マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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フラグは叩きつぶすためにある。






第百九十話~兄はいろいろとぶっ壊す~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。カビゴン騒動を終えて、俺たちはショウヨウシティを目指して進んでいます。ですがこのままだとまた野宿になってしまう恐れもあるため、近くにあるポケモンセンターへ向けて歩いている途中になるのです。

 

『ピカピ!ピカピカ?』

「どうしたピカチュウ?…ん?あれって……」

「ああ、あれは電波の観測所ですよ」

「電波の観測所?」

「はい。宇宙から飛来する無数の電波をキャッチし、高性能な機器によって全自動で瞬時に分析を行っているという…素晴らしい施設です!」

 

「ああなるほど…」

『ピィカ…』

 

遠くの方に見えてきた建物をピカチュウが発見して、あれは何だと問いかけてきた。それに答えたのはシトロンで、機械に対することには詳しいのかどのようなことをするのかわかりやすく教えてくれた。ユリーカは背が小さいからか背伸びをしてその観測所を見ようとしている。そしてそんなユリーカの頭にはデデンネが乗っていて、シトロンの言葉に首を傾けていた。

 

つまり、デオキシスなどの物体が来た場合分析してポケモンだと瞬時に見分ける機会ということであるのだろうと納得したのだ。まあポケモンじゃなくても宇宙から飛来してきたらすぐにわかるようになってるみたいなんだけど、宇宙と聞くとデオキシスを思い出してしまうのだから仕方ない。もしもデオキシスがこの観測所にやって来た時はすぐに大騒ぎになるのだろうなとマサラタウンにいるであろうあいつの顔を思い出しながらもシトロンの説明に頷いた。

 

 

 

「…あんたがサトシかい?」

 

「まあそうですけど…誰ですか?」

『ピカピカ?』

 

 

突然現れたマントを着ている人に俺とピカチュウは少しだけ警戒しながらも問いに答えた。警戒しているのは俺たちに何か危害を加える可能性を考えたからだ。まだカロス地方で悪さをする奴…いや、一応コフーライの時に出会ったけれど、見た目からして悪党という感じがしない奴に出会ったことはないため、セレナたちは何も警戒せずにいた。…まあマントを着て顔を隠す時点でおかしいとは思うが、セレナたちは普通の人だと思っているようだった。

セレナは俺が警戒したことに反応してどうしたんだろうと首を傾け、シトロンとユリーカはそのマントの人の後ろにいるポケモンに興味があるらしかった。

 

セレナがポケモン図鑑を開いてそのポケモン…カラマネロの説明を聞く。

 

 

 

「ふん…噂に聞いていた通り、強そうなピカチュウだね。そのピカチュウ…このマダムXが貰おうか!」

『マロォ!』

 

「マダムX?以前のロケット団みたいな奴だな…俺がピカチュウを渡すわけないだろ!」

『ピッカッチュ!!』

「そうですよ!第一、交換をするじゃなく貰うとは強奪するという解釈にもなりますから十分不適切な言い方になります!!」

「シトロン、そういうことじゃないみたいよ…本当に強奪しようとしてるみたい…!」

「悪い奴ってことね!」

『デネデネ!』

 

 

「なら…実力行使で行こうかい?」

『マロォォ!』

 

「ッ…あの光を見るな!!…ピカチュウ!!」

『ピィカ…!』

 

カラマネロの身体にある模様のような部分が光りだし…まるであやしいひかりのように感じた。これは危ないと俺はピカチュウに目と耳を閉じるように指示する。指示を聞いたピカチュウはすぐに俺の言った通り両手で耳を塞ぎ、目を閉じた。

俺も光を見ないようにして光によって連れ去られる可能性を考え、ピカチュウを抱きしめて輝きが消えるのを待った。ようやく輝きが消えたと思ったら、マントの人…つまりマダムXが笑みを浮かべているのが見えた。カラマネロも先ほどの位置から動いておらず、何をしたいのか俺たちは疑問に感じる。だがそれはすぐに解決された。

 

 

「…サトシ、言うとおりにしなさい」

「ピカチュウを渡しなさい」

「すべてはマダムX様の言うとおり」

『デネデネ』

 

 

「いやいろいろとツッコミどころがあるけどどうしたんだよお前等…!」

『ピィカッチュ!?』

 

 

「ふふふ…彼らはもう私の言うことしか聞けない操り人形さ!さあ彼らの命が惜しかったらピカチュウを渡してもらおう!」

『マロマロォ!』

 

 

セレナたちが突然俺たちを見てピカチュウを差し出すように言ってくる。その声がまるで扇風機に当たっている最中に声を出し、通常とは違った感じで震えているような声となって聞こえてきたのだ。しかもいつもとは違って真顔で言ってくるものだからかなりシュールに感じてしまった。デデンネもセレナたちと同じようないつもとは違う声になっていて、普通だったら笑ってしまうだろうなと思ってしまったが、マダムXの言った内容を聞いてその明るい感情は消えた。

 

つまり、セレナたちを人質にピカチュウを渡せと言っているのだろう。ピカチュウを渡さないのなら、セレナたちを傷つけてもいいのかと問いかけるその内容は、まるで以前の【あの光景】を思い出すきっかけになってしまった。マダムXの言葉が…この光景がある種のデジャブを感じてしまったのだ。

 

それは、もう二度と見たくないと思えた首輪をつけた妹の変わり果てた姿と酷似していた…。

 

 

 

「クッ…アッハハハハハ!!!!」

『…………………………』

 

 

「む…何がおかしい!!?」

『マ、マロォ…!?』

 

 

「ハッ!…ふざけんなよてめえら…!」

『……………………ピィカ!!』

 

 

俺が突然笑い出したことにマダムXとカラマネロは困惑していた。でもそれ以上に、俺は…俺たちは怒りに満ちていた。あの時のような光景を作り出したこいつらに、人質だからと自分たちの方が有利そうに言う悪党どもに、苛立ちが大きくなる。

俺はボールを空に放ち、ケロマツとヤヤコマを出し、カラマネロと向き合う。ボールからその光景を見ていたのか…それとも俺たちの怒りを感じ取ったのかケロマツとヤヤコマもマダムXとカラマネロを睨みつけてすぐに攻撃できるようにしていた。

 

そしていきなり戦闘態勢になった俺たちにマダムXとカラマネロは動揺していた。

 

 

「なッ!?人質が惜しくはないのか!!」

『マロマロ!!』

 

 

「んなわけあるか!!もう二度と傷つけるつもりはねえんだよこっちはよぉ!!!!」

『ピカピッカァ!!』

『ケロケロォォ!!』

『ヤッコォォ!!』

 

 

ピカチュウの電撃とケロマツのみずのはどう、そしてヤヤコマのかまいたちがカラマネロに直撃した。マダムXよりも人質として操っているカラマネロの方を優先したからだ。そしてふらつきながらもこちらを睨んできたカラマネロに俺が走っていき、その勢いで吹っ飛ばすように殴りつける。殴られたカラマネロはそのまま吹っ飛び、後ろの方までいってしまった。

 

「あれ…サトシ?」

「ケロマツたちがボールから出ている?…一体何が…」

「サトシの真ん前物凄く煙が舞ってるけど大丈夫!?」

『デネ!?』

 

「…ああ、元に戻ったみたいだな」

『ピィカ』

『ケロ』

『ヤッコォ』

 

カラマネロを吹っ飛ばした衝撃のおかげか、セレナたちが我に返ったかのように周りを見ていることが分かった。声も震えておらず通常に戻っていて…これで人質となることはないだろうとマダムXを睨みつけ、ジュンサーさんの元へ連れて行こうとしたのだが、何だか様子がおかしい…。

 

 

「ぐっ…ここは…?」

 

 

「え、ちょっと待ってください…あなたはジュンサーさん!?」

「どうしてジュンサーさんがここに!?」

 

 

ふらついたマダムXが木にぶつかり、マントがとれたことでその顔が明らかになった。シトロンたちがマダムXの顔を見て驚愕している。ジュンサーということが分かり、俺たちは警戒しながらも話を聞くことにした。警戒しているのはジュンサーさんだからということで油断したくはないからだ。もしも本当に悪党だった場合、ジュンサーだからということで油断させてまた何か仕掛けてくる可能性もあった。…でも彼女の言っていることは本当のように感じ、そして先程のセレナたちに使ったカラマネロの技からジュンサーさんも操られていたんだと分かって、警戒心を解いた。

 

 

「…そういえばサトシ…カラマネロは!?」

「そういえば見当たりませんが一体どこに…」

 

「いや何か凄くムカついたから吹っ飛ばしたんだけどやりすぎたか…」

『ピカピカ…』

『ケロォ…』

『ヤッコォ…』

 

 

『マロォ!!マロマロ!!マロォォ!!!』

 

 

「あ、あそこにいるのカラマネロだよ!何か凄くふらついてるみたいだけど…」

『デネェ…』

「な、何を言っているのかしら…」

 

『マロマロ!マロォ!!マロマッロォォオオ!!!!』

 

 

 

カラマネロは傷つきふらついた状態で俺たちに向かって何かを言おうとしているようだった。でもその内容が分からず、こんな時にニャースやルカリオ達がいてくれたらと思ってしまった。しかも言い終えて満足したのかカラマネロが物凄い勢いでサイコキネシスで空へと逃げていく。

 

 

「あ、逃げた!?」

 

「待てやゴルァ!!!」

『ピカピッカァ!』

『ケロケロォ!!』

『ヤッコォォオ!!』

 

「サトシ!深追いは危険です!戻ってください!!」

「そうよサトシ!…みんな無事だったんだし…それにカラマネロはもうどっかに行っちゃったんだからこれ以上追うのは危険よ!…サトシが傷つくのは見たくないの!!」

「サトシ達戻ってきて!!」

『デネ!』

「そうよ君!戻ってきなさい!!」

 

「…チッ」

『…ピィカ』

『…ケロ』

『…ヤッコ』

 

 

カラマネロに向かって走る俺たちだったけれど、シトロンたちが戻って来いと言ってきたため…物凄く不本意だけれど、でもまあ攻撃はあの時にしたし…また何かあればぶっ潰せばいいかと考える。とにかく皆が無事ならそれでいいかと俺たちは無理やり納得させてセレナたちのいる方へ歩いて行った。

そしてジュンサーさんが何かを思い出したかのような仕草をしてから言う。

 

 

 

 

「たぶんカラマネロはあの観測所の方へ向かったはず…私が仲間を呼んで捕まえに行くから、君たちはもう危険な目に遭わないように」

 

「はい、わかりました」

「わかりました!」

『デネ…!』

「……サトシ?」

 

「…………………………」

『ピィカ…』

『ケロ…』

『ヤコ…』

 

 

ジュンサーがそのままカラマネロが行ったであろう電波の観測所へ向かっていき、俺も行こうとしたのだが、シトロンとユリーカに止められ、危険だから行くなと涙目で説得されてしまった。シトロンとユリーカは俺たちが危険な目に遭ってほしくないと考えて必死に止めているのだろう。セレナは最初は止めていたが、今はじっと俺を見て、行くのか行かないのか俺自身の行動によって決めようとしていた…。つまり、俺が行くのならセレナもついていくと言うことだろう…。そしてそうなるとシトロンとユリーカも必然的についてくることになる。俺だけが行くのならば大丈夫だけれど、このままだと危険性が高いだろうと判断した。シトロンたちを置いて走って行くのは可能だが、ジュンサーが先にあの電波の観測所にいると言ってしまったために、後から追いかけてくる可能性が高いと思っているからだ。それならば…仲間が危険な目に遭うぐらいならば諦めようと考えた。

そのためカラマネロを捕まえる手伝いはできなかったけれど…俺はカラマネロに嫌な予感を感じ、イッシュ地方での出来事に少しだけ似ていると考えた。だからこそ、あの時危険性を考えず、追っていればよかったのだ。

 

 

 

その後、電波の観測所で大きな爆発事故が起きたと聞き、ジュンサーさん達は無事だと言うのも話で聞いたが…あの時無理やりにでも追っていれば良かったと後悔した。

 

 

 

 

 




兄の心境。
 またあのカラマネロに会ったらぶっ潰す。あとニャース拉致って来るか…。





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