マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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出会いとは別れを通して起きるものだ。






第百七十八話~妹はある人物に会う~

 

 

 

 

 

 

 

「よし…ちょっとだけピチューの尻尾が変わってきたね…!」

『カゲカゲ!!』

 

『ピッチュ!』

 

 

こんにちは妹のヒナです。現在ニビシティの近くにある森にいます。この日から何日目かの野宿になります。

イッシュ地方で旅をしてきたからどうやってキャンプをすればいいのかも分かるし、時間はかかるけれど苦痛になっているとは思っていない。…まあ母やルカリオの料理が恋しいとは思っているけどね。

そして今日、そろそろ日が暮れてきたため、野宿をするためにヒトカゲに私たちが集めた薪となる木の枝や枯れた草を今日寝る場所の近くに置き、ひのこで火をつけてもらう。

そしてその後、私はリュックから食べ物を用意した。食べ物はルカリオ達と旅をしてきたようなものではなく、栄養バーのような小さなものを食べるしかない。栄養バーはショップで安く売っている旅人に必需品の食料だ。バッグにかさばる心配はないし日持ちもいい、そして栄養満点!旅のお供に!!とは町のショップで見たキャッチフレーズである。でもまあ栄養バーは不味いというより普通…よりも微妙な味だし、普通の料理が食べたいと思ってしまう。でもこれは旅をし始めたから仕方ないと思う感情だ。だからその感情を押し込めてただひたすら栄養バーを食べていた。……でもマサラタウンに帰ったらまず母から料理を習おうと思っていたりするけれど。

でも栄養バーだけじゃないからあまり嫌だと思っていない。それは、ピチュー達や近くにいたポケモン達が協力してきのみを集めてくれたため、私は栄養バー以外にもモモンのみなどを食べれたからだ。

私は栄養バーときのみを食べ、ヒトカゲやピチューにはそれぞれ専用のポケモンフーズを食べてもらった。きのみ集めに協力してくれたポケモン達にもポケモンフーズを渡してありがとうと礼を言っておいた。優しいポケモンたちは私たちに手を振ってからすぐに離れていって…攻撃してくるポケモンじゃなくて良かったと思えた。

 

そして一度リュックの中身を調べてからこの後どうするべきか考える。そろそろリュックに入れてきた食料がなくなりそうだから、もしもニビシティに着く前に食べ物がなくなったらきのみで過ごそうと覚悟をした。ポケモンフーズがなくなったとしてもヒトカゲとピチューはきのみで十分だと笑っていたし、一緒に苦難を乗り越えようと思う。

 

 

食べた後は、ピチューがまたアイアンテールの練習をし始めたため私たちも一緒になって頑張った。

 

 

「うーん…ピチューもうちょっと頑張って!もっと力をいれて…鋼になるように!」

『カゲカゲ!』

 

 

『ピチュゥゥウ…ピッチュゥ!!』

 

 

「そう、その調子!」

『カゲ!』

『ピチュゥゥウウ!!』

 

ピチューの尻尾は鋼になると言うより電気でビリビリと光っているように感じた。でもそれだけ力を入れていると言うことだから否定をすることはない。アイアンテールじゃなくても何か攻撃できる方法があるかもしれないしと私はそう思った。でも、ピチューの尻尾がまるで光り輝く星のような気がして、普通だったらコンテストのアピール技のようで綺麗だと思うけれど、完璧なアイアンテールにならないことに私たちは少し残念だと思いながらも他の攻撃方法として使えるかもしれないと言うことと、もっと頑張ってみようと言ってピチューを励ます。

ピチューはなかなかアイアンテールができないことに焦っていて、兄のピカチュウがやっていた時のことを何とか思い出そうとしていた。一生懸命思い出すために頭を使ったためきのみをたくさん食べてお腹いっぱいになっていたけれど、なかなかうまくいかずにいる…。

 

 

だからこそ私はアイアンテールだけじゃなくて他にも対策方法を考えた方がいいだろうと思う。いろいろとやるべきことは考えているんだけど、それで勝機があるのかどうかは…まだ分からない。ある意味当たって砕けろという感じになってしまうかもしれない。砕けるつもりは一切ないんだけどね。

 

 

―――――――そしてそんな時に、人間の足音が聞こえてきた。

 

 

 

 

「あれ…ヒナちゃんじゃないか!?」

 

 

「…あ、タケシさん!?」

『カゲ!?』

『ピッチュゥ!!』

 

 

足音が聞こえてきて誰なんだろうと思った。攻撃してくるトレーナーならバトルの練習相手として迎え撃とうと思ったけれど、やって来たのは兄と一緒に旅をしていたタケシさんだった。タケシさんは私たちがここにいることに驚き…そして周りに他の人やポケモンがいないことに驚いている。

私たちはタケシさんに会ったと言う事実に焦ってしまった。本当だったら見つかるつもりもなく、森の中で修行をしてからニビジムに向かおうと考えていたというのに…まさかこんなところでタケシさんに会うとは思ってもいなかったのだから。ニビジムと深く関係のあるタケシさんだからこそ、この場から逃げると言うこともできずただ何と言い訳をすればいいのか必死に考えていた。このまま納得のいく言い訳が言えなければ、マサラタウンに連れ戻されると言う可能性もあった…だからこそどう言い訳すればいいのか悩み冷や汗が出る。

 

タケシさんはただ戸惑いながらも私たちに向かって言った。

 

 

「ヒナちゃん。何でここに…」

 

「う…いやあの…」

『カゲェ…』

『ピッチュ……』

 

「ああ…いやそれよりも、この森にいるより俺の家に来た方がいい。それだけじゃお腹が空くだろう?」

「え!?えっと…良いんですか?」

『カゲ!?』

『ピチュ!?』

 

「当然だ。もしもここでヒナちゃん達を放っておいたらサトシに殴られてしまうからな」

「ははは…それじゃあお願いします!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

 

タケシさんは私たちが持っていたり地面に転がっているきのみや栄養バーを見て、それではお腹が空くと考えたらしい。ちょうどニビジムには修行をしてから行こうと思っていたけれどタケシさんの好意によって夕食をごちそうされることになってしまった。

この後どうすればいいのだろうと必死に考えながらも、ニビジムの近くにある家に行くとジロウさんや他の妹や弟たちが驚きながらも歓迎してくれて…ヒトカゲやピチューと遊ぼうとしている子たちでいっぱいだった。そしてタケシさんのウソッキーなどもいて…とても賑やかで私たちに好意的なタケシさんの家族に、後で無茶な頼みごとをしなければいけない私たちとしてはちょっとだけ微妙な心境になってしまった。

タケシさんの料理はとても美味しいと言うのに、これは私たちが勝手にマサラタウンから出たことで起きたんだと思うとちょっとだけ美味しいと感じれなくなる…。…でもやっぱり美味しい。

ピチューは…きのみの食べ過ぎでお腹がいっぱいだったけれど、タケシさんたちの好意を無駄にするつもりはないと頑張って食べていた。

…でもタケシさんがそれに気づいてピチューの食べ物を少なくしてくれていて…本当に、周りに迷惑をかけていると感じたのだ。兄たちのポケモンも、伝説達にも心配をかけているだろうとマサラタウンでの出来事をつい先程起きたような感じで思い出す。

 

 

―――――でもこれが終わるまでは投げ出すつもりはないのだから最後まで頑張らないと。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「……ああ、お前だったのか。ミュウツーにミュウ」

『ふん…久しいな。あの時以来か…』

『ミュゥゥ!』

 

 

 

ニビシティにてヒナたちがやって来たことを兄であるサトシやマサラタウンにいるみんなに今から連絡するかどうか迷っていたタケシのもとにやって来たのは寝静まった頃。ヒナたちは何やら考え事をしていたようだったが、もう夜も遅いと言うことで話は明日することになった。そして妹達と一緒に部屋で寝ることになり、今はタケシ以外の家族が皆寝ているという状況だった。ちなみにタケシの両親は現在何度目かの旅行中である。

 

この後連絡するべきなのかを迷い…ひとまず外の空気を吸ってから考えようと外に出て散歩していた時にミュウツーとミュウがタケシの目の前にいきなりやって来たのだった。タケシはそんな伝説たちに驚くことなく、むしろ納得していた。

ミュウツーは素っ気ない態度をしており、ミュウは久しぶりだねと手を上げて挨拶をしている。タケシは驚くよりも先にミュウツーたちがヒナたちの様子を見にやって来たのだろうと悟ったのだ。マサラタウンに伝説達がいるという状況を知らないタケシだったが、いまこの場にミュウツーとミュウがいることがおかしいと感じず、ただサトシだったらできるだろうと考えていた。妹が大切なサトシだからこそ、伝説であったとしても協力できるポケモンがいるなら…迷惑にならなければ何でも頼るということなのだろうとタケシは考える。

そしてミュウツーたちがいきなり現れたのはヒナたちが家にいるという状況だからこそわざわざ目の前に来たのだろうと分かった。

だがタケシは伝説であるミュウツーやミュウを見たとしても騒ぐことはない。ただ久々に再会した友人と会った時のように爽やかに話しかけているだけなのだ。それは、サトシと一緒に旅をしてきたことによって伝説などを見慣れてしまったからだろう。サトシだからできるという妙な信頼感があるからこそできる長年の旅の仲間ゆえの心境だった。

 

その間にもミュウツーやミュウはヒナたちが寝ているであろうタケシの家を見て心配そうに見つめ、そしてタケシを見た。

 

 

『ヒナ達に怪我などはないか?』

『ミュゥ?』

 

「ああ怪我も病気もしていない健康体だ。…何か目的があってこっちに来たみたいなんだがミュウツーたちは知ってるか?」

『…その目的は私たちは知らない』

『……ミューゥ』

 

「そうか…でも事情は知らないがヒナちゃんの傍にはいるつもりなんだろう?サトシから連絡があったよ。影から保護者が見守っていると言うことを…だから俺からもヒナちゃんの目的が何なのか聞いてみよう!」

『ああ…そうしてもらうと助かる』

『ミュゥ…』

 

「いや…ヒナちゃん達を見てると…放っておけないのは分かるさ」

 

 

タケシはサトシから連絡があったのをミュウツーたちに教えていた。サトシからの連絡はヒナがそっちに来ているかもしれないということ、旅に出た理由についてそれとなく聞いてみてくれということと、面倒をみてほしいということ…そしてヒナたちの近くに過保護な保護者がいるから何かあったら聞いてくれと言っていた。まさかタケシの想像していた保護者が人間ではなく伝説のミュウツーたちとは想像つかなかったが…サトシならあり得ることかと納得していたのも長い間旅してきた経験からだろう。

 

 

とにかく、明日になったらヒナ達から話を聞くということを伝え、タケシはマサラタウンに連絡をしようとはしなかった。目的が分かればサトシ達にすべて伝えるということ…できることなら自分たちも協力するということを考えながらも…。

 

 

 

 

 

 

 


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