マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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兄はいろんな意味で考え、行動する――――――。






第百八十四話~兄達は野宿した~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。ショウヨウシティに向かって歩いているんですがなかなかたどり着きません。

そして歩いているうちに夕方になり、ポケモンセンターも見えてこないため、俺たちはここで野宿をすることになった。カロス地方でシトロンたちと野宿をするのは初めてで、トラブルが起きなければいいと思うが…まあ無理か…。

 

 

 

「そろそろ日が暮れますし…ここらへんで野宿にしませんか?」

「ああそうだな。川も近くにあるし…この場所にテントでも張るか!」

『ピッカ!』

「あ、じゃあ私は机と椅子の準備するね!ユリーカも手伝ってくれる?」

「うん任せて!」

『デネデネ!』

 

 

野宿についてはセレナたちが張り切って準備を進めていった。テントはシトロンが持っているものを借りて、寝袋はいつも使っているものを出しシトロンとユリーカが持っていたテントに入れてもらうことになった。

…そして食事についてはシトロンが作ることになった。いつもポケモンセンターの食事しかしてないから料理ができるのか不安になったが、シトロンは料理については自信があるようで笑みを浮かべていた。

そしてポケモンたちを出してポケモンフーズをそれぞれのタイプごとに出していく。ピカチュウとボールから出たケロマツ、そしてデデンネやホルビーが一緒にきのみを集めてくれた。それに礼を言ってシトロンに料理の材料として使ってもらうことにする。

 

ポケモンセンターの料理は美味しいけれど、…さて、カロス地方のシトロンが作る料理はどうかなと楽しみになった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「お、美味いな!」

「そうね!凄いわシトロン!お店にも出せそう!」

「いえいえ…料理は発明を作るのと同じで設計図から書くようにレシピを見て作りましたから!」

「お兄ちゃんの料理大好き!」

 

ポケモンたちがそれぞれ特性フーズを食べている頃、俺たちもシトロンの作った料理を食べていく。料理の味はやはり美味しく、旅でまた美味しい料理が作れるやつが仲間になって良かったと心から思えたぐらいだ。

そして食べ終わった後、セレナが昨日ポケモンセンターで作ったというマカロンをデザートにしようと言ってきた。シトロンが温かい紅茶を作って俺たちに分け、さあ食べようとなった時に中身は空っぽで…ハリマロンが隠れてすべて食べていることに気づいた。

 

 

「ああああ最後のマカロンがぁぁ!!!」

「…あーあー…マカロン食べたかったな」

「ほらシトロンもユリーカも気にしない気にしない!またポケモンセンターに着いたらちゃんと作るからね?」

「本当!ありがとうセレナ!」

「セレナの言うとおりだ。シトロンも気にすんなよ?」

「うぅ…はい……」

 

 

ハリマロンがお腹いっぱいになってすべて食べてしまったことにシトロンは落ち込んでいた。…まあポケモンのやったことは全てトレーナーの責任になるからシトロンもこれではいけないと思ったのだろう。でも最初に出会った時からハリマロンは食べることに執着しているみたいだし、マカロンが好物のような感じみたいだから仕方ないと思う。ポケモンは全て性格が違うのだからハリマロンのように食べることが好きなポケモンもたくさんいる…まあでも勝手に食べてしまうという事情についてはシトロンのトレーナーとしてのハリマロン育成に力を入れるべき問題だろう。それに俺たちの食べ物ならともかく、まったく知らない人から奪った食べ物を食べると言うことになったら俺もハリマロンの育成に手を貸すつもりではある。知らない人の食べ物を勝手に食べている時点でそれは犯罪に近いことになってしまうということと問題が大きくなるからだ。まあでもシトロンはミアレシティのジムリーダーだし…俺が何か言わなくてもちゃんとやっていくと思ったからこそ今の時点で手を貸すつもりはなかった。

 

 

「…あ、そうだ!サトシ、ポケモンバトルをしませんか?」

「ポケモンバトル…まあ良いけど?」

 

 

シトロンがハリマロンの食べ過ぎて大きくなったお腹を見て軽く運動した方がいいと言うこと、トレーナーとしての言うことを聞いて、食べ過ぎたからこうなったんだぞと分からせるためにバトルしたいらしい。

まあそれならいいかとケロマツを見た。ケロマツはお腹が膨らんでいるハリマロンとバトルするということが分かったのか、少しだけ苦笑しながらも頷いてくれた。ただしハリマロンはシトロンの言葉に嫌そうに表情を歪め、仕方がないかと重そうな身体をゆっくりと立ち上がらせた。

 

 

「…ええっと…ではハリマロン対ケロマツのバトルを開始する。バトル開始!」

 

 

「…よしケロマツ、あわだ!」

『ケロケロ!』

 

「躱せ!」

『リィ…リィマァァア!!?』

 

 

「…あれ?ハリマロン…いつもと違って素早さがない?」

「食べ過ぎて動きが鈍くなってるんだよ…見てあのお腹」

『デネェ…』

『ピィカ…』

 

 

ケロマツによるあわ攻撃は通常の速さであったらハリマロンは躱せるはずだった。でもハリマロンは動こうとしたが全然動けず、そのままあわに直撃してしまう。ケロマツがそんなハリマロンを見て呆れた表情でため息をついた。普通のバトルだったらその素早さは致命的だろうと考えているらしい…まあ食べ過ぎる大食漢はマサラタウンにいる俺のポケモンにもいるから大丈夫だろう。…でもあいつ食べるのとは真逆で物凄く素早いんだよな…泳げるし……。その問題についてはシトロンによるハリマロンの育成にかかっていることだろうと思った。

そしてシトロンが頑張れと応援しながらもハリマロンにたいあたりの攻撃を指示する。でもたいあたりしようと動くスピードは遅く、普通にケロマツが避けそうなのだが、あえて避けずに直前まで待っていた。そしてすぐにジャンプして俺の方を見る。このバトルを早く終わらせたいと言う感情が表情に表れていたからだ。俺は苦笑しつつも口を開いてケロマツに向かって指示をした。

 

 

「…ケロマツ、はたく!」

『ケロ!』

 

「避けてください!」

『リ…リィマァァ!!!』

 

「えと…ハリマロン戦闘不能。よって勝者ケロマツ!」

 

「とりあえずお疲れケロマツ」

『ケロケロ…』

 

「うわぁ…」

『デネェ…』

『ピィカ…』

 

 

「…うぅ……ジムリーダーとしてこの負け方は面目もありませんね」

『リ、リィマァ…』

 

 

ハリマロンを回復させるためにオレンのみを食べさせた。シトロンはオレンのみを食べさせるよりもまず先にきずぐすりを使おうとしたんだが、ハリマロンがそれを拒否したために仕方なくきのみを使用した。でもこのままだと本当に肥えると思うんだが…シトロンはハリマロンに対して甘いと俺たちは苦笑する。

 

そしてユリーカがそんなシトロンの前にやってきて、今ならデデンネで勝てる!と張り切っているようだった。デデンネはたまにピカチュウに電気技を教えてもらったりしていたが、特にバトルに関する修行などはしてはいない。だからユリーカと合わせてまだまだ初心者もいいところなんだが…これで負けたらハリマロン凄く落ち込むんじゃねえかとピカチュウたちを見る。ピカチュウたちは俺の隣でくつろぎながらもハリマロンたちのバトルを観戦していた。

 

 

「…これどうなると思う?」

『ピカピカ…』

『ケロォ…』

『ヤッコォ…』

 

「ああやっぱりそう思うか…」

 

 

ピカチュウたちの反応は全員がハリマロンを見て苦笑していた。ついでに言うとセレナやフォッコも微妙そうだ。つまり、俺たちは皆これはハリマロンが負けるだろうという考えがあったのだ。まあすばやさも何もないハリマロンは眠っているカビゴンよりもすぐに倒せてしまうと感じるのは仕方ないだろう。

セレナが先程俺たちのバトルでやったときのようにシトロンとユリーカの間に立って、審判をする。

 

 

 

「ではこれより、ハリマロン対デデンネのバトルを始めます…バトル開始!」

 

 

「こっちから行きますよ!たいあたりです!」

『リィマ!!…リ、リィマァァアア!!!!??』

「ああ、ハリマロン!!」

 

 

「今がチャーンス!デデンネでんきショック!!」

『デネ!デネェェ!!』

 

 

『リィマァアア…!!』

 

 

「あっと…ハリマロン戦闘不能、よって勝者デデンネ」

 

 

「ああこうなったか…」

『ピィカッチュ…』

『ケロケロ…』

『ヤッコォ…』

 

 

デデンネのでんきショックを直撃してしまったハリマロンはそのまま起き上がることができず目を回してしまう。これを見てシトロンがため息をつき、ユリーカとデデンネは勝利したことに喜び合っていた。

その後、シトロンがハリマロンのためのダイエット用の機械を作ると言って徹夜するらしく、先に寝ていてくれと俺たちに向かって叫んでいた。嫌そうなハリマロンはともかく、シトロンはものすごくやる気があるようだ。俺たちは仕方がないとケロマツたちをボールに戻し、テントへ向かった。

 

「あ…サトシ」

「ん?どうしたセレナ」

 

「あの…おやすみなさい」

「…おう、おやすみ」

 

 

セレナがユリーカと一緒に寝るテントに行こうとしたが俺の近くにやってきて挨拶をする。いつも言っている言葉だったが、セレナはどこかいつもとは違っていて…その声に俺は少しだけ戸惑うがすぐに口を開いておやすみという。するとセレナは満足したのかすぐにユリーカが眠るために準備しているであろうテントの中へ入っていった。

 

 

『ピカピ?』

「ああいや、なんでもない」

 

 

ピカチュウはもう寝るために俺用の寝袋をテントの中で出して待っていてくれたようだ。その行動にありがとうと言ってピカチュウの頭を撫でて、すぐにテントの中へ入り寝るために電気を消した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

――――――物凄い騒音で目が覚めた俺たちはすぐにテントから外へ出る。すると見えてきたのはシトロンがいつものように機械を発明して、実験しようとしたが失敗し爆発したという状況だった。服を着替え、テントを片づけてから、その機械の残骸を森の中でゴミにならぬように拾い上げて集める俺たちだったが、シトロンが周りを見て何かに気づき焦ったように叫んだ。

 

 

「ハ、ハリマロンがいません!!」

 

「確かにいないな…いやもしかしたら爆発に驚いてどこかへ行った可能性もあるか…?」

「きっと近くにいるはずよね…ハリマロン!」

「おーいハリマロン出ておいでよ!」

『デネデネ!』

『ピィカァ!』

 

 

周りを探したが見つからず、テントを張っていた場所を中心に周りを探すことにした。でも草木をかき分けても、ハリマロンが入れそうな穴を覗き込んでも見つからない。かなり探したが見つからず、これは遠くにいる可能性が高いと分かってしまい、シトロンが落ち込んだろうにうめき声をあげた。

 

 

「ああ…僕のせいでしょうか…ハリマロンに無理やりバトルとかさせてしまったから…!」

「そうだったらあの時最初っからシトロンについてくることなんてなかっただろ?というかハリマロンの入っていたボールもシトロンが持っているんだし大丈夫だって」

『ピカピカ!』

「えっと…確かサトシが前に説明したことだっけ?トレーナーが嫌になったら自分のボールを壊して逃げるポケモンがいるってこと」

「ツタージャって言うんだよね!」

『デネ!』

「ああそうだぜ。でもツタージャはそのトレーナーのことを認めればボールを壊そうとしない…だからハリマロンもただ道に迷っただけでちゃんとどこかにいるさ」

 

「…そう、ですね」

 

シトロンはハリマロンがいつも入っているボールを見て、考えるような…落ち込んでいるような表情になって俺たちの言葉に頷いた。もしも嫌ならばボールを叩き壊して逃げればいいのだ。でもハリマロンはただ姿を見せないと言うだけなのだから、おそらくどこか迷っているのだろうと考える。それにハリマロンがシトロンを嫌うことなどありえないのだから大丈夫だと俺とピカチュウは自信を持って笑みを浮かべた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

その後、俺たちが別れてハリマロンを探していたのだけれど、シトロンが妙に深刻そうな表情で戻ってきて、あのままでいいと諦めたようだった。その表情と声に俺たちはお互い顔を見てすぐに反論する。ハリマロンがシトロンから離れると直接言ったなら理解できるが、その様子だとまだシトロンには納得しきれてない部分があって、ただハリマロンに何かがあったと分かったからだ。

何があったのか話を詳しく聞こうとすると大きな黒い煙と爆発音が聞こえ…そしてハリマロンの悲鳴が聞こえてきた。シトロンがすぐにハリマロンの声がした方へ走って行き、俺たちもその後を追う。

 

 

―――――そして見えてきたのはある家で老人たちがバトルしている様子だった。1人はシトロンのハリマロンでバトルをしていて、もう1人はマフォクシーを出して勝負していたのだ。マフォクシーはほのおタイプだと分かり、このままだとくさタイプであるハリマロンは不利になるだろうと感じた。でもシトロンは顔を俯け、何か悩んでいるように止めに入ろうとしない。

 

 

「何で止めようとしないんだシトロン!」

「ぼ、僕は…ハリマロンに嫌われてしまった僕じゃ……」

「そんなこと言ってる場合なのお兄ちゃん!!?」

 

「シトロン!嫌われたからって諦めるの!?自分がそんなに悩んで…悔しそうに拳を握って止めに行きたいって思ってるのに勝手に嫌われたからって何もしないつもりなの!?好きならちゃんと行動して…今自分が一番やるべきことをしなさい!!」

「…セレナ…ですが僕は…」

「そんなこと言ってていいのか?そろそろやばいみたいだぜ?」

 

「え…ッ!?」

 

 

セレナが力強く説得しようとして力説する。でもシトロンはその言葉にまだ戸惑っているのか行動しようとしない。ユリーカもそんなシトロンに焦り…俺はただその光景を見つめていた。シトロンがハリマロンの幸せのために手放すと言うのなら俺はその顔を殴ろうかと思ったんだけど、でもハリマロンをマフォクシーから助けようと動こうとしたいけれど迷っている様子を見て、このままでは時間の無駄だと言うことと、仕方がないと考えため息をついてシトロンの一歩を押そうと口を開く。

 

俺がシトロンに向かって言った言葉にマフォクシーとハリマロンの光景を見たシトロンが走りだし、ハリマロンをかえんほうしゃから救う。突然現れたシトロンに驚く老人たちだったが、俺たちも出てきて説明した。すると納得したらしいハリマロンを戦わせていた老人はごめんなさいねと謝っていて…シトロンとハリマロンは大丈夫だと言う。

 

 

――――――そしてその後、マフォクシーを出していた老人がわしの勝ちでいいな?と言っているのを見て、何か考えたのかシトロンに向かって叫ぶハリマロンにバトルがしたいんだと分かって、謝ってきた老人の代わりにバトルすることになった。

 

まあ結果的にはバトルしたことによって素早さを取り戻し、身体も軽くなったみたいだから良かったんじゃないかと思う。シトロンがジムリーダーとしてちょっとだけ問題のあるハリマロンをこの後どう育てていくのか少しだけ興味を持ったものだ。

 

 

 

 

 




兄の心境。
 ヒナ達は今頃何してるんだろうな…。





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