ある意味カオスな状況に困惑した。
「へ…ヒトカゲが2体…?」
『ピチュゥ?』
『カゲ…?』
『……………………』
こんにちは妹のヒナです。今日はヒトカゲやピチューと一緒に森の中を散歩しています。この後ピチューがなみのりの練習をしてみたいらしくトレーニングフィールドに行く予定なのですが、その途中であるヒトカゲに出会いました。しかもそのヒトカゲは私のヒトカゲよりも一回り大きくて通常の色をしていた。それにしても…なんだか兄が不機嫌になっている時のような表情をしていてどこかで見たことあるような感じがする。
まるで兄がヒトカゲになったかのような表情に、私と私の足元にいるヒトカゲとピチューは顔を見合わせて首を傾けた。
「えっと…どうしたのきみ?」
『カゲカゲ?』
『ピチュゥ…?』
『………カゲェ』
不機嫌そうなヒトカゲはただ小さくため息をついてから言う。その声はまるでついてこいとでも言うかのようだ。歩いていくヒトカゲが一度私たちの方を向いてからまた一鳴きして、私たちが近づくのを待つ。よく分からないけれど、ついて行った方がいいかなと思えたので行くことになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちょっと待って…何これ!?」
『カゲカゲ!?』
『ピチュゥ!??』
不機嫌そうなヒトカゲについて行った先は後で行こうと思っていたトレーニングフィールドだった。そこには兄たちのポケモン達がいた。ただし伝説はいなくて、フシギダネ達が周りに揃っている状況に唖然とした。フシギダネなどはともかく、いろいろと姿が変化しているポケモンもいて私たちはそれに驚いてしまったんだけど…。
「何でお兄ちゃんのポケモンたちがみんな未進化前に戻ってるのぉぉぉぉ!!!??」
『カゲカゲェェェ!?』
『ピチュピッチュゥゥゥゥ!?』
フシギダネ達未進化のポケモンも私たちと同じように困惑していた。そして進化していたはずのポケモンたちがそれぞれ自分の進化前の姿を確認して驚いていた。イッシュ地方で一緒に旅をしていたチャオブー等の進化したポケモン達もまるで兄と出会った頃の姿に…出会う前に進化していたガマガル達…いやオタマロ達はある意味初めて見た姿に驚愕する。
…あれ?じゃあついて来いって言ったヒトカゲってまさか………。
「……君ってもしかしてお兄ちゃんのリザードン?」
『カ、カゲ?』
『ピチュ…?』
『……カゲェ』
不機嫌そうなヒトカゲが小さく頷いたことによって確信した。というよりも兄と同じような表情をしている時点で気づかなければならなかったのかもしれない。兄とリザードンはよく喧嘩をするし似ている部分もあった。もちろん兄といつも一緒にいるピカチュウも似ているのだけれど…でも離れた場所で強さを求めて修行をするリザードンは兄に似ているなとずっとそう感じてきたんだから不機嫌そうなヒトカゲと出会った時に分かればよかった。…まあリザードンだと分かった時点で何もすることがないと思うけれど…でもまさか進化したポケモンたちが未進化に戻るだなんてことあるだなんて……。
「ミュウツーたちは何処にいるの?話聞いて見たらもしかしたらわかるかもしれない…!」
『カゲ…!』
『ピッチュ!』
『ダネダネ!…ダネ』
フシギダネが森の中を探そうとする私たちを止めて、首を横に振った。その仕草はミュウツーたちはここにはいないということであって…じゃあどうすればいいんだろうと思った。オーキド博士達に言ったとしてもちゃんと元に戻るのか分からないし…聞いて見た方がいいのかどうか迷う。でもとにかく兄にだけは伝えた方がいいかもしれないと考えた。
「と、とにかく…お兄ちゃんに話をしないとだよね…!」
『カゲ!』
『ピチュ!』
『カゲ…!』
『ウッキャ…!』
『キャモ!』
兄のリザードンとゴウカザルとジュカイン…今は進化前のヒトカゲとヒコザルとキモリが私達の前に立ちはだかり兄に知らせるのを阻止しようとしてきた。自分たちで起きたトラブルは自分たちで解決したいと言っているのかもしれないと私たちはお互いに見合わせてからフシギダネを見る。フシギダネはとても微妙そうな表情でその通りにしてやれと小さく鳴き声を上げる。それに私たちは頷いて兄に連絡するのは止めたんだけど、やっぱりカオスな気がする。ヘイガニがスバメの身体を見て何故かたいあたりらしきことをしており、ユキワラシがそれに巻き込まれて喧嘩になった。そのためナエトルとチコリータが喧嘩を止めようとして最終的にはフシギダネのソーラービームで止めていた。ちなみにポッポとクラブはテンションが上がって暴れているゴースを止めようと必死に頑張っていて、そろそろフシギダネに吹っ飛ばされそうだと思った。
これどう収拾つけようかと思っていた時に、その声は聞こえてきた。
『……ヒナ』
「あ、良かったミュウツーに聞きたいことがッッ!!!?」
『カゲカゲ!?』
『ピッチュ!?』
後ろを振り返ってみた先にいたのはミュウツーだけじゃなく伝説たちがいた。伝説たちはいつもマサラタウンに来ているミュウ、ミュウツー、セレビィ、ルギア、ラティアス、ラティオス、レックウザ、デオキシス…そしてめったに来ないけどたまに遊びに来るアグノム、ユクシー、エムリット、ファイヤー、サンダー、フリーザー、スイクン、エンテイ、ライコウ、カイオーガ、グラードン…まあつまり、いろんな地方で見ることのできる様々な伝説がいたのだ。でもその伝説のポケモンたちの姿がいつもとは違っていた。
「何で手乗りサイズぐらいに小さくなってるの!!?」
『カゲェ!?』
『ピッチュピチュ!?』
『…気づいたらこうなってたんだ』
ミュウなどの小さなポケモンまでもが手に乗れるぐらいのサイズまで小さくなっていた。まるで小さな人形のような姿に、これも兄のポケモンたちが進化前の姿になってしまったのと同じ状況なのかと驚く。とにかく何とかしなければとリザードン達…じゃなくて兄のヒトカゲ達には悪いけど兄に言った方がいいと行動する。
『ダネェェダネフッシィィイイ!!!!』
「え、ちょっと待って…!?」
『カゲ!!?』
『ピチュ!?』
兄たちのポケモンの喧嘩などがエスカレートし、悪化していたらしい。兄のヒトカゲやヒコザル、キモリも交じってバトルのように激しく争っている。それを穏便に止めようとしていたフシギダネがいつまでたっても収まらない喧嘩にブチギレて喧嘩している方向に…いや私たちの方向にソーラービームが放たれようとしてそこから逃げるために走り出そうとする。でも足が何故か重くて動けない…!
「ちょっと待ってフシギダネ…!!!」
『カゲカゲ!!』
『ピチュ!!』
『ダネダネダネェェェエ!!!!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「危ない!!?……あれ?」
『カゲェ!』
『ピッチュ!』
大きく叫んでフシギダネのソーラービームに直撃してしまったかと思いきや、いつの間にか大樹の傍にいた。フシギダネ達はいなくて…あの小さくなった伝説たちも、喧嘩していた兄のポケモンたちもいない……いや、私は眠っていて、夢を見ていたみたいだった…。
「あれ…君は…」
『フォォォオ……』
私のことを心配しているらしいヒトカゲとピチューの後ろから様子を窺うポケモン…ダークライがいた。ダークライについては兄からシンオウ地方の旅で話を聞いている。やりすぎたディアルガとパルキアの喧嘩を止める原因となったポケモンだということ、とても優しいポケモンということ…そしてシンオウリーグでは違うダークライが出てきて面白いバトルができたということを話してくれた。だから良く覚えているけど…まさかマサラタウンに来ているとは思わなかった。
「もしかしてあれってダークライの悪夢…?」
『カゲ…』
『ピチュピ…』
『フゥゥ……』
「そっか…夢で良かった…本当にありがとうダークライ!!」
『ッ…!!?』
ダークライは自分のせいで悪夢を見たというのに何で感謝されたんだと驚いていた。でも私としてはあれが本当に夢でよかったと思ったのだから仕方ない。あれは酷すぎた…進化前に退化してしまった兄のヒトカゲ達も、手乗りサイズに小さくなってしまった伝説たちにもどう対処すればいいのかわからないからこれが夢でよかったと思った。
…ちなみにその時、普通サイズなルギアが通りかかっていて、本当に夢だったんだと知って安堵したぐらいだ。
「とりあえず正夢になりませんように…かな…あ、そういえばダークライはどうしてマサラタウンに来たの?」
『カゲ?』
『ピチュ?』
『フゥゥゥ…サトシに会いに来た』
「お兄ちゃんに?」
『カゲェ?』
『ピチュピチュ?』
ダークライが小さな手紙を見せてくれた。その手紙はアラモスタウンにいるアリスとトニオという人たちから兄に向けられた手紙で…どうやら兄によって助けられたことに対する感謝の気持ちと、今どうなっているかの話が書かれているらしいとダークライから聞いた。ダークライには兄はいまカロス地方に行っているからマサラタウンに帰って来た時に渡すかカロス地方までなんとか頑張って送るかするけどどうするか聞いたら自分が持っていくと言ってそのまま別れた。
ちなみにその後夢についてヒトカゲ達に話したら心底夢でよかったと安心しており、そして手紙が無事に届いてダークライも元気そうだったと兄から電話が来た時に悪夢について話したらまた一から育て直しも面白そうだよなと言っていた…なんというか、いつも通りの反応で心底安心したものだ。
そしてダークライはその後何度かマサラタウンに遊びに来るようになったのは言うまでもない。
妹の心境。
これが正夢になったらどうしよう…いや大丈夫だよね…。