マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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まだまだ困難は続く。





第百八十五話~妹はハナダシティに着く~

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと…着いたぁ!!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

「久々に来たが変わってないみたいだな!」

 

 

こんにちは妹のヒナです。ハナダシティにようやくたどり着きました。おつきみやまで操られていたバンギラスたちが回復するのを待って…ご飯を食べてから出発したのです。バンギラスたちについてはおつきみやまで受けた恩を返したいからおつきみやまに残りピィたちの面倒を見るとミュウツーの通訳で知りました。とにかく密漁団などには気をつけてと言ってお別れをし…そしてハナダシティにやって来たのです。

ハナダシティは以前来た時とは何も変わりなく、いつも通り平和だと感じました。これからのジム戦に緊張しつつも、頑張ろうとヒトカゲ達と一緒に気合いを入れる。

 

そんな時にミュウツーがサイコキネシスで宙に浮いてどこかへ行こうとしていた。

 

 

『…では私はしばらく人がいない場所で待っていますね』

「え、ミュウツーどこか行くの?」

『ええ、私はこれでも人に造られたポケモン…人間たちに見られるわけにはいきません。あなたたちは例外ですが、他の人間に見られると騒がれる恐れがあります。ですから私は外で待っていますよ』

 

「外で…ハナダジムのジム戦が終わったら一緒に旅に同行してくれる?」

『カゲ?』

『ピチュ?』

 

『ええ、またこの町を出た時に一緒に行きます。ですので安心してジム戦に挑んでくださいね』

「そっか…分かった。ありがとうねミュウツー!私たち絶対に負けないから!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

「じゃあこれでお別れになるかもしれないのか…ヒナのことよろしく頼むなミュウツー!」

 

『…いえ、感謝されることなど一つもありませんよ』

 

 

ミュウツーは笑みを浮かべて私たちを見ていた。ミュウツーが人間たちに見られて騒がれるつもりはないと私たちといったん別れることになったのだけど、遠くから様子を見ているから大丈夫だということ、人間が見当たらない場所にきたらすぐに合流すると言ってくれたため私たちは礼を言って手を振り、ミュウツーと別れた。

最初に会ったときは人間たちに対して嫌悪感が凄まじかったと言うのに、今はあまり気にしていないようで良かったと思えた。マサラタウンにいるはずであろうミュウツーに会った時はいろんな意味で驚くかなと少しだけ考える。自分が生まれたことを知るマサラタウンのミュウツーは先ほど別れたミュウツーに会ったら驚くか…それとも悲しむかのどちらかかもしれないと感じてしまった。

…その時に、人間のことで嫌悪感を持ってお互いに協力して人間たちと争わずにいてくれたらいいと私はただひたすら願った。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

―――――その後、タケシさんに連れられてポケモンセンターまでやってきた私たちは、ヒトカゲとピチューをボールに戻して回復してもらうために待つ。タケシさんはここで研修を受けるらしく、すぐに白衣に着替えてジョーイさんを手伝っていた。

 

「ジョーイさぁん!!不肖このタケシ、ようやくあなたの前にまい戻ってきッッ!?…シビレビレェエ!!!」

『……ケッ!』

 

 

「ははは…えっとよろしくお願いします」

「は、はい…ヒトカゲとピチューのモンスターボールですね。お預かりします」

「…グッ…あ、まってくださいジョーイさん!」

『ケヒヒヒ…!』

 

 

「さすがタケシさん復活早いなぁ…」

 

 

 

タケシさんの暴走とグレッグルによって止まった行動に私たちは苦笑し、ヒトカゲ達の入っているボールを回復するためにジョーイさんに渡す。タケシさんはすぐに復活してジョーイさんの後を追って走り出し、グレッグルもその後を不気味な笑い声を上げながら追って行った。その様子は兄からシンオウ地方で話を聞いた時のような光景に見えて、思わず苦笑してしまったけれど…でもタケシさんとグレッグルはお互いのことをよく知っている良い相棒同士なんだろうなと思えた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「この道をまっすぐ行けばハナダジムだよ…って言っても確かヒナちゃんは何度か来たことがあるよね?」

「はい。大丈夫です!…あの、タケシさん今までありがとうございました!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

「いや、ヒナちゃん…まだお礼を言うのは早い。…ジム戦が終わったらもう一度ポケモンセンターに来てくれないかな?」

 

「え?はいわかりました!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

 

 

「………頑張れよヒナちゃん。カスミは手強いからな」

 

 

ヒトカゲとピチューを回復させ、元気いっぱいになったので私たちはジム戦するためにポケモンセンターから外に出る。タケシさんも一緒に外に出てある道を指差して教えてくれた。私はまたタケシさんにちゃんとジムバッチを貰ってもう一度会うことを決意して歩き出す。タケシさんには迷惑をかけたと凄く思う…だからこそ、この勝負は負けられないのだ。ヒトカゲやピチューも同じようなことを思っているらしく、気合十分だ。

 

だからこそ、私たちを見送るタケシさんの小さな呟き声は、私たちに届くことはなかった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「よし行くよヒトカゲにピチュー!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

 

 

ハナダジムを見つけ、カスミさんと対戦するために建物の中へ入っていった。

でも中に入っても人がいないかのように静寂で…もしかして留守なのかと私たちは焦る。このままだとタケシさんに良い報告ができないと考え、どうしようかとヒトカゲやピチューを見た時だった。

 

 

「あら?ヒナちゃんじゃない!どうしてここに…」

「あ、カスミさん!良かったぁ…!!」

『カゲェ…!』

『ピッチュゥ…!』

 

「どうしたのよ一体…」

「えっと…お願いしますジム戦させてください!!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

「え…ちょっと待って!…ヒナちゃん。どういうことなのか説明してくれるかしら?」

 

「う…実は――――――」

 

 

カスミさんが部屋から出てきて私たちがいたことに驚いていたらしい。そして私たちはまた顔を見合わせてジム戦をしてくれとカスミさんに頼む。カスミさんは私たちが突然頭を下げたことに驚き、事情を知りたいと険しい表情を浮かべながらも言ってきた。

おそらくここではぐらかしてしまったらまたニビジムで起きた時のように受けられなくなる可能性もあったため、仕方がないと考えて話した。ジムバッチを3つ集めるために旅をしているということ、ある子供たちと勝負すると約束していることを――――――。

 

カスミさんは頭を抱えて、微妙そうな表情を浮かべていた。

 

 

「ああ…【あいつ】が電話してきたのはそういう……」

「あの、どうかしたんですか?あいつって…?」

『カゲ?』

『ピチュ?』

 

「いやなんでもないわ…ジム戦ね…良いわよヒナちゃん!受けてあげる!」

 

「本当ですか!ありがとうございます!!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

「ただし!トレーナーになった時にまた私と勝負することが条件よ!ニビジムでも同じように約束したなら守れるでしょ?」

「もちろんです!」

『カゲェェ!』

『ピッチュゥ!』

 

 

カスミさんは強気な目で私たちに笑みを浮かべて言い、勝負を受けてくれると言ってくれた。その言葉に私たちは安心して、もう一度頭を下げてありがとうございますと礼を言う。そしてカスミさんがついて来てと言って、いつもハナダジムの水中ショーとなっている場所まで案内してくれた。プールまでやってきたカスミさんは、あるスイッチを押す。そのスイッチが押されたと思ったらプールのような水中に足場がところどころでできていた。でも水が揺れるごとにその足場も揺れているため不安定になっているのだろう。それでも足場があることは私たちにとって嬉しいと思えた。カスミさんはスイッチを押したことによって水のフィールドであるバトル場となったプールの、奥の方へ歩いていき私の方を振り向き、指差して大きな声で言う。

 

 

 

「さあヒナちゃん!私と勝負したいなら来なさい!全力でバトルしましょう!!」

 

 

「はい!!」

『カゲ!』

『ピッチュ!』

 

 

 

私たちは前へ歩いていき、カスミさんとお互いに向き合い、気合を入れてから口を開いた。それはジム戦開始の合図でもあり、ハナダジムのジムリーダーであるカスミさんと勝負することにやる気を出すための行動でもあった。

 

 

 

「私たちは絶対に勝ちます…お願いします!」

『カゲ!』

『ピッチュゥ!』

 

 

 

 

 

 






一方その頃―――――――。


『初めましてというべきか…』
『…ミュゥ』
『レビィ…』
『キューン』
『クゥーン…』

『ああ、あの山にいた…そうですね、初めまして』

ハナダジムのバトルが一望できる場所で姿を隠して見守っていたイッシュ地方から来たミュウツーは、マサラタウンにいるはずの怒り心頭なミュウツーと苦笑しているミュウ達に出会った。ラティ兄妹がいるのはまあヒナが心配だからと言っておくとしよう。ちなみにたまにレックウザやルギア、デオキシスもヒナが心配でたまに様子を見に来ることは会った。それでも目立つと言うことや姿を消すのが一苦労という理由で本当にたまにしか来ることはできないのだが…。


『それで?一体私に何の用があってきたんでしょう?』
『それを貴様が言うか!!?』

『ミュゥ…』
『レビィ…』
『キューン!』
『クゥーン』

ミュウツーは怒り心頭だった。何故かと言うと、ただ単にヒナと旅をしているということがあるからだ。自分たちにはできないことを同族があっけなく…簡単に手にしているということ…それがただ許せなかった。しかもこの目の前にいるミュウツーはその貴重な時間を実感できていないらしいと分かってしまったのだ。いずれ分かるであろうヒナの一般的な人間とは違った温かさを…それを知るまでに一体いつになるのだろうかと考え、この貴重な時間を無駄にしていることに苛立っているのだ。
ミュウ達はミュウツーの言葉に苦笑していたが止めようとはしていない、その時点でミュウツーと同じ気持ちなのだと分かる。もちろんラティアスも怒鳴っているミュウツーと同じように羨ましい!と叫んでいたが、ラティオスに落ち着けと言われて深呼吸していたりする。

でもヒナと行動するミュウツーから見たら彼らの感情に意味が分からないと考えていた。

ミュウツーはただヒナのことに興味をもって近づいただけだ。それが旅をするという行動につながっただけで、何故そんなにも羨ましいと言う目で睨まれなければならないのかが分からない。
だからこそ、ミュウツーは首を傾けて言う。

『そんなにもあの人間と旅をしたいのならばすればいいじゃないですか…私はあなたたちを止める気はありませんよ』


『貴様…俺たちにはできないと言うことを知ってて言うか!?』
『キューン!!!』
『ですから何故そこで睨まれなければならないのです?あなたたちの気持ちが理解できない…』

『気持ちが理解できないのは俺も一緒だ同族よ』
『はぁ…』

このままでは埒が明かないと思ったのだろう。このミュウツーがヒナとの貴重な時間を無駄にしてしまうと言うことや、ただ旅に同行するだけでヒナたちを必死に守ろうとはしないかもしれない。そしてそんな状況でトラブルに巻き込まれたらどうなる?…そう考え、ミュウツーとラティアスはただ無意識のうちに、普通なら言わないであろう言葉を口にしていた。



『…だからこそ…話 し 合 い で も し よ う か ?』
『 キ ュ ー ン !!』


『ミュゥ…』
『レッビィ…』
『クゥーン…』


ミュウとセレビィ、ラティオスは同じ心境でその光景を見ていた。主に羨ましいと嫉妬し、激怒しているミュウツーとラティアスを見て……



――――――ああ、サトシに似たな……と。




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