マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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いつかその時は来るものだ…。





第百七十三話~妹はルカリオから話を聞く~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レッビィィ!』

『………そうか。もう時間か』

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。最近ピチューがよくトレーニングフィールドを利用していることがあって、私たちもいろいろとバトルやコンテストの練習をするようになりました。といってもバトルだと相手が伝説か兄のポケモンになってしまいますから瞬殺されますけどね…。まあそれでも攻撃はまだまだ微妙ですが避けるのはうまくなりましたよ。

 

 

そして現在、トレーニングフィールドにて整地されたバトル場はある特訓をしているために使えない。

 

 

 

『フォォォ……行くぞ…!』

 

 

『ブイブィ!!』

『ジュルァァ!!!』

『マァグ!!』

 

 

現在トレーニングフィールドにあるバトル場ではマサラタウンに遊びに来ていたダークライによるダークホールの突破法を考え、修行するために使用されていたのだ。

躱して攻撃してしまえばダークホールの対処は可能だが、もしも躱すことができずそのまま眠らされてしまうことを考えてやってるみたいだった。ダークホールの流れ弾が飛んでくる時もあったりするけど、それも修行だということでみんながそれぞれ躱したりわざと当たったりしていた。まあそのため先程直撃して眠らされたヘイガニが気合いとやる気で起き上がることに成功していたりする。

 

 

そして私たちはピチューによるなみのりとヒトカゲによるかえんほうしゃをバトル場で観戦しながらも練習していた。

ピチューは泳ぐのがうまくなっていたけれどなみのりをするにはラプラス達によって引き起こされた波でないと技とは言えない。そのためピチューは自らなみのりを発動させようと悪戦苦闘していた。私も自ら両手を使って小さな波を引き起こし、ピチューの尻尾で波を起こすことはできないかとアドバイスをしたり、一緒にラプラスのなみのりを見たりして研究している。

そして一方のヒトカゲはかえんほうしゃがいまだにうまくいかず、猛火の炎としての炎が放たれるだけだった。ヒトカゲの進化形である兄のリザードンがいていろいろと練習をしてもらえるのならいいのだけれど、リザードンはもうリザフィックバレーに帰って修行しているため師匠として適切なアドバイスは聞けない。そのためコータス等の炎タイプである兄のポケモンたちにかえんほうしゃを実際に見せてもらったり、火の勢いを強くするための練習をしたりしていた。

 

―――――――そんな時だった。

 

 

 

「あれ?ルカリオ、どうしたの?」

 

 

 

『ヒナ……バトルをしてくれるか?』

 

 

「……へ?」

『カゲ?』

『ピチュ?』

 

 

 

ルカリオは真剣そうな表情で私たちに近づき、話しかけてきた。いつものルカリオなら修行の練習相手になってもらったり、お菓子を作ってくれたりするはずなのに…今日は何故かそういった話はせず、ただバトルをしようといってきたのだ。

 

私たちは首を傾けて何があったのか話を聞く。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「え!?ルカリオ…本当に帰っちゃうの?」

『カゲェ…?』

『ピチュ…?』

『ああ、もう自分の居場所に帰らないといけないんだ…アーロン様のもとへ』

 

 

私たちが聞いた話は、いずれ来るだろうと思っていた悲しい事実だった。セレビィが【時が来た】と言ってきたということ、もうマサラタウンにいることはできず、過去の世界に帰らなければいけないと言う。

その話は私たちだけじゃなく兄のポケモン達、そして伝説たちも聞いていた。彼らはルカリオに様々な意味でお世話になったことがあったから、別れを悲しんでいる。私たちも同じように悲しかった。寂しいと言う気持ちが強く、まだここにいてほしいと願ってしまう。でもそれはルカリオにとってはできないことだと言うのも分かっていた。だから…だからこそルカリオの頼みであるバトルを私たちは了承した。でも、ただ普通のバトルはしたいとは思わなかった。ルカリオに何時も修行の相手をしてくれたからこそ、どれくらい強くなったのかを知ってもらいたいからこそ…私も一緒にバトルをすると言う。

 

私たちがバトルを了承したことにルカリオは笑みを浮かべて頷いていた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

『ホー!』

『ダネダネ!』

 

 

「審判はヨルノズクとフシギダネね…分かった…バトルは私も一緒にやるよ!」

『カゲカゲ!!』

『ピチュピチュ!!』

『ああ、どこからでもかかって来い…!』

 

 

『ダネフッシィィ!!!』

 

 

「ヒトカゲ、ダブルひのこ!ピチュー10まんボルト!!」

『カゲェェ!!!』

『ピッチュゥゥウ!!!』

 

 

フシギダネの小さなソーラービームを合図にルカリオが動く。始めからはどうだんを放つルカリオに私はまずヒトカゲのダブルひのことピチューの10まんボルトで防いだ。ルカリオのはどうだんは手加減しているのか強烈な威力はなく、ヒトカゲとピチューの攻撃で爆発していた。

そして私たちは一緒になって走り出し、ルカリオに近づく。ルカリオは笑みを浮かべて楽しいという表情になりながらも私たちが特攻するのを見ている。そして私が指示をするのと同時に体勢を整えて反撃してきた。

 

 

「危なッ!ピチュー回転して10まんボルトでヒトカゲを庇って!」

『ピッチュゥゥゥ!!』

『カゲ…!』

 

 

ルカリオの攻撃がヒトカゲに当たりそうになったためピチューに向かって回転式10まんボルトをしてもらう。回転しながらの10まんボルトはある意味電気の壁のような役割を持っており、兄が防御技として使っていたカウンターショックのような効果があった。そしてコンテストのようなアピールが好きなピチューだからこそ、ピチューを中心とした回転式10まんボルトは花火のように煌びやかに輝いていた。でもピチューの技を見たルカリオはすぐに攻撃を接近戦に変えてきたため、反撃されると危ないためまず私は行動を制限してもらおうと考えて指示をする。

 

 

「ヒトカゲえんまくで隠して!…いくよピチュー!」

『カゲ!』

『ピッチュ!』

 

 

『ふん…煙幕をしたところで見えないということはない!』

 

 

ルカリオがヒトカゲのえんまくによって視界が黒く染まる。だが、ルカリオには波動があるため視界が見えなくなったとしても意味はなかった。波動を使ってこちらにやってくると分かり、私とピチューはお互いの顔を見て頷いた。その表情はやる気に満ちていて、これからすることはルカリオと一緒にやって来た修行の成果を見せる時でもあったからだ。ヒトカゲは私たちの後ろに下がり、何かあればすぐに攻撃できるようにしていた。

 

 

「いくよ…雷パンチ!!」

『ピッチュゥ!!』

 

 

『ほう…』

 

ピチューの電撃が腕を通って放電状態になっていく。まるでアイリスのカイリューが放ったかみなりパンチのように私の拳に集まる強烈な電撃を、ルカリオにぶつけようと動いた。だがルカリオは避けることなくあえて右手で受け止めてきた。…そして雷パンチをものともせず、ただ私たちを見て満足そうに笑っていた。

ちなみに私たちの雷パンチをみてフシギダネ達はヒトカゲとの炎のパンチがあった時のことを思い出して懐かしんでいたり、もっと技を改良することもできるなと呟いていたりする。でも見るものが皆、私たちのことを見て笑みを浮かべていた。

 

 

 

『成長したな…お前達…!』

 

 

「当たり前でしょ…でもまだまだルカリオから学んだことたくさんあるんだからね!それ全部見せないとルカリオとバトルしてる意味がないよ!」

『カゲェ!』

『ピチュゥ!』

 

 

 

そしてその後、しばらくの間はバトルを続けていたのだけれど…それらは全てルカリオに躱されたりあえて受け止められたりしてダメージにはなっていなかったりする。…でも、それでもルカリオとバトルができて私たちは十分満足した。…もちろんルカリオも良かったと言って、もっと修行に励めと言っていたのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『レビィィイ』

 

『ああわかっている…』

 

「さようならルカリオ…向こうでも頑張ってね!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

 

『ッッ――――――――!!!』

 

 

セレビィ達が集まった場所で、ルカリオを見送るために私たちは集まる。母たちには話していないため良いのかと聞いたんだけど、時間がないということ…そして騒がれたくないからと言っていた。まあルカリオはマサラタウンではかなり有名なシェフみたいになってたし…お別れという事実を伝えてしまうと、ここにいてくれと泣き叫ぶ人々がたくさんいるだろうなとは考えたから納得した。

そして私たちはセレビィがルカリオの周りに集まり、光り輝いていく光景を見て手を振ってさよならと叫んでいた。視界が涙で歪み、すごく悲しいと思うけれど…元気にルカリオがアーロンさんと一緒に居られるなら良かったという気持ちも強く、ただ何も言わずに手を振っていた。兄のポケモンのイッシュ組や私のヒトカゲとピチューは号泣していて今にもルカリオに抱きついて別れを止めようとしている。他にもヘイガニやコータス…他にも兄のポケモンたちの一部が号泣していて…本当に悲しいと思えた。ミュウツーたちは何も言わず、ただ見守っていた。

 

 

そしてセレビィ達が集まった時に発生した光りが消え、セレビィ達のときわたりが始まった。輝きが強くなりルカリオの周りに集まっていく。これでもうお別れなんだと感じて、私たちは見送るために眩しいからと目を閉じずただひたすら光りの中心にいるルカリオを見ていたのだ―――――――。

 

 

 

 

 

「……………………え?」

『カゲ…?』

『ピチュ…?』

 

 

 

 

 

『…なッ…アーロン様!?』

 

「やぁ久しぶり。ルカリオ」

 

 

 

光り輝いていたセレビィ達は一気にいなくなった。ルカリオがもうときわたりをしていないだろうと思っていたらいて…もう1人青いマントと帽子が特徴の人間がルカリオの近くに現れていた。

ルカリオは自分がときわたりで過去の世界に戻らなかったことに驚き、そして隣にいたアーロンさんに驚く。もちろん私たちもその状況に驚いた。

だがミュウ達がアーロンに近づいて話しかけているのを見て、フシギダネ達がどういうことなのか話し合っていた。

 

 

『ミュゥ!』

『ミューゥ!!』

 

「ああ、元気そうだねミュウ達…君はあの時辺境の村で会った以来かな?」

『ミュゥ!』

 

「はじまりの樹に棲んでるミュウについては知ってるけど…ミュウツーと争ってたミュウとも知り合いなんだ…」

『カゲェ…』

『ピチュゥ…』

 

『ダネダネ…ダネフシ…』

『ホー…』

『ああなるほど、セレビィはただ【時が来た】と言っただけでルカリオはそれに勘違いしたということか』

『ベィリー…』

『キューン…』

 

 

『ど、どどどういうことですかアーロン様ぁ!!!』

「どういうことも何も…過去の世界では私は生きているという事実はない。やるべきことをやったら未来に来るつもりだったんだよルカリオ」

『そ、それはつまり…!』

「ああ、私たちはもう過去の世界には帰らないということだ。死ぬはずの運命を変えてしまった今、未来をさらに歪めてしまう原因である私たちはこの時代で生きていくことこそ最適だろう」

 

「あ、じゃあこの時代にいるってことなんですね!」

『カゲ!』

『ピチュ!』

 

 

アーロンさんに話しかけた私たちはルカリオもアーロンさんもこの時代にずっといるということ、過去の世界には帰らないということに笑みを浮かべた。過去の世界に帰ろうとしたルカリオには申し訳ないけれど、お別れしなくていいんだという事実が嬉しく感じてしまう。

 

そしてアーロンは私たちを見て笑みを浮かべていた。

 

 

「そうだね。この時代で生きていくことになるよ…君たちには迷惑をかけてしまうかもしれないけれど」

「いやそんなことないですよ!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

 

 

アーロンが私たちの頭を撫でて、ルカリオを見て言った。

 

 

「ああでも……これからある友に会いに行きたいと思っているんだ。…ルカリオ、もしもよければついて来てくれないか?」

『ハッ!アーロン様がそう望んでおられるのならついて行きます!』

「そうか…ありがとう…!」

『いえ、アーロン様に…この未来の世界についてお教えしたいことがたくさんありますから!』

「楽しみにしているよ」

『はい!』

 

 

「え…友?でもこの時代はもう数百年経ってますよ?」

「ああ、知っているよ…私の友は長生きでね。まあ最初に会ったときは顔面に強い衝撃を与えてやりたいとは思うけれど…」

「が、顔面…?」

 

 

アーロンさんは笑顔で拳を握っていた手を見せて私に向かって言う。顔面に衝撃を与えてやるということはつまり、顔面に向かっておもいっきり殴ってやりたいということなのだろう。というより、長生きしているとはどういう意味なのだろうか。もしかしたらポケモン…?いやでもそれにしては寿命が長すぎるような…。なんだか嫌な予感がしてきたし気にしない方が良いのだろう。うんそうしよう。

誰なんだろうと言う疑問が未だに感じながらも…とにかく、マサラタウンで歓迎しなければと思った。

 

 

 

「アーロンさん!旅はもう少しだけ待ってくれませんか!?これから歓迎パーティを開きたいので!」

『カゲカゲ!』

『ピチュピチュ!』

「いいのかい?…ありがとう」

 

 

 

アーロンさんと旅をするというルカリオとちょっとだけ別れることになるかもしれないけれど、もう二度と会えないという意味ではないから寂しいという感情はあっても私たちは笑顔でいられた。

 

 

 

 

 

 




妹の心境。
 ルカリオが旅に出ると聞いたら人間やポケモン達が行かないでくれと号泣し土下座して玉砕していたのを見て予想通りだと思った…。




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