目指す場所は次のジム――――――。
こんにちは妹のヒナです。無事にニビシティから出発し、タケシさんと共におつきみやまにいます。その間に何度か野宿したのですが、久しぶりに栄養バー以外の料理を食べたと感じました。…というか栄養バーって料理じゃないよねタケシさんの料理の方が【料理】って言えるよねとよく分からない複雑な感情を心の中で感じながらも、何度もタケシさんの作る料理を食べておかわりした。ルカリオの料理も美味しいけれど、タケシさんの料理もまた違った意味で美味しいと感じた。ハナダシティまでの間の旅だけれど、またいつかタケシさんにお礼を言わなければと思う。
そして私たちは何度目かの野宿をし終えた後の清々しい朝を迎えながら歩いていた。
――――そういえばおつきみやまで歩いている私達の目標はハナダシティのジムなんですが…なんだか様子がおかしいような…。
『ピィ…!』
『ピッピィ…!』
「ど、どうしたのキミたち?」
『カゲ?』
『ピチュ?』
「何かあったみたいだな…」
ピィやピッピが私たちの目の前にやってきて、何やら急いでどこかへ来てほしいと服を引っぱり私達より前に歩いていこうとする。普通ピィやピッピは人間たちの目の前に現れることはないけれど…ああ、何度もこのおつきみやまに来ていたタケシさんが一緒だから警戒することなく姿を見せたのかなと思った。でもそれよりもピィやピッピ達の慌てた様子が気になり、私たちはお互いに顔を見合わせて、ピィたちに案内されながらも走りだした。
・・・・・・・・・・・・・
「…これは?!」
「何で…酷い…!」
『カゲ…!』
『ピッチュ…!』
『ピ…ィ…』
『ピッ…ピィ…』
「ッ…すぐに手当てを開始しよう…ヒナちゃん達も手伝ってくれ!」
「あ…はい!」
『カゲ!』
『ピッチュ!』
私たちはピィとピッピの後を追って走り出し…そして見えてきたのはピィやピッピ…そしてピクシーたちが傷だらけになって倒れている光景だった。その光景は酷く悲惨で…思わず目を覆うぐらいの酷い傷だらけなポケモンたちが倒れているという状況だった。
タケシさんが急いでピィとピッピ、ピクシーたちの怪我を治そうとしていて…私たちも急いでタケシさんの手伝いをし始めた。水が必要だと分かると先程案内してくれた怪我をしていないピィたちに案内してもらって水をとってきたり、オレンのみが大量に必要だと分かるとウソッキーたちを出したタケシさんに一緒に探してきてくれないかと頼まれ、オレンのみを収穫しに行くことになってたくさん採って戻ったりした。
そうしていくうちに夜になったのだけれど、ピィやピッピやピクシーたちはまだ元気を取り戻していなかった。でも十分眠って朝になればすぐに良くなるとタケシさんが言ってくれたため、これで大丈夫だと私たちは安堵した。
「でもどうしてピィたちが怪我をしたんだろう…?」
『カゲ?』
『ピチュゥ…?』
「おそらくポケモンにやられたんだろうな。ピィたちの怪我はどれもポケモンの技によってできたものだ」
「それって…」
『………カゲェ』
『………ピチュ』
嫌な予感がした。ピィたちはポケモンの技に当たって怪我を負ったということと、その重傷者が大勢いたことに驚いたからだ。ポケモンと言っても…ここまで酷く暴れるのはおつきみやまにはいないと感じていたのだろう。タケシさんが険しい表情で考え事をしていて…私たちも何があったんだろうと考えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
『ピィ…!』
『ピッピィ!』
『ピックシィ!』
「あ、良かった…!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
「怪我は回復していて体力も問題はなし…っと。これで大丈夫だろうな!」
ピィやピッピ、そしてピクシーたちは朝の日差しとともに身体を跳ねさせて元気よく私たちに挨拶してくれた。その様子を見て私たちは笑みを浮かべ、良かったと安堵する。タケシさんが栄養満点の朝食を作り、ピィたちの分も作ってくれたために騒がしいけれど微笑ましい食事になるだろうと…そう思っていた。
『ガルゥウゥウア!!!』
「え…バンギラス?!」
『カゲ!?』
『ピチュ?』
「何でこんなところに…いやそれよりもバンギラスの首に何かついてる…!」
『ピ…ピィ…』
『…ピッピィ…』
おつきみやまでは絶対に見かけないはずのバンギラスが現れ、私たちは驚いた。タケシさんはバンギラスがいたことに驚いたが、それよりも首元に何かが巻き付いているのを見つけてそれに険しい表情を浮かべている。そしてグレッグルを出して指示を出そうとする。私たちはピィやピッピ、ピクシーたちを後ろに隠してヒトカゲとピチューに攻撃の余波をすべて防ぐようにしてもらう。
「グレッグル!あの首元に向かってかわらわり!」
『ケヒヒッ!』
『ガルゥゥウウウアアア!!!!!』
「うわっ…ヒトカゲ、ひのこ!ピチューは10まんボルトで防いで!」
『カゲカゲ!』
『ピッチュゥ!』
『ピィ…!』
『ピッピィ!』
『ピィクシ…!』
グレッグルが首元を狙ってバンギラスに近づくが、バンギラスが暴れ…いきなりグレッグルに向かってはかいこうせんを放つ。それを避けたグレッグルだったがはかいこうせんは周りを巻き込んでの破壊力をもっていた。バンギラスの放つはかいこうせんがグレッグルが躱したことによって、私たちに向かってきたためにヒトカゲとピチューに攻撃を指示する。それを聞いたピィやピッピ、ピクシーたちが一緒になって攻撃してくれたことによってはかいこうせんを防ぐことができた。だがまだバンギラスは暴れている。
またそれを防ごうとグレッグルに指示を出そうとしたタケシさんだったが、その横から大きな炎がやってきたためにすぐに躱す。
「誰だ…!」
『…ケッ』
「え、炎…ってことはまたポケモン…?」
『カゲ?』
『ピチュ?』
『ピィ…』
『ピッピィ…』
『ピィクシィ…』
「…ハッ!悪いがお前らには要はねえんだよ!さっさとそのピィたちをよこせ…!」
『ガルゥウアアアア!』
『グルゥゥアアア!!!!』
「人間…!?…あれ、ヘルガーの首元にもバンギラスと同じものがある…!」
「お前だったのか!バンギラスやヘルガ―を無理やり操っているのは…!」
「何だ…ばれてんのか…じゃあお前らも潰しとかなくちゃだな!」
『ガルゥゥアアアアア!!!』
『グルゥゥァアアア!!!』
そして見たのは、悪巧みをしようとしている…とても悪い笑みを浮かばせていた人間だった。タケシさんが険しい表情でその人間に向かって怒鳴り、私たちもその人間に攻撃を仕掛けられてもすぐに防げるように体勢を整える。だが、人間…悪党はまずタケシさんを狙って攻撃してきた。グレッグルがそれに反応してどくづきで防ごうと動く。そしてタケシさんが取り出したボールを投げてすぐに指示を出そうと口を開いた。
「出てきてくれウソッキー!…グレッグル、もう一度首元を狙えるか!?ウソッキーもグレッグルの援護だ!」
『ケヒヒ!』
『ウソッキィ!』
『ガルゥゥァァア…!?』
『グルゥゥアアア…!?』
バンギラスとヘルガーの首元を狙うためにグレッグルとウソッキーが近づく。バンギラスがまたはかいこうせんとヘルガーのかえんほうしゃでグレッグル達を狙ってきたが、ウソッキーのアームハンマーですべて叩き落とし、グレッグルがかわらわりで首元の装置を叩き壊す。その強い衝撃により支配から解放されたバンギラスとヘルガーが気絶し、戦闘不能にすることができた。私たちは何とか操った装置を壊したことに安堵し、悪党を睨みつける。
だが、それを見た悪党は大きく笑った。
「何を笑ってるんだ…!」
「ハハハ!!バンギラスやヘルガー以外のポケモンを操ってないと言う根拠はあったか!」
「何…!?」
「ちょ…ピィたちの後ろからポケモン…!?」
『ピィ!?』
『ピッピィ!?』
『ピィクシィ…!?』
「危ない…!」
『カゲ!』
『ピチュ!』
「ヒナちゃん!?」
ピィやピッピ、そしてピクシーの後ろの地面からサンドパンが姿を現したために私たちは驚愕する。その首にはやはりバンギラスたちと同じようなものがあり、操られているのだと分かった。だがピィたちに向かってきりさくをしようとしてきたために私たちは急いでピィたちの方へと向かい、ヒトカゲとピチューの技でその攻撃を防ごうとした。だがその攻撃はしなくても良かったみたいだ。
大きなはどうだんがサンドパンに襲いかかり、その衝撃で首元にあった装置が壊れた。はどうだんということはもしかしてルカリオ達が来ているのかと思ったのだけれど、周りを見てもおらず、波動でここまで来たのかなと焦ったのに違っているようで…じゃあ何ではどうだんがいきなり来たのだろうと疑問に思った。だがそうしているうちにタケシさんたちは悪党を捕まえようとしていた。
「クッ…ちくしょう!覚えてろよ!!」
「待て!」
『ケッ…!』
『ウソッキィ…!』
――――結局、その悪党は山でも使えるというバイクに乗って逃げていってしまい…タケシさん達は悪党を逃がしたことに心底悔しがっていた。だがすぐに私たちの方へとやってきて、怪我はないのか確認してくる。
「怪我はないか!?」
「う、うん…大丈夫」
『カゲカゲ』
『ピチュピチュ』
「そうか、良かった。…そういえばさっきのはどうだんは一体…」
「うんそれ…私たちも気になってたの…」
『カゲ…』
『ピチュ…』
『…私が攻撃しました』
「ミュウツー!?…にしては声が違うような……」
「あ、もしかしてイッシュ地方で会ったミュウツー!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
『その通りです…お久しぶりですね』
「…ヒナちゃん…知っているのか?」
「うん。えっと…実はね―――――」
タケシさんに紹介したミュウツーについてイッシュ地方の何処であったのか説明し、マサラタウンに来てほしいと兄たちと話していたことも言う。その話を聞いたタケシさんは納得し、ミュウツーに向かって笑みを浮かべた。
「じゃあミュウツーは、マサラタウンに向かっていく途中だったということか?」
『…ええ、そのつもりでしたが…すこし予定を変えようかと思ってます』
「どういうこと?」
『カゲ?』
『ピチュ?』
『あなたたちについて行きます。特に危なっかしいあなたを見ていると放ってはおけませんからね』
「へ…いいの!?」
『カゲカ!?』
『ピチュ!?』
「それはありがたい!俺はハナダシティまでしか一緒にいることはできないからな…だからミュウツーがついて来てくれると助かるよ!」
『…いえ、勘違いしないでほしい…ただあの同族を見ていると少々その人間に興味を持つのは当然というだけですよ』
「ああ…なるほどな」
「えっとどういうこと?」
『カゲェ?』
『ピチュ?』
ミュウツーはちらりと後ろの方を見てから私たちに向かって言う。その言葉が分かっているのはタケシさんだけらしく…私たちはどういうことなのかと首を傾けた。だがそれを説明する気はないのかタケシさんが誤魔化すように笑みを浮かべて言う。
「いや気にしなくてもいいよヒナちゃん。…そうだ、幸いバンギラスたちの攻撃は俺たちの朝食に当たらなかったし…バンギラスたちの怪我を見てからミュウツーも一緒に食事でもしないか?」
『私が…?…まあいいでしょう。バンギラスたちの様子も気になりますから』
「よし決まりだ!じゃあヒナちゃん達も一緒に手当てを手伝ってくれるか?」
「了解です!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
『ピィ…!』
『ピッピィ!』
『ピィクシィ!』
「ピィたちも手伝ってくれるのか…ありがとう!」
「ありがとうねピィたち!」
『カゲカゲ!』
『ピチュピチュ!』
―――――こうして、イッシュ地方にいたミュウツーが一緒に旅に同行することになった。
これから何が起きるのか分からないし…バッチも手に入るかどうか分からないけれど…でも絶対に頑張っていこう。
…でもあの悪党を捕まえることができなかったのが残念だと…またピィたちに対して襲って来るかもしれないと心配になったけれど、タケシさん達がその後大丈夫だって言ってくれたから気にしなくてもいいのかな…。
『あれが俺と同じように作られた存在か…』
『ミュ?』
『ビィ?』
『いや、まだ話さなくてもいいだろう…向こうも俺たちのことに気づいているらしいからな…だが、クッ同族め…あのようにヒナたちと旅を同行できるとは…羨ましい…!』
『ミューゥ?』
『レビィ?』
『ふん…俺たちも一緒に行こうだと?ヒナたちのことだから俺たちはマサラタウンに戻れと怒りながら言うはずだ!だから無理に決まっている!!』
『…ミュゥ』
『…レッビィ』
「ひぃぃいい助けてくれぇえええ!!!!」
『喧しいぞヒナたちに攻撃しようとした人間!!言っておくがこのままジュンサーのもとへ無事に連れて行くつもりはないからな!!』
「ひぃぃぃいいい!!!」
『…ミューゥ』
『…レッビィ』