マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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始まりはいつも唐突だ。


第百七十四話~妹は疎まれている~

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。アーロンさんが来て皆でいろいろとお菓子や料理などを作って歓迎しました。オーキド博士なんかは過去の世界から来たという話を聞いてどんなことがあったのか詳しく聞いていたり、どんなポケモンと出会ったのかなどを質問していたりしましたが…。まあ次の日にはアーロンさんは普通にルカリオを連れて旅立ちましたよ。ルカリオ達とは一時のお別れになっちゃいますがまたマサラタウンに帰ってくると言ってくれたので安心して見送りました。とにかく顔面に衝撃を受けるという友人には同情しますが…まあ久々の再会を楽しんでと祈りながら私たちは今日もマサラタウンで平和に過ごしています―――――。

 

 

「おいヒナ!!」

「オーキド博士の贔屓者!!」

「…無視すんな!!」

 

 

「…また君たち?」

『カゲェ?』

『ピチュ?』

 

 

マサラタウンに住むいじめっ子みたいな三人組が私たちの歩む道を阻むかのように立ちはだかった。3人はそれぞれ体格や性格が違うと言うのにこのマサラタウンでは問題児たちとして有名だ。…まあ、以前の兄よりはマシだと大人たちは懐かしそうに言っているみたいだけどね。

その3人組は私と同じ年齢だけどそのうち1人は身体が大きく、頬に傷跡がある3人組のリーダーのような子供。そしてもう1人はメガネを掛けていて見た目知的に見えるんだけどかなりプライドが高くそして口調が悪い。あと見た目と同じように頭が良い。もう1人はよく帽子をかぶっていて、身体が小さくて細い。でもその性格は悪戯が大好きでよくポケモン達や近所の人たちを驚かせたりしている。

そんな特徴的な三人組が私にいつものようにからかってきたのだ。

 

私はマサラタウンで有名な兄であるサトシの妹ということで様々な意味で注目されている。それは問題児であった兄のように似てしまうのか、それとも普通の子か否かという意味でだ。比較されることも多くあるけど、あの兄の妹だから仕方ないかと微妙な心境になりながら諦めていたりする。

でも私と同年代の子供たちの多くはよく遊んでくれていて、女の子の多くはトキワの森の近くで友達になったというコラッタやポッポを連れてきたりする。そんな女の子たちと私達は仲が良く友達として修行しているとき以外は遊ぶことが多い。私と一緒にいるヒトカゲやピチューもコラッタやポッポと遊ぶことがあって充実しているのだけれど、この3人組だけは何故か私のことを疎み、いつもこうしてからかってくる。

まあからかってくると言うより、私がヒトカゲのいない頃にいつも彼等を無視をしたり正論言って逆に泣いて退散したりするんだけど…。ヒトカゲと一緒にいる時はあまり会うことがなかった。それに修行とか兄のポケモンたちと遊んだりとかしていてほとんど研究所に行っていた。私に話しかけようとするのを見つけてすぐにその場から離れることもあったし…あの頃泣き虫だったヒトカゲに何か傷つくようなことを言われるのは嫌だと思っていたからこその反応だった。

だからだろう…そんな彼らと会うのは本当に久しぶりだと感じていた。前はイッシュ地方に行っていて会うこともなかったし…それにその後も修行をしようとオーキド博士の研究所に入り浸っていたから会う機会はなかったと思う。本当は会いたくないのだけれど、私たちの逃げ道を塞ぐように邪魔する。

 

 

3人組の内のリーダーの子が言う。

 

 

「おいお前いい加減にしろよ!」

「…えっと、何が?」

『カゲ?』

『……ピチュゥ』

「いい加減に君のそのポケモンたちをどうにかしたらどうかってことだよ」

「お前色違いのヒトカゲばかりかイッシュ地方に行ってピチュー連れて帰るなんてトレーナーじゃねえのにふざけんなよ!!」

「私が連れ帰ったんじゃなくて、ピチューの意志を聞いて一緒に来てくれたんだよ?それに私はトレーナーとしてじゃなく家族として一緒にいるの。君たちだってよくトキワの森にいるニドラン達と遊んでるでしょ?」

『ピチュピチュ!』

『カゲ!』

 

 

なるほどと思った。つまり彼らは私と一緒にいるヒトカゲやピチューのことが気に食わないのだろう。トレーナーじゃないというのにまるでトレーナーのようにずっとポケモン達と一緒にいることが腹立たしくなって…そしてイッシュ地方から帰ってきたと思ったら今度はピチューを連れてきたことに余計苛立ち、文句を言ってきた。

でも私は確かに将来トレーナーとしてヒトカゲやピチューと旅立とうとは思っているけど、それはマサラタウンの子供たちだったら当たり前なことだと思う。ポケモンとよく遊んで、そして絆を結んで将来一緒に旅立とうと約束している子供たちはたくさんいるのだから…。私たちと一緒に遊ぶ友達だってポッポやコラッタと一緒にトレーナーになった時に仲間として旅に出ようと約束している子もいたりする。…それにこの3人組もニドランなどと一緒に仲良く遊んでいるというのにこれは無茶苦茶な言い分だと思った。それにオーキド研究所に入れるという意味でも同じだ。

私以外にもオーキド博士にポケモンを預かっている家族の妹や弟、娘や息子ならちゃんとオーキド博士との約束を守れば入ることができる。まれにポケモンに悪戯したり傷つけたりする子供たちもいたみたいだが、彼らはオーキド博士たちに説教され、ポケモンたちからもちゃんと制裁されたために二度とそういう約束を破るようなことはしない。だから私が特別ということはないのだ。…まあこの3人組は家族の中にオーキド研究所にポケモンを預かってもらうということはないため余計に私に敵対心を向けているのだろうけど。

 

そして私の言った言葉に3人組は言葉を詰まらせ、なんて文句を言えばいいのか迷っているようだった。

 

 

「うぐ…正論…」

「シュウジが言い返せないだと…コウちゃんどうする?」

「弱音はいてんじゃねえぞヒビキにシュウジ!こうなったらバトルしてもらおうか!」

 

「バトルって…いつも一緒にいるニドラン達はどうしたのよ?」

『カゲェ?』

『ピチュ?』

 

「ふん…ただのバトルじゃねえ。ニドラン達とバトルしても意味がねえからな!俺たちは父ちゃんのポケモンで勝負を挑む。しかもジムバッチを獲得できるぐらいの強いポケモンだぞ!」

「え、コウちゃん…それって狡くねぇか?」

「いや、いいんじゃないのかな?イッシュ地方を旅してきた君なら当然こんな勝負、簡単に挑むだろう?」

 

「え、何で君たちとわざわざ勝負挑まないといけないのよ…」

「なんだよ怖気づいてんのか!!?」

 

3人組の内のリーダーが私に勝負を挑むと言ってきた。しかもいつも一緒にいるニドラン達ではなく、家族が連れていた強いポケモンで挑むと言うのだ。なんというか、そういった勝負はフェアじゃないと思うから私たちは呆れた表情でそれを見た。でもメガネをかけた子…つまりシュウジが私たちに挑発するようにいってきた。

 

 

「ニドラン達は友達で勝負するようなポケモンじゃない。でもヒナのヒトカゲ達はサトシさんと旅をして…勝負に慣れているんだろう?なら君の方が断然有利じゃないか。だからこうしよう。ジムバッチを君も…最低3つ持ってきてそれからバトルする。こっちとフェアで勝負すると言うのならそれぐらいはやってもらわないとね」

「いやその前に私、勝負受けるつもりないんだけど…というかジムバッチって……」

『カゲカゲ…』

『ピチュ…』

「はっ。弱いから負けるのが嫌なのか?そのヒトカゲ達が負けるって思ってるから俺たちとの勝負に挑むつもりはないんだろ!俺たちの使うポケモンに瞬殺されるのが嫌でその条件受けたくないのかよ!!」

「ちょっと…ヒトカゲ達は弱くなんかないわ!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

「ジムに挑戦できないんじゃ弱いに決まってるじゃねえか!」

「だからちょっと待ってよ!…ジムに挑戦ってまだトレーナーじゃないのに無理に決まってるでしょ!?ジム戦よりもバトルしたいのなら今すぐしましょう!」

『カゲカ!』

『ピッチュゥ!』

「何を言ってるの?フェアな勝負するって言ってるんだからジム戦しなきゃ意味がないのは分かってるよね?というか、僕たちの勝負はジム戦することも入っているんだよ?」

「そうだぜ!俺たちが使うポケモンはジム戦も経験してきた猛者だ!…まさかジム戦出来ないって言うんじゃないだろうな?」

「まあできないって言うんならお前のヒトカゲもピチューも弱いってことだよな!」

 

「そんなわけないでしょ!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

三人組が言っている内容は、かなり無茶苦茶だった。弱いと言う言葉を撤回したいためにバトルはするという私の言葉を鼻で笑い、ジム戦しなきゃやらねえよと言う。ここは無視してそのまま通り過ぎるのが一番適切かもしれないけれど、彼らが言っている言葉はヒトカゲ達を傷つける言葉だ。それにここで退いてしまったら三人組はまた何かを言ってくるだろう…ヒトカゲ達を傷つける言葉を…。今までのように逃げていくのも一つの手段かもしれない。でもそれをやってしまうとヒトカゲ達が弱いと認めたようなものだった。彼らの条件がトレーナーじゃない私にとって無理な内容だとしても、ヒトカゲ達を弱いと嘲笑う彼らを許してはおけない…だから私はここで退くことはできなかった。ジム戦が無理だと言うのに、彼らはそれはできるだろう?と嘲笑う。それはヒトカゲ達を罵倒し、傷つけるのと同じことだと私は感じていた。

それにシュウジは負けるだろうということが確実だと考えて無茶を言ってきたのだ。ジムに挑んで3つのバッチを持って来れるぐらい強くなってからバトルだと言う無茶ぶりに聞いていられないからこそ呆れて、無視していこうと思ったけれど、彼らは私のヒトカゲとピチューを弱いと決め込んで嘲笑った。それが私にとって地雷だった。

普通だったら私は兄のように苛立って吹っ飛ばすことなできないけれど、…そんな無茶ぶりを聞くつもりだなんてないけれど…それでもヒトカゲ達に悪口を言うのは嫌だったのだ。ヒトカゲ達は弱くない。私と一緒に頑張っているというのに彼らは何も知らずに弱いんだろと言う。

 

だから、私は決心した。

 

 

 

「サトシさんの妹ならこれぐらい楽勝だよね?できないって言うんなら弱いって認めるようなものだよ?」

「……どうすんだよ?弱いって認めるか、それとも勝負を受けるか?」

 

「…………そうね」

『……………』

『……………』

 

 

ある意味、彼らの思惑通りになってしまったのだろう。でもそれでも良い、今までのからかってきた分も、ヒトカゲ達を嘲笑った分もすべて2倍返しにして見返してやろうと思った。本当だったらそのまま今ここでバトルしてもいいんだけど、それだと3人組は何かまた文句を言ってくるだろう…先程のように。それに無理やりバトルをしたとしても、ジムバッチをとってきてないだとか何かズルをしたんだろうとか言ってくる可能性も高い。

……私たちがちゃんとジムバッチを受け取れるぐらいの強さを、そしてヒトカゲ達との絆を見せて文句を言えないようにしたいと思った。だからこそ、バッチを3つ取って来いと言う意味の分からない無茶ぶりにも、バトルをするという言葉にも頷いたのだ。

ヒトカゲ達は私の顔を見て、決意したように三人組を睨みつける。

三人組は私たちの表情からその条件を受けることが分かったらしい。満足げな表情で口を開く。

 

 

「なら、やるんだよな?」

「…ええそうね、バッチ3個集めることが条件なら…良いわよ…受けて立つわ!」

『カゲェ!』

『ピッチュゥ!』

 

「ふん。あとになって逃げだすだなんてことすんじゃねえぞ!」

「ちゃんとジムバッチがあるかどうか確認してやるからな!」

「ああそれと、ヒトカゲとピチュー以外の…サトシさんのポケモンたちを使うのは駄目だからね」

 

「あら、そっちも私たちとバトルするんだからちゃんと指示を聞くポケモンで挑みなさいよね!!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

 

…後悔はしていない。ヒトカゲとピチューには巻き込んでしまったけれど、それでもこれだけは譲れなかった。弱いと言う言葉は絶対に撤回してもらう。そしてヒトカゲとピチューに謝ってもらう。それを目標に私たちは家に向かって行った。これからの条件を達成するために何をすればいいのか、いろいろと考えながらも…ヒトカゲ達と走って行った。

 

 

 

 

 

 

 




妹の心境。
 とりあえず伝説とお兄ちゃんのポケモンたちを説得…いやそれだとまず先にあいつら潰そうとするから…ああもう…。




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