心配している者と怒る者…そしてすべてを知り、行動する者。
「おおヒナ!無事じゃったか!!」
「ヒナちゃん!一体どこに行ってたんだい!?タケシから無事だって話は聞いていたけど詳しいことは聞けなかったし…本当に心配したんだよ!!」
「ご、ごめんなさい…」
『カゲ…』
『ピチュ…』
「一体何をしていたんだ!?まるで旅をしていたみたいな恰好で…!」
「えっと…なんて言ったらいいのか…」
『カゲカゲ…』
『ピチュピチュ…』
「あのオーキド博士、頼みたいことがあるんですが…」
「何じゃ?」
こんにちは妹のヒナです。三人組がポケモンを取りに向かっている間、私たちは先にオーキド研究所へ行きました。オーキド研究所に行ったとたんオーキド博士やケンジさんから凄い勢いで声をかけられ、それに圧倒されながらも心配かけたことに対して謝る。
そしてタケシさんからあまり詳しいことは聞けなかったのか、私たちが無事かどうか…何をしていたのか質問され、どう答えようか迷ってしまった。詳しいことはまだ話せないというとケンジさんは何か考えるように表情を変え…そして仕方がないとため息をついてオーキド博士を見る。
その時に母がオーキド博士に向かって広場で私たちがバトルするから使ってもいいだろうかということを話した。何があったのか聞きたそうなオーキド博士だったが、母や私たちの様子を見て詳しい話を聞かずに頷いてくれた。そしてケンジさんもオーキド博士と同じように何も言わずにいてくれた。
広場となる場所はオーキド研究所に少しだけ近い場所で、ケンジさんが審判をしてくれると言ってくれた。後でちゃんと説明するようにと言われていろいろと怒られるだろうなとヒトカゲ達と顔を見合わせて苦笑してしまったけれど…。
そして広場にやってきたらフシギダネ達に会った。フシギダネ達は先に話し合いをすると言って帰っていったミュウツーから話を聞いたのか分からないけれど、全員が一斉にオーキド研究所の近くまで…私たちの近くまで走ってきていて驚いた。
フシギダネを筆頭に皆が凄まじい表情でこちらに向かって叫ぶ。
『ダネ!!ダネフシ!!』
『ベーイ!!』
「う…ごめん皆…」
『カゲカゲ…』
『ピチュ…』
「あのね…もしかしたら知ってるかもしれないけど…私たちの勝負の邪魔をしないでほしいの…いいかな?」
『カゲ…!』
『ピチュ!』
『……ダネ、ダネダネ』
『ッッ―――――!!!』
皆がため息をついて無事なことに安心し、心配したと怒っているようだった。やっぱり帰り道で会ったミュウツーから事情を聞いたのだろう。
そのため、あの三人組が来た時に敵として見る可能性が出てきたと感じた。フシギダネ達が私たちの周りを見て残念そうな表情を浮かべ、主にジュカイン達がそれぞれ舌打ちらしきことをしていたからだ。三人組を見つけたら抹殺してしまうといえる表情と行動に苦笑し、勝負の邪魔をしないでほしいとフシギダネ達に頼む。ヒトカゲ達も皆に向かって頼み、それを見たフシギダネ達はしばらく沈黙していたが仕方がないともう一度ため息をつく。私たちは良かったと笑みを浮かべ、これから来るであろう三人組に絶対に勝つとやる気を出す。
…ちなみに、ケンジさんはこの光景を見て後にカスミさん達に向かって、フシギダネ達がまるで狩りたいと思っていた獲物を逃してしまったせいで殺気立つ野獣になっていたようだったと話していたらしい。…そんなに怖かった光景なのかな?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ここがオーキド研究所かぁ!!」
「おいヒビキ喜んでんじゃねえ!ヒナにバトルで勝つんだからな!!」
「コウ、落ち着いて。指示は…僕たちでそれぞれ出していこうか」
「待ってたわよ!」
『カゲ!』
『ピチュ!』
三人組が来た時の反応が私たちの予想していた通りだった。まずオーキド博士とケンジさんは三人組と私たちに何があったのだろうかと真剣に考えていて、母は私たちがバトルに勝つように…慌ててオーキド研究所に来てしまったために持ってきてしまった箒を握りしめる。
そしてフシギダネ達はというと…まずフシギダネのつるが地面に向かって叩きつけられ、一斉に襲いかかろうとしていたヨルノズク以外のポケモンたちを止める。皆がフシギダネを見て残念そうな表情を浮かべて諦め…ヨルノズクはというと木の上でただじっと三人組を見つめていた。そしてそんな危ない状況だった三人組はただ私たちを見て笑っていた。
今どんな状況なのか知らないというのは幸せなことなんだと苦笑しながらも、私は前へ歩く。
「それで?バトルは?先攻後攻どっちにするのよ?」
『カゲ!』
『ピチュ!』
「その前に条件の方の確認だ!」
「ちゃんと取ってきたんだろうな!!」
「ほら早く見せなよ」
「条件とは何じゃ…?ママさんは知っておるのか?」
「……いいえ」
「もしかしてヒナちゃん達が家出した理由なのかな…?」
三人組が私たちに向かって言う。その表情は無理だろという嘲笑っているような感じがして少しだけ気分が晴れた。無理だろと思っている彼らに向かって見せる【これ】はヒトカゲ達と頑張った証拠なのだ。マチスさんとの勝負は駄目だったけれども…それでも頑張った証なのだ。それを見て、彼らの認識は改まるだろうと思う。
――――私はリュックからバッチ入れを取り出し、その三人組に堂々とバッチを見せた。するとまず反応したのがオーキド博士たちで、その次に三人組だった。
「約束通り…3つのバッチを集めてきた!これで良いでしょ!?」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
「なッ!?バッチじゃと…!まだ幼いというのに…!!」
「ああ…さすが私の娘ね…ヒナ」
「だからタケシが大丈夫だと言ってたのか!!?その年でバッチを3つ…さすがサトシの妹…!」
『ダネダネ…』
『ッ―――――――』
「…チッ…仕方ねえな。バトルやってやるよ!」
「勝負して本当にそのバッチを取って来たのか確認してやるよ!」
「そうだね…君が本当にバッチを取って来たのか…ただ奪ってきたという可能性もあるし…バトルで決着をつけようか」
「奪ってきてないしちゃんと私たちが貰ったバッチなんだから!…バトルで絶対に勝つ…!」
『カゲ!』
『ピチュ!』
オーキド博士たちはそれぞれ感心したり驚いたり…そして納得していたりしていた。フシギダネ達はただ満足そうに笑みを浮かべていて…マチスさんとの勝負で負けてしまったことが余計に悔やまれた。ちゃんと勝つことができれば今この時点でもっと自信を持って私たちのバッチだと言えただろう…不戦勝のような状況になってしまったことに、今度は必ずマチスさんに勝つともう一度決心し、このバトルにも勝つと強く覚悟を決める。
そして三人組はあまりバッチの重要性を分かっていないようだった。いや、私が持っているということからまだその事実が伝わっていないのだろう。
まるで、マサラタウンに伝説がいると他の地方の人間に教えたとしても嘘だと言って信じてもらえないのと同じように…三人組は私たちがバッチを取ったと言うことを信じられていない。でも条件は条件なのだからバトルはしようということになった。
三人組のその表情に、私たちは彼らに信じてもらうためにバトルで勝つのだとやる気が出てくる。
「いいか!まずお前が先にヒトカゲかピチューかを選ぶんだ!バッチを取ったって言うんならできるだろう!?」
「そうだぜ、俺たちはお前が先に選んだポケモンを見て決める…だから早くしろ!」
「ここで怖気づくことないよね?バッチ手に入れてきたんだからさ?」
「っ君たち!ソレはいくらなんでも…!」
『ッッ――――――!!』
「大丈夫だよケンジさん、皆……ピチュー行ける?」
『ピチュ!』
三人組が言った言葉は私たちにとって不利になるといえる言葉だった。
彼らは私が出すポケモンを知っている。ヒトカゲかピチューかのどちらかなのだから最初に戦うポケモンに不利なポケモンを彼らが選べばいいのだ。そして私は彼らが出すポケモンを知らない…ある意味不公平で、ある意味不利なバトルになるだろう。だからこそそれを悟ったケンジさんやフシギダネ達がそのバトルは無効だと叫んだのだ。母やオーキド博士もこの言葉を聞いて厳しい表情になった。
でも私たちはそれでも絶対に勝つと考えていた…何があったとしても…たとえ不利なバトルになろうとも…絶対に勝つと旅をするときに決意していたのだから。だからこそケンジさん達には私たちの勝負を見ているだけにしてほしい。不利なバトルになったとしても絶対に勝つと…そう決めているのだから。
私はヒトカゲとピチューを見て、頷く。するとヒトカゲとピチューも同じように頷いてくれた。そしてピチューが前に出てきたためバトルを先にしたいのだろうと分かった。だからこそピチューを先にバトルに出す。ヒトカゲは後ろの方で私たちの応援をしていた。
「行くわよピチュー!絶対に勝つ!」
『ピッチュ!』
「ピチューか…なら…」
「そうだね。僕たちのポケモンは決まったも同然だ」
「行くぞ!――――――――――――」
To be continued.