兄は兄の、妹は妹の日常を話した。
こんにちは妹のヒナです。久しぶりに兄から連絡があったため私はヒトカゲと一緒に走って電話に出ました。
久々にあったから暴走していないかなと思いましたが、兄の様子はあまり変わっていないようでなによりです。
電話の向こうの兄はいつもと変わらない表情をして、ピカチュウと一緒にいた。
そして妹の隣にひょっこりと現れたヒトカゲに兄は驚き、笑顔で言う。
「ヒナお前、ヒトカゲもらったのか!良かったな!!」
「えっとね。オーキド博士にもらったんじゃないんだ。ミュウからもらった卵から生まれたの」
「へぇ…!ミュウにね。3日前に会ったけど元気にしてるかな…ってそのヒトカゲって色違いか?」
「え、3日前にミュウに会ったの!?…まあお兄ちゃんだから仕方ないか。そうだよ色違い。まあ色違いでもそうじゃなくてもヒトカゲはヒトカゲだけどね」
「そうか。ヒナのことよろしくなヒトカゲ」
『カゲカゲッ!』
『ピカピカッチュウ!!』
ヒトカゲが元気に兄に向かって手を振ると、今度は電話の向こうのピカチュウが笑顔で手を振ってくれる。
その様子に私たち兄妹は癒された。
あ、そういえば聞きたいことがあるのを忘れていた。
「お兄ちゃん、最近事件か何か巻き込まれてた?」
「ん?まあいろいろと巻き込まれているけどどうかしたのか?」
兄は首を小さく傾けて聞いてくる。
なるほど、確かに兄はよく事件に巻き込まれているし、どんな事件があったのかも多すぎて覚えきれないぐらいたくさんだろう。だから私に何があったのか、何の事件が原因なのかを聞いてきたのだ。
私はヒトカゲを撫でつつも、小さく口を開いた。
「…最近よくデオキシスやレックウザが遊びに来るんだ」
「ああラルースシティに遊びに行ったときに会ったな。元気にしてたか?」
「まぁね。元気すぎてよくミュウツーとバトルしてるよ。それでよくフシギダネに怒られてる」
そう、最近また空からホウエン地方の伝説がよく降りてくることがあるのだ。
しかも兄が出会って助けた伝説。ちなみにその伝説たちは私とポケモンたちだけにしか姿を見せない。
まあアンノ―ンは例外なんだけどね…。オーキド博士やケンジさんは伝説が研究所に訪れているということは知らずにいるからちょっと不憫な気もするけど仕方ない。
そして伝説たちはよくオーキド研究所に訪れ、遊んだり話したりバトルをしたりする。
バトルをするのは主にミュウツーだ。ちょっと好戦的なのか、馬鹿なのかはよく分からないけれど、自分以外の伝説を一目見た瞬間に技を放ち喧嘩を売る。
ちなみにコピーのポケモンたちはそんなミュウツーをまるで運動会で頑張っている子供を応援しに来た保護者のように微笑ましく観戦していたりする。
そしてバトルしていると分かったら私とヒトカゲはすぐフシギダネに伝えに行くのだ。デオキシスやレックウザが来る以前はミュウツーが喧嘩を売ってもあまり好戦的でない伝説が多かったため、白熱したバトルにはならずにすんでいたのだがデオキシス達が来てからは違っていた。
…まあミュウはからかって遊んでいたので別なんだけど。
それでつい最近デオキシスやレックウザが来てしまったせいで、ミュウツーが喧嘩を売ることが増え、本気になった2匹がミュウツーにバトルを挑むという状態になってしまった。
それで前に花畑に被害が出てしまったため、マジギレしたベイリーフにぼっこぼこにされていたこともあったりする。
まあつまり、ミュウツーとのバトルが白熱しすぎるせいで周りの被害が尋常じゃないから、フシギダネに止めてもらっているということだ。
「ああさすがフシギダネだな」
『ピカ!』
「…いや、最近だと喧嘩した瞬間に大きなソーラービームを空に打ってるからね。そのせいでマサラタウンの名物になりかけているからね」
『…カゲ』
そう、伝説たちは自分たちの身はちゃんと隠し、マサラタウンに来ていないように見せるため、フシギダネのソーラービームだけが空に上がるようになってしまったのだ。オーキド博士たちは草と水ポケの喧嘩が白熱しているからなのかと考えているだけだし。まさか伝説たちの戦いを止めるためにソーラービームをうっているとは思わないだろう。
私とヒトカゲの微妙な笑みに兄とピカチュウは苦笑していた。
「まあデオキシスやレックウザならともかく、ミュウツーならお前でも止められるだろ?」
「私、お兄ちゃんみたいにスーパーマサラ人してないから止められるわけないでしょ!?」
兄は私のことを何だと思っているんだ。ミュウツーにガチで挑んで勝利している兄と普通の人間である私と比べないでほしいと思う。
ヒトカゲも兄の言葉を信じてしまって私にキラキラした目で期待しているし!
「…ヒトカゲ、本気にしちゃダメだよ。私は普通の人間だからね」
『カゲ?カゲカゲッ』
「お前ならできるって言ってるぞ」
「私にはできません。私は普通の人間ですからね」
『ピィカっチュゥ』
ヒトカゲもピカチュウも私のことを何だと思っているのだろう…。まったく、私は普通のマサラ人だというのに兄の影響が強すぎて私も同類に見られてしまっているではないか。
そんな不機嫌な私に兄はピカチュウの頭を撫でて言う。
「まあ頑張れ?ホウエンリーグ終わったら一度そっちに戻るし、俺も協力するから安心しろよ」
「お兄ちゃんの言うことが全然安心できないんだけど!!?」
兄の協力がもしかしたら最悪な状態で終了する可能性がある。
例えば兄が一緒になってバトルしたりバトルしたりバトルしたり…。あ、これもう駄目だ。
「できれば穏便に済ませたいからね?オーキド博士たちは知らないんだからさ。話し合いとかで終わらせようね?」
「おう、話し合いだな」
「話し合い(物理)にしないでよお兄ちゃん!!!」
ホウエンリーグが終わった後こっちに帰ってくるのは嬉しいけれど、その後伝説たちはどうなるのかはわからない。まあラティ兄妹にとっては嬉しいと思うけれども…。
兄は楽しそうな表情を浮かべた後、私とヒトカゲに向かって手を振る。
「大丈夫だって!じゃあ俺、もう行くから電話切るぜ!」
『ピッカッチュウ!!』
『ミュゥ!』
「え、うんじゃあね…ってミュウ!!?」
『カゲカゲッ!!?』
電話を切る直前、兄とピカチュウの横からミュウの声と姿が見え驚いた。
だがすぐに切れてしまったため目の前の画面は真っ暗だ。
「………と、とりあえずお兄ちゃんはいつものお兄ちゃんだった」
『……カゲェ』
私とヒトカゲは先ほどの様子を見て考えたことを小さく呟いた。
妹の心境。
兄が帰ってくるのが少し怖い。とりあえずミュウツーをなんとかしてみよう。
兄の心境。
ホウエンリーグもその後もやることが増えたな。