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第百六十七話~妹は平和に過ごしていた~
こんにちは妹のヒナです。イッシュ地方での旅が終わり、私たちは今マサラタウンでのんびりと過ごしています。イッシュ地方ではほとんどが騒動でしかなかったと思い、平和な日々を堪能しているのです。
「あれ?」
『カゲェ?』
『……ピチュ?』
迷いの森に入って奥にある大樹へ向かって歩いていた時にいつもとは違う違和感に気づいた。私だけじゃなくヒトカゲもそれに気づいたようで、私の手を引っぱって頷いた。ピチューはイッシュ地方で出会ったから私たちが何で首を傾けているのか分からないという意味で疑問を浮かべていたらしい。
今私たちがいるのは迷いの森の奥だ。つまり木々がとても多く、日差しがあまり来ない暗い場所…だというのに私たちが見つけた先では明るくなっていたのだ。その光はポケモンの技とは思えない大きな輝きだった。まるで太陽から照らされる木漏れ日のように…いや実際はそれ以上に明るくなっていたのだ。しかもその先で何やら騒音が聞こえてきているのも分かった。もしかしたら兄のポケモンたちが何か騒動でも起こしているのかなと思ったけれど、それにしては音が大きい。爆発したような物凄い轟音も聞こえてきて…大丈夫なのかと不安になった。
私たちが見ているその先は大樹がある場所とは違っていて…普通に木々が生えているだけだったはずなのに何で明るいんだろうと思い、行って見ることにした。ピチューにもこの先は前は明るくなかったということ、イッシュ地方を旅立つ前と違っていたということを説明してから歩き出す。
「何だろう…凄く嫌な予感がする…」
『カゲェ…』
『ピチュゥ…』
・・・・・・・・・・・・・・
――――――着いた先で待っていたのは迷いの森での木々…ではなく、立派なバトル場やトレーニング施設、リゾート地かと思える綺麗な浜辺だった。
「どういうことなの!?」
『カゲカゲ!?』
『ピッチュ!!』
ピチューが目を輝かせ楽しそうに浜辺に走って行く姿を見つめながらも、迷いの森の変化に驚いてしまった私たちは叫んだ。その叫び声に反応したのはバトル場でそれぞれ兄のポケモンたちがグループを組んでバトルをしていたジュカイン達と、トレーニング施設かと思えるぐらい自然の木々や地面などを使って修行をしているゴウカザル達。浜辺では何故か遊びに来ていたラプラス達やブイゼルとなにやら話し合っているフカマル達がいた。ピチューもその中に入って何を話しているのか聞いている。
ちなみに兄のポケモン達だけじゃなく伝説たちもいたりする。
『ヒナ、何をそんなに驚いているんだ』
「いや驚くからね!ここ何!?イッシュ地方に旅立つ前はこんな感じじゃなかったはずだよ!」
『カゲ!』
『ああここか。サトシがイッシュ地方を旅立つ前にポケモンたちの修行の場として考え設計し、そして俺たちで作り上げたトレーニングフィールドだ』
「お兄ちゃん…」
『カゲェ…』
兄がいつもどおりやらかしていたらしい…というか、木々があった場所に砂や湖の水によってリゾートのような綺麗な浜辺のようになっている場所を作ったということに一番驚いた。バトル場は兄がイッシュ地方を旅する以前からずっと修行する時にちゃんとした場所がマサラタウンにもあると良いよなと呟いていたことがあったのを覚えているからそのせいだと思う。公式にバトルする時のでこぼこがない整地された綺麗な地面、地面が抉れてへこんだ部分はおそらくバトルフィールドの範囲になっているのだろう。今は集団バトルをしているみたいだけど、ちゃんとルールがあってトレーナーがいるようなしっかりしたバトルのようになっていた。これは兄が考えて、ルールなども教えていったんだろうと思う。
トレーニング施設になっている場所も同じ考えだ。トレーニング施設ではサンドバックのような形をした大きな石が並べられていて、ゴウカザルが技を使わず素手で破壊している。オオツバメやヘイガニなんてとっしんのような勢いで突っ込んで石にヒビを入れて壊していた。サンドバック岩だけじゃなく罠のように飛び交うとがった岩を避けまくるグライオンがいた…。他にもいろいろと何かやったのかおとし穴があったりはかいこうせんが放たれたかのような地面に焼跡が残っていたり…。まあとにかく、ミュウツーたちが作り上げたとは思えないほど凄いことになっていたのだ。
でもやっぱり一番驚いたのは浜辺である。…いや、浜辺のような場所だと言った方がいい。砂や海のような光景があったとしても周りは木々に覆われていて、湖の一部分を使ったと分かってしまうからだ。ミュウツーに聞いて見ると砂はホウエン地方まで行って集め、そして海のような場所はやはり湖を広げていき…そして波打つようにしたという。どうやって波打つようにしてやったんだと言いたいけどそれを聞くとなんだか頭が痛くなりそうな気がしたから止めておいた。
でも兄が浜辺を作ろうと言ったのはなんでだろうと思った。今浜辺のような場所ではラプラス達がなみのりを発動させてブイゼルがサーフィンのようにラプラスのなみのりで泳いでいる。それをフカマルやズルッグ、そしてピチューが見つめていた。
ミュウツーがバトル場に戻らず私たちの近くにいたため、質問するためにラプラス達に向かって指差してから話しかけた。
「あれ何やってるの?」
『カゲ?』
『ああ。なみのりの技を教えている最中だ』
「ちょっと待ってそれおかしい!?」
『カゲェ……』
なみのりはみずタイプのポケモンが覚えるはずの技だ。…いや、みずタイプだけじゃなく他にも覚えるポケモンもいる。それに兄のピカチュウも確かなみのりらしきことをしていたような気がした。でもそれこそサーフィンのようにボードに乗ってなみのりをしていただけだ。けれど今見えているフカマル達はボードなどは持っていない。…そして通常はなみのりが覚えられるはずもない。それだというのにフカマルやズルッグが覚えようとしていることに驚いた。…しかもフカマルやズルッグだけじゃなくマグマラシもじっとラプラス達の方を見て、話を聞いているようだし…ピチューもね。
『通常ありえないと言えるタイプであるポケモンが技を放つことができるようになったらバトルが面白くなると優れたる操り人が言っていたぞ…』
『ああ、あとヒナ達がイッシュ地方を旅している間にワニノコ達が地面を利用してがんせきほうという技を習得していた』
「もうタイプとか超越しすぎでしょ…お兄ちゃんの馬鹿……」
『…カゲカゲ』
私とヒトカゲはため息をついて浜辺のような場所を見る。波にのろうと泳いでいるピチューが見えて…ああこれはなみのり習得しそうだなと喜んでいいのか分からない微妙な心境になりながらも苦笑した。
いつか兄のポケモンたちがすべてのタイプの技を習得し、弱点はないという状況になったらどうしようと嫌な考えが思い浮かんでしまった。
――――後に兄に話を聞いたら、オーキド博士にトレーニングフィールドを作っていいのか話し合いをしてから決めたらしい。なんというか…兄らしい行動だなと諦めを通り越して納得してしまったものだ。
妹の心境。
ここハルカさんもよく使ってるみたいだし…まあいつものことだよね……。