マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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人によって思考は違ってくる。






第百八十二話~兄は小さな嫉妬をスルーした~

 

 

 

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。タケシからコフーライの時より前に連絡があり、妹がジム戦をしたということやこれからハナダジムに行くということ…そして何があったのかを話してくれました。正直言って早くカント―地方に戻ってそのガキ…子供たちにいろいろと世の中の怖さを教えてやりたいと思いましたが自制し、ヒナのやりたいとおりにさせてやろうと思いました。

そして今、カロス地方を旅している俺たちは、2個めのバッチをゲットするためにショウヨウシティへ目指している途中になる。

森の中を歩いていた時に、ある女性からバトルの申し出があって俺たちはそれを受けようと笑みを浮かべた。

 

 

「目と目が合ったらポケモンバトル…それがトレーナーのルールよ!」

「ええ…分かってますよ!」

 

 

その目の前にいる女性の言葉にセレナが首を傾けて疑問に感じているらしい。トレーナー同士で目と目があったらポケモンバトルになるのだろうかと言いたいのだろう。それについてはシトロンが説明しているため、俺はバトルに集中することにした。

 

「出てらっしゃい…ニンフィア!」

 

「…へぇ。始めて見るポケモンだな…!」

『ピィカ!』

 

そのポケモンはおそらくカロス地方でのポケモンなのだろう。何だかエーフィに似ているような気がして…図鑑を取り出してその説明を見る。やはりイーブイの進化形らしい。…もしかしたらカロス地方でしか進化できないのか…それともカロス地方の独特な育て方によって進化しやすいのか…少しだけ興味を持った。まあそれについてはシゲル等の誰かが研究することだろうし…とりあえず今度シゲルに電話してイーブイの進化形の特徴についての話をしてみようかと思う。シゲルなら興味持った研究は徹底的にやるだろうし…。

そしてシトロンがそのニンフィアを見て、カロス地方で発見されたフェアリータイプにもなると説明してくれたため、俺はやる気が高まる。

 

 

「新しい地方での新しいポケモン…か。やる気が高まるってもんだ!ケロマツ、君に決めた!」

『ケロケロ!』

 

「あ、試合をする前にちょっといいかしら?」

「なんですか?」

 

シトロンが試合の審判を引き受けてくれて、このままバトルになるかと思っていた。だが女性…いや、プルミエさんは俺たちを見て手を上げて試合開始する前に口を開いて言う。

 

「一つだけ約束してほしいの。私がこのバトルに勝ったら、付き合ってもらうわよ!」

「……はぁ。まあ良いですけど…でも俺たちは負けませんよ…!」

 

 

「へッ付き合う!?いいのサトシ!!?…いやでも負けたらなんだし…サトシが負けることないもの…」

 

 

 

プルミエさんの言う付き合ってもらうとは、おそらく場所などのことを言っているのだろう。…というかセレナの反応を見て呆れてしまった。俺みたいな子供にプルミエさんがいきなり恋愛的な意味で付き合うとかありえないことなのだから。どこかに一緒に来てもらうわよと言った方が的確なんだが…一番重要な言葉が抜けていてセレナが俺たちの後ろの方で思いっきり動揺している。まあそれについてはあまり気にしないでおこう。

 

 

「ではこれより、ケロマツ対ニンフィアのバトルを開始させてもらいます…試合開始!」

 

「先手必勝!ケロマツ、あわ!」

『ケロォォオ!』

「ニンフィア、ようせいのかぜよ!」

『フィア!』

『ケロ…!』

 

「ケロマツ後ろに向かってあわだ!」

『ケロ…ケロォォオ!』

 

ニンフィアのようせいのかぜによって強い突風が巻き起こり、ケロマツが吹き飛ばされてしまう。その勢いは強く後ろにあった木にぶつかりそうになっていたが、俺がすぐに指示をしたことによって気づき、身体を捻ってあわで勢いを殺して衝突するのを防いだ。

 

だがニンフィアの攻撃はまだまだ続く。そのためケロマツと俺はニンフィアの動きを注視して攻撃を防いだ。

 

「ニンフィア、ムーンフォース!」

『フィァァア!!』

 

「ケロマツ、大きくジャンプして躱せ!」

『ケロォ!』

 

ケロマツがニンフィアの攻撃を避けるために動く。そして避けたことによって木に生っていたきのみが落ちてきた。そのきのみをケロマツが独断でニンフィアに向かって蹴りあげる。そしてそれらをニンフィアがすべて避けたために隙ができたと判断し、俺は大きく口を開けて叫ぶ。

 

「ケロマツ、はどうだん型みずのはどう!」

『ケロォォオ!!』

「嘘っ!?」

『フィァァア!?』

 

ニンフィアははどうだんのように大きくて強い威力をもったみずのはどうに直撃してしまった。このみずのはどうはケロマツと共に修行して身につけたやり方だ。とりあえずイッシュ地方で何度も見たはどうだんのようにして…いつかは爆発できるぐらいの威力になればいいかなと思っている。

ニンフィアは足を震えさせ、今にも戦闘不能になりそうな様子だった。プルミエさんが冷や汗をかき、最後の手段だと叫ぶ。

 

「こうなったら…ニンフィア、メロメロ!」

『フィァ!』

 

「おっとそれはやばいか…ケロマツ、あわで全部弾き飛ばせ!」

『ケロォ!』

 

メロメロによるハートのような模様をした技が放たれる。メロメロについてはやはり直撃してメロメロ状態になってしまうと負けてしまう危険性があって危ないため、大量のあわですべて弾き飛ばした。そしてそのメロメロとあわが衝突する衝撃によってニンフィアも吹き飛ばされる。

 

「ニンフィア!」

『フィ…フィァァ……』

 

「ニンフィア戦闘不能…ケロマツの勝ち!」

 

「よしやったなケロマツ!」

『ケロケロ!』

 

ケロマツが俺の肩に乗ってきたため、俺はそのケロマツに向かって手を上げてハイタッチする。そしてニンフィアはシトロンによって回復され、プルミエさん達と一緒に俺たちの近くにやって来た。

 

「強いのねサトシ君」

『フィァァ』

「いやそんなことないです…それよりも、もしも負けたら【どこに】付き合ってもらおうとしてたんですか?」

「実はね―――――――」

 

「へ?!どこに…!?」

「セレナどうしたの?」

『デネデネ?』

「う、ううんなんでもない…」

「そう…?」

 

プルミエさんの話を聞いてなるほどと思ってしまった。プルミエさんは幼稚園の先生で、生徒たちにポケモンと触れ合ってほしいそうなのだ。そして俺たちが連れているポケモンを見て、是非とも来てほしいと思ったらしい。そしてバトルして負けたら付き合うと約束してもらったということだった。

俺たちは顔を見合わせてそういうことなら行きますよと笑顔で了承した。ケロマツはニンフィアにありがとうと言う鳴き声を上げて頬をリボンのような部分で撫でられていた。それにケロマツが照れているのに微笑ましく思いながらも、俺たちは幼稚園へと向かった。

 

ちなみにその話をきいたセレナが胸を押さえて安堵していたようだった。…俺誰とも恋愛的な意味で付き合うつもりはねえってセレナに何度言ったらわかるんだか……。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「プルミエ先生ェ!このポケモンは何ていうの?」

「あ、このポケモンはね…」

 

「ハリマロンの毛ってとげとげしてるのかな…?」

「実際に触ってみたらわかるよ!あ、でも優しく触ってあげてくださいね」

『リィマ!』

 

 

幼稚園はかなり大騒ぎとなっていた。ピカチュウやケロマツ以外にもシトロンたちが出したポケモンを見て興味津々に見たり撫でたり…まあポケモンに触れ合うという状況になっていたのだ。もちろんピカチュウたちは子供たちに怪我を負わそうとせず、ちゃんと大人しくしている。

 

 

「…ねえサトシ。やっぱり恋愛はしたくない?」

「……………………」

「前世の記憶があるから駄目なの?私は…私は、サトシの隣に立ちたいから…好きじゃなくても一緒に居たい…!」

「……セレナ」

 

 

セレナが俺の近くに来て戸惑いながらも口を開いて言う。その声はどこかいつもとは違って悲しそうだと感じた。おそらく先程のバトルの一件で何かを感じたのだろうと思った。でも俺はセレナの問いに答えられるわけはない。俺の隣に立つというのは、ピカチュウたちでいいのだから。セレナはセレナの道を歩んでほしいとそう願っている。恋愛じゃなくても俺の隣に立ちたいと言うのは無理なことだ。俺はそういうのはいらない。ただピカチュウたちと一緒に居られればそれでいい。

 

それにセレナは俺と添い遂げたいとかよく分からないことを言って仲間になったけれど、ほとんどそういう意味で俺と関わろうとはしなかった。シトロンやユリーカとも仲が良くなり、フォッコとバトルできる機会があれば積極的にバトルをしようとしていた。ジムに挑戦する気はないみたいだけれど、旅を通して夢を見つけようと真剣に考えていたのだ。だからこそ、一人で生きていくと言う力はあるのだ。前へ進むという力が…。セレナの心に俺のことさえいなければいいと思う。俺はセレナの声に応える気はないのだから。一生傍にいることはできないのだから。

 

だから俺は口を開いて言う。

 

 

「…俺は、自分の夢を目指して旅をしている。セレナ、お前のことは旅仲間として…友達として良い奴だと思ってるよ。でも無理やり俺の隣に立たなくていい。一生傍にいなくていい。セレナはセレナの道を歩んでほしいんだ」

「そんな…私は、自分でちゃんと考えて…そしてサトシと一緒に居たいって思ってるのに」

「それは昔の話だろ?昔の衝撃が忘れられなくて、他のことを考えられなくなってるんだ。いつかは忘れること…自分のことは自分で決めて生きていかないと駄目だ」

「できない…私はもうサトシ以外を見られない…私の世界には…サトシしかいないの…!!忘れることなんて絶対にできない…だから、傍にいさせて…嫌いに…ならないで!」

「だからそれは――――」

 

 

「じゃあ!…勝負しよう」

 

 

セレナは俺に向かって真剣そうな表情で見てきた。その目には燃え上がるような炎が見えた気がして、一瞬だけ言葉が詰まり、セレナから目を逸らす。でもセレナはそんな俺が嫌なのかいきなり両手で俺の頬を触って無理やりこちらに視線を合わせてきた。いつもなら無理やりということはしないし、強引な方法を使わないセレナにとって珍しいと思えるやり方だと感じた。

 

 

「私は絶対に、カロス地方の旅が終わるまでに私がサトシの隣に立ってもいいと思えるようになる!…でもなれなかったら、サトシのことを諦めるわ…だからその勝負、受けてほしいの!」

 

「…………ああ、分かった。お前が負けたら、俺のことは全部忘れろよ」

「うん!ありがとうサトシ…大好きよ!」

「はいはい…ほら向こうでフォッコが呼んでるからさっさと離れろ」

「…分かってる。絶対に負ける気はないからね。サトシ!」

 

 

セレナは、賭けをしてこれからのことを決めようとしていた。つまり、セレナとの勝負を受ければ俺のことを諦めるといいたいのだろう。カロス地方の旅が終わったとしても、俺は自信を持ってセレナに俺のことを諦めてくれと言えると思っている。だからこそ、勝負を受けた。諦めさせるために。でもセレナはそうじゃなかったのだろう…安心したように笑みを浮かべて、ありがとうサトシ…私絶対に頑張るからね!といって名残惜しそうな表情を浮かべながらもフォッコ達のいる所へと走って行った。セレナの手に触れられた熱が残る頬をかきながらため息をついて空を見上げた。

 

 

 

「負ける気はねえよ、絶対に」

 

 

 

 

―――――――その後、ポケモンが苦手という少年がいて、その子にポケモンの良さを知ってもらうために皆で奮闘したのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 




兄の心境。
 ケロマツがニンフィアに好かれていたけど…まあいいか。





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