マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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全ては騒動によって始まるものだ。





第百八十六話~妹は水場の怖さを知る~

 

 

「待ちなさい!」

 

「な!?サクラ姉さん!!?」

「あ、サクラさん」

『カゲ?』

『ピチュ?』

 

こんにちは妹のヒナです。これからジム戦をしようとしている時、カスミさんがボールを今にも投げようとしていた時に…カスミさんの姉であるサクラさんが飛び出してきました。一体いつから見ていたんだろうと疑問に思います。

 

サクラさんは私たちを見て何故か自信満々な表情で口を開いて言う。

 

 

 

「私が審判をするわ…ジム戦をすると言うなら審判が必要でしょ?」

 

「…サクラ姉さん。今日は随分とやる気が出てるのね?」

「あら、可愛いヒナちゃんがジム戦をするのよ?気合いが出るってものでしょう?」

「それをいつもジム戦に向けてくれればなぁ…」

「ほらそんなこと言ってないで、始めるわよ!ヒナちゃんがどう話しかければいいのか迷ってるんだから!」

「うぇ!?…あ、いや…」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

「ごめんねヒナちゃん!ほらサクラ姉さん、審判やるならいつもの言って!」

 

「はいはい!」

 

姉妹のちょっとした言い合いを見ていて、私たちはどうすればいいのか戸惑い、いつバトルが始まるのだろうと見ていた。でもそれに気づいたサクラさんがバトルを始めようと言ってくれたためにすぐに周りの雰囲気がジム戦での独特な感じになった。

 

気合いを入れて試合の合図を待つ私達に…サクラさんが一度小さな咳をした後、すぐに両手を上げて口を開く。

 

 

「それでは、ジムリーダーカスミと挑戦者ヒナちゃんの2対2のバトルを始める…試合開始!」

 

「行くわよマイステディ!」

『サニ!』

 

「よし…行くよヒトカゲ!」

『カゲ!』

 

 

みずタイプ専門のジムだからこそ、ヒトカゲにとってかなり大変なバトルになると言うことは分かっていた。それでも私はほのおタイプであるヒトカゲで最初に行こうと思っていたのだ。ヒトカゲならやってくれるだろうという信頼もあったし…この後どうなるのかまだ分からないためにみずタイプの弱点でもあるでんきタイプのピチューは切り札として後で戦ってもらおうと考えていた。それはヒトカゲとピチューも分かっていることだし、ヒトカゲが必ずピチューに余計な苦労をかけないようにバトルで勝つと気合いを入れていたからこそ、私は心臓が爆発してしまうのではないかと思えるほどの緊張があっても負けてしまうと言う不安はなかった。ヒトカゲとピチューが勝とうとしているのに私が不安になってどうすると考えていたからでもある。

 

そして最初にカスミさんが出したのはサニーゴだった。カスミさんのサニーゴは何度もバトルを見たことがあったし、確かバブルこうせんとミラーコートを気をつければいいかなと考える。…いや、もしかしたら他の技を私たちが知らない間に覚えている可能性も高い、とにかく油断はできないのだ。先程気をつけなければいけないミラーコートについてはヒトカゲのスピードなら避けられるだろうし、バブルこうせんは弱点だからという理由から……とにかくサニーゴはじこさいせいもあるのだから本当に油断ができないだろう。

 

 

「サニーゴ、とげキャノン!」

『サニ!』

 

「ヒトカゲ、一度ジャンプしてからひのこ!」

『カゲカゲェ!』

 

 

サニーゴのとげキャノンが不安定な足場に乗っているヒトカゲに向かって放たれた。ヒトカゲはそのとげキャノンをちゃんと見てから避け、そして空中でひのこを放つ。でもカスミさんは自信満々な表情でヒトカゲを指差して叫んだ。

 

 

「そのひのこ全部跳ね返しなさい!サニーゴ、ミラーコート!」

『サニゴォ!』

 

「もう一度高くジャンプしてから避けて!…そのまま接近してからひっかく!!」

『カゲ!』

『サニ…!?』

 

「クッ!…サニーゴ、近づいてきたならそのまま顔面にバブルこうせんしちゃいなさい!」

『サニ…サニィ!』

『カゲッ!?』

 

「ヒトカゲ、頑張って!」

『…カゲェェエ!!!!』

 

 

ヒトカゲが空中にいるために避けられないとカスミさんは考えたのだろう。でもヒトカゲはサニーゴによって2倍の威力になったミラーコートを空中で身体を捻って回転させて避けることに成功しそのまま足場を何度かジャンプしてサニーゴに近づいてひっかくをする。ひっかくについてはタケシさんからほのおタイプの技以外にもできるようになっていた方がいいだろうと教わったひとつである。そして時間がないというのにヒトカゲにすぐに覚えられるだろうとひっかくを教えてくれたのだ。

その後、ひっかくに成功し、ダメージを与えることができたんだけど、近くにいたためにバブルこうせんが直撃する。サニーゴとは違ってかなり大きなダメージを負ったヒトカゲは倒れることなく私の声を聞いて立ち上がってくれた。

 

 

「…ヒトカゲ、もう一度接近できる?」

『カゲ…カゲカゲ!』

「よし…なら接近して!」

『カゲ!』

 

「何やってるのよ?同じようなことやってもまた余計なダメージを与えるだけじゃない」

『サニ?』

 

「同じ負傷は負いませんよ!ヒトカゲ、接近したら…そのままひのこひっかく!」

『カゲカゲ!』

「えっ!?ほのおのパンチ!!?」

『サニゴォ!!!??』

「連続してひのこひっかくよ!」

『カゲカゲ!』

 

「…サニーゴ!…もう一度バブルこうせんよ!」

「避けてヒトカゲ!」

『サニ!』

『カゲェ!』

 

 

ヒトカゲが接近したことにまた同じことの繰り返しだとカスミさんがため息をつく、でもその油断によって隙ができたと言っても構わないだろう。サニーゴに近づいたヒトカゲは私の指示通りにひのことひっかくを使う。ひのこによって炎が放たれ、それに向かってひっかくをする。ほのおがひっかくによって重なり、火を伴ったひっかくとなった…つまりヒトカゲの攻撃した技は【ほのおのひっかく】となったのだ。

その光景を見たカスミさんはほのおのパンチと誤解してしまったらしい。まあ手に炎が燃え盛っている状況はそう判断してもおかしくないだろう。でもこれによってひのこのダメージとひっかくのダメージが相手に蓄積されただろうと感じた。まあほのおとノーマルはサニーゴにはあまり効かないだろうけど、驚愕してしまいヒトカゲから離れることができない間に何度も連続でその技を使っているためにダメージはかなり蓄積されたと思う。

そしてまたバブルこうせんが放たれようとしたためにヒトカゲに向かって離れろと指示する。そのおかげですぐに後ろの方の足場へ戻ったため、何とか攻撃を避けてたと感じた。

 

「クッ…仕方ないわね…サニーゴ、じこさいせい!」

『サニゴォ!』

「させない!ヒトカゲもう一度接近してひのこひっかく連続攻撃!」

『カゲカゲェ!』

『サ、サニィィィイ!!!??』

 

「サニーゴ!?」

 

このままだと不利になると思ったのかもしれない。カスミさんがサニーゴを見て指示を出すのを私はすぐにもう一度攻撃をしてもらおうと口に出して言う。

じこさいせいをしようとしたサニーゴに急接近し、何度もほのおのパンチに似ているひのことひっかくで攻撃していった。そしてそのダメージに、もしかしたら急所に当たった部分があったのかもしれない…サニーゴが大きな鳴き声を上げて後ろの方へ吹っ飛び、プールのふちにぶつかり、水しぶきが上がる。そして浮かび上がった時は目を回していて…戦闘不能になったのだと分かった。

サクラさんがその様子を見てすぐに両手を上げて声を出す。

 

「サニーゴ戦闘不能、よって勝者はヒトカゲよ!」

 

 

「やったねヒトカゲ!」

『カゲカゲ!』

 

「…戻ってサニーゴ…ありがとうゆっくり休んでね…さすがサトシの妹ね、ヒナちゃん!」

 

「はい!」

『カゲ!』

 

「さて…次行くわよ…ギャラドス!」

『ギャォォオオオオオ!!!!!』

 

 

「ギャラドス対ヒトカゲ…試合開始!」

 

 

大きな身体をしたギャラドスがプールに思いっきり入ってきたことによって波が起き、足場が余計に不安定になっていく。ヒトカゲが足場にしがみついて何とか体勢を整えようとするが、そんな隙は逃さないのがカスミさんらしかった。

 

 

「ギャラドス、ハイドロポンプ!!」

『ギャォォォオオオ!!!!』

 

「ジャンプして避けてヒトカゲ!」

『カゲッ…カゲェ!?』

「ヒトカゲ!?」

 

ジャンプしようとしたヒトカゲだったが、波が来たことによって足場がゆらゆらと揺れ、思ったような行動ができず、ハイドロポンプが直撃してしまう。プールの場外へ吹っ飛ばされたヒトカゲはそのまま壁にぶつかり、床に倒れてしまった。

 

 

「…ヒトカゲ戦闘不能。よって勝者ギャラドス」

 

 

「…ありがとうヒトカゲ、本当にありがとう!」

『カゲカゲ…』

 

『ピチュ…ピィッチュ!!』

「うん。頑張ろうねピチュー!」

 

 

ヒトカゲを水に濡れると危ないと判断して持ってきていたボールに戻し、ゆっくりお休みと言ってカスミさんの方を見る。ギャラドスとカスミさんはやる気が出ているようで、早くかかって来いと言う闘志が見えているようだった。

ピチューが私の方を見て大きな声で頑張ると鳴いてくれたため、私は頷いて前を見た。

 

 

「では、ギャラドス対ピチューの試合開始!」

 

 

「頑張るわよピチュー!」

『ピッチュ!』

 

 

 

 






『優れたる操り人の妹よ……成長したな…!』
『ミュウミュゥ!!』
『……………………』

『ミュゥ…?』
『レビィ…』
『…クゥーン』

ヒナ達のバトルをしている光景を姿を消しながらも見ていたミュウ達が、近寄ってくる大きなポケモンを見つけて驚いた。だが、はじまりの樹にいるはずのミュウがそのポケモン…ルギアを隠していたためにヒナたちに見つかることはなかった。
ミュウは何をしてるの?と呆れて同族を見てしまっていたが、はじまりの樹に棲むミュウはただ楽しそうに笑っていただけだった。そのためルギアが首を横に振って言う。


『ああ、私のことは気にするな…それよりもあの者たちは止めなくてもいいのか?』
『ミュゥミュゥ』
『レッビィ…』


『グッ…やるな貴様…!!』
『キューン!!』
『争うだけ無駄というものですよ…だいたい何故あなた方はあの人間を好いているというのですか?あんな攻撃してしまったらすぐに死んでしまいそうな小さな人間相手に…』
『貴様まだそれを言うか!?』
『キューン!!!』



『あれでは優れたる操り人の妹と人間たちに姿を見せてしまうぞ…』
『ミュゥ?』
『ミュゥ…』
『レビィ…』
『クゥーン…』


ヒナ達が気づいていたならば止めていたであろう喧嘩はそろそろエスカレートしてきたようだった。技がヒナ達や建物に当たらないように気をつけて…全力で倒そうとするミュウツーとラティアスに対し、まだよく分かっていないミュウツーが彼らの地雷を踏んで余計殺気立つ光景に…ルギア達は呆れてため息をついていた。…いや、ただ一体のはじまりの樹に棲むミュウだけは面白そうに見てはいたが…。


『…フォォォォオ……止めよう』


『なっきさ………』
『キュゥゥゥ……』
『何をっっ…………』


『悪夢を見れば少しは気が休まるはずだ…』


『いや、休まるどころか悪化するような気がするんだが、気のせいか?』
『ミュゥ?』

『ミューウ』
『レビィ…』
『……クゥーン』

喧嘩を止めようとしたルギアと共にバトルを見学していたポケモン…ダークライがダークホールでミュウツーたちを眠らせたために何とか見つかる不安はなくなった。ラティアスの兄であるラティオスは妹のことを心配していたが、身体に危害はないとのことで今回は仕方がないだろうと妹のことは放っておいているぐらいだった。

だがダークライの言葉にツッコミを入れたルギアに対して…これはまたミュウツーたちが目覚めた時、より騒がしくなって大変になるなとミュウ達は密かに考えていたのだった。



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