ!』
シンジはシンオウ地方で起きたヒ―ドランの騒動の真実を知らないかという疑問とバトルしたいという欲求をサトシに向かって言う。サトシは以前ヒ―ドランが調子に乗ってエンテイ達に喧嘩を売り、ボコボコに返り討ちにあったことをシンジに話してからバトルを受けてたつと笑顔で答えた。
そしてシンジとバトルをしそうなサトシ達の雰囲気にシューティーが慌てた様子で話しかけた。シューティーは挑戦者としてバトルをするためにこちらに来たのだ。そしてそのシューティーにサトシは優しい笑みを浮かべてバトルをしようと言う。そんな彼らの様子を見たシゲルがたまらずバトルをやりたいと言ってきたため、サトシもそれに喜んで笑みを浮かべて頷いた。
だが、シンジがシゲルを見て挑発的に声をかける。
「ふん…できるのか?ただの研究者となったお前に高度なバトルが?」
「……上等だ。まずは君から倒してやろう…サトシ、確かバトルフィールドは複数あったよね?そこでやろうかシンジ君?」
「ふん。勝つのは俺だ…!」
「あー…盛り上がってるなあっちは…」
『ピィカッチュ…』
『ピジョピジョォ…』
「あ、あの…サトシ先輩…」
「ああそうだなシューティー…あっちでバトルしようか」
「はい!」
シゲルとシンジが複数あるバトルフィールドのうち1つを使って試合を始めていた。その試合は高度な技や激しい衝突音が周りに響くほど豪快に指示を出し、行っていたのだった。その指示とポケモンたちの技の衝撃度により、シゲルとシンジの怒りが凄まじいことを知ってサトシ達は呆れる。そんな彼にシューティーが恐る恐る近づいて話しかけた。サトシは笑みを浮かべてシューティーがしたいと言っていたバトルをしようと頷き、空いている方のバトルフィールドへ向かう。
そしてそれぞれが笑みを浮かべて向き合い…挑戦者と【ポケモンマスター】との試合が始まった――――――――――。
未来でのシロガネ山の出来事―――――――――。