ある意味鋭く、そして厄介な相手。
こんにちは妹のヒナです。マチスさんがヤマブキシティのポケモンセンターでクチバジムに電話をして待っている間にご飯を食べることになりました。お金持っていたのに何であそこで行き倒れみたいになっていたんだろうと呆れていたらマチスさんが食べ物持ってなくて町に戻るのも困難でそうなったと笑いながら説明してくれました。まあつまり準備不足だったようです。今度旅に出る時はそうならないように気をつけようと決心しました。栄養バーたくさん持ってきていて本当に良かった…。
そして、私たちは現在ごはんを食べているのだが、まるでカビゴンが食べるような量をマチスさんとライチュウが食べていて、私たちはそれを見ているだけでお腹がいっぱいになってしまった。でも食べないとクチバジムのジム戦で力がでないかもしれないと私たちは頑張って自分たちの料理を食べた。いつも食べている量だというのに、大盛りにして食べたような気になってしまったぐらいマチスさんたちの食べっぷりは凄かったと言っておく。
「リトルガール、そろそろ準備しておけよ…迎えが来たらすぐにジム戦だからな」
『ライライ!』
「…はい。分かってます!」
『カゲカゲ!』
『ピッチュ!!』
私たちはマチスさんから離れて話し合いを始めた。時間がないと言うのは分かっているけれど、修行はできなくても作戦ぐらいは立てられると思っているからだ。そして話し合いはマチスさん達とどう戦っていくかの戦略。兄から前に聞いた話だとマチスさんのライチュウはすぐに進化したためスピード重視でないから勝負するなら速さで決まるかもしれないと思っている。速さならヒトカゲもピチューも通常より上の方だから大丈夫だろう。先程マチスさんからの話だと勝負は2対2で行うらしい。私がヒトカゲとピチューで戦うからマチスさんも2体で戦うと言うことだ。でもその2体のうち1体はおそらくライチュウだろう。だからこそまず先にライチュウに勝つことを考えて話し合った。
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迎えが来たのはしばらくした後だった。ジムで戦いを教えていると言うジムトレーナーが車で迎えに来て、マチスさんが私たちに時間だと言って一緒に行くことになった。そして車に乗ってから待つこと数十分で着き、すぐにクチバジムの中へ入って勝負するためにバトル場へと向かう。
「リトルガール…覚悟はできたか?」
『ライ?』
「もちろんです!」
『カゲカゲ!』
『ピッチュゥ!』
「ok!なら楽しませてもらうぜ!サトシの妹であるリトルガールのバトルを!!」
『ライッチュゥゥ!!』
「では、ジムリーダーマチス対挑戦者ヒナの試合を始める…試合開始!」
「行くよピチュー!」
『ピッチュ!』
「ライチュウ、楽しんで来い!」
『ライライ!』
試合開始と同時に出したポケモンはピチューとライチュウ…つまり未進化と進化形との戦いだ。ピチューはライチュウを見て睨みつけ、絶対に勝ってやると電気をビリビリと放電させながら威嚇していた。対してライチュウはどんなバトルが楽しめるのかと期待しているようにピチューを見て、好戦的な目で笑みを浮かべた。
そんなピチューとライチュウを見た私とマチスさんはお互い笑みを浮かべ、口を開く。
「ピチュー、10まんボルト!!」
『ピッチュゥゥ!!』
「ライチュウ、こっちも10まんボルトだ」
『ライライッチュゥゥ!!』
ピチューとライチュウの10まんボルトが炸裂する。電撃についてはライチュウの方が上のようでピチューが頑張って大きな電撃で攻撃しているというのにライチュウの電撃を守るような状態になっている。このままではいけないだろうと私は口を開いて叫んだ。
「ピチュー、大きく右にジャンプしてから走って!」
『ピチュ!ピッチュゥゥ!!』
「ライチュウ、構えろ」
『ライライ』
ライチュウはただ目を瞑り、ピチューがやってくるのを待っているようだった。待っているのならばむやみに突撃し、近距離戦にする必要はないだろうとピチューに向かって10まんボルトをもう一度やってもらう。だがライチュウはその攻撃が予測できたのか2歩後ろに下がって避けた。そしてピチューに向かって大きく近づいて……。
「サトシにバトルでの話を聞いていたかもしれないが、今の俺たちはスピード戦でもやっていけるんだぜ…ライチュウ、メガトンパンチ!」
『ライライ!』
「ッ…ピチュー避けて!」
『ピチュ…ピッチュゥ…!?』
ライチュウが一気にこちらまでやって来たのはどうやらこうそくいどうを使ったからだったみたいだ。話で聞いていたバトルとは違ったスピード戦を仕掛けてきたことに私たちは驚き、そしてマチスさんは私たちに向かって今までの戦い方じゃないと笑って言いながら、攻撃してきた。
ピチューに向かって避けてと指示をしたのだが、ピチューが避けようとした瞬間それが分かっているかのように避けた方向へ攻撃してくる。そしてそのままピチューが吹っ飛び、壁に激突してしまった。だが、フラフラになりながらもピチューはライチュウを睨みつけて負けないと叫んでいた。
「ok!その心意気は良い。だがもう終いだ…ライチュウ、もう一度メガトンパンチ!」
『ライッチュゥ!』
「避けてピチュー!!」
『ピチュ…ピィッチュゥゥウウ!!!!』
「What!?」
『ライ?!』
フラフラになっているピチューはそのまま力が出せないようだった。避ける力も残っておらず、ただライチュウを睨みつけていて…このままだとライチュウのメガトンパンチで戦闘不能になってしまうと思い、避けてと叫ぶ。そんな私と満身創痍なピチューに、ライチュウとマチスさんはただ笑っていたまま、ピチューに攻撃を当ててきた…。
だが、ピチューはまだ戦う気力が残っていた。叫んだ私の声に反応して、このままじゃいけないと思ったのだろう。ピチューは大きく叫んでライチュウを睨みつけて―――――そしてメガトンパンチを尻尾で受け止めたのだ。
「…あれは、アイアンテール…!!」
『ピチュピチュ!!』
「このバトルの中でアイアンテールを習得したと言うことか…ハハハ!!流石はサトシのsister!!」
『ライライ!』
尻尾が光り輝き、まるで兄のピカチュウのアイアンテールのような状態になったことに私は驚いた。でもピチューはやっとできた!と大喜びしているようで、笑みを浮かべてライチュウのメガトンパンチを跳ね返す。ライチュウは2歩後ろに引き、ピチューを見ながらも面白いとマチスさんと一緒に好戦的に笑っていた。
でもピチューの体力は限界だ。アイアンテールができたことに喜んでいるが息が乱れ、疲れているのがわかる。このままだと負けてしまうだろうと言う気持ちが出てきてしまい…でもその感情を押し込めてピチューに向かって言う。
「ピチュー…この一撃をヒトカゲに託すことになるかもしれない…もしかしたら、あなたを大きく傷つけることになるかもしれない…それでもやってくれる?」
『ピチュ…ピィッチュゥゥゥウ!!!』
「……ありがとうピチュー!」
『ピチュピチュ!』
「絆か…ライチュウ、こっちも俺たちの絆の強さを見せてやろう!」
『ライッチュゥ!』
私はピチューにこの次の攻撃で負けるかもしれないということ、そして傷つく可能性があるということを言う。もしもそれにピチューが動揺し、嫌だと言うのなら接近戦ではなく10まんボルトで戦おうと思った。でもピチューは私に向かって頷いて片手をライチュウに向けて、そして好戦的に笑ったのだ。その笑みと叫び声に私はピチューが大丈夫だと言うことを悟り、ありがとうと笑みを浮かべた。
ピチューと私の言葉にマチスさんは笑みを浮かべてライチュウに向かって言う。ライチュウはマチスさんを見て頷き、小さく笑いながらもピチューを見つめていた。
そしてそれぞれが睨み合い、見つめ合った後…マチスさんと私はそれぞれ口を開いて叫んだ――――――。
「ライチュウ、メガトンパンチ!」
『ライライッチュゥゥ!!』
「ピチュー、アイアンテール!!」
『ピィッチュゥゥウウ!!』
ライチュウのメガトンパンチとピチューのアイアンテールが衝突する。その力は大きく、周りに突風が巻き起こるほどだった。そしてその後、2体が離れていき、しばらくした後ゆらりと身体が動いて地面に向かって倒れたのは…ピチューの方だった。
「ピチュー戦闘不能。ライチュウの勝ち!」
『ピィッチュ……』
「…ありがとうピチュー。本当にありがとう!」
『ピチュピチュ…!』
『カゲ!カゲカゲ!』
『ピチュ…!』
ピチューの元へ近づき抱き上げて先程私が指示を出していた場所まで戻る。そしてピチューに礼を言ってボールへ戻そうかどうか考える。でもピチューはボールを見た瞬間ここに居たいと言うこと、後ろで見ていると首を振り嫌そうな顔をしながら叫んだため、私は分かったと頷き、ゆっくりと私の後ろの方に座らせた。座っているピチューにリュックからオレンのみを出して食べさせ、観戦してもらう。そんなピチューにヒトカゲが近づいて、ピチューに向かって手を出してハイタッチをした。それは、ヒトカゲからのありがとうという気持ちであり…次は頑張って勝つという気合いでもあったのだろう。
そして私たちは向き合う。マチスさんとライチュウを見て…絶対に勝たなければと気合を入れた。
「行くよ…ヒトカゲ」
『カゲ!』
『…それで?言いたいことは終わりましたか?』
『貴様…』
『キューン…』
ここはクチバシティの近くにある森の上空。話をしようと決意した妹と同行していたミュウツーが後ろから鋭い目で睨みつけていたミュウツーたちと対峙していたのだ。
ミュウツーは冷めた口調で早く終わらせろと遠まわしに言う。その言葉にマサラタウンにいたミュウツーたちは敵意を燃やした目で睨みつけていたのだ。それは、ヒナたちと同行できるというミュウツーへの嫉妬が大きく関わっていた。
そしてそんな冷戦状態になったミュウツーたちを遠くから観戦しているのはラティオス達だ。
『クゥーン…』
『あれはしばらく収まらないだろうな…だが気持ちは分かるぞ』
『フゥゥウゥ…また悪夢でも見せるか?』
『ミュゥゥ!』
『ミュゥ…』
『いややめておけ、ミュウも楽しそうな表情で言うな。こっちのミュウが複雑そうだぞ』
『ミュゥミュゥ…?』
『ミュゥゥウ!』
『レッビィ…』
『あなたが私の同族とは…本当に嫌なものですね…それにそこの……ラティアスでしたか?あなたもただの八つ当たりに私を巻き込まないでいただきたい』
『それはこっちの台詞だ!貴様がヒナたちと行動を共にしていることが羨ましいというのに貴様というやつは…!』
『キュゥゥウウ!!!』
『それが何か?あなた方の言っていることは到底理解できませんし、理解したくもありませんね』
『…』
『…』
『仕方がない…ダークライよ。優れたる操り人の妹の様子を見てきてくれないか?何かあったら知らせてくれ。私たちは様子を見て、最悪の場合優れたる操り人のように喧嘩を止めてみせよう』
『…分かった』
『クゥゥウウ…』
『ミュゥ…』
『レッビィ…』
『ミュゥ?』
伝説たちは、いつも通り騒がしい―――――――。