あるべきは、絆と―――――。
「行くぞ!ゴローニャ!!」
『ゴロォォオオオオ!!!!』
「ゴローニャ…ピチューにとっては苦手な岩タイプ…ね」
『ピチュピチュ!』
「俺たちは無敵だぜ?お前を絶対に叩き潰してその生意気な顔に泥塗ってやる!」
「それはそれでサトシさんに怒られるよ…まあいいか。君のプライドを潰せるなら」
「俺たちが勝つ!!」
「君たちっ―――」
「ケンジさん!始めてくださいお願いします!」
『ピチュ!』
「…はぁ。じゃあ始めるよ!これよりピチュー対ゴローニャのバトルを始める…試合開始!」
ケンジさんがまた三人組に文句を言いそうになったため、私たちがそれを止めようと言葉を遮って声を出す。
するとケンジさんは私たちを見て、これは止められそうにないとため息をついて仕方がないと思ったのだろう。両手を上げて審判による始まりの言葉を言う。
そして始まったと同時に私たちは動いた。
「ピチュー行くよ!ゴローニャに向かって走って!」
『ピッチュ!』
「はッ!ただ走るだけで意味ねえだろ!」
「ゴローニャ…えっと攻撃は?」
「僕が指示を出すよ!…ゴローニャ、ピチューに向かってじしんだ!」
『ゴロ…ゴロォォオオオオオ!!』
「ピチュー尻尾を使って大きくジャンプ!」
『ピィッチュ!』
「ほう、うまく回避したのぉ…」
「ええ、でも逃げるだけじゃ意味がありませんわ」
『ブイ…』
『ジュルッ…』
「まだまだ!連続してじしんだ!これならピチューが落ちたとしても攻撃が当たるだろ!!」
『ゴロォォオオオ!!』
「ピチュー、地面に向かって10まんボルト!!」
『ピィッチュゥゥウウ!!!』
「何ッ?!」
「へえやるね…」
「くそヒナのくせに!」
『ゴロォォ!?』
ゴローニャはどうやらあの三人組の指示をちゃんと聞いているみたいだ。おそらく言い訳をして勝負をするからバトルで指示を聞いてほしいと何か親に対して頼んだか、それともゴローニャ達に向かってちゃんと説明してバトルをしようと言ったのかは分からない。まあ私たちに悪口のような言葉を言った瞬間に少し複雑そうな表情で三人組を見たからゴローニャは何か思うことがあるらしいけれど…でもバトルで手は抜かないという真剣な表情で三人組の指示通りに動く。
それを見て、ピチューが大きくジャンプしたことによってゴローニャのじしんを回避する。でもその後にまた連続でじしんを指示してきたため、私はピチューに10まんボルトを地面に向かって放つように指示する。凄まじい勢いの10まんボルトが地面に放たれたことによって爆風が生まれ、ピチューがさらに宙に浮き、ゴローニャの上空へ飛んでいく。それに笑みを浮かべた私に、三人組が感心したり悔しくなったり驚いたりとしていた。
オーキド博士たちは私たちのバトルを見て、ただひたすら観戦し、兄のバトルのように見ていただけだ。ただし心配そうに…バトルの勝敗が予想つかないとでもいうように…。
ピチューが笑っているのを見て、次の指示が予想できたのだろうと感じた。だからこそ、私はピチューの期待している指示を出すために声を出して叫ぶ。
「ピチュー、アイアンテールよ!!」
『ピッチュゥ!!』
『ゴロォォォオオオオ!!!?』
「ゴローニャ!?何だあの技…!?」
「あれはアイアンテール…まさか覚えてるだなんて…!」
「卑怯だぞヒナ!ゴローニャに効果抜群の技覚えさせんなよ!!」
「何言ってんの!これはピチューが頑張ってくれた努力の証!ピチューの力よ!!」
『ピィッチュ!!』
「アイアンテール!?まさかマサラタウンから帰ってくる間に覚えたのか!?」
「ヒナ…頑張ってるのね」
「さすがじゃのう…!」
ピチューがゴローニャにアイアンテールを直撃させた。落下した勢いで発動させたアイアンテールの威力は強く、ゴローニャがふらつき、今にも倒れそうになっていた。それを見た私は好機だとピチューを見る。
ピチューは私の言いたいことが分かっているらしく、頷いて勢いよく走り出してくれた。その間にも三人組はアイアンテールという技を始めて見たことによる驚きと、感心…そしてかなり無茶苦茶な文句を言っていた。でも私はその言葉に笑みを浮かべて叫ぶ、これはピチューが頑張ってくれた成果なのだということと、勝つための力となった証なのだということを…。
そして私は大きな声でふらついているゴローニャを指差しながら叫んだ。
「ピチュー!もう一度アイアンテール!!」
『ピィッチュゥゥウ!!』
「まずい!いったん下がれ!!」
「…いや、これは無理だ」
「何弱気になってるんだよシュウジ!ゴローニャなら…ゴローニャ!?」
『ゴ、ゴロォオオオオ…』
「ゴローニャ戦闘不能…ピチューの勝ち!」
ゴローニャに走って近づいていたピチューが私の指示を聞いて素早く動く、それを見た三人組のうち二人は回避しろと叫ぶが、いつも眼鏡をかけている少年だけはこの勝負を諦めていた。ピチューがすでに近くにいるということ、ゴローニャがすでにフラフラになっているためにもう負けてしまうと考えたのだ。そして結果はその通りになった。
ピチューがゴローニャの頭にアイアンテールをしたためにふらつきながら地面に倒れていく。そしてそれをみたケンジさんが私たちを見て満足したような表情を浮かべながらも片手を上げて審判として声を上げた。
ピチューが私に向かって走り出し、思いっきり抱きついてくる。抱きついてきたピチューを私は思いっきり抱きしめ返して、頭を撫でてありがとうと礼を言う。そしてピチューは笑みを浮かべて私から離れ、後ろにいたヒトカゲに近づき、ハイタッチをしながら笑い合っていた。
「やったねピチュー!」
『ピィッチュ!』
『カゲ!』
「グッ…おいどうするんだよ…次のポケモンは…!?」
「まさかゴローニャが…」
「いや、大丈夫だよ。ねえヒナ、次はどうせヒトカゲで来るんだろう?2対2なんだから次はピチューじゃなくてヒトカゲで戦え」
「良いこと言った!ヒナ、次はピチューじゃなくてヒトカゲで戦え!どうせピチューは何か卑怯な技でも使って勝ったんだろ?」
「君たちね…いい加減にしないか!ヒナちゃんはちゃんと正々堂々と戦っているっていうのに…!」
「そうじゃなケンジ…バトルとは正々堂々戦うものじゃよ。だがピチューを貶し、バトルに有利に動こうとするその意志は見ていられんな」
「…………………」
「なんだよ…やっぱりヒナ、博士たちに贔屓されてるからそうやって俺たちの言葉をきかないつもりかよ!!」
「……オーキド博士がそういうのなら僕たちは何も言いませんよ。ですがヒナがピチューで挑むと言うのなら僕たちはこのバトルに負けても勝ってもヒナに対する意識は変えませんからね」
「……ヒナ」
「だから君たちは…!」
「良いんですよケンジさん、オーキド博士…私たちは次のバトルはもう決めてますから…ね、ピチューにヒトカゲ?」
『ピィッチュ!』
『カゲカゲ!』
三人組はおそらく次のバトルでヒトカゲに有利なポケモンでいくつもりだったのだろう。だからこそピチューが勝ってしまったことに焦り、私たちに向かって挑発するように言う。その言葉にピチューとヒトカゲは怒り、睨みつける。そしてケンジさんやオーキド博士もこの言葉は聞いていられないとばかりに私たちを庇って言ってくれた。フシギダネ達は何も言わずただ黙って睨んでいるだけだった。それが余計に怖いけれど…私たちの約束を守ってくれているようでとても嬉しく感じた…。
私達を庇うオーキド博士達がいるという状況に三人組は余計に私に対する印象を悪くしてしまったようだった。最初からオーキド博士に贔屓されていると感じている三人組だからこそ、今のこの状況が嫌なのだろう…。
私はヒトカゲ達を見てから、怒ろうとしてくれているケンジさんの言葉を遮るように声を出す。そしてヒトカゲの頭を撫でて、頷いた。ヒトカゲは頷いて、ピチューを見てから笑みを浮かべ前に進む。
それを見た三人組は予定通りにヒトカゲが出てきたことに喜び、また先程のオーキド博士やケンジさんの反応を見て微妙そうにしていた。もしかしたら自分たちがやっていることはオーキド博士たちにとって喜ばしくない状況なのだと気づいたかもしれないとふと思った。
―――でもこのバトルですべてが決まるのだ。だからこそ私たちは全力で挑む。
「……よし、行くぞニョロボン!!」
『ニョロボォオオオオ!!!』
「ニョロボンね…まあ予想通りかな…大丈夫ヒトカゲ?」
『カゲカゲ!』
「むしろやる気に満ちてるみたいね…よし勝つよ!」
『カゲェェ!!』
「……では、ヒトカゲ対ニョロボンのバトルを始める…試合開始!」
ニョロボンが出てきたことにオーキド博士たちは難しそうな表情をしていて…フシギダネ達は私たちに向かって応援しながら観戦している。そして私たちはやる気に満ちていた。
彼らがヒトカゲに対して有利なポケモンを出すと言うのは予想できたことだし、ピチューだったらおそらく倒せたかもしれないけれど、このバトルはどうなるのか分からない。でもそれでも兄がよく言っていた…バトルは最後まで分からないのだから、諦めるつもりはない。最後まで全力を出して戦うまでだ。
「ヒトカゲ、ひのこ!!」
『カゲ!』
「無駄無駄!ニョロボン、ハイドロポンプ!!」
『ニョロォオオオオオ!!!』
「避けて!」
『カゲ!』
ひのこを大きく跳ね除けるハイドロポンプが勢いよく放たれる。その勢いは強く、レベルが高いということが分かる。だからこそヒトカゲが避けるしかないぐらいの威力に私はどう勝てばいいのかを必死に考える。勝つと決めたのだから、弱気になるつもりはない、勝つために考えてヒトカゲに指示をしようと口を開く。
「ヒトカゲ、大きくえんまく!」
『カゲェェ!!』
「なっ卑怯だぞヒナ!」
「すげぇ…周りが見えなくなった…!」
「感心してんじゃねえよヒビキ!!」
「コウ、落ち着いて。これもヒトカゲの技だよ…ニョロボン、水でえんまくを消すんだ!」
『ニョロ…ニョロォォオ!!』
「今よヒトカゲ!顔面に向かって猛火の炎!!」
『カゲェェェエ!!!』
『ニョロォォ!?』
「ニョロボン…!?」
「近くにいる今がチャンスだよ。ニョロボン、ハイドロポンプ!」
『ニョロォオオオオオ!!!!』
『カゲ…!!?』
「ヒトカゲ!…大丈夫?いける?」
『カ…ゲェ…カゲカゲ!!』
ニョロボンの顔に向かって大きな炎を直撃することができた。そのおかげでニョロボンが両手で顔を覆い苦しそうにする。でもすぐに立ち上がって近くにいたヒトカゲにハイドロポンプを放つ。近くにいたために避けることができなかったヒトカゲは直撃を受け、地面に激突した。私の声を聞いて、ふらつきながらも立ち上がりまだまだやれると叫ぶ。その声を聞いて、私はニョロボンを見た。ニョロボンは先ほどのヒトカゲの攻撃に苦しそうだったと言うのに、今はもう大丈夫そうだ。それはレベルが違いすぎるせいか…それとも強いからか…おそらく両方だろう。
だからこそ、ヒトカゲの体力を考えて、なるべく直撃を受けないようにしなければと考える。
「頑張ってヒトカゲ!」
『カゲ!』
「ハッ!無駄だろ!その弱いヒトカゲで何ができるっていうんだよ!どうせピチューの時もまぐれで勝ったに決まってる!」
「そう…なのかな?」
「そうなんだよ!ヒビキお前ヒナに味方する気かよ!?」
「い、いや違うって!」
「…ニョロボン、マッドショット」
『ニョロォォ!!』
「ヒトカゲ!ひのこで直撃を避けて!右にジャンプ!」
『カゲ…!』
マッドショットがヒトカゲに向かって放たれたため私はひのこで威力を弱めてから回避するように言う。一瞬ふらついたヒトカゲだったがすぐに私の言うとおりに動く。そのためにマッドショットは避けられたけれど、避けるだけじゃ勝つことはできない…。
「…ヒトカゲ、もう一度猛火の炎!」
『カゲェェエエ!!!』
「ハッだから無駄だって言ってんだろ!ニョロボン、ハイドロポンプ!」
『ニョロォォオオ!!!』
「ヒトカゲ左に避けて…ヒトカゲ!!?」
『カゲェ…カゲェエエ!!?』
ヒトカゲのひのこでこうげきしようとしたのだが、ニョロボンのハイドロポンプによって打ち消され、避けようとしたがヒトカゲの身体がふらついたために避けきれず直撃を受けた。そのせいでほとんど満身創痍になっていて…もう戦うことができないと分かってしまった。
「ハハハ!ほらやっぱり!お前のヒトカゲ弱いじゃねえか!」
「ニョロボンが強いからね。君のヒトカゲじゃ話にもならないよ」
「そんなことない!ヒトカゲは…ヒトカゲは弱くないんだから!!」
『ピチュ!』
『カ…ゲ…カゲ…カゲェェエエ!!!』
「…ヒトカゲ…そうよ、諦められない…私たちは絶対に勝つって決めて旅をしたんだから…だから絶対に諦める気はない!!!私たちは強くなるって決めたんだから!!!」
『ピチュピチュゥウウ!!』
「だから…頑張ろうヒトカゲ!!!」
『ピチュゥゥ!!!』
『カゲェェエエエエエエエエッッ!!!!!』
一度地面に倒れたヒトカゲに、私は目を見開いて駆け寄り、抱きしめる。ピチューも一緒に近づいてきて、ヒトカゲの様子を見る。ヒトカゲはずぶ濡れで…ほのおタイプだからこそ一番やばい状態になっていた。このままじゃいけないと…バトルを諦めようとしてしまった。
それを見た三人組のうち二人があざ笑うように言う。その言葉に唇を噛んで悔しいと思う。本当だったらここで勝負を続行し、諦めるつもりはないけれど……ヒトカゲをこれ以上傷つけたいとは思ってはいない…だからこそ、もう駄目だと…そう感じてしまったのだ。
でもヒトカゲが目を開き、自力で立ち上がった。そして抱きしめていた私やピチューの手を離し、ニョロボン達の方へ歩く。ニョロボン達に向かって睨み付け、咆哮を上げる叫び声が…諦めたらだめだという声だと感じた…そう伝わったのだ。
このままバトルを終わらせたら駄目だと…ヒトカゲが言ったと分かった。だからこそ、私とピチューは涙を拭い、ヒトカゲに向かって頑張ろうと叫ぶ。負けるつもりはないからこそ、倒れようとしないヒトカゲを見て…私たちも倒れない。ヒトカゲが大きな声で叫ぶ、その声に合わせて、私達も叫んだ。
叫んだ瞬間、【何か】が目の前で大きく光り輝く―――――――。
「これは…!?」
「なんじゃと…!!?」
「ヒトカゲ…?」
『ピチュ?』
『ガゥゥウウウウァァア!!!!!!!』
まるで兄のリザードンのように、大きな炎を吐きこちらに顔を向けて笑みを浮かべている…金色に輝くリザードが私たちの目の前で立っていた。私は小さく泣きながらも…笑みを浮かべてヒトカゲから進化したリザードを見た。ピチューなんて進化したことに喜んで踊っているぐらいだ。
進化したリザードは私に向かって炎を吐いてから鋭くなった爪を見せ、何かを伝えようとする…相棒だからこそ何が言いたいのか分かった私は頷いた。リザードは私が頷いたのを見て笑みを浮かべ、ニョロボン達を見る。三人組はリザードに進化したことに焦っているようだった。
「なッ…何でだよ!何で進化なんか…!?」
「うわ…俺進化見たの初めてだ!!」
「おい感動してる場合か!!」
「ッ…進化したとしても体力はないはず…ニョロボン、ハイドロポンプだ!」
『ニョロ…ニョロォォオオオオオ!!!』
「いくよリザード!かえんほうしゃ!!!」
『ガァァアアアア!!!』
「なっかえんほうしゃ!?」
「そんな…まさか進化したから覚えたって言うのか!?」
『ニョロォォオ!?』
「そのまま近づいて、きりさく!!」
『ガァァァァアアッッ!!!』
「ニョロボン!!?」
『ニョ…ロォ……』
「やった…?やった!勝ったよリザード!!」
『ピチュピチュゥ!!』
『ガゥゥ!』
進化したことによって放たれるかえんほうしゃはヒトカゲだった頃に放つ猛火の炎と比べて威力が格段に違っていた。ハイドロポンプとぶつかり合い、蒸発する光景こそ、そのリザードの炎の威力を知ることができた。そしてその次にきりさくを使う。これらはリザードが直前になって教えてくれたことであり、進化してもその仕草だけでちゃんと分かる自信があった。顔面に向かって鋭い爪で切られたニョロボンはその威力にふらついて…そのまま立っていられないとばかりに地面に倒れた。
それを見た私たちは一瞬だけ茫然としてから…リザードに向かって走る。リザードはふらついていたが、私に抱きつかれたときは笑みを浮かべていて…ピチューが頭に乗ってきてハイタッチをした。ヒトカゲと変わらないその様子に…良かったと…勝てたともう一度、泣いてしまった。
「くそ…畜生!何でだよ…何で…ヒナのくせに!」
「強いんじゃない…サトシさんの妹だから強いのかな…俺たちは、やっぱり間違っていたのかな…」
「ヒビキ…お前どっちの味方なんだよ…!」
「いや、コウちゃん…でも俺たち負けたんだぜ?だから……」
「ふん…たまたま進化したからこんな結果になっただけさ」
「君たち…まだそんなこと言ってるのか!?」
「これケンジ…じゃが、いろいろと説教は必要じゃな」
「……オーキド博士、ケンジ君…ここは私に任せて」
ニョロボンをボールに戻した三人組は悔しそうにしながらも私たちを睨みつけていた。そして三人組のうち二人は反省などせずにたまたまだと言ったり、偶然の勝利だと文句を言う。その言葉にケンジさんとオーキド博士が険しい表情をしていたけれど、母が二人を止めて箒を持ったまま近づく。その表情は優しく…寒気がした。
私とピチューは思わずリザードにしがみつき、リザードは私たちを守るように抱きしめてくれた。
「あなたたち…すこぉしお話でもしましょうか?」
「「「ヒィ!」」」
両手に箒を持っていたはずの母が笑みを浮かべて言った瞬間。箒が3つに分解された。…つまり、手に持っていた部分がその強い握力に負けてしまい、3つになって折れてしまったのだ。それを見た三人は固まり、悲鳴を上げる。
何処かデジャブを感じた私たちは母の所行を見て、声を出して叫んでしまった。
「え、ママ…お兄ちゃんと同類だったのぉぉぉお!!!??」
『ピチュ?!』
『ガゥゥ…!』
その後、三人は私たちに向かって泣きながら土下座して謝ってきた。もちろん母の所行だったりするけれど、私たちはその様子を遠い目で見つめていたりする。ついでに言っておくと兄のポケモンたちは良いぞもっとやれ!とばかりに盛り上がっていた。
まあ、結局最後はカオスになってしまったけれど…それでもバトルに勝てて良かったと嬉しく思えた。
妹の後日談。
その後、三人組の両親はこの条件とバトル…そして私たちに対していろいろと行動してきたという事実を知らなかったらしい。ポケモンもただ遊ぶから貸してと言ったらしく、母から事情を聞いて凄まじい勢いで三人組を説教したらしい。ちょっと可哀想に思えたけれど、まあ仕方がないし同情はしない。私も母たちから物凄い勢いで怒られているからね……。