マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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始まりに乱入されないよう、妹は考える。





第百七十六話~妹は旅に出た~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――えっと、旅に出ます…探さないでください…っと。よし行くよヒトカゲ、ピチュー」

『カゲ…!』

『ピッチュ…!』

 

 

こんにちは妹のヒナです。あの三人組の言った約束を守るためにこれから母には内緒で旅に出ようと思ってます。とりあえず何も言わずに出て行くと心配してしまうと考え、書置きをしてこっそり家を出ていく。バリヤードにも見つからなかったし…ルカリオ達は旅に出ているから家にいないし…良かったと思いながらも扉を開けて外へ出た。

私自身の背負っているリュックには衣服と食料と野宿用のキャンピングセット…そしてヒトカゲ達のモンスターボールと兄がカント―地方で旅していた時に使うことのなかった古いタウンマップが入っていた。

…このまま旅をした場合、帰ったら怒られるのは必須だからそれは覚悟していこうと考える。私たちは見つからないように周りを警戒しながらマサラタウンの外に出て、人に会わないように気をつけてトキワの森へ向かう。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

『ポッポーゥ!』

 

 

「あ、あの時のポッポ!?」

『カゲ!?』

『ピチュ!?』

 

 

鋭い目をしたポッポが私たちに向かって飛んで降りてきた。そのポッポはイッシュ地方を旅する前に見つけたポッポで…今はピジョット達の群れにいるはずだと思い出していた。

トキワの森に入ったら絶対にポケモンたちに見つかるだろうとは思っていたけれど…まさか最初にあのポッポに見つかるとは思わなかった。

ポッポは私たちに向かってどこに行くんだと言っているようだった。いつもは背負っていない重たそうなリュックの方を見てそして首を傾けて鳴いている。

 

だから私はヒトカゲ達を見てから…ポッポに向かって言った。

 

 

「ポッポ。あのね…私達、行きたいところがあってマサラタウンから外に行くんだ……ピジョットはオーキド研究所?」

『ポッポー!』

 

「あ、違うんだ…じゃあピジョット呼んできてくれないかな?あ、でも無理だったら私たちが捜すから大丈夫だよ!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

 

 

『ポ…ポッポーゥ!!』

 

 

ポッポは無理なら自分たちで探すよと言う私たちに向かってピジョットを呼んでくる!と叫んでいるようだった。私たちにここにいるようにと言っているようで、ヒトカゲとピチューが私の手を掴んで大丈夫だよと笑顔になった。そのため私は緊張しながらもピジョットを待つ。

これからやることはおそらく兄のポケモン達も…伝説達にも怒られることだろうから、今のうちにやるべきことはやっておこうと考えていたのだ。旅をしている間に連れ戻される可能性を考えて…それをなくすための手段としてピジョットに会うつもりだった。だからこそ、ピジョットに頼むことがとても重要だったのだ。

 

 

 

――――――やがて、トキワの森に風が流れ、大きな突風が起きる。そして現れたのがポッポたちやピジョンたちを連れたピジョットだった。兄のピジョットは私たちを見てわざわざ会いに来てくれたのか?と嬉しそうな表情をしていて…でも真剣な表情をしている私たちを見て何があったんだという意味で首を傾けていた。だから私はリュックからある手紙を出してピジョットに見せる。

 

 

『ピジョ?』

「これを皆に…フシギダネ達やミュウ達に見せてほしいの。あと、私は絶対に帰ってくるから大丈夫だって伝えておいて!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

 

『ッ!?ピジョピジョーット!!?』

 

 

「大丈夫だよピジョット!私たちはお兄ちゃんのようにやりたいことがあって…でもそれが終わったらすぐに帰ってくるだけだからね!だから連れ戻したりしないで!!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

 

 

『……ピジョ』

 

 

ピジョットはマサラタウンの外に出ようとする私たちを止めようと動いた。旅に出るのは危険だと、たまに暴走するけれどいつも周りに優しい兄のポケモンだからこそ大きな鳴き声を上げてマサラタウンに戻れと言ってきたのだ。

でもそれは分かっている。ピジョット達はあのヒトカゲが襲われたときのことから過保護になっているから絶対に危険な目に遭わせようとはしないというのは…。

でも私たちの決意した表情に…絶対に旅に出るんだと言う決心を感じ取ったピジョットは仕方ないという表情を浮かべ、そして私の手にある手紙をくちばしに挟んで飛んで行った。ピジョットが飛んだことにポッポやピジョンたちも一緒に飛んでいく。最初に会った鋭い目のポッポは心配そうな表情を浮かべていたけれど、大丈夫だという意味で頷いたらポッポも納得したのかピジョットの後を追う様に飛んで行った。

 

 

「…これで大丈夫……だよね、たぶん」

『…カゲェ』

『……ピッチュ』

 

 

私たちは不安だったけれど、でももうやってしまったことだから後悔はしないとトキワの森の中を走った。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「ピチュー…できる?」

『カゲェ?』

 

『ピ、ピッチュ…』

 

 

私たちは現在、森の中でジム戦に向けてピチュー達と技の特訓をしていた。これから行くところはニビジムだ。マサラタウンから近いトキワジムは今は確かキクコさんがジムリーダーになっていたから絶対に無理だと分かっている。だからこそニビジムを目指そうと思っていたのだ。

トキワジムじゃなくても…私はまだトレーナーじゃないから普通のジムに挑戦しようとしてもおそらく門前払いにあうだろうと考えている。でもニビジムとハナダジムとは交流があるから何とかジム戦してもらおうと…まず兄と交流があるジムに頼みに行こうと思ったのだ。

タケシさんやカスミさんとは兄に紹介してもらったことがあるし、よく話したりしていた…まあニビジムにはタケシさんじゃなくてジロウさんがジムリーダーなんだけど…でも何とか頼み込んでジム戦をすると決心しているのだ。だからジロウさんに土下座でもなんでもしてジム戦をしてもらおうと考えている。絶対に3つのジムバッチをとる…だからそのためなら門前払いにあったとしても何度も頼み込もう。…でもニビジムは岩タイプを専門としたジムだから…ヒトカゲとピチューで挑むのは最難関だと考えていた。

だからこそ、ピチューにある技を覚えてもらおうとしていたのだ。

 

 

「アイアンテール…お兄ちゃんのピカチュウがやっていた技をよく思い出して尻尾に力を入れてみて?」

『ピチュ…ピッチュゥゥウウ!!!』

 

 

ピチューが尻尾に力を何度も入れてアイアンテールにしようと頑張っている。でもいくら力を入れてもアイアンテールのような硬さにはならない。ピチューは力みすぎて逆に疲れてしまったようだった。何としてもアイアンテールを覚えてほしいと言う考えがあったんだけど、このままやって大丈夫なのかと心配になる。でも兄はいつも諦めずに何度も挑戦してきたのだから私たちも諦めずに挑戦しなければと真剣な表情でピチューを見て言う。

 

 

「ピチュー…お兄ちゃんがよく言ってるように最後まで諦めちゃ駄目だからね!できないじゃなくてできるって思ってやろう!」

『ピチュ…ピッチュゥゥ!』

 

『カゲカゲ!』

「ヒトカゲは…あのね。ジロウさんはもしかしたらハガネールを出してくる可能性が高いと思うの。ピチューにはいわタイプのポケモンが出てきたときにアイアンテールを覚えて頑張ってもらって…ヒトカゲはハガネールが出てきた場合にほのおの技を使ってもらってもいいかな?」

『ピッチュ!』

『カゲ!』

「かえんほうしゃは…できる時にやってみてとにかくダブルひのこ…いや猛火の炎ですべてを燃やし尽くそう!」

『カゲ…カゲカゲ!』

 

 

ジロウさんのポケモンは前に見たことがあった。マサラタウンから旅に出る前に兄に向かってバトルしてくれと頼みこんで、イシツブテとハガネールを出してきたのを覚えている。その時に兄はピカチュウのアイアンテールで2体とも倒してしまったということがあった。アイアンテールはハガネールにほとんどダメージがないと言うのにさすがサトシだと苦笑しながらタケシさんが言っていたことも覚えている。ジロウさんは負けたというのに満足げな表情でありがとうございました!ジムリーダーとしてもっともっと強くなります!!と言っていたから他のポケモンもいるかもしれない…でもピチューとヒトカゲでニビジムに挑むともう決めていたから、後には引けないだろうと思う。とにかくヒトカゲもピチューも頑張っているのだから、私も頑張らないとね。

 

 

 

 

 

 




妹の心境。
 旅の第一歩…とりあえずお兄ちゃんのポケモンとミュウ達が来ないことを祈ろう。




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