マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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愛に上限なんて存在しないと、少女はそう認識していた。




第百七十二話~セレナは真剣に考えていた~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――これはまだ、セレナがフォッコをパートナーとして博士に貰った後であり、サトシ達に会う前の話。

 

 

 

「フォッコ…あのね。私はこれから強くなりたいって思ってるの」

『フォコ?』

 

 

フォッコをパートナーとして貰い、サトシが向かったという町へと向かっていたセレナ。

フォッコとポケモンセンターで一日を過ごしたセレナは、フォッコをボールから出してから話しかけた。それはパートナーとして一緒に過ごすであろうフォッコとのこれからの目的でもあった。

 

 

(サトシは…本当に凄い…)

 

 

家を飛び出した原因でもあるサトシがニュースに流れていた時、とても嬉しかったと感じていた。やっと会えるとそう歓喜に震えていたのだ。でもそれと同時に知ったのはサトシがトレーナーとして遠い世界で活躍しているという事実。セレナ自身とは違ってちゃんと夢に向かって活躍していたという輝かしいサトシが映し出されていたのだった。

セレナはいつか会えるとサトシを探そうとしなかった。サトシにまた会えると言う根拠のない自信があって…自分の夢を見つけ、そしてサトシに相応しいと言えるようになった時、もしもそれでもサトシに会えることがなければ自分で旅に出て探そうと考えていた。そして家にいる時、サイホーンレーサーとして頑張れと母に言われ、セレナは昔サトシと交わした約束を考えて諦めようとはしなかった。あの時に出会った衝撃と、そして頼もしい背中にセレナはそんなサトシに相応しくなりたいと努力を怠ることはしなかった。サイホーンレーサーとして出場したこともあったし、大会で優勝したこともあった。

だが、何度も何度も練習をしてきたけれど…大会に出場していたことはあったけれど、自分の心にはレーサーとしてやっていきたいという燃えるような感情はなかった。レーサーとしてより、他のことをしてみたいと思っていた。例えばホウエン地方特集でテレビ番組として映ったポケモンコーディネーター。華やかでとても綺麗だと感じ、セレナも同じようにポケモンと一緒にそのコンテストに出場したらどうなるんだろうと想像したこともあった。でも、それでもまだ強烈な印象はなく、必ずなりたいという夢からは遠かった。だからこそ、セレナは焦っていたのだ。テレビに映ったサトシのように、自分にも何かやってみたいと思える目標を持って旅をしていきたいと言う感情が強くあったからこそ、家を飛び出した。

 

サトシは凄いとセレナは感じていた。自分の夢に向かってトレーナーとして旅を続けているということ、そして数々のリーグで優勝し様々な地方のチャンピオンにならないかと言われていることをニュースによって知ったのだから。…だからこそセレナはこのままでいいとは思っていなかった。旅を通じてより強くなっていき…そしてフォッコと共にやりたいと思える夢を見つけようと考えた。夢はまだ何なのか分からないけれど、今はとにかくサトシの隣に立てるように強くなっていこうと考えたのだ。強くなることはフォッコを鍛えるということではない。セレナ自身、フォッコと共に一緒に強くなっていこうと考えていたのだった。

 

 

「フォッコ…私はね。まだ夢も何も見つけてはいない…でも…それでも強くなりたいって思ってる」

『……?』

 

「強くなりたいって言っても、バトルで強くなりたいんじゃない…やりたいことを見つけて、そしてその夢に向かって頑張っていきたいの…フォッコ…まだ目的も何も決まっていないけれど、それでも一緒にいてくれる?」

『フォコ!!』

 

 

フォッコはセレナの声に大きく頷いて、頼もしい表情で鳴き声を上げた。それはつまり、セレナの目的を一緒に達成しようという意志でもあり、パートナーとしての最初の絆でもあった。

そんなフォッコにセレナは嬉しく笑みを浮かべてありがとうと言ってフォッコを抱きしめる。フォッコは抱きしめられたセレナに笑顔でまた鳴き声を上げた。

 

 

「サトシに…早く会いたいな…」

『フォッコォ?』

 

「サトシはね…私にとって憧れで大好きな人で…それで一生傍にいたいと思える人なんだ」

 

 

あれから何年も時が過ぎていて、サトシは幼い頃と違って、なにもかも変わっているかもしれないという不安はあった。でも…それでも一生傍にいたいという気持ちに嘘はないとセレナは感じていた。あのとき出会った衝撃は…そしてサトシに対して感じるこの燃え上がるような強い思いは他の人に向けられるようなものではないということが分かっていたからだ。

それは、最初サトシに出会ったときは初恋のように甘酸っぱいものだったのかもしれない。本当だったら消えてしまうほどの小さな感情だったのかもしれない…いやそれはきっとありえないことだろうとセレナは自問自答した。もしもな言葉でサトシに向ける感情を示すことはできないと考えているからだ。この気持ちは揺るぎないとセレナは胸を押さえて考える。

……一度会っただけで永遠にこの感情を向けることは無理かもしれないという考えはあったが…その気持ちは徐々にセレナの中で変化していき、テレビでサトシを見た瞬間にまた燃え上がるような形で浮上した。つまりはより強い感情で浮上しただけなのだ。

 

心が破裂しそうなほど激しい感情がテレビでサトシを見て身体中に駆け巡った。脳内でただひたすら会いたいという気持ちが、言葉が繰り返される。その感情は、目的も何もないというのにフォッコを巻き込んで家を飛び出し旅に出てしまったぐらい衝撃的だったのだ。セレナは夢に向かってという目的はなく、ただサトシに会いたいために旅に出たことを後悔はしていない。旅というのはいつか目的ができるだろうという考えもあったし、夢を探すという形で昇華していたからあまり気にしていないのだ。それよりもサトシに会いたい、会って話がしたい…傍にいたいという感情の方が強かった。

その感情は大好きだけでは止まらない…一生傍にいたいという思い…そして他の人はもう愛せないと断言できるぐらいの激しいものとなっていた。

 

 

「フォッコ…私は絶対に頑張るからね」

『フォコォ?』

「ふふ…フォッコも楽しみにしていてね。絶対に後悔しない旅にするから」

『フォコ!』

 

 

「この気持ちは絶対に嘘じゃない…サトシがあの時からどんなに変わっていたとしても、私は絶対に約束を守るわ」

 

 

 

 

フォッコの頭を撫で、そして目を瞑って幼い頃に会ったサトシを思い浮かべる。覚えているのか覚えていないのかは分からない…もしかしたら覚えていないのかもしれないけれど、それでも自分が誓った思いは決して破るつもりはなかったのだ。

 

―――――例えサトシに冷たく拒絶されたとしても、自分勝手だと言われたとしても…そして彼がセレナ自身に向かって大嫌いだと言って怒鳴られたとしても…この激しい感情を捨てて生きていくつもりは微塵もなかった。

恋は盲目というのはセレナ自身に当てはまる言葉だろう。サトシに恋をしたことによって周りをよく見ず盲目になってしまったのかもしれないのだから。

でも…それでもサトシの傍にいて…サトシに相応しい女性になろうという気持ちは強く、セレナはトレーナーとしてサトシの隣に立てるように、より強くなろうと決心した。

 

 

 

 

 

 


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