マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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本格的な旅が始まる…。





第百八十九話~妹は出発する~

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました!ヒトカゲとピチュー、元気になりましたよ!」

 

 

「ありがとうございますジョーイさん!」

「良かったわねヒナちゃん」

「はい!」

 

 

こんにちは妹のヒナです。ハナダジムを挑戦し、無事に勝利した後…私たちはポケモンセンターにいます。ハナダジムに挑戦する前にタケシさんからもう一度こっちに来てほしいと言う話と、ヒトカゲ達の回復のために来たのです。

 

私はボールからヒトカゲとピチューを出して、お互いに抱きしめあう。それは勝利したことへの喜びと、頑張ったねという労りの込めた抱擁だと思っているからだ。そして抱きしめあう光景にカスミさんが微笑ましそうに見つめていた。サクラさんは何か用事があるようでどこかへ行ってしまったために今いるのはカスミさんと私達だけだ。ジョーイさんは他のポケモンたちを元気にするために診療室へ行っている。もしかしたらこの近くにミュウツーもいるかもしれないけど、姿が見えないために分からない。

 

…それにしてもタケシさんどこにいったんだろう。

 

 

「悪い待たせた!」

 

 

「遅いわよタケシ!」

「あ、いや大丈夫ですよ!」

『カゲカゲ!』

『ピチュ!』

 

 

タケシさんがポケモンセンターの奥からこちらに向かって走ってきたため、ポケモンたちを治療していたのだろうと思った。カスミさんがタケシさんに向かって不満を言ったのを苦笑しながら大丈夫だと私たちは言う。それを聞いたタケシさんは本当に申し訳ないと言う表情で苦笑をしながらも大きな紙袋を私に渡してきた。

 

 

「えっと…これは?」

『カゲ?』

『ピッチュ?』

 

「俺が作った特製の弁当だ。日持ちがするものばかり入れておいたから何日かは食べれるよ…くれぐれも健康バーやきのみだけで食事しないように!」

「タケシらしいわね…」

 

「う…わかりました!ありがとうございます!」

『カゲ…カゲカゲ!!』

『ピッチュゥ!』

 

 

 

タケシさんの持ってきた紙袋には大きな弁当が入っているようだった。その話を聞いたカスミさんがタケシのやりそうなことだと笑みを浮かべながら、私の手に持っていた紙袋をリュックの中へ入れてくれた。リュックの中はとても重くなったけれど、それでも身体と心は軽いと感じていた。

…それにタケシさんやカスミさんに迷惑をかけてしまったと言う罪悪感はあるけれど、それでもこの優しさを無駄にしないように次のジム戦も頑張ろうと決意したのだ。ヒトカゲやピチューも同じように感じているらしい…タケシさんやカスミさんに向かって大きな声を出して頭を下げた。

 

…でも、その瞬間にポケモンセンターの扉が開き、サクラさんがやって来た。

 

「間に合ったみたいねぇ!ヒナちゃん、これあげるわ」

「本…ですか?」

『カゲ?』

『ピチュ?』

 

「サクラ姉さんこれって何?」

「サ、サクラさん!!まさかあなたと会えるとはッッ!!!シビレビレェェ!!!」

『ケヒヒヒヒッ!』

「お疲れーグレッグル」

『ケッ!』

 

 

タケシさんがサクラさんにいつも通りアタックしようとしてカスミさんが動こうとしたが、先にグレッグルがどくづきをしたためにグレッグルに向かってお疲れと言う。グレッグルはカスミさんの言葉に素っ気なく返事したが、そのままタケシさんを連れて邪魔にならないところに引っぱって行く。私たちはその様子を苦笑しながら見つめていた。見つめていただけなのはこの状況で何か言ってしまったら巻き込まれるかもしれないと思ったからだ。

でも何も心配なくサクラさんがタケシさんに起きた出来事がなかったかのように笑みを浮かべて私に話しかけてきた。

 

 

 

「ふふ、これはね。ジム戦クリアガイドなのよォ!どのジムでどんなタイプになっているのか…戦略についても書かれているから使ってね!」

「あ、ありがとうございます!!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

 

 

 

本は少しだけ古びていたけれど、それでも私たちのために頑張って本を持ってきてくれたことに凄く感謝した。本のページをめくって何が書かれているのかを見る。クリアガイドと言ってもどのポケモンを出せばいいのか…どう指示をすれば勝てるのかは書いていない。ただそのジムでのポケモンのタイプは何なのかについて書かれているだけみたいだった。それでも今の私にとってはありがたいとサクラさんに礼を言い、頭を下げた。

 

カスミさんが私の手に持っている本を見て、何かに気づいたらしく、目を吊り上げて言う。

 

 

「ちょっと待って…ヒナちゃんその本貸してくれる?」

「え、あ、はい…」

『カゲ?』

『ピチュ?』

 

「これって…やっぱり!!ハナダジムがサクラ姉さん達だった頃じゃないの!しかも赤ペンで派手に印つけてる!!」

「だってぇ…私たちもうジムリーダーになる気はないし…ヒナちゃんに知ってもらういい機会だと思ったのよぉ」

「もっと純粋に渡しなさいよ!!」

 

 

「ははは…」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

 

 

ハナダジムのカスミさん達は相変わらずだと思い、苦笑してしまった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「じゃあまた会おう!弁当ちゃんと食べるんだぞ!」

「はい。分かってます!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

「またねヒナちゃん!勝負負けるんじゃないわよ!」

「クリアガイドちゃんと読んでねぇ!」

「サクラ姉さんはまた…」

 

「ハハハ…ありがとうございました!」

『…カゲ!』

『…ピッチュ!』

 

 

カスミさんとサクラさん、そして復活したタケシさんに見送られながらハナダシティを出発した。一晩泊まってもいいのよ?とサクラさんから誘われたが、一刻も早くジム戦をしたいと思っていたのでその誘いを断ることにした。とにかく頑張っていかなければと思う。

 

そして勢いよく出発した私たち。木々が多い場所まで来て周りを見る。ハナダシティで別れたミュウツーが来るかなと思ったのだが見当たらず、私たちはもう少しだけ探そうと声を出した。

 

「ミュウツー!どこにいるの?…人はもういないよー!」

『カゲカゲ!』

『ピッチュゥ!』

 

 

『…そう大きな声出さないでください』

 

「あ、ミュウツー!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

 

ミュウツーが空にいたらしく、空中から私たちに向かって降りてきてくれたため、私たちは笑顔でミュウツーに近づいた。弁当の入っているリュックが少しだけ重いと感じるが、これはタケシさんのお手製弁当だから後でミュウツーたちと一緒に食べようという考えが浮かび上がってきた。近づいたら、ミュウツーは別れた時とは違って物凄く疲れたような表情をしていて……何があったのか気になった。

 

 

「…どうしたのミュウツー?」

『カゲェ?』

『ピッチュゥ?』

 

『…いえ、あるポケモン達ともめただけですので気にしないでください』

 

「ポケモン達…?」

『カゲカゲ?』

『ピッチュ?』

 

『それよりも、ジム戦に行くのでしょう?早くいかないと日が暮れますよ』

 

 

ミュウツーはこれ以上その話をするのは嫌らしい。ジム戦の話になったため、私たちはそうだったと気がつき、まだ日暮れにはなっていないが、野宿する可能性を考えて早く行こうと決心した。サクラさんから貰ったクリアガイドをパラパラとめくり、悩みながらも歩き続ける。

 

 

『…それは?』

「ジムリーダーの情報が載ってるの。でもどうしようかな…次は草タイプジムのエリカさんにしたいって思ってるの…でもヒトカゲは有利になるけどピチューは微妙になるんだよね…」

『カゲカゲ』

『ピッチュゥ…』

 

まだまだ行先は決まらず、どうしようかと悩む。悩んでいるせいで歩み続けていた足は止まり、立ち止まったままクリアガイドをじっと見つめて考えていた。

ハナダジムみたいにヒトカゲは不利だけどピチューは有利だというあのやり方でいこうかと考えてはいるけれど、それでいいのか…もっとトレーナーとして勝利する方法はないのかと悩んでいるのだ。…というより他のジムはまだどこに行っていいのかどうかは決まらない。私たちとバトルしてくれるのかどうかさえ分からないのだから…。

 

でも一番有力なのはエリカさんのジムだし…と悩む。私と一緒にヒトカゲやピチューも首を傾けて悩み、ミュウツーがため息をついて言ってくれた。

 

 

『…それについては後で考えればいいでしょう。まだジム戦が受けられるかどうかわからないのですから』

「あ…そうだったね…タケシさんとカスミさんだったからジム戦受けられたけど…次はどうなんだろう…」

『カゲェ…』

『ピッチュ…』

 

『とにかくここから一番近いジムに行きますよ…奴らが近づいて来そうですからね』

「奴ら?…もしかしてマサラタウンから追手が…!よし行くよ皆!」

『カ、カゲカゲ!』

『ピチュピッチュ!!』

 

 

ミュウツーが後ろを気にしていたため、このままだと連れ戻される可能性を感じた私はすぐに歩み始めた。そしてヒトカゲとピチューも一緒に歩き始め、ミュウツーはサイコキネシスで浮いているからか歩くというより宙に浮いてついて来ているという状態だった。

 

とにかくこれから最後のジム戦…どうなるのかわからないけれど頑張らなければと思う。

 

 

 

 




妹の心境。
 ミュウツーが後ろを気にして歩いているから私たちも気になるけれど…後ろ見ても何もいないから気にしすぎなのかな…?



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