マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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仲間もたまには暴走する。






第百八十八話~兄は忍者と出会う~

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。まだショウヨウシティにたどり着かず、修行をするために一度休憩している途中です。みんなは休憩している中、俺たちはケロマツと一緒に特訓をしようとピカチュウにバトル相手になってもらい疑似バトルをしています。

ピカチュウは俺と長年一緒にいるだけあって自分で技を選択し、自分にできるバトルをしてくる。ある意味、俺とケロマツにとっての最強のバトル相手でもあった。

 

 

 

「ケロマツ、もう一度あわ!」

『ケロケロ!』

 

『ピッカッチュ!』

 

 

「サトシ…」

「セレナ、大丈夫?何だか顔が赤いよ?」

『デネデネ?』

「あ、その…気にしないで?」

「う、うん。分かった…?」

『デネ?』

 

ケロマツのあわがピカチュウに大量に降り注ぐ形で攻撃したというのにピカチュウはでんこうせっかで避けていく。それを見たケロマツはすぐにケロムースでピカチュウの走っていく先に障害となるように投げていく。だがピカチュウはそれも軽々と避けてしまった。さすがにスピードはあのホウエン地方の修行の時に鍛えただけあって速い。ケロマツを見て俺は口を開いて言う。

 

 

「ケロマツ…みずのはどうからのあわだ!」

『ケロ…ケロケロ!』

 

『ピッカ…!?』

 

ケロマツがみずのはどうを放ち、その後ろからあわで攻撃する。つまりみずのはどうにあわをプラスしてかなり大きな攻撃となってピカチュウに直撃しようとしたのだ。でもさすがピカチュウというか…慌てていたというのに、すぐにまたでんこうせっかで避けていったのだ。でもこの重ねた攻撃技はピカチュウには効かないとしても他のポケモンには有効だと分かったから良しとする。

ケロマツは悔しそうにピカチュウを見ていたけれど、まあ最初の旅に出た時からずっと一緒だったピカチュウとカロス地方で出会ったケロマツじゃあスピードも何もかも違うのは仕方ないと思う。とにかく修行あるのみだから頑張っていこうと俺たちは考えた。

 

…その時だった。

 

 

「ふふふ…お主が【サトシ】でござるか!!」

 

「え、なに!?姿が見えないのに声が聞こえるよ!」

『デネ!』

「い、一体何処から話しているのでしょう…!?」

「え、何なの…サトシに何か用ってこと!?」

 

 

「はぁ…ケロマツ、見破れるか?」

『ケロォ…!』

 

 

ピカチュウがすぐに悪党かもしれないと警戒し、シトロンたちの方へ走って行き、守るように周りを見る。その様子を見てシトロンたちは大丈夫だと判断し、敵を探すことにした。俺は面倒だと感じ、ため息をつきながらもケロマツにどこにいるか分かるか?と言う。するとケロマツは周りを慎重に見てケロムースを何の変哲もない木に飛ばした。

 

 

「フッ…さすがでござるな!」

 

「わぁ…忍者だ!!」

『デネ!』

 

「時代錯誤もいいところだなおい…」

『ピィカ…』

『ケロケロ…』

 

木から現れたのは絶対に今の時代見ることはないだろうと考えている忍者だった。しかもござるという語尾がついているという…。ユリーカとデデンネが目を輝かせてその忍者を見るが、俺たちはため息をついてつい独り言を言ってしまった。その声が聞こえたのか、忍者がすぐに顔を赤らめて叫ぶ。

 

 

「う、うるさいでござるよ!忍法木の葉隠れの術!!」

 

 

「え、消えた…!」

「うわぁ凄い凄い本物の忍者みたい!」

『デネデネ!』

「どこに行ったの…というか、何の用なのよ一体…?」

 

「…仕方ねえな…ケロマツ」

『ケロ…!』

 

 

ケロマツに照れ隠しをして慌てて消えてしまった忍者を見つけてもらうために指示をする。ガサガサと煩い場所にいるかもしれないとケロマツがケロムースを飛ばすが、姿の見えないままケロムース返しと叫んでいるのが聞こえてきた。

こういう姿の見えないバトルをするのもたまには面白いだろうとは思うが…何の目的があって俺たちに話しかけてきたのか分からない今、もしものことを考えてすぐにケロマツにみずのはどうを指示する。先程隠れているであろうと感じた場所に向かって放ったら、ケロマツと似たような姿のポケモンが飛び出してきた。

図鑑で確認するとゲコガシラというケロマツの進化形らしく…忍者の手持ちのポケモンなのだろうと分かった。そして忍者がまたゲコガシラの近くに姿を現して、俺たちの近くに降り立つ。

 

 

「お主…サトシであろう?カロス地方でかなり有名だと聞いたでござるよ!」

『ゲロ!』

 

「ちょっと待ちなさい!カロス地方以外でもサトシは有名なのよ!それに物凄くかっこいいしすっごく素敵で魅力で皆から認められていて気絶させて縛って誰にも見つからない秘密の場所に隠して私だけのサトシにしておきたいぐらい嫌になるほどファンがいて凄いトレーナーなんだからね!!」

 

「セレナ落ち着いて!」

『デネ…!』

「ここは黙っていた方が賢明ですよセレナ…!」

『ピィカッチュ…』

「うぅ…!」

 

 

「ぬ…そうであったか…では全地方で有名なサトシよ!拙者と勝負してもらおう!」

『ゲコォ!』

 

「………ああいや全地方はないと思う…けどまあバトルなら受けて立つけどな」

『…ケロ』

 

 

セレナの言った言葉は聞いていないと首を振りながらも…忍者…いや、サンペイという少年忍者は俺のことを知ってどんな強さなのか知りたくなったらしい。拙者のゲコガシラと勝負しろと言ってきたことに俺は苦笑しながらも引き受ける。その間にもいまだに後ろの方ではセレナが騒いでいるようでシトロンとユリーカ…そしてデデンネとピカチュウによって止められていた。ケロマツは一度だけ後ろを見て肩をすくめている。サンペイとゲコガシラは気になっていないようで、この場所は狭いでござるな…向こうでバトルした方が良いでござろう!と張り切っているようだった。

 

 

まあいいかと俺は木々が立っていない小さな広場まで行き、サンペイ達と向き合う。ケロマツが進化形であるゲコガシラと勝負したいのかやる気を出して俺に向かって言ってきたため俺は頷いた。だがサンペイとゲコガシラは不満そうだ。

 

 

「そのケロマツでは力不足では?…話で聞いたところによると進化しているもっと強いポケモンがいるのでござろう?ならその弱そうなケロマツより他のポケモンを選んだ方が良いと思うでござるよ?」

『ゲコ』

 

 

「…その言葉、後で前言撤回させてやるよ」

『ケロォ!!』

 

 

恐らくサンペイは話で聞いたことによって俺が見た目も実力も十分強いポケモンがいるのだろうと考えていたのだろう。でもそんなことはない。ケロマツもサンペイが言っている言葉を否定できるぐらい十分強いのだから…。それに俺たちに楽しいバトルをしたいと気を利かせるようにサンペイの言った言葉はある意味俺たちの逆鱗に触れたようなものだった。

 

だから、仕方がないのだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「えっと…ではこれより、ゲコガシラ対ケロマツの試合を始めさせていただきます…試合開始!」

 

「拙者のゲコガシラの実力…解くと味わうがいいでござるよ!」

『ゲコゲコ!』

 

「ハッ…瞬殺してやるよ。行くぞケロマツ」

『ケロォ!』

 

 

「あのぐらい、私も強くならなくちゃよね…隣に立つために…!」

「セレナ?」

『デネ?』

「ううん何でもない。…ほら応援しよう!」

「うん!…あ、でももう終わっちゃってるみたいだね」

『デネェ…』

「本当だ…さすがサトシね!」

 

「ええー…ゲコガシラ戦闘不能。よって勝者ケロマツとサトシ!」

 

「な、何故でござるか…試合開始と同時にいったい何を…!!」

『ゲ、ゲコォ…』

「お前さ…挑発すんのは良いけど、もうちょっと言葉選ぼうぜ?」

『ケロケロ…』

 

「クッ…」

『ゲロ…』

 

試合開始と同時に物凄いスピードで連続でみずのはどうとあわでゲコガシラの目を眩ました後に物凄い力の入ったはたくで試合終了となった。ちなみにその力の入ったはたくは顔面を地面にめり込ませてしまうほどの威力があって、その強い力のせいで戦闘不能になってしまったのだろうと考える。

まあつまり、俺の宣言通り瞬殺となったのだ。そしてその状況にサンペイは倒れているゲコガシラに近づいて、悔しそうにしていた。シトロンがオレンのみを持ってきてゲコガシラに食べさせ、俺たちはその様子をじっと見つめている。まあ何か文句を言われるか…それとも暴言を叫ぶのか…どっちにしてもケロマツを傷つけるような言葉だったらすぐにいろんな意味で話し合いでもしなくちゃなと思う。

 

でもサンペイは元気になったゲコガシラに大丈夫かと聞いて、そして頷きあっていた。その後、俺を見て…いきなりサンペイもゲコガシラも土下座し始めたのだ。

 

 

「すまなかったでござるサトシ殿!拙者…見た目に騙されていたでござるよ…!」

『ゲコゲコ…!』

「え、いや…とりあえず謝ってるなら分かったから土下座止めろ…!」

『ケロ…』

 

「そうはいかないでござるサトシ殿!拙者、サトシ殿を侮辱してしまった…これは切腹以外の謝罪などなしに等しいでござるよ…!」

『ゲコォ…!』

「おいやめろそれ以上やったらピカチュウの10まんボルト食らわせるからな」

『ピィカ…』

『ケロ…』

「それで良いでござる!サトシ殿。拙者はもっと強くなりたい…拙者には師匠がいるでござるが…サトシ殿には拙者のトレーナーとしての師となってほしいでござるよ!拙者はもっと強くなりたい!!……いやそれよりも、ピカチュウの10まんボルトはまだでござるか…!何ならサトシ殿の直接の攻撃でも…!」

『ゲコォ!』

「あらゆる意味で断る!」

『ピィカ!』

『ケロォ!』

 

 

「サトシに迷惑かけるのは止めなさい!」

「む!サトシ殿に迷惑などかけていないでござるよ!」

『ゲコォ!』

「サトシが困ってると言うことはつまり迷惑かけてるっていう意味でしょ…!それにサトシが困ってるんだから土下座も駄目よ!あと師になるっていう話もね!サトシは私たちと旅をしてるんだから…!」

「すべて却下でござるか…ならば、バトルで勝負をつけるというのはどうでござろうか!?」

『ゲコゲコ!』

「…良いわよ。それもサトシに相応しくなるため…良妻となるため…そのバトル受けて立つわ!」

 

 

 

「…あ、分かった。これって修羅場って言うんだよねお兄ちゃん!」

『デネ?』

「いやこれはそういう意味じゃ…ってユリーカ!どこでそんな言葉知ったの!!?」

 

 

 

「…ピカチュウにケロマツ。こいつら放置して修行の続行でもするか」

『ピィカ…』

『ケロォ…』

 

 

 

 

―――――何とも微妙な空気の中、ケロマツがその後かげぶんしんという技を習得できたことがこの日喜ばしい内容だと思えた。

 

 

 

 

 

 




兄の心境。
 仲間がそろそろ暴走し始めているけど気にするつもりはない。忍者はどうでもいい…。





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