マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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大騒ぎに発展した――――――


第百七十七話~兄達は事態を対処する~

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダネ!ダネフッシ!!』

『ピジョピジョット!!』

 

 

『落ち着け…だが、この手紙は…』

 

 

ここはマサラタウン。いつもなら賑やかに修行をしていたり喧嘩をしてフシギダネのソーラービームが空にうち上がったりとかなり凄まじいのだが、今は話をしているだけでかなり静かだった。ピジョットから届いた手紙は周りにいたポケモンたちを騒然とさせた。そしてピジョットに何故止めなかったと叫ぶポケモンがいたり、喧嘩になったりと大騒ぎになる。ピジョットは止めなかったことはあの表情を直接見ていたら止めようと思っても止められないだろ!と叫んでいて、じゃあ俺が止めに行くとあるポケモンはマサラタウンから外へ行こうと飛び出し、あるポケモンはその飛び出そうとしたポケモンを捕まえて取り押さえ…とにかく皆が不安と心配そうな表情を浮かべてある一枚の手紙を見ていたのだ。

手紙は一枚の封筒の中に二枚の手紙があった。そのうち一枚がマサラタウンにいるであろうポケモンたちに向けられていた。

ミュウツーは苛立ちを込めた表情でその手紙をもう一度読む。

 

 

『≪旅に出ます。でもすぐに帰ってくるから心配しないでね!トラブルとかもちゃんと避けるし…連れ戻そうとしないように!連れ戻そうとしたら二度と口きかないから!!大丈夫だよやるべきことを終えたら帰ってくるからね!!≫……か』

『ベイベイ…』

『キューン……』

 

 

周りにいる皆が心配していた。ヒナはまだ幼く、そしてトレーナーとして旅に出るにはまだ早いからだ。それに色違いのヒトカゲの一件があってからは、過保護に皆が見守っていた。ヒナたちが傷つくのを恐れているからだ。そのためマサラタウンでは毎回ヒナの見送りや…遠くから見守ったりとしていたのだが、イッシュ地方から旅を終えた後、ヒナは「マサラタウンにいる間は自分で何とかするから大丈夫だよ!」と言って兄のポケモン達や伝説たちの行動を止めさせた。ルカリオがいた時もイッシュ地方でのヒナの成長を見ていたから大丈夫だと言っていたため、ヒナとルカリオの言葉を信じて…何かあればすぐにヒナの所へ行くことはできるが、基本的にはあまり関与しようとはしていなかった。

それはつまり、マサラタウンのオーキド研究所に来るのがほとんどだったということ、今日もいつものように来ると信じて疑わなかったからこそ何もしなかったのだ。…だがいつまで待っていても来ないことにミュウツーたちが探そうとして行動を開始し、ヒナたちが見つからず…家にいるんじゃないかと心配して突撃しようかと話し合っていた時に手紙を持ったピジョット達がやって来た。

ピジョットはポッポやピジョンたちを引き連れてやってきて、そしてある手紙を見せてくれたのだ。その手紙こそヒナから書かれたものであり、これからやろうとしていることが書かれていたのだ。

その手紙を読んだポケモンたちはイッシュ地方で旅をしていたことでマサラタウンの外へ出るのを躊躇わなくなってしまったと悲観し、このままでは良くないと連れ戻した方がいいという意見が圧倒的に多かった。でもヒナが何かやろうとしているということ、それは旅に出てしまうほど重要な何かなのではないかと連れ戻さずに見守った方がいいと言う意見もあった。

それに手紙に書いてある連れ戻したら口きかないという言葉にもすぐに行動に移せないでいる原因の一つとなっていた。ヒナに嫌われることは全てのポケモンが避けたいことだからだ。

 

 

『クッ…イッシュ地方に行った経験で旅をすることに慣れたか…!』

『ジュッ…』

 

 

『ワニワニ!!』

『ブィブィ!!』

『何?この手紙は優れたる操り人のもとに届けなくてもいいのか…か。ああそうだったな』

 

 

『ダネ…ダネフシ!』

 

 

手紙は二枚あったのだが、そのうち一枚はポケモン達に向けられた手紙で、もう一枚は兄であるサトシへ向けた手紙だった。だからこそ、ワニノコとブイゼルはこの手紙をサトシに届けた方がいいと言うのだ。このまま危険な目に遭うよりいっそ口をきかないということになったとしても連れ戻すかとほとんどヤケになっていたミュウツーはヒナを連れ戻すために行動しようとしていたのだが、手紙のことがあって、そしてフシギダネから『サトシからも意見を聞こう…連れ戻した方がいいなら連れ戻すぞ!』という言葉もあり、仕方なくミュウツーはサトシがいるカロス地方へと行くことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「は?…ヒナが家出…!!?」

『ピィカァ!?』

 

「ああそうじゃ…家にこのような手紙があってな…」

「どうしたらいいのかサトシ達のママさんと話していたんだ」

 

サトシがマサラタウンにいるオーキド研究所に電話した時、事態はかなり酷いことになっていた。

サトシ達の母であるハナコは昔サトシが何度も家出しようとしていた時のことを思い出してこのままじゃいけないわという焦った感情と、やるべきことをやったらすぐに帰るから連れ戻さないで!という手紙に書いてあった文字に娘のことを信用したほうがいいのかという感情があった。でも不安だということと心配は強く、マサラタウンにいるんじゃないかと探し回っていたり、ジュンサーさんに話しておくために行動を開始していたりした。

そしてオーキド研究所ではオーキド博士が電話でサトシが出たことにより手紙の話と家出したと言うことを話す。オーキド博士たちは旅に出ます探さないでくださいという手紙の内容がまるで家出のように感じてしまったためにそう話していたのだ。そしてサトシとピカチュウはこの事態に焦り、何かあったら困るとオーキド博士からの電話を少し話した後電話を切って、セレナたちの方へと走った。

セレナたちはサトシが電話をするということから邪魔しない方がいいと遠くの方で待っていたのだが、帰ってきたサトシとピカチュウの表情を見て、何かあったのではないかとそれぞれ顔を見合わせて声をかける。

 

 

「どうしたのサトシ…?」

「何かあったんですか?」

「サトシ…すっごく怖い顔してるよ…どうしたの?」

『デネデネ?』

 

「ヒナが…妹が家出したみたいなんだ」

『ピィカ…』

 

「え、家出!?」

「それは大変です!」

「何かあったのかな…」

『デネ…』

 

 

セレナたちはサトシを心配そうな表情で見つめ、そして家出したと言う言葉に何かあったのではないかと考える。サトシは旅をしている間によく妹の話をしていたから、だからこそ家出したという事実に驚いたのだ。サトシの表情を見て、このままではいけないだろうとサトシが口を開くのをセレナたちは真剣に見つめていた。

 

 

「俺、カント―地方に帰る…それでヒナに何があったのか聞いてくるよ」

『ピカピカ!』

「…サトシ、私たちも一緒に行くわ!サトシが困っていることがあったら私も一緒に解決していきたいの!……それに将来私の義妹になるのだから。ううんそうじゃなくても…ヒナちゃんに何があったのかちゃんと聞いて、私たちで解決しましょう!…」

「そうですよ!僕たちはサトシと一緒に旅をすると決めていますからね!カロス地方じゃなくても、サトシと一緒に旅をしたい…いいえ、力を貸したいんです!」

「私も!ヒナちゃんに何があったのか聞きたいし…それにサトシに協力したい!」

『デネネ!!』

 

 

「お前ら…」

『ピィカ…』

 

 

セレナが小声で何か言っていたけどそこらへんは無視しておく。というより今は緊急事態だし、あまり気にしていると気分が悪くなるから無視した方が良いとサトシは決断した。

でもそれよりもセレナたちがサトシやピカチュウを心配して一緒にカント―地方へ行くという決意をしていたことにサトシとピカチュウは驚く。まだどんな子供なのかサトシが話している内容しか知らず、推測でしか判断できないというのにセレナたちはヒナのことを心配し、そしてサトシに力を貸そうとしている。

だからこそサトシは迷惑をかけないようにカロス地方にいるべきか迷い…でもセレナたちに手や肩を掴まれ、真剣な表情で力強く頷いたためその意志の強さを知り…サトシとピカチュウは笑みを浮かべて力強く頷いた。

 

 

「よし分かった…カント―地方に行こう!」

『ピッカァ!』

「うん!」

「そうこなくっちゃ!」

『デネ!』

「それなら早く行きましょう!カント―地方へ行くために飛行艇のチケットが必要ですからね!」

 

 

 

『待て…サトシ!』

 

 

「ミュウツー…?」

『ピィカ…?』

「ポ、ポケモン…!?」

「喋りましたよ!?…見たことないポケモンですね…」

「うわぁ凄い!見てデデンネ!」

『デネデネ!!』

 

 

『ふん…見世物になる気はない!…サトシ、ヒナからの手紙だ』

 

 

「手紙…!」

『ピッカ!』

 

 

サトシは何故ここにミュウツーがいるということと、セレナたちに見つかるつもりはなかったのに大丈夫なのかという疑問があった。だがミュウツーが持っている手紙を見てその疑問は吹っ飛び、すぐに手紙を読み始める。

セレナたちも見たことのないポケモンが人の言葉を喋ったことに驚き興味をもっていたようだったが、ヒナからの手紙という言葉にすぐに意識がサトシの方へと向き…手紙を読むサトシを見つめる。

 

 

「なるほどな……」

『ピィカ…』

「え…サトシ、何が書いてあったの?」

「納得しているようですが…ヒナちゃんは大丈夫なんですか?」

「私も読みたい!」

『デネデネ!』

「ああいいぜ…ほら」

『ピィカ!』

 

 

「えっと…≪お兄ちゃんへ。私はある子たちと勝負をする約束をしました。その条件でマサラタウンを出なければなりません。でも安心して旅を続けてね!私とヒトカゲ、ピチューは絶対にその条件を満たしてマサラタウンに帰って…そしてトレーナーとして勝負するから!お兄ちゃんはカロス地方で私たちの勝負の結果を楽しみに待っていてください。あと絶対に心配だからってカント―地方に帰ってこないでね。それやったら大嫌いになるから。お兄ちゃんはちゃんとカロス地方のジムバッチをゲットして、そしてリーグに挑むために頑張って!お兄ちゃんの旅を私たちのせいで中途半端に中断させるつもりはないからね。だからカロス地方での旅を続けてください。 ヒナとヒトカゲとピチューより≫…そのある子たちと勝負をするためにマサラタウンから出たということでしょうか?…」

 

「ああ。そうだろうな…」

『ピッカッチュ…』

 

 

サトシとピカチュウはカント―地方にいるヒナのことを考えた。ヒナは最初旅をする気はないと言っていたというのに、イッシュ地方で旅の楽しさを学んで…そしてトラブルなどの大変さを学んだ。

だからこそ本当だったらマサラタウンに連れ戻そうと言う感情の方が強いけれど、この手紙に書かれている意志の強さからそれはできないだろうと悟った。もしも強制的に連れ戻したとしてもまたマサラタウンから外に出ようとするだろう。【トレーナー】として勝負を挑もうとするだろう。それならばトラブルが起きないように影から見守っていた方が安全だ。何をしようとしているのかは知らないけれど…その勝負を受けたと言う子たちが気になるけれど……それでもヒナ達は勝負を受けようと必死に行動しているのだ。だからこそサトシとピカチュウはヒナ達の考えを尊重した。

そしてそれはセレナたちもサトシの表情と手紙から感じ取ったのか、不安そうにしていたけれど、何も言わずに黙っていた。

そしてサトシがミュウツーに向かって声をかける。

 

 

「なあミュウツー、ヒナを連れ戻そうとしなくてもいい」

『ピィカ』

『なっ…そのままにしろと言うわけか!?』

「いや、放っておくつもりはねえよ。あいつはまだトレーナーになれる年齢じゃないし幼いんだから…だからこそミュウツーたちにはヒナたちを見守っていてほしいんだ」

『それは…問題が起きれば俺たちが解決してもいいと言うことか?』

「なるべくヒナたちに旅での大変さを知ってもらいたいけど…本当に危ないと分かったら頼んだ。とにかくヒナ達はこのまま様子を見よう…あとマサラタウンに帰ったら説教だとヒナ達の勝負が終わった時にでも伝えてくれ」

『ピカピカチュ』

 

 

『…分かった。フシギダネ達にもそう伝えよう』

 

 

そう言って、ミュウツーは不本意そうな表情を浮かべてカント―地方へ帰っていった。このままヒナたちを見守り、何かあれば助けてくれるだろうとサトシは信じてセレナたちの方へと振り向く。セレナたちはそれで大丈夫なのか、あのポケモンは一体何なのかと聞きたい様子だったけれど、サトシの表情を見て口を閉ざす。サトシも心配だからだ。マサラタウンにいるヒナたちのことを…旅をして無事に帰ってくるのか悩んで、そして出した答えだった。

だからこそ、セレナたちは何も言わない。サトシが悩んで決断したことに口を出すつもりはないということ、心配しているのが分かっているからだ。

 

 

「さあ行こうか…ヒナの手紙に書かれてるようにカロス地方を旅していこう!」

『ピカピカ!』

 

「…サトシがそれを望むなら、私は何処までもついて行くわ!」

「そう…ですね。サトシが大丈夫だと感じているのなら、僕たちは僕たちの旅をしましょう!」

「うん。ヒナちゃんにはいつか話してみたいけど…それはヒナちゃんの勝負が終わってからだね…!」

『デネ!』

 

 

 

皆がそれぞれ納得し、心の底で不安を感じながらもカロス地方での旅を再開することになった。何があるのか…大丈夫なのかという気持ちは強くあれど、ヒナの手紙やその意志を信じて、サトシ達は前へと歩み続けた。

 

 

 

 

 





「あ、ちょっと待ってもらってもいいか?」
『ピカピ?』
「どうしたのサトシ?」
「何かありましたか?」
「何々?やっぱりカント―地方に行く?」
『デネデネ?』


「いや、念には念を入れておこうと思ってな…」





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