マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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兄は行動を開始する―――――。


第百九十五話~兄はバトルシャトーに挑む~

 

 

 

 

 

 

 

バトル場では挑戦者同士の戦いが始まろうとしていた。バトルシャトーにて初のバトルを行うと言うことから審判によって拍手が起こり、始まりを待つ観戦者で賑わう。セレナたちも一緒に拍手をしてバトルが始まるのを待っている。

それらを見ていたビオラは椅子に座り、微笑みながら挑戦者の1人であるサトシを見ていた。

 

そしてそんなビオラに気づいたザクロは飲み物を持ってきて、ビオラが座っている近くの椅子に座り、話しかけた。

 

 

「…それで君は、サトシ君とバトルしているんですよね?」

「ええ、ガッツのあるトレーナーよ…ポケモンたちも凄まじく強くて…まるで今までとは違った戦い方を見せてくれたわ!」

「今までとは違った?」

「このバトルを見ていれば分かると思うわよ。それにザクロ君を絶対に熱くしてくれるトレーナーでもあるんだから」

 

そう言ったビオラによってサトシへ興味を持つザクロはバトル場を見つめた。何が起きるんだろうという意味での興味と、ビオラの説明による期待という感情が起きる。

期待外れにはならないでくれという不安な感情もあったけれど、サトシを見ている時から、何か面白いことが起きるという予感はしていた。その予感が当たるのかどうかはこの試合によって決まるとザクロは感じていた。

 

 

「良きバトルを」

「良きバトルを!」

 

 

サトシ達がボールを手にバトルシャトーでの流儀である挨拶をする。そしてトレーナーが指示をする場所へ向かい、サトシはボールを戻してからピカチュウに話しかけた。

ザクロは遠くの方でシトロンたちが話していた声を聞き、サトシの手に持っていたボールはピカチュウが最初に入っていたボールであり、使わないと分かっていてもちゃんと持ってきていた一つの相棒の証でもあったということが分かった。そしてテスラは持っているボールからヤヤコマを出して勝負を始める。

でんきタイプに対してヤヤコマを出す根性をサトシは気に入り、ピカチュウと一緒に笑みを浮かべてテスラたちを見ていた。テスラたちも好戦的な表情をして、絶対に勝つと意気込んでいる。

 

 

「では、バトル開始です!!」

 

 

「ピカチュウ、受け身体勢」

『ピッカッチュ!』

 

「…?…よく分からないけど、フェザーダンス!」

『ヤッコッコォ!!』

 

 

フェザーダンスがピカチュウに当たろうとしていたが、すぐに反応してそれをすべて躱していく。まるで常時でんこうせっかのようなスピードに観戦者は感心し、ザクロは小さく息をのむ。そしてセレナたちはいつも通りサトシのことを応援していた。テスラはスピードが速いということが分かるとまずこうそくいどうでスピードを上げながら攻撃を指示する。

 

「ヤヤコマ、はがねのつばさ!」

『ヤッコォ!!』

 

「ピカチュウ、受け止めろ!」

『ピッカァ!!』

 

「な、何ッ!?」

『ヤコォ!?』

 

 

はがねのつばさごとヤヤコマを受け止めたことによって小さな突風が起きる。しかしそれでもピカチュウはダメージを負っていないかのように笑っていて、そしてヤヤコマを上へ投げた。上に投げられたヤヤコマは身体を回転させながらも、何とか体勢を整えて飛び上がる。それを見たテスラはすぐに対応をし始める。

 

「ヤヤコマ!こうそくいどうでスピードを上げるんだ!」

『ヤ、ヤコ…!』

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

『ピッカッチュゥゥウウウウ!!!!!』

 

 

『ヤッコォォオ!!?』

 

 

 

そしてテスラの指示を聞いてヤヤコマはすぐにこうそくいどうを始めた。スピードをピカチュウと同じぐらいにするためだ。

でもそれらをサトシとピカチュウはただ笑って攻撃へ移る。もう十分戦いを楽しんだと言うことと、これでもう終わりだと確信していたからだ。そんな笑みに気づかないテスラとヤヤコマはピカチュウの放つ攻撃から逃げようとする。だが10まんボルトがまるで追尾しているかのように動き、そしてこうそくいどうによってスピードが上がったヤヤコマを捕えたのだった。激しい電撃を受けたヤヤコマはその一撃で倒れてしまう。

 

急な展開に周りは静寂になり、すぐに拍手が巻き起こった。ビオラと座って観戦していたザクロはサトシの強さを見て思わず立ち上がり、好戦的な瞳で見つめていた。爵位さえ同じであったなら即座にバトルしたいと思えるほどの強さをサトシが見せてくれたからだ。

もちろんビオラはそんなザクロを見て、そしてサトシを見てただ微笑んでいただけだった。これからザクロがサトシとどう戦うのか見れないけれど、でも熱い戦いにはなるはずだとビオラ自身、サトシと戦った時のことを思い出しながら考えていた。

 

審判がすぐに反応してサトシに勝利を宣言する。そしてまた拍手が起きていたが、サトシとテスラはそれぞれ自分たちのポケモンを労ってから、サトシは女性から貰い受けた白いマントを着て、そしてテスラはヤヤコマを自分の帽子の上に乗せてから拍手をし、おめでとうと祝福した。サトシはただ笑みを浮かべてありがとうとテスラたちに向かって言う。

 

「サトシ…格好良いわ!!」

「セレナ顔赤いよ?大丈夫?」

『デネ?』

「うん大丈夫…むしろ仕方ないって諦めてるから…!!」

「ああ…ユリーカ、セレナは放っておきましょう。いつものあれですから」

「ああ、あれね…うんわかった」

『デネデネ』

 

 

その後、ビオラさんはサトシが爵位を貰ったことを祝福し、写真撮影を始めた。セレナがサトシの隣をキープして、シトロンとユリーカがその左右に並ぶ。

一枚を撮ってからもう一枚と…このまますべてが終わるはずだった――――。

 

 

「ビオラ、君に勝負を挑みます」

「ええ、何時誘ってくれるのかと…待っていたわ!」

 

「ありゃ…ビオラさんとのバトルか…」

『ピィカ…』

「ザクロさんだったよね…本当に強いのかしら…?」

「でも、ビオラさんが強いと言っていましたし…これからのバトルを見れば分かるはずですよ」

「楽しみだねデデンネ!」

『デネデネ!』

 

ダッチェスであるビオラと、デュークであるザクロが対戦することになったため、サトシ達は観戦席へもう一度移動し、その戦いを見学することにする。サトシはジムリーダーであるビオラとの戦いを外から見れると言うことで勉強になるだろうとケロマツとヤヤコマをボールから出してしっかりと見ておけよ?と言う。その言葉を聞いたケロマツとヤヤコマは一度サトシに向かって声を出してからじっとそのバトルを眺めていた。

 

バトルはかなり激しくなっていくのを観戦者たちは感じていた。ビオラはいつも通り地面を凍らせて戦い、ザクロは鍛え上げられたがんせきふうじによってビオラのアメタマの速さを止めようとする。がんせきふうじが空から降ってくるような光景を見て今までとは違った戦い方にサトシは小さく笑みを浮かべ、好戦的な瞳でじっとその様子を見つめる。もちろん肩に乗っているピカチュウ、近くで見つめているケロマツやヤヤコマもサトシと似たような目で試合を観戦する。

サトシはマサラタウンに帰った時に修行できるよう、この光景を忘れないようにとイワークのがんせきふうじの一つ一つをすべて見ていたのだ。周りにいた観戦者たちはビオラのアメタマによる凍らされたバトルフィールドの使い方やイワークのコントロールされたがんせきふうじに息をのんで見ている。こんなバトルは始めて見たと…あるトレーナーが思わず呟いてしまうほど、戦いは激化していった。

そしてようやく終了した試合は、ザクロががんせきふうじでアメタマの速さを止めてからラスターカノンの攻撃でダウンしたというある意味予想外な結果だった。ビオラは肩をすくめて完敗だと言い、礼を言ってから握手をしていた。

そしてザクロはこの一勝によってグランデュークへ昇格することができた。技が鍛え上げられているということでやれたバトルの仕方にサトシはただひたすら技を鍛え上げることへの可能性を感じていた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「…ザクロさん」

『ピィカ』

「やあ…えっと…サトシ君だったね。君の戦いは本当に素晴らしかったよ。あとテスラ君。君もこれから頑張ってくれ」

「はい!」

「ありがとうございますザクロさん!」

 

ザクロがバトルシャトーから帰ろうとしているのを見て、サトシ達がすぐに彼を止める。ザクロはサトシ達の声に反応して振り返り、笑みを浮かべて話し始めていた。

サトシはそんなザクロにただ笑みを浮かべて、小さく口を開いて言う。

 

 

「ザクロさんってもしかしてジムリーダーですか?」

『ピッカ?』

「おや、よく分かりましたね。確かに、僕はショウヨウシティのジムリーダーを務めていますよ」

 

「え…ええええええ!!?」

「ほ、本当にジムリーダーなんですか!?」

「お兄ちゃんやビオラさんと同じジムリーダー…!!?」

『デネ!?』

「あら、言ってなかったかしら?」

「言ってませんよビオラさん!!」

「というかだからあんなに強かったんですね!」

「凄い凄い!」

『デネ!』

 

サトシの言葉にザクロはただ頷き、そして周りで話を聞いていた皆が驚愕したような表情を浮かべていた。同時に何故サトシはザクロがジムリーダーだと分かったんだろうと疑問にも思っていた。ビオラに勝ったというだけでジムリーダーだと普通は考えないからだ。だからこそセレナたちは自然とサトシを見て、ザクロは好戦的な笑みを浮かべる。

 

 

「何故僕がジムリーダーだと分かりましたか?」

「簡単ですよ。バトルのやり方や鍛え上げられた技…それにトレーナーとしてただ勝つというよりも楽しんで勝つというバトルをしている感じがしましたから…ザクロさんの戦い方は、まるでジムリーダーとして【挑戦者】とバトルしているのではないかと思ったんです」

「なるほど…面白いですね。そしてあなたは素晴らしく強い…!ショウヨウシティのジムには来ますか?」

「もちろん来ますよ!」

『ピィカッチュ!』

 

「そうですか。ではサトシ君が挑戦しに来るのを楽しみに待っています」

 

 

そう言ってザクロは笑みを浮かべながらもバトルシャトーから出て行った。その様子をサトシはただ戦う時によくしてしまう笑みを浮かべ、目はギラギラと輝いていた。もちろんピカチュウも同じように瞳を輝かせてザクロを睨むように見つめていた。

彼らの会話にシトロンたちは入り込むことはできなかったけれど、とてもすごい光景なのだと言うことは伝わってきたようだった。シトロンはいつか来るであろうサトシとのバトルを想像し、その時のバトルが楽しみになってきていた。

 

 

――――――そして、サトシ達の会話を聞きながら、サトシだけを見つめているセレナはいつも通りの行動だったと言えるだろう。

 

 

 

 

 






ここは、あるポケモンセンターの電話の前。
そこにいたのはバトルシャトーから戻ってきていたサトシとピカチュウだ。日が暮れてしまったからこそサトシ達はポケモンセンターに泊まるために来ていて、そしてサトシはある人物と電話をするためにやってきていた。
電話の相手は、サトシたちと親しいらしい。サトシとピカチュウは笑みを浮かべて話し始めていた。


「……あ、久しぶり。前に説明していたけど…そう、カラマネロの件な。ポケモンの言葉が分からないのは不便でしょうがないんだ…だから、あれに協力してくれるか?」
『ピィカッチュ』

「…ああ、分かった。このカロス地方の…ショウヨウシティで待ち合わせでいいか?…今更だけど悪いな。ああいや、ありがとう…」
『ピカピカ!』

「…ヒナ?ヒナならまだマサラタウンから帰ってきてない…でもミュウツーたちが傍にいるから大丈夫だ…おう、分かってる。俺はカント―地方に帰らないよ」
『…ピィカッチュ』


「分かった。じゃあショウヨウシティでまた会おう。よろしくな――――――」
『ピッカァ!』






「……さて、セレナたちの所へ戻るか」
『ピィカッチュ!』




サトシ達の旅は、まだまだ続く――――――――。




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